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ピボット表示よりも使いやすい? セカンダリディメンションを使ったモバイル解析[第39回] [衣袋教授のGoogleアナリティクス入門講座] | Web担当者Forum

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この記事を読むのにかかる時間: 約 7 分

Googleアナリティクスは、非常に高度な分析ができる無料のアクセス解析ツールだ。無料の反面、正式なサポートサービスというものがないため、ユーザーは自分で情報を集めなくてはならない。Web担当者にとっては結構な手間だ。そこで本連載では、Web担当者の負担を軽減すべく、導入から、運用、活用まで、初めての人でもゼロから学んでいけるように、丁寧に解説していく。

衣袋教授のGoogleアナリティクス入門講座

モバイル端末の利用割合を確認するのに、第35回では[ユーザー]>[モバイル]>[サマリー]レポートを紹介したが、他にも[ユーザー]>[モバイル]系のレポートの方から組み合わせを探っていく方法もある。

今回は[ユーザー]>[モバイル]>[デバイス]レポートをベースにして、セカンダリディメンションという技を使いながら分析していく方法を紹介しよう。また後半では、さらに詳しくモバイル環境でのユーザー行動を理解するための分析方法を2種類、紹介する。

[ユーザー]>[モバイル]>[デバイス]レポートを見てみる

まずは、今回の素材となる[ユーザー]>[モバイル]>[デバイス]レポートを開いてみよう。

図1:[ユーザー]>[モバイル]>[デバイス]レポート
図1:[ユーザー]>[モバイル]>[デバイス]レポート
操作手順
  1. グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
  2. 画面の左側にあるメニューで、[ユーザー]をクリックする
  3. メニューが開くので、[モバイル]をクリックし、[デバイス]をクリックする

デバイスをクリックすると、レポートが表示される。図2が、この[デバイス]レポート下部の一覧表示部だ。そのままでも、どのようなモバイル端末からどれぐらいのアクセスがあるのかを知りたければ、このレポートだけでも十分な情報が得られる。

標準の状態では「携帯端末の情報」には「Apple iPhone」「Apple iPad」などの表示が見られる。これは、「プライマリディメンション」に「携帯端末の情報」(図2赤枠部分)が選択されている状態だ。

第9回で「ディメンション」について説明したが、「プライマリディメンション」とは、「○○ ごとに、×× を見る」の「○○」の部分だ。

図2:[ユーザー]>[モバイル]>[デバイス]レポートの下部一覧表示部
図2:[ユーザー]>[モバイル]>[デバイス]レポートの下部一覧表示部

「セカンダリディメンション」で「画面の解像度」を表示する

では、データを分けて見る「ディメンション」をさらに掘り下げてみよう。

「プライマリディメンション」の表示の下にあるボタン群の中にある「セカンダリディメンション」(図2青枠部分、図3赤枠部分)をクリックしてみよう。すると図3のように、ディメンションを選択するプルダウンが表示されるので、「ユーザーの環境」のグループの中にある「画面の解像度」(図3青枠部分)を選択する。

図3:「セカンダリディメンション」で「画面の解像度」を選択する
図3:「セカンダリディメンション」で「画面の解像度」を選択する

すると、一番左の列には、先ほどと同じ「プライマリディメンション」の「携帯端末の情報」が表示されているが、左から2番目の列(つまり「セカンダリディメンション」)には、今選択した「画面の解像度」(図4青枠部分)が表示される。左から3番目の列には、最初に表示されていたのと同じ指標である「訪問数」(図4緑枠部分)が表示されているが、その値は図2のものよりもさらに掘り下げた値になっている。

図4:「セカンダリディメンション」に「画面の解像度」を選択して表示した画面
図4:「セカンダリディメンション」に「画面の解像度」を選択して表示した画面

たとえば図4では「携帯端末の情報」の上から2つに「Apple iPhone」が並んでいるが、「画面の解像度」が違う。上の「Apple iPhone」は、「320×480」で、下の「Apple iPhone」は「320×568」だ。そして、それぞれに訪問数が表示されている。

これはつまり、「携帯端末の情報」と「画面の解像度」の2つのディメンションの組み合わせ別の「訪問数」が表示されているということだ。第37回で紹介したピボット表示(図9)が、表頭と表側にそれぞれ別のディメンションを配置して縦横の組み合わせで見るのに対して、2つのディメンションの組み合わせを2列の並列表示で見せる方法が「セカンダリディメンション」だ

セカンダリディメンションとは何か?

セカンダリディメンションの機能は初出なので、もう少し補足しておこう。本連載の第9回「ディメンションと指標の違いを理解する」で解説したとおり、通常のレポートはプライマリディメンションの項目別(図5赤枠部分)の各指標群(図5青枠部分)というデータの見方になる。

図5(図2と同じ):[ユーザー]>[モバイル]>[デバイス]レポートの下部一覧表示部
図5(図2と同じ):[ユーザー]>[モバイル]>[デバイス]レポートの下部一覧表示部

ここでセカンダリディメンションの指定をすると、表部分の左から2列目にもう1つのディメンションの項目名が追加され(図6オレンジ枠部分)、2つのディメンションの組み合わせで各指標群(図6青枠部分)を見ることができるのだ。

図6:セカンダリディメンションも表示したところ
図6:セカンダリディメンションも表示したところ

つまり、次のようになる。

  • ピボット表示―― 1つの指標を、2つのディメンション別に見る機能(正確にはオプションで最大2つの指標を見られる)

  • セカンダリディメンション―― 複数の指標群を、2つのディメンション別に見る機能

またピボット表示は、表頭の項目は一度に5つまでしか表示できず(図7青枠部分)、右横に続く列で非表示になっている部分を含めて一括ダウンロードすることができない。よって、ピボット表示は項目数が多いディメンションを表頭に配置するのには適していないという制約がある。第37回図7に続く説明文にも書いたが、ピボット表示は、表頭の項目が数個以下の場合に限り、見やすいレポートになるとはそういう意味だ。

図7(第37回の図8と同じ):ピボット(モバイルトラフィックでセグメント)
図7(第37回の図8と同じ):ピボット(モバイルトラフィックでセグメント)
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  • モバイル利用の際に問題が生じていないかをさらに詳しく確認するには?
  • [ブラウザとOS]レポートの3つの指標グループも使える

モバイル利用の際に問題が生じていないかをさらに詳しく確認するには?

セカンダリディメンションの解説はここまでにして、ここからは、さらに掘り下げた分析について解説していく。

第35回からここまでで、モバイルデバイスによる利用がどれぐらい進行しているのか、その度合いを調べるレポートを詳細に見てきた。

これらのデータだけからでも「レスポンシブWebデザイン」への対応が急務なのか、どの程度まで、どのように対応していくべきかなどに関するヒントは十分得られる可能性はあろう。ここからはさらに踏み込んで、各種デバイスからの利用などに関してユーザーに問題が生じていないか、そういう問題や課題を発見することができないかどうかについて考えていこう。

モバイル環境からの利用で容易に問題点として考えられるのは、

  • ユーザーが移動しながら利用しているときに問題が発生していないか
  • 画面表示が狭い条件下での利用に特有の問題が生じていないか

などがあろう。この問題点の評価軸は、たとえばじっくり見てくれないために、直帰率が高いのではないか、その結果、サイトの売上などの目標達成や成果を阻害しているのではないかという点だろう。

図8は[ユーザー]>[ユーザーの環境]>[ブラウザとOS]レポートを表示した上で、データ一覧表示部の表示形式から「データ」(図8赤枠部分)を選択した表だ。

図8:[ブラウザとOS]レポートで表形式を選択して表示した画面
図8:[ブラウザとOS]レポートで表形式を選択して表示した画面

このレポートでは、ブラウザ別の「訪問数」「訪問別ページビュー」「訪問時の平均滞在時間」「新規訪問の割合」「直帰率」といった指標を見ることができる。

図8からは、

  • モバイル環境とPC環境との違いがあるのか
  • あるとすれば、どの程度の違いがあるのか
  • 問題は深刻なのか

といったことを読み取るべきだ。どこのデータをどのように見ていけばいいのだろうか。

まずは、プライマリディメンションの「ブラウザ」に着目しよう。例として挙げているこのサイト(データ)のブラウザには、PC環境のブラウザと、モバイル環境のブラウザが混在している。ブラウザが「Chrome」「Firefox」「Internet Explorer」など、ほとんどがPC環境からの閲覧と思われる場合の直帰率は、平均すると60%台後半で、訪問別ページビューは約2.0、訪問時の平均滞在時間は1分半くらいだ。直帰率は高く、1訪問あたりのページビュー数や滞在時間は多く(長く)ない印象がある。

これに対して、モバイル環境が大半と思われる「Safari(in-app)」「Android Browser」は、直帰率が70%台後半で、訪問別ページビューは約1.5、訪問時の平均滞在時間は1分超ぐらいだ。上記のPC環境のデータと比較して、大幅にユーザーの利用状況が悪いとも言い切れない感じがする

PCモバイル
直帰率60%台後半70%台後半
訪問別ページビュー約2.0約1.5
訪問時の平均滞在時間1分半ぐらい1分超ぐらい

数ある指標の中でも、最も重要な指標の1つである「訪問数」は量を示す指標で、全体に占める影響度合いを示す大事な指標だ。その右側の指標群(図8青枠部分)も同じく量的指標で、ユーザー体験の質を測る指標と言ってもよいだろう。「訪問別ページビュー」は1訪問あたり平均のページビュー数、「訪問時の平均滞在時間」は1訪問あたりの平均滞在時間である。もし、モバイルでの閲覧に何らかの問題があり、そのせいで「直帰率」が高い、すなわち1ページ見ただけで帰ってしまう訪問が多ければ、「訪問別ページビュー」と「訪問時の平均滞在時間」の2つの指標は相対的に低くなるという関係性がある

もちろんPCとモバイルで利用シーンがまったく異なる場合もあるだろうから、大きな乖離があっても即問題ということにならないかもしれない。もし明らかに大きな乖離があるという状況が把握できたのであれば、ここから先はアクセス解析データをさらに細かく分析するのではなく、各種モバイル端末を使って実際にユーザーと同じようにサイト内を巡ってみたり、実際の利用者に感想を聞いてみたりするのもよいのではないだろうか。

[ブラウザとOS]レポートの3つの指標グループも使える

これ以外の評価軸として、「指標グループ」を解説しておこう。

標準のレポート群にデフォルトで用意されている指標群のセットを「指標グループ」と呼ぶが、今回見ている[ユーザー]>[ユーザーの環境]>[ブラウザとOS]レポートの「指標グループ」には、「利用状況」「目標セット」「eコマース」(図9赤枠部分)の3つが用意されている。

図9:[ブラウザとOS]レポートの「指標グループ」メニュー
図9:[ブラウザとOS]レポートの「指標グループ」メニュー

「利用状況」指標グループ

「利用状況」は、「訪問数」「訪問別ページビュー」「訪問時の平均滞在時間」「新規訪問の割合」「直帰率」といったような図8で扱った指標群である。今回説明してきたように、多くの場合は、この「利用状況」の指標群を組み合わせて、問題を探っていく。

「目標セット」指標グループ

「目標セット」は管理画面で目標設定されていると表示される。目標は最大20個で、目標セットは最大5つの目標を4セット作成することが可能なので、図9の「目標セット1」のようなタブは「目標セット4」まで最大4つ表示される可能性がある。目標設定のしかたについては、「プロファイルの目標を設定する[第5回]」で詳しく説明したので、そちらを参照していただきたい。

「目標セット」の指標グループを選択すると「訪問数」「コンバージョン率」「平均目標値」「各目標のコンバージョン率」の指標群が表示される(図10)。

図10:「目標セット」指標グループの指標群
図10:「目標セット」指標グループの指標群

図10では目標設定が1つで、実際の表示形式としては、「目標1の目標名(目標1のコンバージョン率)」(図10赤枠部分)となる。複数目標設定をしている場合は、その右横に「目標2の目標名(目標2のコンバージョン率)」のような表示項目が増えていく。

「eコマース」指標グループ

「eコマース」は管理画面でeコマースの設定を有効にしていなくても表示される。ただし、その場合は、売上関係のすべての指標はゼロなので、実質的に見る意味はない。「eコマース」の指標グループを選択すると「訪問数」「収益」「トランザクション数」「平均値」「eコマースのコンバージョン率」「平均訪問単価」の指標群が表示される(図11)。

図11:「eコマース」指標グループの指標群
図11:「eコマース」指標グループの指標群

環境別に指標を比較して、改善の必要性を判断する

「目標セット」と「eコマース」の指標グループには、成果に結びついたかどうかの視点で評価できる指標群が揃っていると言えるだろう。

図12:「eコマース」指標グループを選択したレポートの一部
図12:「eコマース」指標グループを選択したレポートの一部

図12のように、WindowsなどのPC系のOS環境と、AndroidやiOSなどモバイル環境からの成果を比較して、

  • モバイル環境からの成果が著しく低くないか
  • 「利用状況」の指標グループから見たユーザーの質との対比で成果はどうなのか

といった視点で各指標を見ることで、モバイル環境からの利用行動を改善させることが急務なのかどうかといったことを判断することができる。

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衣袋 宏美

衣袋 宏美(いぶくろ ひろみ)

1960年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。大手電気メーカー勤務後、日経BP社インターネット視聴率センター長を経て、2000年ネットレイティングス入社、視聴率サービス立ち上げに参画、2006年ネットレイティングス社(現ニールセン株式会社)フェローに就任。株式会社クロス・フュージョン代表取締役。またデジタルハリウッド大学院客員教授、米Digital Analytics Association会員、アクセス解析イニシアチブ副代表。

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