カルビーではWebを使ったコミュニケーションに10年以上前から取り組んでいますが、最近ではコミュニケーションの質が変わり、より気軽なものが求められているのを実感していました。
これまでカルビーサポーターズクラブやじゃがり校のコミュニティは、お客様とがっぷり四つに組むようなコミュニケーションでしたが、もっと気軽に企業と出会える接点として、ソーシャルメディアが必須だと考え、プロジェクトを立ち上げました。
カルビーでは、2004年からコーポレートサイトで展開していたコミュニティでの濃いコミュニケーションとは異なる、手軽に会話できる場として、FacebookとTwitterの運用を2014年に開始した。約10年前から双方向のコミュニケーションに取り組んできた同社だが、ソーシャルメディアに本格的に取り組みはじめたのは意外にも最近のこと。その背景には、消費者の生活スタイルの変化があるという。
消費者の利用するメディアやデバイス、コミュニケーションの変化にあわせた施策としてソーシャルメディアを運用する同社 コーポレートコミュニケーション本部の谷兼氏、伊藤氏、多田氏に日々の運用や成果についてうかがった。
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10年以上のオウンドメディア運用歴。コミュニケーションの変化を実感
――2014年からFacebook、Twitterの運用を開始ということですが、すでにWeb上の施策をいろいろな形で実践されていたと思います。まずはその活動を教えて下さい。
伊藤弊社では、Webを使ったコミュニケーションに10年以上前から取り組んでいます。Webサイトにマイページ機能を作って、ユーザー登録してサイト内で遊んでいただける仕組みを作ったのは2005年です。こちらは現在登録ユーザーが50万人を超えています。
その前の2004年には、企業ファンクラブとしてカルビーサポーターズクラブを設立しており、お客様との双方向コミュニケーションを目的に運用しています。当初は紙ベースのコミュニティでしたが、2006年にWebコミュニティをスタートし、2010年にWebへ完全移行しました。こちらは、オンラインだけではなく、会員が集まってジャガイモを掘る、栽培するといった活動もあり、ネットとリアルを融合させた取り組みをしています。
さらに2007年には、じゃがりこのコミュニティサイト「じゃがり校」を開始し、ユーザーと一緒に商品開発を始めました。
こうした施策をするなか、一方で最近はコミュニケーションの質が変わり、より気軽なコミュニケーションが求められているのを実感するようになってきました。そこで、2013年にソーシャルメディアのプロジェクトを発足し運用の準備を始めたんです。
時代・世代の変化にあわせたコミュニケーションに取り組む
――大手企業のソーシャルメディア活用としては遅い印象がありますが、何か理由があったのでしょうか。
伊藤ひとつは、ネガティブなお声に過敏になっていたことですね。お客様相談室に寄せられるお声は毎月レポートとして全社で共有されるのですが、こうしたお声にオープンな場所でどう誠実に対応できるか、二の足を踏んだところがあります。
Facebookは実名性ですし、ある程度は顔が見えるので、これまでのコミュニティの延長線上で運用できると考えていたのですが、Twitterは実名性ではないのと、Twitterならではの雰囲気のなかに、カルビーがどうやって入っていくか不安が大きかったです。しかもそのころは、企業の「ソーシャル疲れ」も話題になっていました。
しかし、お客様のWebでのコミュニケーションが変わっていることはわかっていました。カルビーサポーターズクラブやじゃがり校のコミュニティは、どれもお客様とがっぷり四つに組むようなコミュニケーションで、成果も得ていましたが、お客様が忙しい時間のなかで、もっと気軽に企業と出会える接点を求めているとも感じていました。弊社としても、時代に合わせたコミュニケーションを通したLTV向上を目指すなかで、ソーシャルメディアは必須だと考え、マーケティング、コミュニティ運営、お客様相談室など、様々な部門が集まってプロジェクトが発足したのが2013年です。
谷兼時代ごとのWebマーケティングの変遷を見ると、1996年にホームページ、2004年に企業ファンクラブ(Webは2006年)を開始し、ロイヤルティマーケティングに取り組み、そして2014年にSNSというように新しい施策がどんどん増えてきています。
弊社の利用者属性を見ると、Webサイトを訪問するのは、35~55歳の方がメインになっています。では、それより下の世代のコミュニケーションをどうするかと考えたとき、25~35歳はFacebook、15~25歳はTwitterが適していると考えました。つまり、世代によってコミュニケーションツールが変わるので、それにあわせて企業もコミュニケーションできるようにしないといけないということですね。
Webサイトはお客様の方から見に来てもらうので受け身、コミュニティはお客様とガッツリ組む、そしてSNSはその中間のふわっとしたつながりを作れればと思っています。
Web・マス・ソーシャルメディアを掛けあわせた新しいブランディング戦略
――Facebookページは、コーポレートの「Calbee カルビー」と「Calbee ひとくち劇場」がありますが、ひとくち劇場はどのような位置づけですか。
谷兼ひとくち劇場は、企業ブランディングのための新しい広告戦略です。カルビーでは、これまでマスマーケティングの広告では、「ポテトチップス」「じゃがりこ」などブランドごとに訴求していました。その広告戦略を変え、「ひとくち劇場」という世界観を作って、そのなかでいろいろな商品を登場させています。
また、マス広告だけでなく、Webサイト、Facebookページ、LINE公式アカウントを運用し、ブランド好感度の向上を目的にしています。Webでのコミュニケーションが普及するにつれて、一方的なマス広告だけでなく、ユーザーのクチコミも活かした双方向のやりとりが必要になっていることから、LINEとFacebookを中心にWebを連携させた、長期的な戦略として位置づけています。
伊藤実際、テレビCMだけでなく、FacebookやWebサイトなど、2つ以上の接点がある方のほうが、好感度、満足度が高くなるという社内の調査結果も出ています。ひとくち劇場のLINEはすでに860万人の友だちがいて、キャンペーン紹介などの情報の拡散にも活用しています。
コーポレートのFacebookページは、運用してみると商品投稿の反応が良いことから、商品担当者から流通さんへのPRにも使えるかもしれない、といった気づきもでてきています。
パートナーの力を借りつつも、自社での運用にこだわる
――コーポレートのFacebookページはどのような運用体制ですか。
伊藤コーポレートのFacebookページは、Webリレーション課メンバーのうち、谷兼、伊藤、もう1名の3名で運用を担当しており、一部パートナーにサポートしてもらっています。社内担当の3名は他業務との兼任です。
Facebook投稿内容については、前月に担当メンバーの編集会議で投稿内容を決めます。広報部には商品の情報が集まってきますので、Facebookページのファンにあう情報を取捨選択し、パートナーに相談しながらアレンジしていきます。
ありがたいのが、お客様の商品に関する投稿の反応が良く、喜んでいただけていることですね。もちろん商品のことばかりではなく、企業活動の情報も届けられるようにコンテンツのバランスをとっています。
投稿の作成は、社内とパートナーで半々です。全部お願いしてしまうと知見やノウハウがたまらないので、社内でコンテンツを決めて作成も行うという体制にしています。社内で作成するときは、素材集めから編集して投稿するまで、他の業務と並行しながら短いもので1時間、長いものだと数日かけることもあります。最近は、他の企業さんとのコラボレーションも増えてきていて、そういったときはもう少し長くなります。
運用状況については、1か月が終わった時点でパートナー企業からレポートをもらい、2時間程度の報告会を実施して改善点などを話し合います。
――情報量が多くなったとき、FacebookやTwitterでの投稿の優先度はどのように判断していますか。
伊藤コンビニ限定商品のように、販売先が限られているような商品は、オウンドメディアにリリースを載せていないこともあるので、ソーシャルメディアが最適だと判断しています。全国一斉といったものは、オウンドメディアとソーシャル両方といった判断基準ですね。
投稿へのコメントで参加できるキャンペーンを実施
――Facebookのキャンペーンで、ページの投稿に対して、ユーザーがキーワードをコメントで投稿すると応募できるというルールで運用されていますが、具体的な方法を教えて下さい。
伊藤エンゲージメントを増やしつつ、楽しんで参加してもらえる企画として、コメント投稿で応募できるキャンペーンを企画しました。コメントいただいた方のなかから当選者を決めて、コメントで当選を知らせ、当選者からページにメッセージをいただき、その返信で個人情報入力フォームに誘導するという仕組みです。少し煩雑ですが、この方法で大体9割ぐらいの方から返答があります。
――Facebookの効果測定ではどの値を見ていますか。
伊藤投稿ごとの確認はリーチ数やエンゲージメント数ですね。現在は、コメントキャンペーンの効果もあってFacebookページのエンゲージメント率は5%程度です。「いいね!」が3.7万人なので、5%だと1投稿につき1800人くらいが反応してくれることになります(数値は取材時点のもの)。
Webアクセス解析でわかったTwitterの影響力
――Twitterの運用状況はいかがでしょうか。
伊藤多田と私の2人で、週後半に次週の投稿についての編集会議をしています。Twitterの雰囲気に馴染むように、会議でも気軽な空気感で話をしながら、投稿内容を決め、翌週のWebリレーション課の会議で確認し、つぶやきデスクで予約投稿をしています。
――多田さんがTwitterの担当になった経緯は。
多田私はWebサイトのアクセス解析の担当でもあります。ここ数年アクセス解析を見ていると、どっとアクセス数が増えるタイミングがあり、多くがTwitter経由です。テレビで商品やお店が取り上げられると、Twitterで話題になってトレンドに入り、Webサイトの方にも流入するという感じですね。日常的にTwitterをチェックすることも多いため、商品担当者が短期的なキャンペーンでTwitterを使うときにアドバイスを求められることも多くなり、その流れで公式アカウントを担当することになりました。
――以前からキャンペーン用のTwitterアカウントはありますが、企業公式アカウントというのはなかったですよね。
伊藤はい、Twitter公式アカウントは始めて数か月ですが、運用のきっかけになったのがこの連載シリーズのサントリーさんの事例でした。コーポレートとしての運用のモデルになり、同時につぶやきデスクも使ってみようということになりました。キャンペーンのように商品ごとにつながるのではなく、カルビー全体としてつながることを目的に運用しています。
社内レポートにはツールの解析機能を活用
――サントリーの事例がきっかけになったんですね。ツールを導入しようとしたきっかけは何でしょうか。
伊藤導入したつぶやきデスクは、日本製で使いやすそうだということと、料金体系がシンプルなこと、また画面も見やすく使いやすいということから選びました。Webサイトからお問い合わせをしたら、すぐに営業の方に来訪していただき、使えるようにしていただきました。
――他のツールとの検討はありましたか。
伊藤はい。複数検討しましたが、Facebookとセットになっているツールが多く、Facebookについては、パートナー企業がいることもありますし、経験値を高めるためにも自分たちでやりたいということがあったので、ツールは不要でした。ですので、Twitter運用に絞った時につぶやきデスクが最適と考えました。
――実際にツールを使ってみた感触はいかがですか。
多田つぶやきデスクの分析機能はいろいろなメニューがあるので便利です。フォロワーの増減がいつなのかといったデータもわかりますし、なによりフォロワーの活動時間が見られるのはいいですね。この時間に活動されているからこの時間にツイートするというように、運用に役立てています。
それに、リツイートした方のフォロワーがどれくらいいるのかがわかるのもいいですね。ツイートのRT、お気に入りの回数はTwitter公式の機能でもわかりますが、RTした人のフォロワーをもとに、全体で何人の人にツイートが届いたのかがわかるのは嬉しいです。商品担当者が、ツイートすると最大でどれくらいまで届くのかという資料を流通担当に提供することもあります。
Twitterは来期から本格運用、もっと存在感を出していきたい
――今後の運用ではどういった展開を考えていますか。
伊藤今年、カルビーの公式Facebookは、企業ランキングに用いられるエンゲージメント数を指標としてきましたが、広告出稿量やファン数など、他企業との相対的な評価になってしまうので、来期はエンゲージメント率を追っていきたいですね。また、1年経験してみた実感として、媒体としての効果がでるようになるにはファン数も大切なので増やしていきたいです。
Twitterは、現在はテスト運用の意味合いが強く、商品紹介、カルビーアンテナショップ紹介などをしていますが、来年度の運用については検討しているところです。
具体的にはフォロワー1万人くらいを目指していきたいです。コミュニティ運営をやってきた経験からいっても、ある程度の規模にならないと社内でコミュニケーションツールとして使ってもらえないということがあります。お客様からいただいた、ツイートやコメントなどの気持ちを活かすという意味でも、Facebook同様、質を保ちながら、数を増やしていくことが必要だと思います。
多田ゆるめのツイートができるようにしたいですね。他の企業のアカウントでは、一般のTwitterユーザーとのコミュニケーションにあわせた、「おはようございます」など、ゆるめの投稿やつぶやきをしているところもありますよね。私たちもそうしたい気持ちはあるのですが、どこまでくだけていいのか悩んでいます。
――他の運用者に伝えたいコツはありますか。
伊藤Twitterは始めて2か月ですが、最初はTwitterのゆるい雰囲気のなかに、カルビーが入っていけるのかという不安がありました。でも、運用を始めると、お客様の生の声がすぐそばにあるTwitterのメリットがわかったので、不安からやらないというのであれば、構えずに始めてみるのがいいと思います、とお伝えしたいですね。
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オリジナル記事:オウンドメディア歴10年のカルビーがソーシャルメディアをはじめた理由を聞いてみた | 企業担当者に聞くFacebook&Twitter運用の現場 | Web担当者Forum
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