Googleアナリティクスは、非常に高度な分析ができる無料のアクセス解析ツールだ。無料の反面、正式なサポートサービスというものがないため、ユーザーは自分で情報を集めなくてはならない。Web担当者にとっては結構な手間だ。そこで本連載では、Web担当者の負担を軽減すべく、導入から、運用、活用まで、初めての人でもゼロから学んでいけるように、丁寧に解説していく。
前回は「トラフィック」メニューの全般的な活用法を紹介した。今回は、「トラフィック」メニューの1つの要素である「検索エンジン」と、そこからの流入の明細である「キーワード(検索語)」に関するレポートを使って、サイトの改善活動につなげていくことができないかを見ていこう。
検索エンジンからの流入解析や、キーワード解析の基礎知識については、以前に「SEOには欠かせない「キーワード」解析のしくみ(第26回)」で取り上げた。
検索エンジンの流入において、
- 検索キーワードの情報が取得できる仕組み
- 「(not provided)」といった表示の意味
- 有料検索(検索連動型広告からの流入)との区別
- 「キーワード」と「検索クエリ」の言葉の違い
などについては、第26回の記事を参照してほしい。
検索エンジンからの流入は、メディアの表記が「organic」
[トラフィック]>[参照元]>[すべてのトラフィック]レポート(図1)では、「参照元/メディア」の組み合わせのディメンションが選択(図1赤枠部分)されている。これは前回も説明した。
- グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面の左側にあるメニューで、[トラフィック]をクリックする
- メニューが開くので、[参照元]をクリックし、[すべてのトラフィック]をクリックする
これらのうち、「メディア」の表記(「/」の右側)が「organic」となっているものが、検索エンジンからのトラフィックを意味している。図1で表示されている1位から7位までの範囲では、検索エンジンからの流入は、「google」と「yahoo」の2つ(図1青枠部分)が該当している。
では、なぜ検索エンジンとわかるのか? それは、あらかじめGoogle アナリティクスが、参照元のドメイン名と検索クエリー・パラメータの組み合わせ条件などから判定して、検索エンジンとしてリストアップしている一覧があり、それに照らし合わせて集計しているのだ。
当然このようなリストアップ形式には限界がある。世界中に日々生まれてくるであろう「検索エンジン」を網羅的に把握できるはずがないからだ。特に英語圏以外のローカル言語での検索エンジンなどのリストアップには時間がかかることが想像できる。
実際、日本ローカルの検索エンジンは、2012年2月になってやっと「BIGLOBE(biglobe)」や「楽天(rakuten)」、「goo(goo.ne)」が追加されたという状況だ。詳しくはアナリティクス日本版公式サイトの「オーガニック検索に 楽天、goo , BIGLOBE が加わりました」を参照してほしい。
計測しているサイトにもよるとは思うが、日本で多くのサイトは検索エンジンと言えば、YahooとGoogleからの流入が大半を占めているだろう。例として挙げた図1のサイトのデータでは、圧倒的にGoogle検索の割合が高い。一方、以下に例として挙げる図2のサイトのデータではYahoo!検索の割合が高いという違いがある。
Google検索の割合が高い場合は、ITやWeb業界の人が好んで利用するサイトであることが多く、Yahoo!検索の割合が高い場合は、ごく普通の消費財や一般的なテーマを扱った内容のサイトが多いといった特徴がある。まずはそんな自分のサイトの特徴を把握しておこう。
オーガニック検索と有料検索のボリュームをチェック
オーガニック検索も有料検索もデータの見方はほぼ同じだが、検索連動型広告(有料検索)を行っているのであれば、そのボリューム感と成果の違いをまず大雑把にチェックしておこう。
具体的には、まず[トラフィック]>[参照元]>[検索]>[サマリー]レポートを開き、「エクスプローラ」タブで「eコマース」(または「目標セット1」など)を選択(図3赤枠部分)する。
- グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面の左側にあるメニューで、[トラフィック]をクリックする
- メニューが開くので、[参照元]をクリックし、[すべてのトラフィック]をクリックする
- 「エクスプローラ」タブで「eコマース」(または「目標セット1」など)をクリックする
「eコマース」を選択した[トラフィック]>[参照元]>[検索]>[サマリー]レポート(図4)で、
- 「organic」(オーガニック検索、自然検索)
- 「paid」(有料検索、検索連動型広告)
の「訪問数」のボリュームや、「コンバージョン率」の違いを確認しておこう。
図4のデータでは、自然検索による流入(訪問数)の倍以上を検索連動型広告によって集客し、「eコマースのコンバージョン率」も相対的には悪くないように見える。ただし検索連動型広告は費用をかけて実施しているので、単純にこれだけ見て喜んでいられる状況かどうかは別問題だ。
私は検索連動型広告を運用したことはないので、細かいところでは利用する指標やその組み合わせなどは異なると思うが、ボリューム、集客の質、(コストを加味した)成果の軸で見ることは同様と考えてよいのではないだろうか。この見方は前回の記事を参考にしてほしい。
検索キーワード分析の基本レポート
それでは実際の検索キーワードが出てくる[トラフィック]>[参照元]>[検索]>[オーガニック検索]レポート(図5)を見ていこう。ディメンションは「キーワード」(図5赤枠部分)、つまり検索語別のデータを見ることができる。
- グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面の左側にあるメニューで、[トラフィック]をクリックする
- メニューが開くので、[参照元]をクリックし、[検索]、[オーガニック検索]を順にクリックする
デフォルトで選択されている指標グループは「利用状況」なので、「訪問数」(図5青枠部分)というボリュームと、訪問者の質を表す各種指標群(図5緑枠部分)が表示されている。成果の指標群を見たい場合は、いつものように「目標セット」や「eコマース」の指標群など(図3赤枠部分)にしてみて、各検索語の評価をしよう。
- 「検索エンジン」と「キーワード」をクロス集計してみよう
- 「セカンダリ ディメンション」を使ったクロス集計のしかた
- 「ピボット」を使ったクロス集計のしかた
「検索エンジン」と「キーワード」をクロス集計してみよう
前ページの図5ご覧いただいておわかりのように、デフォルト表示では、キーワードしか表示されていない。この一覧からは、それぞれのキーワードが、Yahoo!検索によるものなのか、Google検索によるものなのかは、わからない。
できれば、検索エンジンとのクロス集計で見た方がよいだろう。クロス集計する場合の選択肢としては次の2つがあり、それぞれ適している用途が異なる。
「セカンダリ ディメンション」を利用する―― 訪問者の質の指標群を複数比較したい場合に適している。
「ピボット」表示を利用する―― ボリュームだけを横並びで比較したい場合に適している。
それぞれの分析方法を解説していく。
「セカンダリ ディメンション」を使ったクロス集計のしかた
「セカンダリ ディメンション」を利用する場合は、一覧表の上部にある「セカンダリ ディメンション」のプルダウン(図6赤枠部分)をクリックし、出てきた表示の中から、トラフィックのグループ配下にある「参照元」(図6青枠部分)をクリックしよう。
ここでの「参照元」とは検索エンジンのことを意味する。そのため表示されるレポートは左から、
- 1列目が「キーワード」
- 2列目が「参照元」(検索エンジン)
になる(図7赤枠部分)。こうすれば同じキーワードでも、Yahoo!検索によるキーワードデータとGoogle検索によるキーワードデータが区別して表示される。
図7の場合で言えば、「twitter 利用者数 日本」というキーワードのデータが、yahoo検索によるものとgoogle検索によるものが、それぞれ2位と6位に分けて表示されていて(図7青枠部分)、ひと目で比較できるようになる。
一定の訪問数に絞って並び替えれば、より見やすく
しかし、このままだと、同じキーワードが隣接していないため、比較しにくい。キーワードで並び替えよう。ただキーワードで並び替えるだけだと、訪問数が1しかないスモールキーワードも混在してABC順に並び、使いにくいレポートになってしまうので、訪問数が一定以上のデータに絞ってから並び替えるなどの方法を取るのがよい。
図8赤枠部分の[アドバンス]ボタンをクリックし、たとえば「訪問数が5を超える」といった条件を指定(図8青枠部分)して[適用]ボタン(図8緑枠部分)をクリックしよう。
- [アドバンス]をクリックする
- 左から2番目のプルダウンの中から「利用状況」をクリックし、表示される指標から[訪問数]を選択する
- 左から3番目のプルダウンで[超える]を選択する
- 一番右の空欄に「5」と入力する
- [適用]をクリックする
その後「キーワード」ディメンション(図9赤枠部分)をクリックして並び替えたのが図9になる。
同じキーワードで、異なる検索エンジン同志が隣接して、各指標を上下で容易に比較できる。もちろんGoogle アナリティクスのレポート画面上でなくても、データを一括してダウンロードしてからエクセルなどで加工するのが現実的な場合もあろう。
また、この例では各キーワードの元々の訪問数が少ないので「5を超える訪問」という条件で絞り込んだが、実際は、訪問数10未満では、仮説を立てるデータとしてはボリュームが少なすぎる。分析対象にするデータの範囲を選択する際は、データの信頼度と、改善施策を行った場合の影響度をつねに念頭に置いておこう。
「ピボット」を使ったクロス集計のしかた
最後に「ピボット」を使った表示をしてみる。まず、図5(再掲)紫枠部分の[ピボット]表示ボタンをクリックしよう。
次に「ピボット」のプルダウン(図10赤枠部分)から、トラフィック配下にある「参照元」を選択する。
すると図11のような表示になる。
表側(ひょうそく)に「キーワード」(図11赤枠部分)、表頭(ひょうとう)に「検索エンジン」(図11青枠部分)が並んだマトリクス表で容易に一望できる。
図11緑枠部分をご覧いただきたい。「jeita タブレット 万台」というキーワードの訪問数を表示している欄であるが、google検索からの訪問数が19、yahoo検索からの訪問数が0と、大きなかたよりが見られる。このように、Google検索とYahoo!検索での訪問数が極めて偏っているキーワードをまず発見したい場合はこの方法が適している。
以上、説明してきたように、キーワードと検索エンジンをクロス集計するには、「セカンダリ ディメンションを使う方法」と、「ピボット」を使う方法がある。目的に応じて使い分けていただきたい。
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オリジナル記事:検索エンジンと流入キーワードをクロス集計するには? セカンダリディメンションやピボットを使った流入分析[第44回] [衣袋教授のGoogleアナリティクス入門講座] | Web担当者Forum
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