「コンテンツマーケティング」という言葉を耳にする機会が増えてきた方も多いのではないでしょうか? コンテンツマーケティングとは、米国で10年ほど前から研究されている比較的新しいマーケティングコミュニケーションの考え方です。
日本でもブログなどで取り上げられる機会が多くなってきたのですが、この考え方がカバーする範囲があまりに広いため、あるときはSEO的視点、あるときはリードナーチャリング的視点、またあるときはインバウンドマーケティング的視点といったように、部分的に語られることが多いようです。
もちろんそれらはすべて正しい見方ですし、さまざまな視点や捉え方が増えていくことで、さらにコンテンツマーケティングが発展していくと考えていますが、この記事では、その原点について再確認しながら整理していきます。
あなたのコンテンツは王様ですか?
ここでいう「コンテンツ」とは、商品・サービスやその関連情報を意味します。コンテンツマーケティングを言い換えるならば、「コンテンツによるマーケティング」、つまり商品・サービス及びその関連情報によってマーケティングコミュニケーションを行うことを意味します。
「そんなこと当たり前だ」と思われた方も多いかもしれません。しかし、たとえばあなたがWebサイトの運用を任されていたとします。そんなとき、こんな風に考えることはないでしょうか?
次回の更新時にどんなコンテンツを入れようか?ここの空きスペース埋めるコンテンツないかな?
このように、Webサイト運営を主体にしてコンテンツを考えてしまうことは多々あるのではないでしょうか。本来であれば、伝えたいコンテンツが先にあり、その後それを伝える最適な伝達手段を考えるべきです。
この例は極端だとしても、Content is king.(コンテンツは王様だ)のはずが、現実にはContent is slave.(コンテンツは奴隷だ)になってしまうことが多いように思います。
コンテンツを最初に考えると答えが見えてくる
グーグルを始めとする検索エンジンの浸透や、スマートフォン及びタブレット端末などの普及により、消費者は必要な情報を必要なときに入手しやすい状況になりました。
しかし、情報の送り手である企業はどうでしょう?
形式的にはトリプルメディアそれぞれでのコンタクトポイントをひととおりカバーしているとはいえ、考え方自体は、古いマス広告時代の考え方と大きくは変わっていないのではないでしょうか? 購買ファネルで言うならば、あまりにアテンションの獲得を重視し過ぎて、購買に至るまで、そして購買後に必要な情報が十分ではない状態です。企業側はユーザーの時間に割り込んでアテンションを得たいと考えている。一方ユーザーは企業からのアテンション獲得行動にはうんざりしている状態です。にもかかわらず、情報が必要なときには、必死に探しも目的の情報が見つからないというギャップが生じているのです。
こうした情報や情報提供手段のギャップを解消するのに有効な考え方が、コンテンツマーケティングなのです。
それではここからはコンテンツマーケティングを支える3つの柱、
- Like a Publisher
- コンテンツストラテジー
- ストーリー
について説明していきます。
ユーザーが求めてきたときに適切な情報が見つかるように
「Like a Publisher」という考え方
コンテンツマーケティングを一言で表す際に良く用いられるのが、「Like a Publisher」というキーワードです。そのまま日本語に訳すと「企業はパブリッシャーのように振る舞うべきだ」ということになります。
英語でいう「パブリッシュ」は本や雑誌の出版に限らず、「情報を一般に公開すること」を指します。つまり、次のようなことが、コンテンツマーケティングの1つ目の柱になるのです。
いわゆるオウンドメディアの時代になり、企業が自ら情報を発信できるような時代が到来した。ならば、ユーザーの時間に割り込むのではなく、ユーザーが求めてきたときに適切な情報が見つかるよう、企業がパブリッシャーとして自ら情報を発信しようではないか。
具体例としては、P&G社がパブリッシュしている主婦向けのウェブマガジン「Home Made Simple 」、ジョンソンアンドジョンソン社のウェブマガジン「Baby Center」などが挙げられます。紙媒体の例ではコンテンツマーケティングの原点と言われる1985年に発行された農機具メーカー、ジョンディアー社の雑誌「The Furrow」があります。また最近ではレクサスのレクサスマガジンなどがあります。
Relevant(適切)なコンテンツ制作と配置を実現する
「コンテンツストラテジー」
とはいえ、Like a Publisherという発想だけで闇雲にコンテンツを発信しても、単なるノイズとなるだけです。適切なコンテンツをパブリッシュするための全体戦略が必要になってきます。
誰に何をどういう順番で語るかというプロセスで考え、ユーザーにとって適切なコンテンツと、その供給手法を設計する作業、それが「コンテンツストラテジー」です。
ここで重要なのは、企業が行うマーケティング活動というものは、結果として商品やサービスが売れなければならないということです。ユーザー視点を追求するあまり、話題にはなったけれど売上は落ちたというのでは本末転倒です。
米国での事例ですが、ペプシのリフレッシュキャンペーンでは、あまりにユーザー視点を重視したために、キャンペーンとしては成功したが、シェアは落ちてしまったという矛盾した結果になってしまいました。これはペプシのチャレンジングな試みであり、短期的な結果だけを捉えて云々すべきではないのかもしれないですが、ユーザー重視が行き過ぎた場合の教訓を与えてくれます。
こういった事を防ぐために、コンテンツマーケティングにおいては、企業の視点とユーザーの視点の両方から考えてコンテンツストラテジーを立てます。具体的には以下の5つのステップの3番目~5番目のプロセスがその作業に該当します。こうした作業は、コンテンツマーケティングを部分的に適用する際や、既存のマーケティングとコンテンツマーケティングの融合を図る上でも有効です。
- 3C分析あるいはSWOT分析
- ペルソナ設定
- セールスプロセス視点によるコンテンツ配置
- バイイングサイクルの分析によるコンテンツ配置
- コンテンツマップの作成
Compelling(人の心を掴んで離さない)コンテンツに仕立てるための
「ストーリー」
コンテンツマーケティングで重要な最後の柱が「ストーリー」です。
マーケティングはサイエンスとアートの融合です。分析的アプローチやメトリクスも重要ですが、購買行動は理性的な側面と情緒的な側面の両方で成り立っているということを忘れてはいけません。フィーチャー(機能)ではなく、ユーザーベネフィット(ユーザーにどんな良いことがあるか)を語ることが重要であると語られることが多いですが、コンテンツマーケティングにおいては、さらに「記憶に残る」という領域まで踏み込みます。それがストーリーです。
小さなことでもストーリー化できる例として、米国にあるプール販売会社のRiver Pools and Spas社が参考になります。たとえばこの会社のサイトにあるブログ記事「ファイバーグラス製のプールを設置すると家の価値は上がるのか?」をみてみましょう。このタイトルに単純にQ&Aで答えてしまうならば、「価値が上がります」で終わりですが、住宅購入者が重視するポイントを説明したり、第三者機関の見解も交えたりして、平均5%の価値上昇が見込めることを説明しているのが特長です。単純にQ&Aで済ませるのに比べて、SEO的にも、ユーザーへの記憶定着や信頼獲得においても効果があります。
もう少し大きな視点で見たストーリー化の例としては、メリノウール製品を扱っているニュージーランドのicebreaker社が参考になります。気温が-20℃と普通の羊では凍死してしまうような厳しい環境で生息しているニュージーランドのメリノ種から採れるメリノウールを使っていることをイラストや動画を使って説明しています。また、創業者のメリノウールとの出会いや、キッチン購入と嘘をついて銀行からお金を借りて創業した逸話なども公開していします。
ニュージーランドで創業した小さな会社が、今や世界42カ国に輸出するブランドになったのです。ともするとコモディティ化してしまうような商品であっても、商品の良さをストーリー化で伝えて成功している事例です。
まとめ:コンテンツマーケティングは既存戦略にフィットしやすい柔軟性の高い手法。
コンテンツマーケティングを支える基本的な3つの柱を見てきましたが、企業が自らパブリッシュできる時代であることを踏まえ、ユーザーが必要とするコンテンツを論理的に導きだし、情緒的な味付けしながらマーケティング活動に落とし込んでいくコンテンツマーケティングの手法についてご理解いただけましたでしょうか。
コンテンツマーケティングは、そのアウトプットを見るだけでは普通のマーケティング戦略とそれほど違いはなく、既存のメディアやツールの組み合わせでしかありません。しかしコンテンツを最重要視する姿勢と、コンテンツ作成の過程に違いがあります。
コンテンツマーケティングは小さく試したり、部分的に試したりできる柔軟性の高い手法ですので、コンテンツマーケティングを導入して、皆様のマーケティング活動がより良い成果につながることを期待しています。
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オリジナル記事:今なぜコンテンツマーケティングなのか? 3本柱で考えるコンテンツマーケティング [イベント・セミナー] | Web担当者Forum
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