Googleアナリティクスは、非常に高度な分析ができる無料のアクセス解析ツールだが、正式なサポートがない。本連載では、その導入から、運用、活用まで、初めての人でもゼロから学んでいけるように、丁寧に解説していく。
eコマースサイトや、メディアサイトでは、登録ユーザーに会員種別を設けていることがある。たとえば、通常会員とプレミアム会員といった種別だ。
しかし、Googleアナリティクスの基本的な機能では、会員の種別のようなユーザー分類を自動的に行って分析することはできない。そこで使える追加機能が「カスタム変数」や「ユーザー定義」だ。
「カスタム変数」とは、特定のユーザー、特定の訪問、特定のページ閲覧にラベルを貼ることができる機能で、5種類の変数を定義できる。
「ユーザー定義」は特定のユーザーにラベルを貼る機能で、こちらは1種類しか利用できない。
今回と次回で、カスタム変数とユーザー定義について順次解説していく。
今回は、カスタム変数を使って、会員種別ごとにユーザーをセグメントし、それぞれの会員種別にデータを分けて分析する方法を説明していく。
カスタム変数の計測コードの形式
Googleアナリティクスで解析データにカスタム変数を使うには、次のような記述形式の_setCustomVarメソッドを、トラッキングコードで利用する。
_setCustomVar(index, 'name', 'value', opt_scope);
個別に指定しなければいけないのが赤字部分で、それぞれの意味合いは以下の通りだ。
項目名 | 項目の意味 | 必須か? | 説明 |
---|---|---|---|
index | 番号 | 必須 | 変数を区別する数値になる。1から5までの5つの数値のうち、どれかを指定しなければならない |
name | キー | 必須 | カスタム変数の名前を表す文字列。カスタム変数レポートのトップレベルで表示される |
value | 値 | 必須 | カスタム変数の値で名前とペアになる文字列。たとえば「name」に性別を表す「sex」を指定した場合、「value」は男性、女性を表す「male」「female」と指定する、といった使い方が考えられる |
opt_scope | スコープ | 任意 | 変数の利用用途を表す。1から3の数字のいずれかを割り当てる。1はユーザーレベル、2はセッションレベル、3はページレベルを意味する。指定しないと3の扱いになる |
せっかく使うならユーザーレベルがお薦め
前述したとおり、カスタム変数は、サイト全体で5項目しか設定できない(1~5の番号で区別するため)。
どの単位でアクセスを区別するかは、
- ユーザーレベル
- セッション(訪問)レベル
- ページレベル
という3種類が用意されているが、サイト全体で5項目しか使えないのならば、通常の機能では集計できないユーザーレベル(opt_scope=1)で使うのがよいだろう。
具体的な使用例:登録ユーザー種別で分析できるように
今回は、会員登録したユーザーと非会員のユーザーがアクセスするサイトや、登録ユーザーを通常会員とプレミアム会員といった種別で分けているサイトといった場合で考えてみよう。カスタム変数を使って各会員種別にユーザーをセグメントして、それぞれの会員種別にデータを分けてみるのだ。
たとえばカスタム変数を使って、通常会員には「regular」、プレミアム会員には「premium」といった値を付与することで、あとからその値を軸にしてデータを分析できるようになるのだ(非会員ユーザーは特定の値なし)。
問題は、たとえばプレミアム会員がサイトを利用しに訪れたことをどのように認識するかということだ。これはサイトの作り方などによってさまざまなのだが、以下にいくつかの方法を列挙しておく。自分のサイトでできる方法を探ってほしい。
- 会員登録時に各会員種別に排他的に通過するページに、カスタム変数を固定で実装する
- 各会員種別に訪問時に必ず排他的に通過するページに、カスタム変数を固定で実装する
- 訪問のたび、会員種別情報を判断し、カスタム変数を動的に実装する
Aのケースは、サイト公開と同時にGoogleアナリティクスを実装できたようなケースでは簡易にできる手法だが、途中からGoogleアナリティクスで計測を始めた場合は、この方法は中途半端だ。カスタム変数を実装した後の新規会員登録から、わかる範囲で会員種別を区別したいという精度でよいなら、この方法でもよいだろう。ただし、会社と家庭の両方からアクセスする人はうまく判断できないし、ユーザー登録後にブラウザを変更した場合にもうまく分類できなくなる。
Bのケースも排他的に特定のページを必ず踏むのであれば、この方法の実装が楽だが、おそらくこのような面倒なことをさせるケースは少ないだろう。強制的に定期的に会員情報を更新させるような仕組みであれば、ある程度の期間があれば、カスタム変数が正しく付与される可能性は高くなる。
Cのケースは、各サイトの事情に応じてプログラミングすることが必要になる。たとえばクッキーにためているユニークIDと会員種別情報をマッチングさせて、会員種別に応じて動的にトラッキングコードを生成するといった面倒な仕掛けが必要になる。
トラッキングコードの例
トラッキングコードのカスタマイズの方法については、以前の記事で解説した。
繰り返しになるが、2つの方法を紹介しておく。
(1)通常のトラッキングコードとセットに記述してカスタム変数をセットする方法
以下のソースコードの赤字部分が、追記でカスタム変数を指定する記述だ。
_gaq.push(['_setAccount', 'UA-XXXXXXX-Y']);_gaq.push(['_setCustomVar', 2, 'member', 'regular', 1]);
_gaq.push(['_trackPageview']);
上記AやBの場合に適用できる方法で、ページに固定でトラッキングコードを記述することになるので、通常のトラッキングコードとセットに記述しておくとよいだろう。上記の例では、2番のカスタム変数を使い、「member」というキー、「regular」という値で、ユーザーレベルでラベルを付けるということを意味する。
(2)イベントハンドラと同時に、あるいは動的に生成させるため、任意の場所に実装するようになる場合
標準のトラッキングコードは普通に実装し、その上で、何かのイベントハンドラなどのイベントトラッキングとセットで、下記のトラッキングコードを実装すればよい。1行目がカスタム変数、2行目がイベントトラッキングである。
_gaq.push(['_setCustomVar', 2, 'member', 'regular', 1]);
_gaq.push(['_trackEvent', 'category', 'action', 'label', , true]);
もし、文書の読み込みを完了させてから処理を行わせるonload、あるいはイベントトラッキングで解説したように何かの行動時に処理させたいなら、onclickなどのイベントハンドラを絡めて記述しよう。
- カスタム変数のセグメントをレポートで確認するには?
カスタム変数のセグメントをレポートで確認するには?
カスタム変数を付与するようにトラッキングコードを変更して、しばらくデータが貯まったら、レポートで確認できるようになる。
レポートは[ユーザー]>[カスタム]>[カスタム変数](図1赤枠部分)を確認しよう。
- グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面の左側にあるメニューで、[ユーザー]をクリックする
- メニューが開くので、[カスタム]をクリックし、[カスタム変数]をクリックする
[ユーザー]>[カスタム]>[カスタム変数]レポートでは、デフォルトで「カスタム変数(キー1)」ディメンションが選択(図2赤枠部分)されている。つまり1つ目のカスタム変数が対象となっている。
「member」(図2青枠部分)をクリックすると、図3のように1つ目のカスタム変数に付与された値「regular」が確認できる。
つまりこのケースでは、トラッキングコードが下記のようになっていたということだ。
_gaq.push(['_setCustomVar', 1, 'member', 'regular', 1]);
このレポートだけでは、それほど多くの指標もなく比較もできない。そこで重要なのは、この例で言えば、会員だけに絞り込んだデータと全体はどうなっているのかといった比較をしたりすることが重要になる。
そこで、アドバンス セグメントの登場だ。カスタム変数の値でデータを分類するカスタムセグメントを作るのだ。
カスタムセグメントの作成方法
カスタムセグメントの作成方法は、レポート左上にある[アドバンスセグメント]ボタン(図4赤枠部分)をクリックし、出てきた画面の右下にある[+新しいカスタムセグメント](図4青枠部分)をクリックしよう。
そこで出てきたカスタムセグメントの設定画面(図5)を見ると、カスタム変数(キー)やカスタム変数(値)がディメンションとして選択できる(図5赤枠部分)。
カスタム変数(キー)やカスタム変数(値01)(図5赤枠部分)でセグメントの指定ができるので、上記の例であれば、次のようなカスタムセグメントをそれぞれ作る。
名前:「会員」
[一致][カスタム変数(値01)][完全一致][regular](図5)名前:「非会員」
[除外][カスタム変数(値01)][完全一致][regular](図6)
1つ目が、カスタム変数(値01)のディメンションが「regular」であるという指定(図5青枠部分)で、会員に絞り込むカスタムセグメントだ。
2つ目が、比較対象として、会員のカスタム変数が設定されていない非会員に絞り込むカスタムセグメントだ。
そして、会員と非会員のカスタムセグメントを掛けて、[トラフィック]>[参照元]>[すべてのトラフィック]レポートや[コンテンツ]>[サイトコンテンツ]>[すべてのページ]レポートなどのレポートを見よう。図7は前者のレポートの出力例だ。
会員と非会員別に、集客別の効果や閲覧コンテンツの違い、成果といった指標で評価して、次に行う施策に生かしていこう。
おまけ:ユニバーサルアナリティクスでのカスタム変数の扱い
カスタム変数は、ユニバーサルアナリティクスでは「カスタムディメンション」あるいは「カスタム指標」というものに代替されることになり、こちらはそれぞれ20種類利用できるので、これから新たに実装する場合は、そのあたりも視野に入れておこう。カスタムディメンションについてもユニバーサルアナリティクスを解説するシリーズが始まったら、取り上げる予定だ。
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- 内容カテゴリ:アクセス解析
- コーナー:衣袋教授のGoogleアナリティクス入門講座
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オリジナル記事:ユーザーにラベルを貼るカスタム変数で、会員と非会員に分けてアクセス状況を調べるには?(第69回) [衣袋教授のGoogleアナリティクス入門講座] | Web担当者Forum
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