新しい商品を作っても真似される。価格競争に巻き込まれる。新しい商品を作ってもオリジナル感が足りない……多くのEC企業が商品についてこんな悩みを抱えているのではないだろうか。トイレットペーパーの製造・販売を手掛ける望月製紙は差別化ではなく、「異質化」をコンセプトに商品開発に着手。パブリシティの向上、大手企業との取引、ECを通じたファンの増加といった成果を生み出している。森澤憲司専務取締役が語った望月製紙のECなどを支える商品開発の妙とは。
常識にとらわれない発想が他社との「異質化」を生み出す
トイレットペーパーには「香り付き」「保温」「ダブル」「芯なし」などさまざまな市場があります。当社が参入しているのは「やわらかい」という分野。でも、中小企業の当社が普通に新商品を投入しても、誰も見向きもしません。
そこで取り組んだのが、「差別化」ではなく「異質化」。これをコンセプトに商品開発へ取り組みました。
結論から言うと、「異質化」をコンセプトにした製品は、従前はメディア掲載が3年間で10社ほどだったが、直近は200社という数に。ネットニュースにもたくさん取り上げられ、ヤフーニュースのトップにも載りました。誰もが知る大手百貨店や大手高級宿泊施設との取引も始まるなど、「異質化」の効果は上がっています。
「異質化」をコンセプトに取り組んだ事例を紹介します。
あえて「うんち」という言葉を使う
「ニコニコうんちロール」というネーミングを付けました。たくさん候補はあがりましたが、あえて「うんちロール」にしました。食品を扱っている店舗では商品を置けないなど、嫌われるところにはとことん嫌われました。得意先もこの商品を置くかどうか悩みました。
しかし、結果的には、素材が柔らかいため、子供のトイレトレーニングに良いと評判に。最終的にはマガジンハウスが選ぶ面白ネーミング大賞も受賞しました。
「龍馬」ブームに乗って、さらに一工夫
2010年1月から同年11月まで放映されたNHK大河ドラマ「龍馬伝」にあわせて開発しました。ただ、龍馬の顔をトイレットペーパーにプリントするだけでは面白くない。
そこで、龍馬が現世にいればこんなラブレターを贈っていただろうと推測し、龍馬ならこんな恋文を書くであろうという文言をトイレットペーパーに印刷しました。龍馬からのラブレターです。商品名は「龍馬からの恋文」。その中身を少し紹介します。
悩みがあるがか?
何でもゆーたらえいがよ
こには誰もおらんき
ほんで 後は水に流したら
えいがやき
トイレットペーパーでは破格の5000円、高級感を突き詰める
商品名は高級トイレットペーパー「羽美翔」。3ロール5000円です。
皇室にトイレットペーパーを献上することになり、パッケージ、素材、包装など、すべてにこだわった商品を作ろうということになったのが開発のきっかけです。しかし、商品を発売すると、周囲から笑いの対象に。それはそうです。トイレットペーパーで5000円ですから。
結局3年間で3個しか売れませんでした。気が付くと社内には1000個以上の在庫の山。そんなとき、テレビ朝日系列の「アメトーク」の企画「トイレの神様芸人」で、「羽美翔」が取り上げられました。
また、マツコ・デラックスさんがテレビで絶賛するなど、話題が広がり、高くても売れる商品となりました。この商品、柔らかいという特徴がいいんですね。
他社に真似られない商品開発の共通点は「真逆の掛け算」
後付けですが、こうした商品開発で気付いたのが「真逆の掛け算」という共通点。当社は、トイレットペーパー市場の逆を走ったわけなのです。
- 安い → 超高価格
- 簡易包装 → 豪華な包装
- 清潔なネーミング → NGネーミング
- 低コスト大量生産 → 高コスト少量生産
こうしたことを背景に、中小企業の当社は、強烈な情報を発信していく大切さを学びました。さて、この情報発信のなかでわかったのが、「異質化は記憶に残る」ということです。
頭の片隅の記憶に当社製品が残ったお客さまがいると仮定します。商品との出会った後、ツイッターやブログ、フェイスブックで友人などが投稿した情報を閲覧。こうしたクチコミを見て、当社製品を思い出して購入してもらえる可能性が高くなります。この消費行動が起こるのは記憶に残っているからなのです。
「異質化」はさらなる効果を生み出します。ソーシャルメディアやブログに商品のことが掲載され、大量の被リンクが発生します。それがSEOにプラスの影響をもたらし、検索結果上位に表示されるようになりました。「高級トイレットペーパー」で検索すると、1ページ目はほぼすべて当社の情報です。お客さまの記憶に残ってもらうことが大事なのです
商品のことだけではなく、サービス、接客、企業姿勢、人材など、企業はお客さまの記憶に残ることが重要だと思います。それが結局は商品購入につながるのです。
お客さまが受けた情報や体験は、記憶に残り続けます。その記憶をもとに、商品やサービスを発信していけば、好感をもってもらえます。たとえば、お客さまが持っているだろう幼少の頃の記憶をもとに、情報を発信していくとか。
お客さまが持つ過去の体験、好きな言葉、好きな商品、サービスにもとづけば、良いキャッチフレーズなども作りやすいと思っています。
全国ECサミットと講演者について
全国ECサミットは年に1度、全国のEC団体が集まり開催するカンファレンス。第2回は一般財団法人日本電子商取引事業振興財団、東海イービジネス研究会、ぎふネットショップマスターズ倶楽部、一般社団法人イーコマース事業協会、e商人養成塾、九州ECミーティングが主催した。幹事は一般社団法人イーコマース事業協会。
望月製紙は高知県のEC団体、e商人養成塾の会員。森澤憲司専務取締役は同団体の推薦を受けて、「第2回 全国ECサミット」で講演した。
e商人養成塾は高知県のネットショップオーナーで組織された団体。毎月定例会などを行っている。塾長は、EC業界の著名人、Tシャツのネット通販を手掛けるイージーの岸本栄司社長。e商人養成塾の詳細はこちら。
オリジナル記事はこちら:「差別化」ではなく「異質化」。唯一無二のトイレットペーパーを生み出す望月製紙の商品開発秘話(2014/10/20)
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オリジナル記事:「差別化」ではなく「異質化」。唯一無二のトイレットペーパーを生み出す望月製紙の商品開発秘話 | ネットショップ担当者フォーラム ダイジェスト | Web担当者Forum
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