英会話スクールのベルリッツ・ジャパンは、サイトリニューアルによってPCサイトのCVRを対前年比120%にまで改善し、スマートフォンでもCVRを2倍まで向上させた。「成功ポイントはユーザー行動の可視化にある」と語る、同社の井幡貴司氏が活用したのが、ユーザーローカルのアクセス解析ツール「ユーザーインサイト」のヒートマップ機能だ。仮説検証と改善までの具体的な内容が語られた。
コンバージョンまでの流れを把握する
ユーザーインサイトは、約400社が導入するアクセス解析ツール。ユーザーローカルの渡邊氏は、ヒートマップやペルソナ分析といったいくつかの機能を説明し、「今日はこれらを利用してWebサイトをどのように改善していくのか、具体的な活用についてお話しいただこうと思う
」と、同社のユーザー企業であるベルリッツ・ジャパン 井幡氏による事例を紹介する。
ベルリッツは、ビジネスパーソンをターゲットとした英会話スクールを展開し、ビジネスに直接役立つレッスンが特長だ。英語に対する関心は近年上昇傾向にあり、2020年東京オリンピック開催決定により、その傾向に拍車がかかっている。一方で、競合他社の新規参入が増え、競争は激化している。競争激化がもたらすのは、Web広告費の高騰だ。リスティング広告では、2012年4月にCPCが600円だったキーワードが、2013年の4月には1,200円になっているという。
Web広告費の予算を上げ続けるわけにはいかない。より効率よくコンバージョンを獲得するために計画されたのが、PCサイトのリニューアル(2013年4月に実施)だ。英会話スクールであるベルリッツの主なコンバージョンは、次の2つである。
- 無料体験レッスンのWeb申し込み
- Webからの資料請求
リニューアルプロジェクトでは、まず現行のWebサイトにどのような課題があるかを分析しなければならない。以前から分析は行っていたが、それまで使っていた解析ツールでは、どのリンクがクリックされているかはわかっても、どういう流れでクリックしたかまではわからなかった。
そこで、導入されたのがユーザーインサイトだ。ユーザーインサイトのヒートマップでは、熟読エリアや終了エリアなどがわかる。仕組みとしては、目の動きの代わりにマウスの動きをトラッキングしている。人間の目とマウスの動きの相関性は80%以上あると言われているからだ。その他にも、ページ内のクリック箇所を表示するクリックマップなどがあり、解析の結果、改善のための仮説が非常に立てやすくなった。
最初に訴求すべき情報は何か
たとえば、コンテンツをどのような順番で見せればいいか、その仮説は次のように導いた。
まず行ったのは検索キーワードごとのユーザー行動分析だ。キーワード「ベルリッツ」の指名検索で来た人と、キーワード「英会話」で来た人が、それぞれどのような順番でコンテンツを見たかを数十から数百のサンプルで分析した。当然、「ベルリッツ」で検索した人は、ベルリッツの入学をすぐ検討したいなど切迫度が高いと考えられる。
分析を続けると、切迫度の強いユーザーは、まずはレッスンの提供時間と場所を確認するということがわかった。よく読まれているコンテンツとしてベルリッツの強みや特長などを訴求するものが挙がっていたが、いくら強みや特長を露出しても、「通えるか」「通い続けられるか」という不安が解消されなければ、それ以上検討せずに離脱することが予想できる。そこで、通学するうえでの時間や場所といった側面の利便性を強調したリニューアルを、まずトップページで行った。
どこがよく見られていて、どこまでしか見られていないかわかれば、
改善のための仮説が立てやすい
入り口はトップページだけではない
次に、流入キーワードとサイト内の行動を分析してみると、「ベルリッツ」という検索キーワードの場合はトップページから流入するが、「ベルリッツ+地名」が検索キーワードの場合は各教室ページが入り口となることが一目瞭然であった。つまり、トップページだけでなく、各教室ページを改修することの意味は大きい。
コンバージョン率は、トップページは0.45%、各教室ページは0.07%と大きく違う。理由として考えられることは、資料請求への導線の場所だ。トップページはファーストビューに資料請求への導線が存在するが、各教室ページでは一番下にある。ユーザーインサイトのヒートマップで見ると、各教室ページで資料請求のコンバージョンボタンのところまで閲覧しているユーザーは、10%以下であることがわかった。
こうした分析から仮説を組み立てていった結果、次のような改善方針が決まった。
- 意欲の高いユーザーに対して、すぐに申し込みができる入力フォームを設置する
- 教室ページから流入してきたユーザーが、レッスン内容・ベルリッツの強みなどへ移動できるようにする
それ以外にPCサイトに行った改善は、コースを選びやすくしたことだ。従来は、トップページから各コースの詳細まで進むには、「ビジネスかプライベートを選択」「ビジネスコース一覧」「コース詳細」といった3つのステップが必要だった。ところが、ビジネスコース一覧のページを改善するためにヒートマップを見たところ、漫然と見られているようだった。問題として挙がったのは、そもそも「ビジネスベーシック」「ビジネスプラス」といったコースの名称を訴求しすぎていて、「自分のレベルに合ったコースがどれかわからないのではないか」ということだ。
そこで商品名からコースを選ぶのではなく、ユーザーの目的やレベル別で振り分けるコミュニケーションに変更した。
「ユーザーの不安の解消」「すぐに申し込めるフォームの設置」「目的・レベル別の商品訴求」といった改善以外にもさまざまな取り組みを行った結果、PCサイトのリニューアル後のコンバージョン率は対前年比120%に向上した。
スマートフォン特有の課題にも対応
ベルリッツのWebサイトの流入の40%は、スマートフォンからになっている。そのため、PCサイトだけでなく、スマートフォンサイトのリニューアルも2013年8月に行っている。ここでもユーザーインサイトのヒートマップが活用された。
スマートフォンサイトのリニューアルでは、PCとは異なるスマートフォン端末の特性を理解することが必要だ。たとえば、次のような違いが挙げられる。
- PCサイトと比較すると閲覧する画面数は少ない
- あまりじっくり読まない
- 文字入力の負荷が高い
このうち、ベルリッツでは2番の課題解決に注力した。スマートフォンを操作している人を見ると、指をすばやく滑らせていることが多い。PCと比較するとスクロール速度が速いので、一字一句読まれることは期待できない。つまり、ユーザーの気をひくコンテンツがないと、そのまま離脱されるし、離脱の判断はPCの場合より早い。そこで、いかにコンテンツで興味を引き、ユーザーの動きをストップさせるかががリニューアルの鍵となる。
リニューアルの方針は、PCサイトで得た成功パターンをスマートフォンに活かすというものだ。たとえば、PCサイトで熟読されていた「ミーティング」「プレゼンテーション」「eメール」といったキーワードを、スマートフォン向けに最適化して見せるようにした。PCサイトの成功法則を踏襲した結果、リニューアルしたスマートフォンサイトのコンバージョン率は約2倍に向上している。
ユーザー視点を可視化できたことで、今回のリニューアルの結果を出すことができた(井幡氏)
Webサイトの効果を示すには、PV、UU、KPIなどさまざまな指標がある。しかし、その数字だけをもとにWebサイト改善のための仮説を立てるのは難しい。「数字のデータだけから仮説を立てるのは困難。ヒートマップを使ってユーザー行動を分析して仮説を立て、改善してきたことが、Web担当者として成果を上げるのに一番よかったと思う」と、井幡氏はユーザー行動を可視化することが成果につながったことを話した。
株式会社ユーザーローカル
http://www.userlocal.jp/
- 内容カテゴリ:アクセス解析
- コーナー:【レポート】Web担当者Forumミーティング 2013 Autumn
※このコンテンツはWebサイト「Web担当者Forum - 企業ホームページとネットマーケティングの実践情報サイト - SEO/SEM アクセス解析 CMS ユーザビリティなど」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:数字だけでは見えないユーザー行動をヒートマップで可視化、ベルリッツが実践したサイト改善/ユーザーローカル [【レポート】Web担当者Forumミーティング 2013 Autumn] | Web担当者Forum
Copyright (C) IMPRESS BUSINESS MEDIA CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.