楽天市場の食品販売をするネットショップサイトを例に、売上UPに直結する改善事例を大公開! コンバージョン率UPと離脱を防ぐ商品説明方法、関係者のヒアリングと検索キーワードから導く自社のアピールポイントの見つけ方などデータ分析に基づいた改善方法を3つのポイントで解説します。
こんなお店でありたい。うちのお客様はこういう商品が好きだから。といった思い込みは捨てて、確実にネットショップの売上を上げる術を身に付けましょう!
楽天市場の解析ツールを利用して売上UPの施策立案! 3つのポイント
事例として紹介するのは「重慶飯店(じゅうけいはんてん)」です。こちらの楽天市場店のサイトを実例として、3か月で行った改善内容を紹介していきます。
重慶飯店は、創業56年の横浜中華街の四川料理レストランです。リアル店舗の他、ネットショップも複数展開しており、ネットショップにおける商品取り扱い点数は約200点。麻婆豆腐醤や点心・飲茶、横浜銘菓の番餅・月餅・中華菓子などが主力商品です。購入ユーザーは、老若男女を問わず、手土産品や贈答品はもちろん、家庭用としても利用されています。
重慶飯店では、3年計画で通信販売売上の年商を3倍にすることを目標としていて、達成への一歩として、最初の3か月で次のような対策を行いました。
Point 1
伸ばすべき点:コンバージョン率をさらにUPする
現状から「伸ばすべき点」を見つけるために、まずサイト全体のアクセス解析データを調べたところ、主商品におけるページ転換率(コンバージョン率)が7.6%もありました。この数値は一般的に高いコンバージョン率といえるでしょう。
しかしここで問題だったのは、コンバージョンの具体的な内容がわかっていなかったことでした。
事前に重慶飯店にヒアリングを行ったところ、「リピーターが多いだろう」「女性が多いだろう」という推測はありましたが、データに基づいたものではありませんでした。つまり、
- どんな人が、どんなキーワードで、購入にいたっているのか
がわかっていませんでした。これでは高いコンバージョン率をさらにアップさせるための戦略が立てられません。
分析検索キーワード、顧客の属性、時間帯別アクセスを調べる
そこで次に、アクセス解析データの「検索キーワード」を調べたところ、「重慶飯店」「商品名」といったキーワードでのアクセスが、全体の47.71%を占めていることがわかりました。
これは、すでに重慶飯店の商品を知っている、もしくは興味をもって指名検索している、と考えられるでしょう。また、商品を購入した人の属性を調べると、リピーターが多く、すでに顧客化したお客様のアクセスが多いと考えられます。そのためコンバージョン率が高かったのでしょう。
また主力商品の顧客属性を調査したところ、男性が約45%、女性が約55%と思ったほど女性の顧客が多いわけではありませんでした。
確かに、スイーツ系などの商品によっては女性の割合が大きく増えることもありますが、電子レンジなどで簡単に調理できる商品は、男性が約60%まで増えることがわかりました。
また、時間帯別アクセスを調べると、平日、土日、時間帯に大差がありませんでした。これは、重慶飯店へアクセスする人に偏った顧客属性はなく、幅広い層に見込み客がいることを示しています。
もともと高いコンバージョン率をさらに上げるためには、「新規のお客様をいかに増やすか」が課題となってきました。しかし、やみくもにアクセス数を増やしたとしても、意味がありません。購入につながるアクセスを獲得しなければ、コンバージョン率は下がってしまいます。
作業①流行を加味しつつ「鳳梨酥」を「パイナップルケーキ」と表記
そこで、新規のお客様でも購入意欲が高いと思われる、一般的な食のトレンドワードをGoogle トレンド、テレビ、ラジオ、ポータルサイトの特集などを総合的に調査しました。それらトレンドワードに該当する重慶飯店の商品には、そのキーワードを含んだ形で商品説明を補足し、同時にバナーも設置し新規顧客獲得をねらいました。
たとえば、この施策を行っていた当時、台湾からパイナップルケーキの専門店がオープンしたことで、雑誌やTVなどでパイナップルケーキの特集が組まれていました。重慶飯店でもパイナップルケーキを取り扱っていましたが、中国語では「鳳梨酥」と表記します。これでは同一商品とわかりづらかったため、鳳梨酥の商品説明に「パイナップルケーキ」の表記を加えました。これによって、パイナップルケーキに興味があるユーザーを取りこぼさないようにしました。
このとき、デザインの変更も行いましたが、リピーターが戸惑わないよう、パッケージや今までのサイトと色を揃える、一部昔のバナーを残すなど、段階的な移行作業を行うことにしました。
作業②ユーザーが思わずパッとわかる文言を表記
男性の需要が多かった「麻婆豆腐醤」については、楽天市場の検索ページで表示される商品画像に「レンジOK!」「10個入り」といったアイコンを追加し、商品の写真以外に電子レンジなどで簡単に調理できる商品だというユーザーに好まれる理由を一目でわかるようにしました。
また商品ページへ移動したユーザーには、実際に調理するときのシチュエーションが想像しやすいように、「お豆腐1丁 用意するだけ!!」といった用意すべき食材をわかりやすく記載しました。
結果コンバージョン率をさらにUP! アクセス増加達成!
これらの施策の結果3か月目には、アクセス数を伸ばしながらもコンバージョン率を保つことに成功しました。
アクセスされやすい人気商品に適切な商品説明やアイコンを追加することで、質の高い新規見込み客を呼び込み、商品ページの内容もより、購入後のシチュエーションが想像しやすいようにしました。また、後述しますが送料など購入に必要な情報を、わりやすく配置することで離脱を防ぐと同時に、リピーターを戸惑わせない工夫をすることも大切です。
下図は、楽天RMSで取得できるコンバージョンの商品別散布図です。プロットカラーは、商品ジャンルの違いを示し、プロットサイズは、売上高を示しています。
Point 2
改善すべき点:離脱する見込み客に対してわかりやすい商品説明をする
「改善すべき点」を見つけるために、アクセス解析データの平均滞在時間と離脱率を調べました。そうすると平均滞在時間があまりに短く、離脱率が高いことがわかりました。
一般的にこの現象は、事前にユーザーが抱いていたイメージと、実際の商品の内容があまりに違いすぎるために、起こる現象だと考えられます。一般的なキーワードであれば不可避なため、滞在時間も離脱率も考慮する必要はないでしょう。
しかし今回の場合、商品に対して「店舗側がいいたいこと」の比率が高く「お客様が知りたいこと」が足りないことから、本来顧客となり得るユーザーまで去っている可能性が高いと考えました。
たとえば食品を扱う店舗であれば、お客様の知りたいことは次のようなことでしょう。
- どのような味で、どのような食感なのか?
- 子供やお年寄りでも食べられるのか?
- 日々の食事、パーティーなど、どんなシーンに適しているのか?
- どうやって調理するのか?
- どのような材料が使われているのか?
- 大きさ・重さ(内容量)は?
- 賞味期限の期間は?
- どのようなパッケージ・荷姿・内装で届くのか? 個別包装なのか?
- 冷蔵・冷凍商品は、小分けにして、冷蔵庫に入れることができるのか?
- いつ届くのか?
初めて商品を購入するとき、お客様は不安材料が少しでもあれば購入にはいたりません。また、わからないことを問い合わせてまで購入する人は多くありません。検索してたどりついたページに説明がなければ、ほとんどの人が離脱してしまうでしょう。
分析・作業文字情報だけでなく、イメージ写真やアイコンも活用して説明
そこでお客様の知りたい内容が記載されているか見直しを行うために、人気商品から順に購入してから食べるまでを実際に体験してみました。
たとえば、届いた商品を冷蔵庫に入れてみる、調理して香りを確認してみる、食べてみるといったことです。購入したユーザーの気持ちを体感することで、説明で足りないこと、知りたいと思ったこと、疑問に思ったことなどをリストアップしました。
すでに書き込んでいただいたレビューも参考にしました。現在の商品情報をもとに購入した人が、何に驚き、喜び、落胆したのか。差別化をはかるために、他社の商品についても調査を行いました。
ただし文字情報の比率が高くなると、読んでもらえない可能性があります。素材の画像や、食べるときの切り分け方やサイズ、調理法を記し、商品を直感的に理解してもらえるように工夫しました。
またアイコンを活用することによって、少しずつサイト内の情報を統一し、商品を比較しやすいようにしました。
結果ユーザーが知りたい情報を加えて4.81ポイントUP!
重慶飯店の主力商品の1つに「飲茶セット9種」があります。ギフト対応可能商品で送料無料、調理が簡単で、老若男女を問わず、パーティーにも普段の食事にもぴったりです。もともと人気があるうえに、商品単体で広告も打っているため高い売上を誇ります。
この商品に対して、上記で説明したような「お客様が知りたいこと」を中心に商品説明を加え、イメージ写真やアイコンを活用してわかりやすい表現を試みた結果、コンバージョン率を昨年同月比で4.81ポイント、アップすることに成功しました。
しかも2014年は昨年に比べて、商品広告費を26%も削ったにもかかわらず、コンバージョン率を伸ばすことができたので、この「お客様の知りたいこと」を伝える改善施策は有効と考えられます。
Point 3
加えるべき点:関係者のヒアリングと検索キーワードから導く
「加えるべき点」を見つけることは、作業を行っている担当者だけでは気づけないこともあります。営業、製造担当者、出荷担当者、経理担当者など、店舗の運営に関わるさまざまな人から意見を聞いてみましょう。もしくは、実際の現場を確認したり、競合店舗に記載されている情報を比較したりするなど、さまざまな視点から見直すようにしましょう。今まで見落としていたアピールポイントが見つかるかもしれません。
また検索キーワードから、求められている情報を見つけ加えることも有効です。
分析・作業①当然と思っていることが、アピールポイントだった!
重慶飯店の場合、ヒアリングによって驚くべき競合と比較しても非常に強いアピールポイントを2つ発見しました。
- 年末年始も含め、年中無休で配送を行っている
- 常温便商品、クール便商品混在の場合も、5,000円以上で送料無料
また次の3つの情報についても、もっとわかりやすく表示したほうがよいと考えました。
- 18時までの注文は翌々日発送
- フリーダイヤルの受付時間
- ギフト対応が熨斗(のし)だけでなく手提げ袋もある
そこで、これらの情報をヘッダー・フッター・レフトナビの3か所にこれらを伝えるバナーを配置しました。
分析・作業②検索キーワードからニーズの高い「お土産」のカテゴリを作成
次に検索キーワードの解析を行ったところ、季節を問わず次のようなキーワードが出現していました。
「横浜 土産」「横浜 銘菓」「横浜中華街 お土産」「重慶飯店 お土産」
重慶飯店の実店舗がある横浜中華街は、全国から観光者が訪れる観光地のためお土産や帰省土産の需要もあります。そのため味はもちろん、日持ちがよく個包装された贈答用の商品がたくさんあります。また、年末年始や春節(旧正月)には干支パッケージの商品が限定販売されています。
そういった商品をまとめて「ギフト商品」として紹介するのではなく、より訪問者のニーズに近しい言葉で細分化して「帰省土産」や「年賀・干支菓子」というカテゴリ・バナーを作成することで、ギフト商品ページを見て離脱していたユーザーの回遊を促すことができました。
結果求められている情報を追加して、回遊率UP → コンバージョン率UP!
これらの施策の結果、店舗全体の離脱率は37.1%から27.0%へと10.1ポイント減少しました。また、回遊率がアップし、コンバージョン率も7.6%から9.3%へ1.7ポイント増加しました。
伸ばすべき点 → 改善すべき点 → 加えるべき点 → 伸ばすべき点……このサイクルをくり返すことでさらに売上UPにつながります。
- 伸ばすべき点:アクセス数を伸ばしながら、コンバージョン率をあげる
- 改善すべき点:「店舗側がいいたいこと」から「お客様が知りたいこと」
- 加えるべき点:「求められている情報」を追加して回遊率をあげる
これらの施策は3か月で行ったことなので、まだまだデータ不足で分析不足です。しかし、お客様の求める情報を追加することが有効に働いたと考えられます。また新たに、加えるべき点として「広告やメールマガジンの有効活用」を行おうと考えています。
効率のよい好循環が、売上アップの近道に!
EC、ネットショップ、オンラインショップなどの売上を伸ばそうと思うとき、デザインを変更する、バナーを増やす・動かす、特集ページをつくる、広告を打つ、SEOを強化する……、売上アップに有効とされる手段はいくつ存在します。
しかし、その作業を行うべき理由、その作業を行った結果を意識しているでしょうか?「こんなお店でありたい」「この商品が売れている気がする」「うちのお客様はこういう商品が好きだから」。そんな思い込みで、やみくもにさまざまな手段を試して、一時的に売上がアップしたからといって、分析もせずに、その手段ばかりを繰り返すのもよくありません。
今回、重慶飯店の場合は、すべてよい数値に転じましたが、毎回良い結果が得られるとは限りません。ときには足踏みしたり、後退する可能性もあるでしょう。しかし、たとえ悪い結果であったとしても、そのまま放置してはいけません。
何が有効だったのか、何がよくなかったのか、その原因は一時的なものなのか、どこに改善すべき点があるのか、分析 → 作業 → 結果 → 分析……を繰り返し、思い込みではなく、データに基づいた作業を重ねていきましょう。
思い込みによる行動は非効率で、人・時間・費用がかさむ、売上が伸び悩む、利益があがりにくいといった問題を生じる可能性があります。効果があったとしても、その要因がわからなければ、次に活かすこともできません。
得られるデータを分析し、店舗・商品・顧客層など、現在の状況を可能な限り正確に把握する。そして売上を伸ばすためにどんな手段が有効か検討する。作業を行った後は、その結果をさらに分析し、次の手段を講じる。このサイクルを続けることが売上UPへの近道なのです。
モールやASPに装備されたツールを有効に使おう!
楽天市場などショッピングモール、Makeshopなどショッピングカートサービス(ASP)を利用したネットショップを運営されている場合、アクセスや売上を分析する機能が装備されています(独自システムを構築されている場合は、仕様変更が必要となる可能性があるので注意が必要)。
よく利用されるデータは、ランキング形式やグラフ化されていますので、最初はそこから見ていくとよいでしょう。慣れてきたら、データをCSV形式でダウンロードし、独自の分析を加えましょう。一定期間を経過すると、データが閲覧できなくなる場合があります。定期的にダウンロードし、記事内で説明したような3つのポイントを見つける分析を継続的に行うが大切なのです。
※この記事は姉妹媒体のネットショップ担当者フォーラムで同時掲載しています。
※このコンテンツはWebサイト「Web担当者Forum - 企業ホームページとネットマーケティングの実践情報サイト - SEO/SEM アクセス解析 CMS ユーザビリティなど」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:楽天市場のネットショップ売上UP! お客様が買いたくなる仕組みをこっそり教えます | 一人でできるWebサイト収益UP術-ウェブ解析士事例集 | Web担当者Forum
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