次の画像はスポンサードサーチの広告だが、「空きあり」というラベルに注目してみてほしい。
この「空室」情報の表示には、2014年6月からスポンサードサーチの広告表示オプションとして新たに追加された「店舗在庫表示オプション」機能が使われている。
店舗在庫表示オプションは、店舗などの商品在庫の有無を広告とともに掲載できるという機能だ。
今回は、この店舗在庫表示オプションについて「機能概要」「背景と意図」「具体的な設定方法」を解説する。
店舗在庫データベースの専門サービスと連携
店舗在庫表示オプションは、株式会社コネクトム(以下、コネクトム)が提供する店舗在庫データベースサービスと連携することで、インターネットユーザーの検索キーワードに関連した商品やサービスについて次の2つの情報をスポンサードサーチ広告として表示できる。
- 近隣店舗: 検索ユーザーの現在位置や地域情報をもとに関連する近隣の店舗を自動判別して表示。
- 在庫情報: 検索キーワードに関連した商品やサービスを自動抽出し、在庫がある場合は「在庫あり」または「空きあり」と表示(商品名や在庫個数については表示不可)。
現在の配信面は、Yahoo! JAPANの検索結果ページ上部で、配信対象デバイスは、PC、スマートフォン・タブレットとなっている。
物品販売はもちろん、「ホテルの空室」のような「在庫」に似た概念があるビジネス向けの広告サービスだといえるだろう。
店舗在庫表示オプションで重要となるのが「在庫管理」だが、この部分は店舗在庫データを中間データベース化して提供するコネクトムが担当する。
スポンサードサーチの広告表示オプションの1つとはいえ、コネクトムのサービスを利用していることが前提条件となる。
広告主にとっては今すぐ気軽に使えるわけではないが、店舗ビジネスをしていてコネクトムのサービスを利用中か、または、これから在庫管理情報サービスの利用を検討している場合は、この店舗在庫表示オプションのことも念頭に置いておこう。
店舗在庫表示オプションは、現時点(2014年6月)ではYahoo!プロモーション広告の正規代理店経由でのみ利用可能となっている。将来的にはYahoo!プロモーション広告のユーザー全体に提供される予定だが、「興味を持った」「今すぐ使ってみたい」という場合は、代理店に問い合わせてみよう。
店舗在庫表示オプションが画期的なのは、前述のようなオンライン広告の課題を乗り越え、オンラインとオフラインの垣根を越えた点だ。
広告主や代理店にとっては、検索行動がきっかけで実店舗への来客を促進できたり、リアルタイムで情報を求めている近隣の見込顧客に対して訴求できたりといったメリットがある。
さらに、インターネットユーザーの立場からすると、検索したときに近隣店舗の在庫情報がリアルタイムで把握できると、より的確で無駄なく求める情報やほしい商品にたどり着くことができるというメリットがある。
鍵はユーザーの生活圏をいかに捉えるか――2014年はローカルに注力
スポンサードサーチ責任者インタビュー
店舗在庫表示オプションは、単なるスポンサードサーチの一機能というよりは、検索サービスそのものの可能性を広げる機能といってもよい。これから検索サービスと検索連動型広告はどうなっていくのか。ヤフー株式会社で検索連動型広告サービスマネージャーを務める笠原勝幸氏に、新機能のねらいと検索サービスの今後について伺った。
オンラインビジネスだけでなく実店舗ビジネスにも有効な検索連動型広告
―― 店舗在庫表示オプションのねらいや意図について教えてください。
笠原氏 私はスポンサードサーチの責任者ですが、検索連動型広告として無視できないのが、言うまでもなく検索サービスそのものです。
検索サービスは昔からありますが、スマートフォンの登場と普及によって、最近はよりパーソナルでカジュアルな検索が増えました。それとともに、検索の対象は、1週間1か月先に必要なものから、今すぐにでも明日にでもほしいものになり、さらに自分の生活圏内のものの割合が増えてきました。
一方、これまでのスポンサードサーチの広告は、オンラインで完結する商材が中心でした。しかし、スマートフォンによる検索傾向の変化を考えると、オンラインだけで完結するのではなく、実店舗(オフライン)に足を運んで商品を購入する(コンバージョンする)という、O2Oの視点でとらえる必要があります。
この変化は、広告サービスを提供する立場から見ると、ECサイトをお持ちの方だけでなく、実店舗のビジネスをされている方も広告主になっていただけるということです。店舗在庫の表示ができれば、そういった広告主のニーズに応えられると同時に、検索ユーザーの利便性も向上できるというわけです。
店舗ビジネス広告の訴求効果アップ
課題は広告効果をどのように測定するか
―― 広告主にとって、店舗在庫表示オプションはどのようなメリットがありますか。
笠原氏 インターネットユーザーがいる場所の近くに実店舗をお持ちで在庫もあるという条件を満たしていれば、より高い訴求効果が期待できることですね。
また、地域ターゲティング機能と組み合わせることで、より高い精度で店舗近辺のインターネットユーザーに対してターゲティングできます。実店舗では重要な「商圏」という条件をクリアしたうえで広告を表示するので、商圏外にいるインターネットユーザーからの無駄なクリックを減らせます。
一方、コンバージョンが「店頭での購入」だと、その効果測定をどう計測するかが課題になります。O2Oを意図した広告はすでにありますが、効果は「何となく増えたような気がする」という感覚値になってしまいがちでした。
広告効果をより正確に把握するには、ランディングページに仕掛けを用意したり、広告がきっかけで来訪したお客さまに対して、購入時に何らかのインセンティブを提供したりと、コンバージョンを把握するための何らかの工夫が必要になります。
検索にはまだまだ進化の余地がある
ローカルサービスの強化で停滞感を打開
―― 検索サービスやスポンサードサーチの今後について教えてください。
笠原氏 スマートフォンは、PCなどとは違って、いつでもどこでも思い立ったらすぐに検索できます。ちょっとした調べものの検索も含めて、カジュアルな文化、一般的な行動として検索が根付いていけば、それに比例して商品購入(コマース)に関する検索も増えていくでしょう。
そうなると、検索連動型広告を提供する立場としては、まず検索サービスとしてYahoo! JAPANを選んでいただく必要があります。検索ユーザーを取り込むために、検索サービスそのものの性能や使い勝手をさらに向上させなければなりません。
その一環として、2014年のビジョンとして掲げているのが地域に特化した検索の強化です。デバイスを持っているユーザーの生活圏を意識した検索サービスや機能、そして広告に注力していきます。
スマートフォンでローカルを意識したサービスというと、GPSを使ったものを思い浮かべますが、位置情報はそれだけではありません。
Yahoo! JAPANでいえば、我々が提供するさまざまなサービスをインターネットユーザーにお使いいただく中で、一定の生活圏を推定することが可能になります。代理店の方からも「位置情報の精度はどれくらいか」とよく聞かれますが、重要なのはそのインターネットユーザーの現在地だけでなくどのようなエリアで生活しているか特定できることだと考えています。
理想は、観光で訪れた不慣れな土地などでスマートフォンを使えば地元の店舗などでインターネットユーザーが探す商品を取り扱うお店やサービスを把握できるようになること。たとえば、バーベキューをしていて今すぐホタテが必要になったとき、売っている近所のスーパーがわかると便利ですよね。
検索連動型広告はインターネット広告の中で歴史が長いため、運用方法や有効な商材が固定化しているイメージがあります。やること、できること、使うべき人が決まっていて、新しい価値提供が生まれにくいというある種の停滞感ですね。しかし、検索サービスにも検索連動型広告にもまだまだ進化の余地があるので、停滞感を払しょくしたいと考えています。
今回は、スポンサードサーチの新機能「店舗在庫表示オプション」の概要と、そこから見えるYahoo! JAPANの検索サービスや広告の将来像について紹介した。
インターネットユーザーが求める内容に合致する広告、それは価値ある情報だ。店舗在庫表示オプションは、検索連動型広告が進化することで、その基盤である検索サービスにも進化をもたらした。検索サービスも検索連動型広告も、まだまだ可能性を秘めているといえるだろう。
※この記事の内容は、2014年6月現在の情報に基づいています。Yahoo!プロモーション広告では、さまざまな機能改善を行っており、実際の画面やボタンの名称等は変更される場合があります。
- 内容カテゴリ:SEM
- コーナー:スポンサードサーチ再入門
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