Googleアナリティクスは、非常に高度な分析ができる無料のアクセス解析ツールだ。無料の反面、正式なサポートサービスというものがないため、ユーザーは自分で情報を集めなくてはならない。Web担当者にとっては結構な手間だ。そこで本連載では、Web担当者の負担を軽減すべく、導入から、運用、活用まで、初めての人でもゼロから学んでいけるように、丁寧に解説していく。
今回は前回に引き続き[コンテンツ]>[サイト コンテンツ]>[すべてのページ]レポートの使い方について解説する。今回取り上げるのは、クリックマップだ。
ご存じの方も多いとは思うが、クリックマップとは、ページ内でどの場所がクリックされているかをビジュアルで見せるメニューのことを一般的には指すが、Googleアナリティクスのレポートの場合は、ページ内のどのリンクがどれくらいクリックされているかを図解形式で示している。
トップページのクリックマップを表示してみよう
Googleアナリティクスでクリックマップを表示するには、[コンテンツ]>[サイトコンテンツ]>[すべてのページ]レポートを開き、「ページ解析」のタブ(図1赤枠部分)を選択しよう。
- グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面の左側にあるメニューで、[コンテンツ]をクリックする
- メニューが開くので、[サイトコンテンツ]をクリックし、[すべてのページ]をクリックする
- [ページ解析]タブをクリックする
すると、図1のように、上部にはトップページの基本指標(図1緑枠部分)があり、その下にはトップページのリンク別のクリック率が、これがいわゆるクリックマップと言われるスタイルで表示される。そのページにあるリンクのうち、どの位置にあるリンクがクリックされているかが、画面キャプチャー上に表示される形だ。このレポートは[コンテンツ]>[ページ解析]レポート(図1青枠部分)と同じものだ。
ただし、このクリックマップで集計できるのは、サイト内リンクに限るという制限がある。デフォルトでは、プロファイル設定(図2)の「ウェブサイトのURL」の項目で記述したURL(図2赤枠部分)が自動的に対象として選択されるようになっている。
トップページ以外のクリックマップを表示するには?
デフォルトではトップページのクリックマップが表示されるようになっているが、他のページを表示することもできる。
[コンテンツ]>[サイトコンテンツ]>[すべてのページ]レポートで、「エクスプローラ」や「ナビゲーションサマリー」タブのレポートで別のページをあらかじめ選択しておけば、そのページのクリックマップを表示できるのだ。
これに対し、見た目は同じレポートではあるが、[コンテンツ]>[ページ解析]レポートでは、他のページの選択ができないという違いがある。
画面キャプチャー部分をフル表示するには?
この画面(図1)のままだと画面キャプチャー部分の表示エリアが狭く、画面の一部しか表示されていない。しかし、左のメニュー表示部分や、レポート上部の指標表示部分を隠せば、画面キャプチャー部をフルに見ることができる。そのためには、画面キャプチャー部との境にある灰色の線(図1茶色矢印の先の部分)をクリックし、さらに図1黒枠部分のアイコンをクリックすればよいのだ。すると図3のようになる。広い範囲で一覧したいときは、このようにレポート画面をフルに表示してから見るとよいだろう。
表示条件を変更するには?
このクリックマップでは、すべてのリンクが表示されているわけではない。デフォルトでは0.1%以上のクリック率のあるリンクのみが表示がされるように指定(図4赤枠部分)されている。もちろん、この表示条件を変更することも可能だ。表示条件を指定する部分(図3赤枠部分)は左上にある。
この表示割合の条件を指定する部分は「0.00%」「0.10%」「0.50%」「1.00%」「2.00%」「5.00%」「10.00%」の7パターン(図4青枠部分)から選択できる。たとえば「5.00%」を選択すれば5%以上のデータだけに表示が絞られるということだ。ちなみに、「0.00%」を選択すると、わずかでも数値があれば、そのサイト内リンクも表示対象になる。
ページ下部のリンクがどれぐらいクリックされているか?
どの場所のリンクがクリックされているかの他に、このレポートではもう1つの重要なデータを表示している。どの程度ページの下の方でもクリックが発生しているか(図3青枠部分)を知ることができるのだ。
レポートの右側にスクロールバーがある(図3緑枠部分)。これは画面キャプチャー時のスクロールバーではなく、レポート画面上で実際スクロール可能な機能だ。このスクロールバーを少し下に移動したレポート表示が図5だ。スクロールバーを下にずらしてみる(図5赤枠部分)と、一番下に表示されている数値が変化している(図5青枠部分)ことがわかるだろう。
図3では「6%のクリック数が画面下にあります」と表示(図3青枠部分)されており、クリック行為の94%(100%-6%=94%)がファーストビューくらいで見えているページ表示内で行われたことが読み取れる。一方図5では「1%のクリック数が画面下にあります」と表示(図5青枠部分)されており、3分の2くらいまでスクロールしたところまででクリック行為の99%(100%-1%=99%)が行われているということを示している。
ただしこれは、あくまでも「クリックという行為」に対してのページ内での分布割合なので、「どれだけスクロールされたか」というスクロール量の割合を示しているわけではないことに注意しよう。
- クリックマップの一歩進んだ使い方
- 想定ニーズ別にデータを絞り込んでみる
- 新規訪問とリピート訪問の切り分けてみる
- 新しいセグメントを作ってみる
クリップマップの一歩進んだ使い方
細かい部分の補足は次回するとして、クリックマップの基本は以上だ。続いて、このクリックマップのもう少し進んだ使い方を解説しよう。
このようなビジュアルなレポートは直感的に理解できるし、楽しいものだ。上司などにもそのまま見せたいレポートの一つである。しかし往々にしてあるのは、「それで?」という問いだったり、「やはりそうだよね」ということで終えて満足してしまったりすることだ。
「仮説・検証」というのはよく聞くと思うが、このレポートなどはまさにそれが必要だろう。仮説・検証と恰好を付けなくてもいい。要するにあらかじめ問題意識を持っておいてからデータに対峙するということだ。具体的にお話ししよう。
トップページの位置づけとは?
たとえばWebサイトのトップページだが、最近では、検索エンジン最適化が進んで、サイト内の深い階層のページが直接閲覧される割合が増えている。逆に言えば、トップページの相対的な重要度は低下していると言える。しかし、それでもなお、トップページは他のページに比べて、いろんな意味で重要な位置づけであることは、変わりないはずだ。
トップページを設計する際には、以下のようなことを深く考えて作ったのではないだろうか。
- どのような意図を持ったユーザーが来ることを想定しているのか?
- メインビジュアルには何を掲載するのか?
- グローバルナビゲーションの配列やラベル(言葉使い)はどうしたらよいのか?
- どのコンテンツ(及びサイト内リンク)をどの場所に掲載するのか?
そこには、こういうユーザーにはこういう行動を期待したいといった問題意識が反映されているはずだ。それを確かめるにはどうしたらよいだろう。問題意識は各サイトによって異なるので、1つの正解があるわけではないが、そのヒントをいくつか提供していこう。
想定ニーズ別にデータを絞り込んでみる
特にトップページなどで有効だと思われる方法は、セグメントを切ってデータを絞ってみることだ。
トップページにはさまざまな意図を持った人が集まる。ということは、ニーズが分散化しているはずで、その人たち別にいくつかグルーピングして見るということだ。幸い、ページ解析のレポートにもアドバンスセグメントの機能がある(図6赤枠部分)ので、これを活用しよう。
アドバンスセグメントの機能については第35回でも少し解説したが、要するに特定の訪問条件に絞り込む機能だ。たとえば、サイトに初めて訪問した人と複数回訪問している人を区別するのが一番簡単なセグメントの切り方だ。これならデフォルトのセグメントに用意されている。
新規訪問とリピート訪問で切り分けてみる
レポート上部の[アドバンスセグメント]のボタン(図7赤枠部分)をクリックすると、左側に、標準で用意されている「デフォルトのセグメント」群が表示される。そこにある「新規訪問」や「リピート訪問」(図7青枠部分)をチェックして、[適用]ボタン(図7緑枠部分)をクリックしよう。
するとレポート画面上で、上方のプルダウンが1つ増えて、「新規訪問」と「リピート訪問」が選択できる(図8赤枠部分)ようになる。つまり、2つのセグメントを切り替えることが容易なインターフェースが出現するというわけだ。ここで切り替えてデータを見比べてみよう。
なお、ここでは「期間」(図8青枠部分)と表示されていて、確かに期間比較をすることも可能だ。図9はアドバンスセグメントを使用した上で、集計期間の指定では前の期間との比較も行ってみた場合の表示だ。2つの軸の組み合わせをそれぞれ選択することが可能になる。
ここではたとえば「新規訪問」と「リピート訪問」を選択してみたわけだが、「リピート訪問」には、2回目の訪問も含まれているし、10回以上のヘビーリピーターも含まれている。漠然としたリピート訪問者ではなく、なじみ客の行動をもっと浮き彫りにしたいのであれば、リピート訪問をさらに切り分けて見てみるとよい。たとえば、訪問回数が3回以下と10回以上のセグメントを比較するといったことをすると、より利用行動の差が出てくるかもしれない。
新しいセグメントを作ってみる
デフォルトで表示されたセグメント以外に、新しくセグメントを作ることもできる。図7の右下の「+新しいカスタムセグメント」(図7黒枠部分)をクリックして、図9のような簡単な指定をすることで「10回以上の訪問」セグメントを作ることもできる。
「リピートの回数」が9回を超えるという指定(図10赤枠部分)をすれば、すなわち10回以上の訪問という指定になる。これで「セグメントの保存」(図10青枠部分)をクリックすれば、レポートにもこのセグメントが適用され、さらに自作のアドバンスセグメントとして「カスタムセグメント」(図7茶枠部分)にも新規登録される。
- クリックマップ分析の活用例を考えてみよう
クリックマップ分析の活用例を考えてみよう
どのようにこのクリックマップのデータを活用するのか、早稲田大学のWebサイトのトップページ(図11)を使って、仮想の例を紹介しよう。
大学のサイトを利用するのは様々な人たちだ。その様々な人たちを最初に振り分けるために、このサイトでは一番目立つ場所に「~の方へ」というリンク群(図11赤枠部分)を配置している。これはユーザーのタイプ別に誘導する典型的な方法だ。一方「在学生」と「教職員」という2つのリンク(図11青枠部分)は少し別の場所に配置している。
「クリックマップで表示するとどうなるか?」仮説を立ててみる
さて、このページをクリックマップで表示するとどうなるだろう。私は関係者ではないので、データを見たことはないが、以下のように予想してみた。
- 「~の方へ」というリンク群(図11赤枠部分)が最もクリックされている
- その次に「在学生」と「教職員」という2つのリンク(図11青枠部分)とグローバルナビゲーションのボタン(図11緑枠部分)が利用されている
- その下のニュースなどはあまりクリックされていない
こういう予想は往々にして外れるのだが、それはそれでいいのだ。その予想に反していれば、なぜそういう結果なのかをそこから紐解いていけば、よりよいサイトを作っていくヒントが得られるはずだからだ。
クリックマップ解析にもとづいて、どのように改善するか?
具体的なクリックマップの活用法だが、ページの左上が最もよいポジションであるという考えを前提にした場合、たとえばこのケースであれば、「~の方へ」というリンク群(図11赤枠部分)の4つの配置はクリック率の高い順に上から並び替えてみる。そして、グローバルナビゲーション部分についても、クリック率の高い順に左から並び替えてみる。
一方「在学生」と「教職員」という2つのリンク(図11青枠部分)はほとんど使われていないかもしれない。なぜなら彼らはその次のページをブックマークして利用している方が多いと考えられるからだ。では、このボタンは不要かと言えば、削除してはいけないボタンだと思うので、このように別の位置にさりげなく配置しているのは正解な気がする。
「データを見てみたら、クリックされていない。ボタンやリンクを設置しても無駄のようだから削除する」といった一律の考えをしてはいけない。本来の意図や意思を持ちながら、データはその補完やより良い方向への修正に役立てるのがよいだろう。
実際のデータもなく、勝手に解析してみたわけだが、どんなページであれ、何らかの意図があって各ページを作っているはずなので、このように問題意識をもってデータを見てほしい。
・筆者が講師の「Google アナリティクス ゼミナール」が7月に開講されます。丸二日間、Google アナリティクスを徹底的に学ぶ講座です。5月末までの早割があります。お申し込みはこちらからどうぞ。
・『衣袋教授のアクセス解析ゼミナール』が6月に実施されます。丸二日のアクセス解析徹底講座です。4月末までの早割があります。お申し込みはこちらからどうぞ。
・『Googleアナリティクス完全マニュアル』(電子書籍)が、オンデマンドのペーパーバック版でもお買い求めできるようになりました。
→ Amazon.co.jpの商品ページ
- 内容カテゴリ:アクセス解析
- コーナー:衣袋教授のGoogleアナリティクス入門講座
※このコンテンツはWebサイト「Web担当者Forum - 企業ホームページとネットマーケティングの実践情報サイト - SEO/SEM アクセス解析 CMS ユーザビリティなど」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:クリックマップは眺めるだけじゃダメ! 仮説・検証にもとづいた活用法を身につけよう[第51回] [衣袋教授のGoogleアナリティクス入門講座] | Web担当者Forum
Copyright (C) IMPRESS BUSINESS MEDIA CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.