タイアップ(記事)広告ってバナーより効果があるの? コンバージョンにちゃんと貢献しているの?
広告主の方のなかで、インターネット広告の出稿先の1つとして「記事広告」を検討したり、実際に実施したことがある方はどのくらいいるでしょうか。
記事広告とは、簡単にいうと広告主が直接発する言葉ではなく、第三者目線で作られたコンテンツによって消費者へと訴求するものです。バナーなどの決められた枠に対して自社の広告素材を配信する「純広告」とは違った、記事広告ならではの特徴を持っており、自社のマーケティング施策の一環として活かしていくことができれば、お客様との新たなコミュニケーション方法を発見できるかもしれません。
とはいえ、いざ予算を使ってコンテンツを作るとなると、実際の効果が気になるものです。バナーやリスティング広告のアトリビューションについて議論される機会は多くなってきましたが、記事広告のアトリビューションが話題に上ることは多くありません。
そこで今回は、“記事広告の貢献度”を可視化するため、数ある記事広告媒体のなかから、メディアジーンの運営する「GIZMODO」と「ライフハッカー」を見た消費者の購買行動を計測・分析を行いました。すると、
記事広告のリンクを経由した直接CV(21%)を、ビュースルーCV(71%)が上回る。
ことがわかりました。しかも、広告掲載から3か月後もビュースルーCVが伸びているのです。これは、コンバージョン直前のクリックだけを評価していては見えてこない事実であり、貢献度の評価にも影響します。記事広告によって消費者の購買行動にどのような変化があったのか、実際にある広告主が実施した「記事広告の購買貢献度」を効果測定した結果を紹介します。
記事広告が購買行動に与えた影響力を可視化する
まず検証に入る前に、今回の記事広告の目的を整理しておきましょう。目的は、中長期のブランディングや短期間での売上アップなどさまざまですが、施策の概要は次の通りです。
- 広告主:通信系企業
- 商材:通信サービス
- 目的:記事広告を通じて消費者に自社製品に興味を持ってもらい、購入(契約)へつなげる
- ゴール(コンバージョン):通信サービスの契約
- 広告媒体:GIZMODO、ライフハッカー
- 広告効果測定ツール:アドエビス(筆者所属のロックオンが提供して分析)
また、一言で「記事広告の貢献度」といっても、そもそも記事広告になじみのない方もいるでしょう。まず記事広告には、バナーやリスティングなどのインターネット広告と比較して、主に次の2つの特徴があります。
企業からの一方的な発信ではなく、第三者が消費者に向けて発信するため情報への信頼度が高い。
“読者にとってのメリット”が大前提の広告である。有益な情報源となる“読み物”として発信するため多彩なコミュニケーションが可能。エンゲージメントが高まりやすい(キャッチーな内容やクリエイティブな画像、動画など)。
つまり記事広告は「“自社の情報”を第三者目線で“媒体への信頼度の高いユーザー”に提供できる広告」だと言えます。では、記事広告が消費者購買行動にどんな影響を与えるのか、購買貢献度を詳しく分析していきましょう。
貢献度を測るための設計
実際に記事広告の貢献度を可視化するといっても、記事広告媒体、記事内容やライター、出稿のタイミングや期間など、さまざまな要因によって効果は確実に変わってきます。
今回は下記のような設計、条件下で計測を行いました(実はやってみると、記事広告の効果測定はそれほど難しいものではありません)。
計測の条件と設計
計測媒体・内容 | GIZMODO | 手軽さや低価格訴求など購買意欲を駆り立てるキャッチーな内容 |
---|---|---|
ライフハッカー | 機能面、料金面のメリットを最大限訴求。製品スペック紹介 | |
掲載日 | 第1回 | 2012.11.1 |
第2回(加筆した日) | 2012.12.1 | |
計測期間 | 2012年11月~2013年2月末 | |
計測方式 (1st Party cookie) | 記事ビュー | ピクセリングタグの埋め込み |
リンククリック | リダイレクト方式 |
では結果はどうだったのか、順番に紹介していきます。
ビュースルーCVはクリックスルーCVの4倍
まずは記事広告のCV貢献数について、計測値からわかったことをまとめます。すると、記事広告のリンクをクリックして、そのまま製品を直接購入した「クリックスルーCV」を、記事広告を読んでもリンクをクリックせず、後から別ルートを経由して製品を購入した「ビュースルーCV」が上回る結果となりました。
- 記事広告からのCVは、全体で586件獲得
- CVのうち21%(122件)は、記事広告のリンクをそのままクリックして購入したクリックスルーCV
- CVのうち79%(464件)は、記事広告を読んでもリンクをクリックせず、後から別ルートで製品を購入したビュースルーCV
- ライフハッカーの記事広告からのCVが、ややGIZMODOを上回った
- 全体2割のクリックスルーCVのCVRは、ライフハッカーが0.92%、GIZMODOが1.41%
上記結果から、記事中に設置したCVページへのリンククリック計測だけでは測れない、記事広告の“ビュー”貢献度が非常に高いことがわかります。
全体2割のクリックスルーCVは、記事広告内で紹介した商品へのニーズがすでに顕在化していたユーザーの刈り取り反応と見られます。一方、記事を見た後(平均して5日~9日後)に別ルートからCVに至る割合が8割にもなるため、記事広告内だけでは完結しないことが多く、アトリビューションの観点から、詳細な効果を可視化していく必要があることを示唆しています。
これは、広告経由で直接訪れたユーザーのCVだけに注目していては、見えてこない結果です。ビュースルーCVが見えていなければ、記事広告によるCV数は122件(本来は586件)しかないと、正しい評価ができなくなってしまいます。
- 記事広告からの全体CVは586件
- CVの比率は、クリックスルーCV(21%)をビュースルーCV(79%)が上回る
直接CVと間接CVの数値から見る各媒体の特徴
次に記事広告が消費者の行動にどのように影響を与えたのか、媒体ごとの特徴を分析しました。
メディアと読者層の違いから見えた媒体の特徴
- ライフハッカーと比較してCVまでの接触回数が少ない
- 間接2~4までで、全間接効果の約80%が発生(ライフハッカーでは65%)
- 平均潜伏期間がライフハッカーに比べ4割程度長い
- ビューの直接効果が全体CVの60%以上。クリックの直接効果は26%程度と少ない
- 全間接効果591件中、144件(約25%)がCVに至る6回以上前に接触(GIZMODOは12%)
- 平均潜伏期間はGIZMODOに比べて、ビューは4日、クリックは13日短い
今回は各媒体のサマリーデータから、次の2点に注目していきます。
- 間接貢献した際のCVまでの距離(間接2~5と以前)
- 各記事広告に接触したCVユーザーの潜伏期間
そうするとGIZMODOでは、接触した消費者の行動特徴として接触回数が少なく、検討期間は長いことから、紹介サービスに対する興味・関心を喚起させており、消費者が検討に向けて、情報を収集するきっかけとなったことが想定できます。
このような消費者行動となった要因は、GIZMODOの特徴でもある第三者目線でキャッチーな内容であったことから、製品に対する好感を接触時から持ってもらえたことが大きいと考えられます。
またライフハッカーでは、CVまでの接触回数が多いにもかかわらず平均潜伏期間が短くなっており、短期間でCVにつなげているところを見ると、読者は日常的・習慣的にライフハッカーに接触していることがわかります。また、決断のための情報量が担保されており、欲しいと思えば契約へのアクションを行うという消費者行動が想定できます。
これは、ライフハッカーでの「ライフハックのプロから見た製品スペック調査・紹介」といった内容が、購入を決断するうえで必要な製品への信頼につながり、それによって喚起された消費者行動だと言えるのではないでしょうか。
さらに記事広告から少し深堀をして、両媒体の貢献度を明らかにするために、全586件のCVフローを分析します。
- 記事接触からコンバージョンまでの期間は媒体特性や訴求内容で変化
2媒体の同時掲載によるアシストで21%の相乗効果
全体のCVフローのなかでも、赤枠で囲った部分に注目すると、GIZMODOとライフハッカー、それぞれが互いのメディアに消費者をアシストしていることがわかります。このことから、両媒体を同時出稿することで、21%の相乗効果が見込めることがわかります。
- 初回接触したCVは全体の39%(19+13+7)。うち32%がGIZMODE単一で完結
- 初回接触したユーザーの82%はその後ライフハッカーに流れず、単一もしくは他の流入経路からCVに至る
- 初回接触したCVは全体の61%(42+5+14)。その後GIZMODO記事を閲覧しCVしている割合が14%
- GIZMODOだけでは200時間以上かかる潜伏期間を130時間まで短縮
上記から、GIZMODOでは単一のメディアとしてユーザーを刈り取る能力が高く、ライフハッカーへのアシストは少ないことがわかります。一方、ライフハッカーは初回接触の刈り取り能力の高さに加えてGIZMODOへのアシスト効果も期待できます。
また両媒体での21%の相乗効果にも着目し、要因を記事広告の特徴に立ち返って仮説立ててみると、
- ライフハッカー:ライフハックのプロが調べた信頼できる製品情報
- GIZMODO:読者と変わらない1ユーザーが使用した際の手軽に利用できる様子と低価格訴求
という2種類の第三者視点情報を組み合わせたことで、高い製品スペック/低価格/実際の利用イメージが潜在、検討層読者にも伝わり高い相乗成果を生んでいるのだと考えられます。
- GIZMODOとライフハッカーの記事広告の間でアシストが発生
- アシスト効果によるコンバージョンは全体の21%
掲載から100日以降も、ビュースルーCVは継続的に増加
記事広告を長期間にわたって分析してみると、次のようなことがわかってきました。
- 初回記事公開後1週間で全体インプレッションの70%、公開2か月で94%を表示
- ビュースルーCVは11月が34件、2月が51件と継続的に効果向上
- 初回記事公開後1週間で全体インプレッションの43%、翌月も41%と大きな変化なし
- ビュースルーCVは11月が29件、2月が84件と公開後3か月経過後も約3倍の成果
GIZMODOでは12月の記事更新時にインプレッションが伸びなかったことを見ると、GIZMODO読者は新しい掲載情報へのアンテナが高いことが予想できます(記事内容によるため一概には判断できない)。一方、ライフハッカーでは、12月の記事更新時にも記事を閲覧したユーザーはじっくり興味を持っていたことが伺えます。
2媒体を合算してみると、1月以降の記事閲覧数は一定数を示していますが、CV数は「1月:日平均CV3.9回」「2月:日平均CV5.25回」と記事公開から数か月が経ってもさらに伸びを示しました。さらに深堀をすると、1月~2月で発生した269CVのうち、11月~12月で初めて記事に触れていたのが40件(15%)、それ以外は1月~2月に初めて記事に接触しCVに至っていました。つまり、
- 長期検討層であったユーザーにアプローチ後、1か月以上の潜伏を得てCVに貢献
- 公開後も継続的に検索エンジンを中心に記事に集客し、効果を持続した
上記2点のように長期的に消費者を支えることができる点が、他の広告施策にはない記事広告の特徴だと言えるでしょう。
- 記事広告は長期的に消費者の購買意欲を高めている(検索エンジンにより集客が可能)
ビュースルーCVとは正反対の効果!? 記事広告の「即効性」と「継続性」
それでは、ビュースルーの期間推移に対して、クリックスルーではどのような推移をたどるのでしょうか。同期間の推移を見てみたいと思います。各媒体の特徴は次の通りです。
- 初回記事公開後1週間ではクリックスルーCV35件(ライフハッカーのビュースルーCV以上)
- 初回記事公開後1週間ではクリック数が伸びず、クリックスルーCV32件。全体CVの5%程度(GIZMODOはCV90件/貢献度15%)
上記より、掲載後1週間を過ぎると記事広告のリンクから獲得できるクリックスルーCV数が減少し、ビュースルーCVとは逆の傾向にあることから、「即効性」と「継続性」の2面性を持ち合わせ、それぞれに有効的な点は、他の広告メニューにはない記事広告独自の強みだと言えるのではないでしょうか。
また、自社オウンドメディアとは異なる媒体力を持ったメディアへと掲載することで、メディアの読者(ファン)だけでなく、検索エンジンから継続して興味関心の高い消費者を集客できることも、強みだと言えるでしょう。
- クリックスルーCVは掲載1週間後から減少
- 記事広告は即効性と継続性、2つの特性を持ち合わせる
記事広告は短期・長期的エンゲージメントの向上が得意
今回の分析により、記事広告がもたらした貢献度をまとめてみます。
- 記事広告への接触時から消費者の製品・情報への信頼度を高めた
GIZMODO、ライフハッカーのクリック刈り取りとインプレッション減少後の効果継続
- 豊富な記事の表現力で好感を生んだ
GIZMODOでの使用イメージや手軽さの訴求、ライフハッカーでの製品スペック紹介
- 2媒体のメディアミックスで相乗効果をもたらした
CV全体のうち、2媒体をまたいだCVが21%
- 記事公開後も検索エンジンなどの集客により継続して効果を持続した
掲載から3か月後もビュースルーCV効果が伸びている
上記のようなステップで接触した消費者購買行動に影響を与え、ビュー・クリック合算で586件ものCVに貢献しました。
総括すると、記事広告は各媒体の特徴に合わせ、短期、長期的視点での顧客エンゲージメント向上を得意としたメニューであることがわかります。ただし、決して万能ではありません。記事内容や打ち出す商材を1つ間違えれば、独自の強みである“信頼”を失い最適なコミュニケーションがとれません。
記事広告を検討される際は、ユーザーにとって有益な情報を提供しながら、計測・管理体制を整え、効果の仮説とKPI設定を事前準備し、今回のように媒体効果を可視化してPDCAを回していくことが必要です。
今回の計測で、私たちは決して「ビュースルーCVが多い!」ということを示したかったわけではありません。必要なデータを正しく計測し、正しく評価し、最適なマーケティングを行っていただくことが目的です。
そういった意味では、今回は計測上の課題もありました。たとえば、クリックリンク設置条件などに微妙な差異があったり、取得できる情報が限られていたところから、他の施策との親和性を計測・可視化できなかった点も課題として残っています。
広告の持つ“効果”は購買行動への貢献度だけでなく、ユーザーに与える態度変容やブランディングなど広義にわたります。そういった意味でも、正しいマーケティングを行っていくために、これからは自社、媒体社、代理店、制作会社、ベンダーなどのマーケティングに関わる会社が一体となって、包括的な広い計測の視点をもち、広告効果を明らかにしていくことが必要です。
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オリジナル記事:メディア掲載のタイアップ広告のコンバージョン貢献度は? GIZMODO&ライフハッカーのコンテンツアトリビューションを徹底分析 [事例] | Web担当者Forum
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