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「悪のSEO」に泣かないために~SEO業界の実情&裏事情と現実的な取り組み/辻 正浩氏 [【レポート】Web担当者Forum ミーティング2012 Autumn] | Web担当者Forum

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【レポート】Web担当者Forum ミーティング2012 Autumn

セミナーイベント「Web担当者Forum ミーティング2012 Autumn」(2012年11月8日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。

2012年以降、日本のGoogleの検索エンジンスパム対策が本格化し、小手先のSEOは通用しなくなっている。ブラック/ホワイトハットSEOが入り混じり、激変期にある日本のSEO業界において、Web担当者はどのようにSEOに取り組むべきなのか。日本で数少ない、フリーのSEOコンサルタントとして活躍する辻氏が、フリーだからこそ語れるSEO業界の「いま」について包み隠すことなく語った、Web担当者Forumミーティングの講演をレポートする。

ノウハウがなくても成果を上げられた日本のSEO

辻 正浩氏
フリーランス
Search Engine Optimizer
辻 正浩氏

基調講演に登壇したのは、SEM専業代理店アイレップなどを経て独立し、フリーランスのSEOコンサルタントとして活躍する辻正浩氏だ。現在は大規模サイトや中小ECサイトなど数十サイトをサポートし、ハウツーサイトとして急成長している「nanapi」のSEOを手がけていることでも知られている。

新規の仕事は引き受けていないので、きょうはSEO業界の現状を、完全にポジショントークなしでお話しします。どうか空気を読んだシェアをお願いします。

このように切り出した辻氏の講演を、本レポートでは全力でシェアしていきたい。

辻氏はまず、SEO会社には、大別して「ホワイトハットSEO」「ブラックハットSEO」の2種類があることを説明した。ご存じの方が多いだろうが、あらためて紹介すると次の通りだ。

  • ホワイトハットSEO
    検索エンジンのガイドラインに従って、Webサイトを正しく評価させるSEO手法
  • ブラックハットSEO
    検索エンジンの仕様の穴を突いて、本来以上の価値を評価させるSEO手法

この2つのSEO手法のうち、日本でメインストリームだったのは後者のブラックハットSEOだ。簡単に言えば、人工リンクを大量に張り、特定のキーワードで検索された場合の検索順位を上昇させる手法になる。もちろんブラックといっても、検索エンジンが認めていないだけで、法律に反する行為ではない。SEOを堅実に積み重ねていく必要があるホワイトハットSEOに対し、ブラックハットSEOはWebサイトを大きく変更する必要がなく、比較的短期間で効果が現れる。手っ取り早くトラフィックを集めたい企業にとっても魅力的なサービスの1つだった。

このような人工リンク中心のSEOが日本で急増した要因の1つとして、検索エンジンのスパム対策が欧米に比べ遅れていたことが挙げられる。当時は検索エンジンを簡単にだますことが可能で、ノウハウがなくても利益を上げられる状況であり、2006年から2007年ごろにかけて人工リンク中心のSEO会社が急増することになった。なかにはYahoo!検索でしか成果を上げられないSEO事業者もいたが、2010年にYahoo!検索がGoogleの検索エンジンを採用したことで、淘汰されつつあるという。

人工リンクはSEOにマイナス、解除できずドメインを捨て去るケースも

そして今、人工リンクに頼ったブラックハットSEOは、「極めてリスクの高い手法になりつつある」と辻氏は断言する。2012年以降、日本のGoogleでも人工リンク対策が本格化したからだ。結果として、「SEO会社から人工リンクを購入しても、検索順位は変わらなかったり、逆に下がってしまったりするケースが多発している」と辻氏は明かす。さらにやっかいなのは、そのようなペナルティを受けた「あと」の状況なのだという。

順位が下がったのなら、人工リンクを外してもらえばいいと思うかもしれません。しかし、SEO会社は人工リンクのために少なくとも1000、多ければ数十万ほどのサイトを運用しています。あまりにも数が多すぎて管理できない会社もあり、リンクを外したくても簡単に外すことができないのです。

このため人工リンク解除のためにSEO会社に大金を支払ったケースや、人工リンクを外すことを断念し、一社が1つしか登録できない“co.jpドメイン”を捨てざるを得なくなったケースまで発生しています。

ひどいことには、検索順位を下げる目的で競合サイトに質の悪い人工リンクを張る会社まで出てきているのです。

なかには裁判にまで発展するケースもあり、今年に入り、辻氏のもとには弁護士からの問い合わせが増えているという。

辻氏は、現在の日本のSEO業界を「過去最大の激変期」と表現する。この激変期において、リスクを回避しつつ成果を出せるブラックハットのSEO会社は、高度なノウハウ・技術レベルを持つ会社に限られつつあると辻氏は説明する。一方で、ホワイトハットSEOならば安心というわけでもない

なかにはホワイトというより、無色透明のレベルでノウハウをまったく持っていない会社も存在します。1~2年の経験しか持たないため、効果にならない提案や実現が難しい施策ばかり提案するような会社です。また表向きはホワイトハットを名乗りつつ、やっている施策を調べると、実は真っ黒なブラックハットSEOだったというケースもあります。

どういったタイプのSEO会社が存在するのか、このあたりの詳しい事情はWeb担当者Forumの記事「SEO屋をホワイトからブラックまで7分類してみた」を参照してほしいと辻氏は話す。2012年末現在、ブラックハットSEOが困難になったことから、ホワイトハットへと切り替えるSEO会社も増えてきてはいるが、十分なノウハウを備えたSEO会社はわずかしかいないのが日本の現状だという。

ブラックハットSEOとホワイトハットSEOの7分類

環境が変化した現在、人工リンク販売といううまみのあるビジネスモデルは崩壊しつつある。利益を維持するために、詐欺まがいのダークサイドな行為に手を染めるSEO会社が出現するのは、避けられない事象だと言える。そうした「悪のSEO」に泣かされないために、Web担当者は何をすべきか。辻氏はセッションの後半で、Web担当者がSEO以前に考えるべきポイントを示していく。

参照元を確認すれば、リンクを1.2倍増やす施策が見えてくる

悪質なSEO会社が出現するなかで、Web担当者はどのようにSEOと付き合っていくべきか。そのことを考える前提として辻氏は、SEOには「掛け算」「足し算」「100%」という3つの目標パターンがあり、それぞれの特徴と施策の違いを意識することが大切だと強調した。

  • 掛け算の目標

    「Webサイトの現状の評価を1.X倍にする」といった目標パターン。テンプレートの改修や内部リンク構造の改善などによって達成するものであり、SEO会社やインハウスのSEO担当部署が施策を立案・実行する。

  • 足し算の目標

    こつこつとサイトの価値をプラスしていく、「Webサイトの魅力を、+1、+2と少しずつ増やしていく」という目標パターン。自然と外部リンクを得られるようなコンテンツを追加していくなど、主にWeb担当者が中心となって施策を行う。

  • 100%の目標

    検索エンジンから正当に評価を得られるようにすること、「Webサイト本来の力を100%発揮させる」という目標パターン。検索エンジンのガイドラインにHTMLを最適化するなど、発注側の理解のもと、Web制作会社が施策の実行役を担う。

この3パターンのSEOのうち、最優先で取り組むべきなのは「足し算」と「100%」だと、辻氏は力説する。

本来は100の力があるのに、検索エンジンからは50しか評価されていないサイトがあったとします。そうしたサイトを掛け算で1.5倍にしても、75の価値にしかなりません。しかし100の評価をきちんと受けているサイトであれば、掛け算で150に引き上げることができる。

「掛け算」にはSEO専門家の力が必要だと思いますが、残りの2つ「足し算」と「100%」にはSEO専門家は必要ない。後からできる「掛け算」よりも、「足し算」と「100%」を先にやっておくべきだというのが、私の考えです。

辻 正浩氏

本来、初めからSEOを配慮したWeb制作・更新を行うのが望ましいのは当然だが、ノウハウを持たず外注もできないのであれば、掛け算を目指すSEO施策は保留にするべきだと語った。

一方、「100%」を達成するには、SEOをある程度把握した良いWeb制作会社をパートナーとして選定することがポイントになる。そして良い制作会社を見分けるには、やはり成果を尋ねることが大事だという。「リニューアルを手がけたあと、検索流入はどう変化したのか。まずそこを確認すべき」だと辻氏はアドバイスする。

「足し算」の目標を達成するための施策としては、コンテンツの力によって外部サイトからリンクを獲得していくことが王道になる。通常、Web制作会社はこのような外部リンク対策は行わないため、Web担当者が率先して施策を講じる必要がある。このように説明したうえで辻氏は、会場に対して次のような質問を投げかけた。

自社のWebサイトで、被リンク数トップ5のページを把握している方はいらっしゃいますか。またそれらのリンクが、どのような意図で張られているかを確認したことはありますか。

被リンク数1位はトップページだろうが、2~5番目を把握しているWeb担当者は少ない。そして、それらのリンクの意図まで知っている担当者となると、さらに少数になる。こう指摘したうえで、辻氏は次のように説明する。

リンクは重要だからと購入までするのに、すでに張られているリンクには目を向けない。これは非常にもったいないことだと思います。リンクの張りやすさを1.2倍高める施策を実行し続ければ、リンクを買わなくても十分に勝てるサイトになるのです。

外部リンクを得るためのヒントは、アクセスログの流入数上位ページの参照元にある。どのような意図でリンクが張られているのかを深く考えることで、コンテンツの価値を高める手がかりが見えてくるのだ。

たとえば、サービスのページに対して、たくさんのリンクが張られていたとする。そのようなときは、サービスの何に興味が持たれているのかを突き止め、そのポイントを掘り下げて紹介するページをつくれば、よりリンクが張られやすくなるだろう。

また、通常の記事が多くの被リンクを得ているのであれば、関連テーマの記事を増やしていけば、さらに多くのリンクを獲得できる可能性がある。記事の3ページ目の内容が多くのリンクを集めているのであれば、その記事を1ページ目にもってきて、タイトルに3ページ目の内容を反映するだけでも、得られるリンク数は変わってくる。

このような施策はすべて、リンク元の確認作業が出発点となる。「短期間で効果が出るわけではありません。しかしSEOに取り組む際には、今、放置している部分を見直し、生かしていくことを、一番にお勧めしたい」と、辻氏はアドバイスをした。

良心的なブラックハットSEOを見分ける3つの質問

前述のように、SEOの専門家に依頼する前に行えることはあるというのが辻氏の持論だ。ただし、より多くの成果を求める場合、たとえば、早期に検索エンジンからの流入を上げたい、目標達成のためにより大きな効果が必要という場合にはSEOの専門家に依頼する必要が出てくる。

では現在、SEO会社選ぶときのチェックポイントはどのような点にあるのか。辻氏は「良いサービスを提供しているSEO会社もあるが、あまりに比率が少ない」「過渡期の現状で、SEO会社を選ぶのは極めて困難」と前置きをしつつ、ホワイトハットSEOと、ブラックハットSEOに分けて説明した。

まず「過去、Googleに再審査リクエストを一度でも送っているサイト」や「大きなリスクを許容できないサイト」は、ホワイトハットのSEO会社を選ぶべきだと辻氏は言う。検索エンジンのガイドラインに従っているかぎり、致命的なペナルティを受けることはないからだ。その際のチェックポイントは、次の2点になる。

  • 大規模なサイトの修正をともなう場合が多いので、実現可能かどうかを確認すること
  • 営業担当ではなく実務担当者に会い、信用できる人物かどうかを確認すること

さらに仕様書のサンプルを見せてもらい、きちんと理解できるかどうかを確認することも判断の基準になる。理解できない仕様書だった場合は、その会社はNGだ。

Webサイトの修正が難しい場合には、方針を考え直すか、良心的で技術の高いブラックハット色も合わせ持つSEO会社を探さなければならない。このときのポイントは「リスクの管理を行うこと」と「SEOの質問はせず、実務の質問を行うこと」だという。具体的には次の3つの質問を、SEO会社に投げてみることを、辻氏は勧める。

  1. お願いしたらリンクは無料で外してくれるか。そのことを契約書に入れてくれるのか。
  2. 顧客のサイトがGoogleから警告を受けたことはあるか。その後、どうしたか。
  3. いつごろ順位が上がるか。上がらなかった場合、あきらめて契約終了すべき時はいつか。

SEO会社の回答をどう受け止めればよいのか。まず(1)でNGという回答だった場合は問題外であり、「全力で逃げるべき」だと辻氏は断言する。

(2)は「ブラックハットのSEO会社が警告を受けたことがないと回答した場合は、うそをついているか、よほど経験がないかのどちらかであり、信用できない」ということだ。そしてGoogleからの警告を受けると、その段階で契約が終了になる会社と、元の状態に戻るまでサポートしてくれる会社があるという。「リスクを踏まえると後者を選択すべき」だと辻氏は言う。

そして(3)については、「ブラックハットSEOの成功率がどんどん下がってきている以上、“損切り”のタイミングをあらかじめ決めておく必要がある」と辻氏は説明する。SEO会社が提示した成果の期日が長すぎたりした場合は、やはり契約すべきではないそうだ。

最後に辻氏は、「ポジショントークはしない」という“公約”通り、次のような率直なアドバイスをして、講演を締め括った。

辻 正浩氏

SEO業界にいる者が、このようなことを話すのは心苦しいのですが、激変期で信頼できる会社に会える可能性が低い今は、SEO以外のことに注力するのに一番いいタイミングです。今、サイトの価値を高めておけば、状況が落ち着いてSEOを行った段階で、さらに価値を高めることができるからです。

どうしてもSEOを発注するのであれば、Webであれこれ調べるのは無駄です。SEOに関係がないWeb業界の人、良いWeb制作会社や交流会などでWeb担当者の方に話を聞いてみてください。

【取材・執筆】
モジカ(mojica)
担当:鶴田修朗

講演・セミナー、インタビュー・対談、その他の音声・動画情報をテキストコンテンツ化し、オウンドメディアやコンテンツマーケティングの素材として提供している。

http://www.mojica.jp/

【撮影】
株式会社Lab
鹿野宏

http://www.hellolab.com/

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