SEOでターゲットとするキーワードの選定を、みんなは、どういった方法、どういったロジックで行っているのだろうか。
グーグルは2014年、Google AdWordsで「類似パターンを含まない完全一致キーワード」のみを指定できるオプションを廃止したが、結果としてキーワードの調査は不確実性が増し、はるかに困難になった。
今回のホワイトボード・フライデーでは、ランドがこの変更の影響について取り上げ、変更後も最大限効果的な調査を行うためのヒントを紹介する。
「本当の完全一致」ができなくなったAdWordsの世界
今回は、キーワード調査や、グーグルのAdWordsプラットフォームで、類似パターンを含めない完全一致キーワードだけを指定して入札するオプションが廃止され、完全一致でも類似パターンが含まれるようになったことから起きる問題について取り上げよう。
AdWordsはもう10年も、SEOやPPCの担当者がキーワードの調査や機会把握のために好んで使うツールとなっている。AdWordsにおいてキーワードをどう選ぶかに関しては、これまでずっと複数の選択肢があった。
ここでは、食品をネット販売していて、アジアの調味料である魚醤(fish sauce)をネットで販売しているとしよう。そして、入札するキーワードやフレーズを多少変更したいとする。
角かっこ([ ])を使って完全一致だけを指定すれば、正確に「fish sauce」というキーワードに入札できる。単数と複数といった語形変化や、「Vietnamese fish sauce」(ベトナムの魚醤)のような修飾語句は含めずに、「fish sauce」というキーワードだけを指定できるのだ。
あるいは、キーワード自体の語形変化は含めないが、「Vietnamese fish sauce」や「fish sauce recipes」(魚醤 レシピ)は含めるフレーズ一致を選択することもできる。
また、「fish sauce」の部分一致を選択すると、グーグルが関連すると判断するすべてのキーワードが追加される。
ところが、2014年9月をもってGoogle AdWordsはこの方針を変更した。すべてのキャンペーン、およびキャンペーンの中で用いるキーワードには、類似パターンしか使えなくなった。要するにグーグルは、類似パターンなしの完全一致というオプションをなくし、「このパワーツールは便利だとは思わないから、このオプションは撤廃することになる」と言っているわけだ。
これに対する見解は2つある。1つは、グーグルが「悪事を働かなくてもお金は稼げる」というモットーを取り下げて、新たに「利益になるのなら多少の悪事も構わない」というモットーを掲げたとするものだ。この見方にも一理ある。
ただし、WordStreamのラリー・キム氏をはじめ多くの人が指摘しているように、実際に多くのキャンペーンでは(キム氏が言及したWordStreamに統合されているキャンペーンもほとんどは)、完全一致の選択肢は使われていない。だから、あまり打撃はないだろうし、グーグルが「“類似パターンなしの完全一致”はきわめて厳格な機能で、入札する小規模事業主やユーザーがどのように利用しているかに懸念がある。利用しているユーザー全員がパワーユーザーというわけではない。人々は戸惑ってしまう。そのため、この機能を廃止することにした」と言っているだけだというわけだ。
僕が思うに、本当の理由はこの2つの見方の中間にあるのだろう。この変更がグーグルに相当の額の売り上げをもたらすことになるのはほぼ間違いない。なぜなら、はるかに多くの人々が、本来入札するべき本当に必要なキーワードやフレーズに加えて、これまで入札する気もなかったし特に必要でもなかったキーワードやフレーズに入札することになると思われるからだ。
いずれにせよ、そうした細かな調整権限の一部が失われたことになる。これはPPC担当者にとってきわめてフラストレーションのたまる事態だ。
キーワードプランナーにみる「推奨キーワード」の不思議
しかし実はそれだけではない。SEO担当者にとっても同様に歯がゆい状況になる可能性があるのだ。今後どうなるか、はっきり言って僕たちにはわからない。データがないのだ。2014年9月からどう変わったのかを追っていくと、非常に興味深いだろう。
Google AdWordsのキーワードプランナー(グーグルアカウントでサインインできる無料のAdWordsツール)にアクセスして、「fish sauce」などの検索キーワードを入力すると、さまざまなキーワードが返ってくる。僕が「fish sauce」で検索してみたところ、これに関連するキーワードが返され、平均月間検索ボリュームは2万2200件で、競合性は「低」だった。
ちなみにこの「競合性」はSEOの競合性ではなく、AdWordsそのものにおける競合性で、入札している人の数や、どれほど積極的に入札しているかなどを示すものだ。なお、SEOの競合性について確認したければ、MozのKeyword Difficultyスコアなどを参照してほしい。
さらに、他の推奨キーワードが示され、これらのキーワードについて検索ボリュームといったものが表示される。推奨キーワードには納得できるものもある。たとえばこういうものだ。
- 「Thai fish sauce」(タイの魚醤)
- 「fish sauce substitute」(魚醤の代用品)
でも、「vegan fish sauce」(厳格なベジタリアン向け魚醤)なんてのも表示される。こんなキーワードが役に立つのかな?
あげくに「sauces for fish」(魚料理用ソース)なんてものまでが表示される。魚料理用ソース? 冗談だろう? 僕が売っているのは「魚から作ったソース」だぞ。確かに「sauce」も「fish」も含まれているのはわかるが、意味がまったく違うじゃないか。ここに表示されること自体がおかしい。
わからないのは、これらのキーワードが完全一致なのか、フレーズ一致なのか、それとも部分一致なのかということだ。僕の推測だが、類似パターンを含むか含まないかはとにかく、検索ボリュームの数字を見る限り、これは部分一致だと思う。
これはなかなか厄介だ。非常に興味深いのは、2014年9月の変更後これらの数字の多くが劇的に変わったのかどうかということだ。
つまり、次のどちらなのかということだ。
グーグルは以前は、これらのキーワードと完全に一致する狭い範囲のデータを表示していたのが、今になってキーワードごとにより広い範囲の数字を出すようになったのか
あるいは、この変更以前から、すでに広範な数字しか出していなかったのか
僕は、後者(すでに広い範囲のデータになっていた)ではないかと思っている。グーグルは実際、数年前から、こういったものに関してより現実的な数字を提供していたのではないだろうか。
これらの数字には、多くの類似パターンや、おそらくはもっと広いさまざまな範囲の一致も含まれていると思う。たとえば、「fish sauce」の場合、この2万2000件という数字には実際のところ、「sauces for fish」も含まれているかもしれない。こんな状態だと、キーワードの調査はきわめて難しい。
SEOの人間に、なぜこれが問題になるのか
SEOに従事する僕たちにとって、完全な「完全一致」のオプションがなくなることでキーワードの調査はよりいっそう困難になる。各キーワードのパフォーマンスは僕たちにとって非常に重要なものなのに、PPCのデータによって、キーワードのパフォーマンスを推測することが難しくなるのだ。
これまでは、PPCで入札してみてその結果を見ることで、「Thai fish sauce」で検索したり特定のブランドの魚醤を検索したりする人は、「fish sauce」という範囲の広いフレーズで検索する人よりも、購入の可能性がずっと高いといったことが分かっていた。
僕たちは、PPCのデータを頻繁に使って、こんな風に説明しているからだ。
このキーワードは、とても価値が高い。SEOチームのみんな、この検索キーワードでオーガニック検索結果の上位に表示されるようにしよう。だって、PPCではこのキーワードで高いROI(費用対効果)が得られているんだから。
しかし、データに類似パターンが含まれてるということは、こうした判断をしづらくなるのは、間違いない。実に苛立たしい事態だ。
また、キーワードの調査に使う数字に不要な情報が混ざり込む可能性も高くなる。これは、データにより多くのキーワードの類似パターンが含まれることから生じ得る。どうなっていくかはこれからわかるだろう。これによって、僕たちの調査や優先順位付けのプロセスが混乱するかもしれない。もっとも、そういった事態はすでに始まっているのかもしれないが。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回では、今回説明したような事態を受けて、どのような対策が打てるかを見ていく。(後編はGW明けの5/11に公開予定)
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オリジナル記事:SEOのキーワード調査2015:キーワードプランナーを100%頼りにはできない時代の方法論(前編) | Moz - SEOとインバウンドマーケティングの実践情報 | Web担当者Forum
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