今回は、株式会社クロスリスティングにおいてデータ活用を推進する3名の方に、業界のこと、米国のこと、自社における取り組みなど、いろいろお話を伺いました。
中心人物である治田氏の熊キャラに対抗して、アトリちゃんも初登場です。
- 「アトリビューション」という言葉がひとり歩きしていて危険<br />それはアトリビューションとは呼ばないのでは? というものも
- 「アトリビューションに対応しました」はおかしい
- アトリビューションを単一の広告メディアの中だけで語ってはいけない
- アトリビューションは広告主のためにある
- オフラインのアトリビューションも盛んに
- 米国のアトリビューションは日本より進んでいるのか
- アトリビューションが単なるバズワードではなくなった
- いずれはコンバージョンした後のアプローチに力を入れる傾向に
- アトリビューションとEメール
- 検索ログは、顧客理解の宝の山
- アトリビューションを流行で終わらせてはいけない
(対談の本編へ)
有園 今回は、株式会社クロスリスティングの治田さん、岡野さん、石橋さんの3名をお迎えしてお話を伺います。最初に自己紹介をお願いします。
治田 治田です。私は19歳からこの業界にいます。最初は、ライコスジャパンというポータルサイトで検索クエリを見ながら、いわゆるディレクトリ検索を作っていました。その後、アイレップでサーチマーケティングのコンサルティングに携わった後、オーバーチュア(現在のYahooリスティング広告)へ移りました。オーバーチュアではプロダクトやツール開発に携わっていました。
有園 オーバーチュア時代からアトリビューションに携わっていたのですか?
治田 まだ当時はアトリビューションという言葉が定着していませんでしたが、概念としては近いことをしていました。
有園 間接効果測定が注目され始めた時代ですね。
治田 はい。オーバーチュアの後は、モバイルのショッピングサーチのベンチャー企業へ転職して日本以外の国のマネタイゼーションを1年ぐらいやった後、NTTレゾナントへ移り、現在はクロスリスティングに出向中という流れです。
有園 クロスリスティングでは何をやっていらっしゃるのですか?
治田 実は、アトリビューションが本業ではなく、アトリビューション的な視点をもって検索データを分析しています。
検索データを使った広告以外のマネタイズ手法の1つとして、データそのものに価値があると考えています。そのデータをどのように使うかというアウトプットの形がアトリビューション的なものだと解釈しています。
有園 19歳の頃からこの業界で活躍し、オーバーチュア時代に「アシスト」を日本へ導入したのが治田さんです。当時から、間接的、アトリビューション的な視点で考えていらっしゃったのですね。
有園 次は、岡野さん自己紹介お願いします。
岡野 岡野です。私は2011年9月からNTTレゾナントに在籍し、現在はクロスリスティングに出向しています。治田と同じような仕事を治田と分担しながらやっています。
具体的には、検索データを使った新規事業を開発しており、その1つとして分析サービスを立ち上げました。私は以前、NTTコミュニケーションズにいたのですが、そこではアフィリエイトサービスや音楽配信サイト、サッカー日本代表の動画が携帯で見られるサービスなどの立ち上げに携わっていました。
有園 マーケティングやウェブサイト制作などを経て、クロスリスティングでは検索データのサービス化を手がけているわけですね。
岡野 そうです。
有園 それでは、石橋さん自己紹介をお願いします。
石橋 石橋です。私は2008年にクロスリスティングに入社し、弊社が提供するパソコン向け検索連動型広告(リスティング広告)「レモーラリスティング(REMORA Listing)」の代理店向けキャンペーン運用のサポートをしておりました。2011年の夏頃からリスティング広告運用の猛特訓を3か月間受けまして、現在は検索ログデータを分析するチームにおります。
有園 猛特訓の内容も気になりますね。
石橋 極秘です(笑)検索ログデータの分析は2012年3月から始めています。
有園 実際に案件が入ってきたということは、検索ログデータを分析してほしいというニーズが増えていてビジネスになり始めているということでしょうか?
石橋 社内やグループ内での分析から始めていますが、現在は社外のお客さまからも引き合いをいただいています。
有園 ちなみに、クロスリスティング入社前はどのようなことをしていらっしゃったのですか?
石橋 コンピュータ系の商社で、データ入力専用マシーンのインストラクターをやっていました。
有園 データの取り扱いや活用に詳しそうですね。検索ログを調べる際「どのような視点で切り出すか」という仮説が描けないと、適切なアウトプットはできないと思います。膨大なデータを取り扱う上で、皆さんの前職での経験や培ったセンスが大変役に立っていそうですね。
「アトリビューション」という言葉がひとり歩きしていて危険
それはアトリビューションとは呼ばないのでは? というものも
有園 治田さんは、2011年10月4日にクロスリスティング、Fringe81、アタラの3社が共催したアトリビューションの専門イベント「Attribution Night 2011(アトリビューションナイト)」の発起人ですが、現在、日本で起きているアトリビューションの盛り上がりをどのようにお考えですか?
治田 アトリビューションという言葉がひとり歩きしていて危険だなと思っています。
有園 実は、私も同じように感じています。
治田 アトリビューション分析に携わっているという方と話をしても、みなさん言っていることがバラバラで、なかには「それはアトリビューションとは呼ばないのでは?」と指摘したくなる方もいたりして。
有園 どのような点を「それはアトリビューションとは呼ばないのでは?」と感じたのですか?
治田 端的に言うと「ビュースルーコンバージョンがクリックスルーコンバージョンの5倍でした。だからアトリビューション効果がありました
」みたいなことを言う人は、ちょっと違うのではと。
有園 なるほど。「ビュースルーコンバージョンの効果がクリックだけを見ているときよりもありました」と言われても、それは間接コンバージョンを数えていれば同じようなことが言えるということですね。
治田 そもそも「ビューをしてコンバージョンをした件数」と「クリックをしてコンバージョンした件数」は間違いなく前者のほうが多いものです。それを「アトリビューションをやったおかげだ」と言ってしまうのは、ちょっと違うのではないかと思います。
「アトリビューションに対応しました」はおかしい
有園 「コンバージョンパスデータを分析することがアトリビューション」だと思っている方がいらっしゃいます。コンバージョンパスデータをアウトプットできるようになったサービスを「アトリビューションに対応しまし
た」と書いているプレスリリースもよく見かけます。
治田 ありますね。
有園 「アトリビューション」という言葉を使いたんだと思いますが、それはアトリビューションとは違うのでは? と思っています。
治田 そもそも、アトリビューションは対応するものではないですよ。
有園 おっしゃるとおりですね。
治田 「APIに対応しました」「無線LANに対応しました」と言うのとは違います。「アトリビューション」という言葉を使えば注目される、取り上げられやすくなる、と思っているような気がします。
有園 アトリビューションがきちんと浸透していないことが、このような状況になった原因の1つだと私は思います。治田さんはアトリビューションをどのように認識していますか?
アトリビューションを単一の広告メディアの中だけで語ってはいけない
治田 難しいですね。忘れてはいけないのが「アトリビューションを単一の広告メディアの中だけで語ってはいけない」ということです。だから、先ほどの「ビュースルーコンバージョンがクリックスルーコンバージョンの5倍ありました
」という話はアトリビューションではないのです。必要に応じて複数ユーザーのタッチポイントを可視化するべきで、それをどのように活用するかがアトリビューションには含まれていなければなりません。具体的なやり方は業種によってさまざまだと思いますが、その観点が含まれていてこそアトリビューションだと考えています。
有園 オンラインの場合は、1人のユーザーが複数のタッチポイントに触れてコンバージョンした際、それぞれのタッチポイントがどのように貢献したのかをきちんと分析すること。それが、アトリビューション分析の基本かなと思っています。
その後に、配分やクリエイティブの話になります。一般的に、初回、中間、ラストなどと言いますが、それぞれに対してどのようなクリエイティブをあてていくのか、コミュニケーション設計を含めて最適化していくのがアトリビューション・マネジメントだと思います。
コンバージョンのパスデータを使った分析から得たものを有効活用するのがアトリビューション・マネジメントなのに、その手前の経路データを出すことをアトリビューションだと表現している日本のツールベンダーが結構、多いですよね。
アトリビューションは広告主のためにある
治田 そうですね。私が一番危惧しているのは、「アトリビューション」という言葉が広告媒体側に都合の良いように解釈されて広がっていくことです。
「コンバージョンする広告」が売れるのは当たり前ですが、現状はコンバージョンする広告が少ない。広告媒体側が「うちの媒体はビュー効果があります」という文脈でアトリビューションを語ることに危機感を覚えています。
アトリビューションは広告媒体側の評価を助けるものではないと声を大にして言いたいです。
有園 なるほど。分析しても、広告主のマーケティング効果を最大化することに役立っていなければ本質的には意味がないですね。
治田 そうです。アトリビューション分析をやった結果、本当に価値のない媒体やメディアが判別できるようになります。
有園 広告主側にとっては、媒体をふるいにかけるといった良い意味での新陳代謝が起きますね。価値のある媒体がわかると、媒体選びから施策までを適切に行えるようになります。たとえば、日経BP社であればBtoBのお客さんと相性が良いですし、Yahoo! JAPANは一般コンシューマー系の検索ボリュームがあるのでBtoCに強いといった区別ができたり。
治田 媒体側は、ウェブサイトのコンテクストと広告主のコンテクストを合わせることが必要ですね。
有園 アトリビューションは広告主のものであり、複数のタッチポイントを分析して貢献度を割り出していくこと。オンラインだけの分析であっても、オフラインを含んでいるケースでも、分析手法は異なるでしょうけれども考え方は同じでしょうね。
治田 そうですね。
- オフラインのアトリビューションも盛んに
- 米国のアトリビューションは日本より進んでいるのか
- アトリビューションが単なるバズワードではなくなった
- いずれはコンバージョンした後のアプローチに力を入れる傾向に
- アトリビューションとEメール
- 検索ログは、顧客理解の宝の山
- アトリビューションを流行で終わらせてはいけない
オフラインのアトリビューションも盛んに
有園 2012年に入ってから日本でも、オフラインを含めたアトリビューションのニーズが増えています。米国では、Market ShareやVisual IQなど複数のアトリビューションベンダー企業がオフラインでのアトリビューションについて語り始めています。
オンラインの場合はコンバージョンに至る経路を分析するのが主流です。しかし、オフラインを含めたものは数理統計的な相関分析や確率論のベイズ統計を使ったモデル化なので、伝統的なメディアミックスモデリングなどと手法は本質的には変わりません。
治田 扱えるデータが増え、深さが変わりましたね。
有園 CRMと連動して、店頭の販売とテレビ、そしてオンラインのデータを結びつけ、仮想のシングルソースのような状態のデータベースを作り上げて分析できるようになりました。技術的にオフラインを含めたアトリビューションができるようになりました。
治田 そうですね。
米国のアトリビューションは日本より進んでいるのか
有園 そこで気になるのが、米国のアトリビューションはどのような状況にあるのか、ということです。
治田 日本よりも米国のほうが技術的にも先をいっていますが、それは想定の範囲内です。米国は、アルゴリズミックやオートメーションの部分が進んでいます。でも、日本とまったく違うわけではないので大差は感じません。
有園 治田さんはad:techサンフランシスコへ行かれたそうですが、何か発見はありましたか?
治田 「自分の考えていることは間違っていない」ことを再認識できたのが一番の収穫です。
有園 なるほど。
治田 米国のほうが進んでいる部分は沢山ありますが、進んでいる部分も自分のベクトル上にあり、しかも距離は離れていないと感じました。
有園 たとえば、動画配信の効果分析について何かありましたか?
治田 実は、私も米国へ行く前はリッチメディアの解析や効果分析の話を楽しみにしていたのですが、残念ながらその辺の話はまったく出ませんでした。そこが意外というか、日本が米国に先行できる部分かなと思いました。
アトリビューションが単なるバズワードではなくなった
治田 米国の話でいうと、アトリビューションのコンサルティング会社の存在感が増していたことも印象的でした。AdometryやEncore Mediaなどのアトリビューションコンサルティング企業が登壇するときの司会の紹介が「いまやホットトピックになったアトリビューションのエキスパートの方々に登壇していただきます。どうぞ
」といった表現でした。専門分野としての知見が求められていると感じました。
有園 アトリビューションが単なるバズワードではなくなったということですか?
治田 間違いないです。2011年8月にSESへ行ったとき、Googleアナリティクスのコーナーで「Multi Channel Funnels」(マルチ・チャンネル・ファンネル)という機能が紹介されました。いわゆる接触チャネルを分析できる機能です。それを世間はアトリビューションだと言い始めたんです。そのときに「アトリビューションってどうやるんだろう」「これ、流行るのかな?」という状況になったわけです。
有園 いわゆる、きっかけですね。
治田 そうした「エマージング(新しく出てきた話題)」の状態だったアトリビューションが、今や「ホットトピック(注目の話題)」になったと感じています。ここから「ポピュラー(人気の話題)」になって、最終的にメジャーの階段を上れるかは今後次第だと思います。
いずれはコンバージョンした後のアプローチに力を入れる傾向に
有園 キャンペーンマネジメントのプラットフォームとして第三者配信を考えてもらうときに必要な要素の1つとして、CRMとの連携があると思います。その辺のデータ連携の盛り上がりはいかがでしたか?
治田 アトリビューションという言葉が一番多く出てきたセッションはEメールでした。刈り取ったお客さまの購買データなどの情報でセグメントして分析し、カスタマーのライフタイムバリュー(LTV:生涯価値)を上げる方法を考えると、効果があるのがメールであると。
カスタマーをよりマーケティド(Marketed)なカスタマーにするには、どのようなアトリビューションを行うべきかという文脈が非常に多かったです。
有園 マーケティド(Marketed)というのは、具体的にどのようなことを示すのですか?
治田 マーケティング(Marketing)という言葉はマーケット(Market)の進行形です。つまり、お客さんを自分の市場に招き入れるというイメージです。その後、招き入れてコンバージョンしたお客さんに対してライフタイムバリューを上げる施策が「マーケティド(Marketed)」です。マーケティド(Marketed)する人を、マーケティドカスタマー(Marketed Customer)と呼ぶように定着しないかなと密かに思っています。
有園 ナーチャリングみたいなことですね。
治田 そうです。以前、有園さんがおっしゃっていた顧客育成、顧客教育に近いですね。コンバージョンした後にそういった動きが必要であるという考えです。いずれはコンバージョンした後のアプローチに力をいれる傾向になると思います。実際、米国ではそういった傾向が見え始めています。
アトリビューションとEメール
有園 ライフタイムバリューを上げるために、より顧客をマーケティド(Marketed)するために、アトリビューションの貢献度を考えた施策が始まっているわけですね。先ほどのメールのセッションの例は、具体的にどのような話ですか?
治田 2011年か2010年に、ユナイテッドエアラインがコンチネンタルを買収し、マイレージプログラムを統合することになりました。そもそも、この2社はユーザー属性が違うので、これを機会にユーザーを徹底的にセグメントすることになったのです。
そこで、各ジャンルに分類して、それぞれに適切なEメールの文章、コンテンツ、配信タイミングでメールを送ったところ、従来の費用対効果と比較して9倍以上の改善が見られたという事例がありました。
有園 興味深いですね。
治田 DSPの解説でCRMリターゲティングという言葉も出ていました。
有園 最近では、メールでのアプローチを最適化する事業を行っている企業がCRMデータや配信技術と連携することによって、さまざまなパターンでのアプローチをしていると聞きます。
ユーザーがバナー広告経由でウェブサイトを訪れても、コンバージョンした場合とコンバージョンしなかった場合で、アプローチは違います。リターゲティングで追い、資料請求をした方にはそれ用のメールを送る。
・マーケティド(Marketed)したお客さん向け
・マーケティド(Marketed)しそうなお客さん向け
・マーケティド(Marketed)しそうにないお客さん向け
と、アプローチを分ける時代になってきました。
治田 そうですね。たとえば、商材Aに興味のあるユーザーがいるとします。その人にとっては、商材Aと関連性のある内容を扱うウェブサイトで商材Aの広告を見た場合と、商材Aと関連性がないウェブサイトで商材Aの広告を見た場合では、見え方が違います。もちろん、前者(関連性のあるサイトでの広告接触)のほうが良いです。
だから、この2つのウェブサイトでの広告接触を同じ1ビューとカウントするのはどうかと思います。違うものとして考えるべきです。米国ではその辺は重要視されていますね。
- 検索ログは、顧客理解の宝の山
- アトリビューションを流行で終わらせてはいけない
検索ログは、顧客理解の宝の山
有園 話は変わりますが、私はお客さんからこんな質問を受けます。
コンバージョンした後は検索行動も変わるのですか?
たとえば、住宅メーカーさんだと、実際に住宅を購入した後と前とではその住宅メーカーのウェブサイト上での行動パターンが異なりますよね。それと同じように、住宅購入以前と以後では検索行動も異なるのではないかと。だとすると、そうしたデータを有効活用してターゲティングできないかということです。
クロスリスティングでは検索ログデータを分析していますが、具体的にどのような分析をしているのでしょうか?
クロスリスティングは、多数の国内ポータルサイトにおいて検索連動型広告を提供しており、現在保有するログデータを活用した分析サービスを展開している。
石橋 検索ログ分析サービスの説明をクライアントさんにする際、次のように話します。
有園 A(Attention)、I(Interest)、S(Search)、A(Action)、S(Share)のすべてに、検索は関わってくるということですね。
石橋 そうです。クロスリスティングでは、ユニークユーザーの行動を時系列で追えるので、ユーザーがどのようなキーワードをどのようなタイミングで検索しているかがわかります。そのログデータをもとに、より良いアプローチ方法を模索したり、ユーザーの悩みやウェブサイトの抱える問題を解析して解決策を考えたり、広告の影響度を調べてアトリビューションの重み付けに役立てたりしています。
有園 最近の発見はありますか?
石橋 検索ログからはユーザーの行動をいろいろな面から見られるので、消費行動のデータマイニングの一環として分析でき、一般的なマーケティングとは異なる手法がとれます。たとえば検索ログ分析から、ユーザーの行動を把握すると、ユーザーがコンバージョンする場所が見えてきます。そうすると、あとはコンバージョンする場所へ導くアプローチを考えるだけです。
有園 なるほど。いろいろなデータを分析してデータマイニングを行っているわけですね。岡野さんはどのようなことをやっていらっしゃいますか?
岡野 検索ログを使って広告の効果を測定したり広告を改善したりするだけでなく、マーケティング全般にも広く使える分析サービスの企画をしています。
有園 具体的にどのような使い方をしているのですか?
岡野 新しいサービスを立ち上げる案件の場合は、市場調査の観点でマクロから検索傾向を分析します。
また、会員制サービスを提供している場合では、ミクロで会員一人ひとりの検索ログから検索傾向を分析します。検索ログを使えばかなり広い解析ができますし、退会の可能性なども把握することができます。
有園 携帯電話で例えると、auの携帯電話を使っているお客さんがソフトバンクに関するキーワードを検索し出したら、auを解約してソフトバンクに乗り換えてしまう可能性があるということですね?
岡野 そのとおりです。現在も会員の方とすでに解約した方のデータに絞り込んで、それぞれの傾向を分析して比較すれば対策も練りやすくなります。
有園 実際にやってみていかがですか?
岡野 まだノウハウを溜めている段階ですが、あるサービスを解約した方は、解約する前に競合他社のサービス名で頻繁に検索をする傾向があります。品質や価格とのアンド検索をする方も多いです。検索ログを見れば解約理由まで把握できるようになっています。
有園 ユーザーの傾向を把握して問題が把握できれば、そこに最適なアプローチをすることで解約を回避できるかもしれないということですね。
岡野 そういうことです。
有園 すでに、そのようなサービスは他にもあるんですか?
治田 ヤフーやグーグルはやろうと思えばできると思いますが、今のところはやっていないですね。
有園 検索ログデータの分析でもコンバージョン後の検索行動に着目しているということで、アトリビューションが単なるメディアプランニングの最適化から、マーケティド(Marketed)するためにメールや検索ログデータを活用してモデル化する段階に入ってきたことを感じます。
アトリビューションを流行で終わらせてはいけない
有園 まだまだ深くお伺いしたいテーマなのですが、時間がなくなってきました。最後に、それぞれ、メッセージをお願いできますでしょうか。
治田 結局はマーケティングであるということです。「アトリビューション」という言葉が注目を集め、「画期的なサービスである」「最先端なツールである」と騒がれています。でも実際には、アトリビューションは、昔からある考え方の1つでしかなく、可視化できる1つの方法論としてアトリビューションが存在していると思っています。本質的には、やって当たり前なことであって、概念としてはさほど新しいものではありません。だから、「これはすごい」「きますよ!」とか言われることに違和感と危惧を覚えます。このままでは単なるブームで終わってしまうのではないかと心配しています。
岡野 私からは、最後に検索ログを使う3つのメリットを紹介します。
- 検索ログには、具体的で詳細な消費者のインサイトが入力されている。
- 検索ログからは、自社と接点がない部分の情報が得られる。
- 検索ログは、ほとんどフィルターがかかっていない人たちが分析の対象である。
非常にリアルでおもしろいデータです。メリットの多い検索ログをぜひ活用していただければと思います。
有園 ありがとうございます。では石橋さんお願いします。
石橋 以前、有園さんがどこかで「すばらしいマーケティングプランを練っても、商品やウェブサイトに問題があれば意味がない
」とおっしゃっていましたが、まさにその部分が重要だと思っています。商品やウェブサイトの抱える問題が検索ログを見ることによって浮き彫りになります。マーケティングプランを練る前に、検索ログをチェックしていただきたいです。
有園 Twitterやブログなどで語られている自社のサービスや商品の問題、お客様の声を拾いましょうという話があります。検索ログを見れば、検索行動に現れる消費者の声がリアルに把握できますね。
石橋 ソーシャルメディアでの情報発信は人に見られる前提でおこなっているため、ある意味ではセーブされた表現のはずです。それに対して、検索をするときに他人の目は気にしません。ですから、検索ログのほうがより本音に近い生身の声だと思います。
有園 おもしろい視点ですね。治田さん、岡野さん、石橋さん、ありがとうございました。
【アトリちゃんの視点】
「アトリビューション」という言葉や定義の一人歩き現象はよく耳にするようになりました。新しい取り組みによくある現象ですが、きちんと理解したうえで使われるように働きかけていきたいですね。
「マーケティド(Marketed)」の考え方は興味深いですね。顧客育成するための中間施策/KPIについてもよく語られるようになったので、自然な流れなのかもしれません。
それにしても、検索ログに触れたことがある身としては、クロスリスティングさんの検索ログデータ、ものすごくインサイトが豊富だと理解できますし、何と言っても見てみたいですね~。
治田さん、岡野さん、石橋さん、ありがとうございました!
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オリジナル記事:「アトリビューション」という言葉がひとり歩きしているのでは? クロスリスティング×アタラ有園氏 対談 [Attribution.jp分室] | Web担当者Forum
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