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「LINEビジネスコネクト」が企業CRMを変える――ワンタッチでピザを注文、位置情報でタクシーを配車 | Web担当者Forum

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2014年2月、LINEが発表した、「LINEビジネスコネクト」は、LINEと企業システムとの連携を可能にすることで、企業CRMの形を劇的に変えるものとして業界を震撼させた。今や、LINEを知らないというマーケターはいないだろう。登場から数年で、LINEのユーザーは世界で3億7000万、国内で5000万を超え、老若男女のコミュニケーションに欠かせない生活インフラへと成長した。企業からの広告が無視される時代に、LINEはいかにして顧客とのコミュニケーションを実現しているのだろうか。

LINEは生活のインフラになりつつある

LINE株式会社
広告事業部 グループ長
執行役員 田端信太郎氏

ソフトバンク・テクノロジーユーザー会の基調講演で、LINE株式会社 広告事業部 グループ長 執行役員の田端信太郎氏は、「LINEが変えるマーケティングの未来 ~広告が無視される時代になぜLINEの企業スタンプは無視されないのか?~」と題して登壇した。

LINEのユーザー数は急速に増え続けており、講演の2日前の時点で、ワールドワイドで3億7000万アカウント、国内ユーザーは5000万に達している。ユーザー数はスマートフォンの増加に追従すると田端氏は見ており、2014年内には5億ユーザーを目指している。

LINEユーザーの85%は海外で、特にタイ、インドネシア、インドなどASEAN圏に強い。LINEは日本発のアプリではあるものの、すでに日本人だけのものではなくなっている。広告ビジネスに利用するという視点では、日本の内需系企業が進出を目指している新興国での普及が進んでいる点が注目される

また、日本国内のユーザープロフィールを見ると、男女比や年齢構成などに大きな偏りはない。若年層にユーザーが多いイメージがあるが、すでに30代以上の比率が55%以上に達している。地方のユーザーも多く、職種も幅広い。例えば、遠方に住んでいる祖父母が孫とLINEでコミュニケーションを取るといった使い方もよくされている。こうした点が、大都市の高学歴・高収入のエリートが多いとされている外来のSNSとは大きく異なる。

企業からの情報は無視される時代

田端氏は、「企業が発信するマーケティング・コミュニケーションは『無視』されて当たり前の時代」と語る。

たとえば、企業が電子メールで送るダイレクトメールやメールマガジンなどの開封率は10%という米国の調査結果がある。つまり、企業が送った電子メールの9割は、「読まれていない」「URLがクリックされていない」どころか、件名がちらっと目に入るだけで、開封すらされずにゴミ箱行きということだ。

“デジタルマーケティングの入り口はメールアドレスの収集”と言われるが、キャリアの変更やスマホへの移行によって、アドレスは使われなくなることがある。また、スパム対策のメールフィルタリングも広く普及している。それに加えて、マーケターが一生懸命執筆し、なんとかユーザーのメールボックスに届いたメールですらも、ほとんどが開封されない。これはメールマーケティングについての「不都合な真実」だ。

バナー広告も目に留まらないという意味では似たりよったりだ。あるポータルサイトでのバナー広告のクリック率が、2000年は平均1.05%だったが、2011年には平均0.19%になったという調査結果がある。0.19%という数字はまだいい方で、0.1%を切るバナーも少なくないという。つまり、ユーザーはバナー広告も眼中にないと言える。

なぜ、広告は無視されるようになったのか。考えられるひとつの理由は、インターネットの普及により誰でも情報発信できるようになったことで、流通する情報量が激増したことだ。そのような時代であっても、自社サイトにプレスリリースを載せたら、あるいは動画を公開したら、それで仕事が終わったと思っている広告担当者は未だに存在する。

本質的な意味でのコミュニケーションというのは、情報を公開したら完了ではなく、読み手の心を動かしてはじめて完了となる。情報の洪水の中でも、ユーザーが消費できる情報量は以前と変わっていない。にもかかわらず、公開したら仕事が終わったと誤解する広告担当者が多いのが、マーケティング・コミュニケーションの現実だ(田端氏)

ちなみに、テレビでも同じように広告(CM)を無視される現実が起きている。ハードディスクレコーダーの普及がその要因のひとつであり、ビデオ視聴時間は増え続けている。特に、ドラマやアニメなどのコンテンツは録画で見るという人の割合が増えている。結果として、視聴時にテレビCMがスキップされることも多くなっているのに、スポットCMの打ち方はそれを折り込んだものになっていないのだ。

スマホやハードディスクレコーダーの登場で、消費者はいつでもどこでも見たいコンテンツを見たいように見る自由を手にした。一度この自由を味わったら、自由度の少ない商業メディアを見なくなっていくのも当然だろう。ユーザーが情報の編集権を手にした現在は、マーケティングで消費者を思い通りにコントロールすることは、ほぼ不可能なのである。

LINEスタンプは無視されない

さまざまな広告手法を、コントロール指向かどうかという軸と、PUSH(潜在需要への種まき)か、PULL(顕在化需要の刈り取り)かという軸による4つの象限で捉えたのが以下の図だ。

なぜ、ソーシャルメディアがマーケティングに必要なのか?/PUSH(潜在需要への種まき)/PULL(顕在化需要の刈り取り)/コントロール志向/アンコントロール受容/マス広告/メルマガ/ソーシャル/拡散&PR/有料でのサーチエンジン出稿(SEM)/検索エンジン最適化(SEO)&コンテンツマーケティング
広告手法の4分類

例えば、「かっこいいテレビCMを見ていたら、それまで特に欲しいと思っていなかった商品が欲しくなった」というのが潜在需要への種まきの典型例である。テレビでは、広告がどのように流れるかを広告主がコントロールできる。しかし前述した通り、昨今のユーザーは、YouTubeで目当てのコンテンツの前に流れるわずか5秒間のCMにすら苛立ってしまうほど、時間軸を広告側にコントロールされることを嫌う。そのため、潜在需要への種まきでもコントロール不能を受容するソーシャルのようなものが必要になっている

田端氏がその例として挙げたのが、「LINEスタンプ」だ。LINEではスタンプ広告が無視されにくい。なぜなら、スタンプを送ってきたのは、知らない企業でもメディアとしてのLINEでもなく、ユーザー自身の友人だからだ。広告を無視することは、その友人を無視することになってしまう。また、これまでの広告は、テレビにしろ新聞にしろ雑誌にしろ、一方的に見るだけ、聞くだけのものだった。しかしLINEのスタンプには、ユーザーがそれを使うというアクションがあるため、ユーザーは自分で広告をコントロールしている感覚を得られる

2013年の流行語となった、『今でしょ!』というスタンプがある。友達との会話の中でこのスタンプを使えば、流行語の物真似をして相手に突っ込んでいることになるという面白さがある。スタンプを使うことでそのブランドやCMに疑似参加できる。これは、ただ受け身でいるよりも印象に残りやすい。(田端氏)

平均的なスタンプは数百万人がダウンロード

LINEの調査によると、有料スタンプを使っているLINEユーザーは2割強であり、8割以上のユーザーが無料スタンプを使っている。また、いつも同じスタンプを使っているとなんとなく流行遅れのように思われるためか、保有スタンプはどんどん増える傾向にあるという。つまり、無料スタンプ(企業のスポンサードスタンプ)という広告モデルに対するユーザーニーズはかなり高いと言える。「一般的な無料スタンプは数百万人がダウンロードする」(田端氏)という。

ユーザーが実際にスタンプを送ったことによる効果を調査した結果が、以下の図だ。「キャラクターのCMが気になるようになった」(25.7%)、「その企業の広告が目に留まるようになった」(20.5%)、「好感度や親近感が増した ファンになった」(19.2%)、「企業や商品への興味が強くなった」(7.4%)などブランドの認知が高まるだけでなく、「実際にその商品やサービスを購入した」(3.1%)というケースもある。ダウンロードした数百万人に対するパーセンテージだと考えればその効果の高さが見てとれるだろう。

きゃキャラクターのCMが気になるようになった 25.7%/その企業の広告が目に留まるようになった 20.5%/好感度や親近感が増した ファンになった 19.2%/企業や商品への興味が強くなった 7.4%/実際にその商品やサービスを購入した 3.1%
ユーザーが実際にスタンプをやりとりしたことによる効果

上記調査でも「キャラクターのCMが気になるようになった」(25.7%)が1位となっている通り、LINEスタンプとテレビCMの組み合わせもいまや定番化しつつある。テレビ離れが進んでいると言われる若年層にリーチできる点も特長のひとつだ。

マーケティング・メディアとしてのLINEの特長
  • 既存マス&PC離れしつつある若者層にリーチでき、マスを補完できる広告
  • 実際に来店効果を出し、商品を動かせる広告
  • 広告が無視されてしまいがちな時代に無視されず、“自分ごと化”される広告

また、田端氏は、企業が公式アカウントを開設できる「LINE@」に関してもいくつかの事例を紹介した。2013年6月からLINEの公式アカウントを開始したマクドナルドでは、開始3か月で400万人の「友だち」を獲得、しかもうち200万人は既存のメルマガユーザーと重複しない、新規ユーザーだった。さらには、メルマガユーザーよりもLINEユーザーのほうが若く、将来の有望顧客にリーチできたのだという。さらに、ローソンは、1100万人を超える友だちの中で、実際に店を訪れた人数も50万人に達した。実際にリアル店舗へ消費者を誘導できるという事例だ。

O2O施策として、実際にリアル店舗で商品を購入した際にスタンプをゲットできる「LINEマストバイ・スタンプ」の事例も増えているという。

企業と消費者をつなげる「LINEビジネスコネクト」

田端氏は最後に今後の展開として、「LINEビジネスコネクト」について紹介した。2014年2月26日に発表されたばかりのLINEビジネスコネクトは、LINEの公式アカウントを持つ企業に対してAPIを公開し、各企業がLINEとCRMシステム(自社の顧客データベースや業務システムなど)との連携を実現するものだ。CRMにおいて、企業と消費者とが迅速かつ継続的に効果的にコミュニケーションする環境として大きく期待されている。

26日に発表した「LINEビジネスコネクト」 企業側CRMの連絡手段としてLINEが利用可能に/LINEビジネスコネクト 構成図/LINE側提供範囲/個別メッセージ送受信/API/API利用企業CRMシステム/顧客DB/業務システム
LINEビジネスコネクト構成図

LINEビジネスコネクトを利用すると、ユーザーごとに個別のメッセージ配信や受信が可能になり、企業とユーザーとのコミュニケーションは劇的に進化する。例えば、ユーザーアカウントとCRMデータを紐付けて、ユーザーがピザのスタンプをピザ店のアカウントに送ることで、ピザを注文することが可能になる。また、メールだと埋もれるようなメッセージでも、LINEならば見落とされづらいため、レンタルDVD店がスタンプで返却期限を知らせるといったことも可能になる。タクシー会社のアカウントに位置情報を送信するだけで近くにいるタクシーが手配されるといったことも実現できるのだ。さらには、企業の営業日報やアルバイトのシフト管理などもがLINE経由で可能になるかもしれないのだ。

田端氏は、LINEは、これからのマーケティングメディアに必要な4つのR、すなわち、「REALTIME(速報性)」、「REACH(到達性)」、「RELEVANCY(関連性)」、「RESULT(実効性)」を兼ね備えていると語る。また、講演冒頭で述べたように、LINEユーザーの85%はすでに海外ユーザーであり、海外への展開事例も多く登場してきている。

LINEは、広告媒体の境界や国境、デジタルとアナログの境界など、さまざまな境界を消していく、マーケティングキャンペーン全体のハブになれると考えている(田端氏)

洪水のように浴びせられる膨大な情報の中で無視されないタイミングでユーザー情報を届け、見るだけでなく実際の行動を引き起こすのがLINEだ。既存の広告への予算の中から何割かをLINEにシフトする価値はあると言えるだろう。

セミナー風景

LINE@(LINE公式の法人・ビジネスアカウント)
https://biz.line.naver.jp/ja/

ソフトバンク・テクノロジー
https://www.softbanktech.jp/

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この記事の筆者

柏木 恵子
ITジャーナリスト

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