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セミナーイベント「Web担当者Forum ミーティング2012 Autumn」(2012年11月8日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。
Web解析のデータを、アクションにつなげられない。このような課題を抱えるWeb担当者は少なくないだろう。インターネットマーケティングの総合コンサルタント企業、メディックスのWebアナリストである於保(おほ)真一朗氏が、データをアクションにつなげられない原因と、そうした状況を打破する9つのポイントを解説したセッションをレポートする。
4割近いマーケッターが、データをアクションにつなげられない
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事業推進部 ソリューショングループ
マネジャー
於保 真一朗氏
於保氏はまず、解析ツールによって得たデータを活用できていないマーケッターが、4割近くに上るという調査結果を『Web Analytics Action Hero』から紹介。こうした状況を「データからアクションにつながらない症候群」と名付け、その要因をドミノに例えて説明した。
データからアクションに到る間には、レポートや解析、意思決定といった工程がある。これらの工程が1つでも抜け落ちてしまうと、ドミノの牌を引き抜いたときと同じように、流れがそこでストップしてしまうというのだ。
その他に於保氏は、次のような要因も考えられると語った。症候群に直面しているWeb担当者やその予備軍とも言える担当者は、いくつかの項目で思い当たる節があるかもしれない。
- 解析の目的が明確になっていない
- KPI/分析要件が定まっていない
- ツールへのカスタマイズ設定が不十分である
- レポーティングのスキルが不足している
- 適切な考察/改善案が浮かばない
- 社内外へのアプローチが不足している
- 検証しても、結果を見ただけになっている
- 組織で取り組みができてない(浸透しない)
- 解析に関して停滞してしまっている(データ活用によるPDCA推進の意識が弱い)
データを見て改善を続けることがサイトの価値を高める
於保氏はこのように症候群の要因を説明したあと、状況を打破し、データからアクションにつなげるための9つのメソッドを披露した。それぞれのメソッドの要点を紹介していきたい。
1.解析の目的を明確化する。
Web解析の目的は、Webマーケティングの目標達成に向けた施策の最適化を図ることにある。於保氏は、ここでいう最適化とは「環境、リソース、スキルなど限られた条件のなかで、最適な方法でビジネス要件を達成すること
」であり、あるいは「レバレッジを効かせ、最少の労力で最大の効果を発揮すること
」だと補足した。このような最適化を行うためには、問題点に対処し、評価できる点を伸ばしていく必要がある。
施策効果や顧客行動を「見える化」し、アクセスから売上に到るまでの各構成要素(KPI)に数値データをあてはめて(図1)、どの数値を改善したらどれだけ売上がアップするのか、シミュレーションしてみると効果的だという。
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2. KPI設計、要件定義をする
KPIを見える化するには、前提としてゴールに到るまでのKPIツリーの設計を適切に行う必要がある。そのために於保氏が紹介したのが、ユーザー視点と企業視点の両方をかみ合わせてKPIを設計する手法だ。通常、KPIは、「認知促進」「購買促進」「再訪促進」といった具合に、企業視点のみで考えられがちだ。しかし「見たい」「買いたい」「調べたい」といったユーザー視点でKPIを設計し直してみることで、従来隠れていた分析要件が明らかになってくるという。
たとえば、自分自身がECサイトで買い物をするとき、買い物かごに入れる前に商品詳細ページを必ずチェックするのではないだろうか。こう振り返れば、商品詳細ページ到達数は非常に重要なKPIであることがわかる。
そして、商品詳細ページに到る導線を調べた結果、「カテゴリ一覧経由のユーザー数に比べて、ブランド一覧経由のユーザー数が少ない」ということが判明したとすると、ブランド一覧のリンクを増強していくといったKPI改善施策が立てられる。「解析ツールをやみくもに見るのではなく、きちんとKPIを設計し、意図をもって分析するのが大事
」だと於保氏は強調する。
3.データを正しく取得する
高機能なツールであっても、設定が不十分だと分析に必要なデータを取得できずに機会ロスが生じてしまう。KPIに対応するデータを取得することが、データをアクションにつなげるための土台になる。4.レポーティングスキルを習熟する
レポーティングには、データに基づき時系列で変化を見たり、問題点を発見したりする「概況把握」、目的やテーマを絞り込んで改善のヒントを探る「深掘分析」、施策(アクション)の効果を検証する「施策検査」の3つのアプローチがあり、於保氏は医療サービスに例え「健康診断、精密検査、術後検査」だと説明する。解析のステップには次の7段階があるそうだ。
- STEP1:分析要件を定義する
- STEP2:仮説を立てて必要な情報を洗い出す
- STEP3:適切な情報を収集する
- STEP4:分析の際にどんな前提を置くべきか確認する
- STEP5:集めた情報を加工する、計算する
- STEP6:目的につながる解釈をする
- STEP7:加工結果や解釈をわかりやすく
またユーザーのパス(導線)レポートのチェックポイントとしては、フォールアウト(シナリオ通り遷移するか)、前後のページフロー(どこに遷移するか)、クリックマップ(どこがクリックされるか)という3点が重要だという。
5.インサイト&改善案を出す
このメソッドは、簡単に言えば「データをどう読み取っていくか」ということだ。於保氏は、「ページ貢献率」という指標に着目して改善案を出し、成果を上げた事例を紹介した。ページ貢献率とは、そのページを経由してコンバージョンに到達した数(貢献数)を、そのページ全体の訪問回数で割った数字になる。
於保氏はあるECサイトで、ファッション小物のページ貢献率が非常に高いにもかかわらず、トップページから遷移しづらい階層に置かれている状況に気づき、ファッション小物ページへの導線を改善した。その結果、当該ページへの訪問者数が2倍に増えたという。ファッション小物ページの掲載商品は比較的低価格なため、訪問客の増加は初回購入率のアップにもつながった。なお、このときの小物特集企画では、Flashで作りこんだリッチコンテンツよりも、商品を並べただけのシンプルなコンテンツの方が、購入貢献率が高かったという。
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このほか、サイト内検索のデータをもとに改善した事例も紹介された。「財布」のサイトの検索数が突出していることがわかり、始めは季節的な要因などを考えたが、継続して検索されていることから、グローバルナビに情報がないためだと仮説を立てた。そこでグローバルナビに「財布」を追加した結果、「財布」のサイト内検索数が減少し、ナビゲーションのクリック率と売上の増加につながったという。
6.アプローチ/アクション
分析したデータをもとに立てた改善施策をアクションにつなげるためには、社内のさまざまな関係者に、理解・共感・行動してもらう必要が生じる。単に分析結果を伝えるだけではなく、共感して動いてもらえるようなストーリーをつくることが大切だと、於保氏はアドバイスする。
私の経験上、物語をつくるのが効果的だと思います。共通のビジョンやゴールを確認し、共通の敵を見つける。そしてそれらを解決するヒーローを登場させ、チーム一緒で頑張りましょうというストーリーです。
データをそのまま関係者に見せても、あまり動いてくれないと思います。データの左脳と、直感やアイデアの右脳をつなげる文脈をつくってください。
7.価値を見極める/磨きをかける
このメソッドは施策実施後の価値を見極め、場合によっては軌道修正をかけることだという。於保氏は、あるリード獲得型サイトのリニューアル事例を挙げて説明した。
訪問からゴールに到るまでの導線設計を一気通貫型に見直し、コンバージョン(資料請求)を高めるためにリニューアルを行いました。具体的には、表面的なサービス概要ページのみで離脱していたものを、より詳細に特長を伝えられるように導線設計し直しました。しかし、結果としてフォーム入力ページからの完了率は大幅向上しましたが、サイト全体のコンバージョン数値には変化がみられませんでした。
データを確認すると、詳細ページまでは到達していたものの、その後の資料請求ページへ流せておらず、一方で興味を分散させてしまうような「体験談をもっとみる」というリンクが多く踏まれていた。結果的に、このリンクがサイトからの離脱を招いていたことが原因だと判りました。そこで、この「体験談をもっとみる」コンテンツへのリンクを取り除くことで、ようやくサイト全体のコンバージョンを当初の期待通りに高めることができました。
於保氏はこの経験によって、軌道修正の大切さを思い知らされたという。
「毎日0.1%の改善を365日続けると、44%成長する」。データを見て、少しずつであっても、改善を続けることが非常に大事だと思います。
場合によっては、前述のサイトリニューアル事例のように、コンセプトはあっていても結果が思わしくないこともある。しかし、Before-After-After……と、改善後に軌道修正をかけ、目指す方向へと改善を続けることが、右肩上がりに成果を伸ばすことにつながる。
8.組織を動かす
於保氏は「上層部にも働きかけて、組織にPDCAサイクル活動を組み込んでほしい」と話す。一方で、経営と現場では見るべきデータの粒度が異なるため、しっかりとKPI設計を行い、各担当者が必要なデータをすばやく得られるような、ビジネス要件にあった仕組みを実装することが重要になる。目標を決めたうえで、「いろいろな人を巻き込みながら、定例会を行う」とアクションにつながりやすいと、於保氏はアドバイスする。
9.「DRIVE」を継続させる
最後のメソッドは「データを軸に駆動させること」だ。「DRIVE」には、設計(Design)し、現実的に考え(Realize)、理想を求め(Idealize)、視覚化し(Visualize)、自分自身もユーザー体験する(Experience)という意味も込められている。
最後に於保氏は「ディズニーランドが完成することはない。世の中に想像力がある限り、進化し続けるだろう
」というウォルト・ディズニーの言葉を紹介し、データを見て改善し続けることの重要性をあらためて指摘し、講演をまとめた。
ディズニーランドに何度行ってもおもしろいのは、改善をどんどん続けているからです。このようにしたらお客様が喜ぶのではないかと考え、大小かかわらず、組織的に改善をすることに積極的です。Webサイトにとってもお手本になる事例が、ディズニーランドだと思います。
- コーナー:【レポート】Web担当者Forum ミーティング2012 Autumn
- 内容カテゴリ:その他
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オリジナル記事:データからアクションへつながらない症候群を打破する9つの秘訣/メディックス [【レポート】Web担当者Forum ミーティング2012 Autumn] | Web担当者Forum
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