前回までのあらすじ
Web制作会社に勤めて3年目の山ノ内くんは、Webサイトで使う写真に彫刻が写り込んでいることをクライアントである八瀬さんから指摘され、激しく狼狽したあげく思わずボカシを入れてしまう。
そんなとき、たまたま通りかかったのが、会社初の社内弁護士である有栖川さんだった。
ほぼ初対面にもかかわらず、「インパクト六法」(推定質量800g)を投げつけられるなど、おもに有栖川さんの性格に起因するトラブルはあったものの、最終的には著作権侵害の可能性はほぼないことを理解した。そして検討結果を八瀬さんに伝えるも、正しく伝わったかどうかは定かではないのだった。
→前回のマンガは「写真に写り込んだ彫刻は著作権侵害なの?」(第1話)
「著作権者」に許可を取るべき!
今回の雑誌掲載にあたり、誰に許可を取ればいいでしょう?
「Webサイトの画面」や「写真」等について「著作権」を持っている人ね。「著作権」って何か、前回ちょっとだけ説明したわよね?(ギロッ)
「著作物の利用をコントロールする権利」ですよね。
よ、よく覚えているじゃない。じゃなくて、それくらい覚えてて当たり前なんだからねっ。
(どっちだよ……。)
実は、「著作権」っていうのは、いくつかある「著作物の利用をコントロールする権利」たちの総称なの。厳密にいうと、著作物の利用態様ごとに、必要となる権利が分けられているのよ。
へえ。それぞれの権利について、詳しく区別して知っておいた方がいいですか?
おそらく今回は、区別は重要ではないわ。だから覚える必要ないわよ。その上で、豆知識として説明しておくけど、Webサイトの画面キャプチャを雑誌に載せる場合には、Webサイトの画面について、「複製権」「翻案権」「譲渡権」を持っている人から、雑誌に載せることにつき承諾を求める必要があるのよ。
わかりました!「著作権」を持っている人は誰か?ということだけ考えればいいんですね。
Webサイトの画面は著作物か?
ちなみに、Webサイトの画面は、著作物なんですかね?
そうよ。あと、Webサイトの画面の中に含まれる写真やイラスト、文章なんかも、それぞれが著作物よ。
そうなんだ! じゃあ、誰がWebサイトの画面の著作権を持っているのか、教えてください!
そうね、じゃあ「著作者」と「著作権者」から説明しようかしら。
- 「著作者」と「著作権者」って?
- 著作物の利用許可を取ってみよう!
「著作者」と「著作権者」って?
「著作物を創作した者」のことを「著作者」というわ。著作物の著作権は、原則として著作者が持つの。ただし、著作権は、譲渡などによって、著作者から他の人に移転することがあるわ。
著作者から著作権が移ることがある……。
そう。で、著作権を持っている人のことを「著作権者」というの。
なるほどー。今回のWebサイトは、クライアントから依頼されて、わが社が制作したので、わが社が「著作者」ですね。
そのとおりよ。
じゃあ、わが社が「著作権」を持っているのでしょうか?
著作者である受注者が著作権を取得するのが原則だけど、契約によって原則を修正し、発注者に帰属させるとか譲渡するとか定めている場合があるわ。契約書などを確認しないとね。
契約書を見てみよう!
Webサイト制作の契約書がありました! 見てください!
……これは私が入社する前に作られた契約書ね。え~と、「第三者に著作権が帰属するものを除き」、「成果物の著作権(翻案権や二次的著作物の利用に関する原著作者の権利も含む)」は「発注者であるクライアント」に帰属することになっているわね。
つまり、わが社が制作したWebサイトの著作権は、わが社ではなく、発注者であるクライアントが持ってるんですか!?
そういうことね。
じゃあ、Webサイトに使われている写真の著作権はどうなってるんでしょう? これはフリーのカメラマンが撮影したものなので、その人が著作者だと思いますが……。
なるほどね。写真は、わが社から発注したのかしら?
はい。うちからカメラマンに発注しました。
契約書などは交わした?
金額とか納入方法とか決めて注文しただけで、契約書は作っていませんよ。
そう。じゃあ写真の著作権に関して、何も取り決めはないの?
特にないですね。クライアントのWebサイトに使うことは伝えてますが。
……ということは、他に特段の事情がない限り、著作権は写真を撮ったカメラマンが持っていそうね。
そうですかー。じゃあ、勝手に雑誌に載せるのはマズイですかね。
写真をWebサイトに載せることは許可していたけど、雑誌に載せることは許可していなかったといわれると嫌なので、今回また新たに許可を取った方がいいわね。
わかりました!!さっそく連絡してみますよ~~!!
著作物の利用許可を取ってみよう!
カメラマンは個人でやっている人ね? だったら、その本人から許可をもらえばいいわ。ただ、相手が法人であるクライアントの場合は、代表者から許可をもらうのが理想ね。あと、書面など、形に残るものでね。
わざわざ書面を書いてもらうのは大変ですよー!
難しければ、Eメールでも、口頭や電話よりは全然いいわ。口頭だと形に残らないからね。
わかりました。……それにしても、他人の著作物を使うのって大変ですねえ。Webサイトの画面キャプチャーって、イベントなんかでプレゼンのためにプロジェクターで映写されているのを見かけるけど、著作権法上はあれもアウトなんですか?
そうね。著作権(のうち「上映権」)を持っているか、著作権者から許可を受けた人しかできないはずよ。ま、実際、そこまでうるさいことを言う人は少ないと思うけど。
やっぱり著作権法ってコワイ……。こんなの絶対おかしいよ!
まあまあ。著作権法は(クリエイターの)ともだち、こわくないわよ。
そうですかね。もう何も怖くないですかね!
うーん、うまく付き合わないとコワイともだち……かしら。
ダメじゃんか!
第3話は2012年11月中旬ごろに公開予定
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オリジナル記事:Webサイトの著作権は誰のもの?/【漫画】僕と彼女と著作権・第2話 [僕と彼女と著作権] | Web担当者Forum
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