- 第1回:成果を出すための正しい顧客データ管理4つの基本
- 第2回:売上効果をアップさせる正しい顧客セグメンテーション方法(今回の記事)
- 第3回:CV数を最大化する顧客視点の流入経路の評価方法
顧客セグメントにありがちな間違い
この企画のターゲット顧客は30代女性です。
顧客セグメントを考えるとき、このように年齢や性別だけを軸にしてはいないだろうか。
結論から言うと、このように顧客セグメントを年齢性別などのデモグラフィック属性(人口統計的属性)だけで考えることは不十分である場合がほとんどである。逆に言えば、その顧客分類の考え方を改善していくことで、売上向上につなげられる可能性は高い。
今回は、顧客セグメントの改善方法の1つとして、Webサイトのアクセスログという顧客行動データを活用する方法を紹介する。いわゆる「行動ターゲティング」と呼ばれるシンプルな手法だが、実践できている企業は意外と少ない。効果的であるにもかかわらず実践されていない主な理由は、「セグメンテーションの考え方」と第1回で紹介した「正しい顧客管理方法」が問題になっている場合が多い。
この問題の解決策として、また蓄積した顧客行動データを活用する方法の1つとしても、本稿を参考にしてほしい。
顧客を深く理解するために必要なこと
顧客データ管理の目的として「顧客をより深く理解すること」を考えている企業は多い。消費者の趣味嗜好や消費活動は多様化し、単純に広告施策にコストをかければ売上が上がる時代でもなくなってきているため、顧客視点で考えていこうとする企業は増え続けており、その重要性はますます高まってきている。
そのような状況において、「顧客理解」という言葉は頻繁に使われているが、これだけでは「いったい、顧客の何を理解すればいいのか?」と、曖昧になってしまっていることも多いので、もう少し具体的にしていきたい。顧客理解を深めるには少なくとも、
- どのような顧客が(基本特性、デモグラフィック)
- どのような興味関心ニーズを持ち、どのようなベネフィットを感じて(心理的特性、サイコグラフィック)
- どのような製品・サービスをどのように購入するのか(購買行動・結果)
これらを明らかにすること必要である。これらの問いを探究していくことで、より精度の高いマーケティング活動が実現されていくのである。
好みや価値観・ライフスタイルを理解する
顧客理解の最初のプロセスとしてまず思いつくのが、年齢・性別の2軸での分類だ。しかし、年齢・性別の2軸だけで分類してしまうと、どうしても表面的でありきたりな洞察になりがちである。
たとえば、一概に「30代女性」と言っても多種多様で、ひとくくりにして深く理解することは不可能だと考えていい。考えてみれば当たり前で、同じ「30代女性」でも、たとえば専業主婦(ママ)、キャリアウーマン、独身OL、ギャル、セレブなお嬢様などが考えられ、それぞれの好みや価値観・ライフスタイルはまったく異なる。そして、好みや価値観・ライフスタイルが異なれば、当然ながら購買行動も異なる。これだけ多様なタイプがいるのだから、「30代女性のニーズは何か?」と十把一絡げに理解しようと考え始めると、迷宮入りしてしまうのだ。
一方で、逆に20代と40代と年齢が離れていたとしても、好みやライフスタイルが似ている人は同じような購買行動をするものだ。年齢や性別よりも、好みや価値観・ライフスタイルが近い顧客の方が同じニーズを持っているものである。
このように、年齢と性別の2軸だけで顧客を分類し、その枠で顧客を理解しようとするには限界がある。多くの実践結果でも、性別や年齢などのデモグラフィック属性情報だけでは不十分であることが実証報告されている。にもかかわらず、企業が顧客セグメンテーションを「30代女性」などデモグラフィック属性だけで考えていることは少なくない。
顧客セグメンテーションといえば年齢性別、ということは決してない。年齢性別の枠を超えて、好みや価値観・ライフスタイルの軸で考えていくことが重要である。
Webの行動データから顧客理解を深める
では、その顧客の好みや価値観・ライフスタイルやニーズをどのように把握するのか。
最も一般的な方法として、顧客心理を理解するためにアンケートするという効果的な方法がある。しかしながら、アンケートに回答してくれる顧客は一部であり、未回答者については情報収集ができないという課題もある。
また、アンケートなどで“聞く”以外に行動を“観察する”という方法がある。その顧客行動の1つがWebサイトの閲覧行動だ。好みや価値観・ライフスタイルは普段の行動に表れるため、閲覧しているコンテンツやシーンに対して興味関心を持っている確率が高い。
たとえば、あるアパレルECサイトでは、ブランドの商品ページを閲覧したユーザーは、閲覧していないユーザーと比べて、そのブランドの商品を購入する確率が7倍も高くなることが確認されている。つまり、Webサイトへのアクセスデータを活用して、「○○をよく閲覧している」などの行動データから顧客理解を深めることは効果的なのだ。
これは当然の内容かもしれないが、実践するためには顧客行動データが必要になる。Webマーケティングの現場では、年齢性別以外のデータを蓄積・活用し、当たり前のことを実施できる環境にある。それを最大限活用していくことが重要だ。
どのようにセグメンテーションするのか
Webサイトの閲覧行動をもとに顧客分類を実施する具体的な方法の1つは、複数の利用シーン(異なるニーズ喚起)のコンテンツを用意し、それに対する反応を見ることだ。代表的な施策の1つとしては、行動ターゲティングメールが挙げられる。ターゲティングというと、高度なシステムや専門家の力が必要だと考えるかもしれないが、次の2ステップで考えるとそれほど難しくはない。
- 1通目のメールは、会員の好みを把握するため同じ内容で配信する
- 2通目以降のメールは、セグメンテーションした内容にカスタマイズする
たとえば、Webサイトの各コンテンツのニーズに合わせたメール本文を作成し、それを1通のメールに並べて配信する。そうすると、顧客は自分の好みや価値観・ライフスタイルにマッチしたコンテンツに反応するので、その反応結果(顧客行動実績)に基づきセグメンテーションをする。
これで好みや価値観・ライフスタイルごとに顧客セグメンテーションができた。そして、次回のメールは、セグメントごとにそれぞれ適したコンテンツを配信する。前回反応したものと同じ嗜好性のコンテンツが送られてくることになり、「お客様には、このような商品がおすすめです……」という、店頭で当たり前の接客手段をWebコミュニケーションで実現させるのだ。
行動ターゲティングメールは特別新しい方法ではない。しかし、実施している企業はどれだけあるだろうか。簡単に思えるかもしれないが、第1回で話したように、Webのアクセスログデータ(メールクリックデータを含む)を顧客にひも付けて管理蓄積している企業でないと、効果的な活用は実現できないのだ。
CRMで重要な要素の1つは、顧客IDにひも付けた行動データの蓄積である。たとえば、アクセスログデータを顧客にひも付けて蓄積し、購買データと総合的に活用することで、属性だけではなく顧客行動に基づいた効果的なセグメンテーションを実現できる。そして、さらには行動実績がある会員を分析することで、セグメントごとの特徴(パターン)を発見できる。そのパターンが発見できれば、購買やWeb閲覧など、実際に行動を起こしていない顧客の好みや価値観・ライフスタイルを推測することも不可能ではない。
実際、筆者がサポートする顧客のなかには、上記のようにWeb閲覧データを活用して顧客セグメンテーションを実施した結果、月商を1.2倍に伸ばした成功例がある。
顧客の理解なくしてマーケティング施策は成り立たない
Webマーケティングにおいて、顧客データ、購買データ、アクセスログデータなど多種多量に蓄積できる(されている)データがあるにもかかわらず、それを活用できていないと考える企業は非常に多い。行動ターゲティングメールは、その活用方法の1つである。もし実施したことがなければ、すぐにでも実施する価値はあるはずだ。
ただ、当然ながら闇雲に実施すればいいというわけではない。今回は顧客セグメンテーションの話をしたが、セグメンテーションばかり考えていてもマーケティング施策は生まれない。しかし同時に、適切な顧客セグメンテーションなしには効果的なマーケティング施策が生まれないのも事実である。
顧客セグメントによって顧客のニーズを理解し、そこから各コンテンツは顧客心理・購買ストーリーの仮説をしっかり立てて全体のコミュニケーションデザインをしていくことが重要である。顧客とのよりよいコミュニケーションを実現するうえで、参考になれば幸いである。
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オリジナル記事:F1層やM1層だけでイメージしていませんか? 売上効果をアップさせる正しい顧客セグメンテーション方法/第2回 [売上向上のためのCRMデータ活用のコツ] | Web担当者Forum
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