従来、代理店を通じてのみ利用できたTwitterの広告「プロモ商品」だが、昨年11月のヤフーとTwitterの連携によって、Yahoo!プロモーション広告の管理画面から、検索連動型広告と同じように扱えるようになった。検索連動型広告が登場した当時、中小中堅ビジネス(SMB)が大企業と戦えるようになるといわれたが、それと同じ環境がTwitterでも整った。
この連携を牽引したのが、Twitter Japanの王子田克樹氏とヤフーの高田徹氏だ。昨年12月に開催された「ネットショップフェスタ2014」に登壇した両氏に、SMB向けの事業展開を開始した背景や、Twitterのマーケティング活用ノウハウや成功事例について聞いた。
あらゆるマーケティング施策ができる環境を整える
――SMB向けにプロモ商品を提供開始した背景はどこにあったのでしょうか。
高田マーケティングは検索だけとか、ディスプレイだけとか、ソーシャルだけとか、そういう時代ではありません。すべてのチャネルでメッセージを届けるのがマーケティングの基本だと思う。しかし、SMBの方がすべてのマーケティング手法を利用できる環境が整っていなかった。少なくとも、検索だけでは課題解決にならない。
商売を繁盛させるためには、さまざまなマーケティングの手法を使った方がいい。Twitterのソリューションが入ってくると、SMBの方がトータルなマーケティングを行える環境が整う。それを意識せずに使える状態にすることがすごく大事だと思い、タッグを組みました。
王子田僕たちは、スポンサードサーチやアドワーズを持っているわけではなく、ソーシャルというTwitterのプラットフォームに特化している。それをうまく使っていただくことによって、いろいろなタイミングで広告主の方が潜在顧客に声を届けることができる。それを実現するために最適なパートナーがヤフーだったわけです。
ヤフーは、既存のカスタマーベースがあり、しっかりとしたオペレーションを持っている。それから、広告ソリューションをより立体的にすることに関して強い意志がある。そういったところで、うまく補完関係が作れると思っています。それによって、中小企業を含めたより多くの方にソリューションを届けることができる。
――お互いに足りないものとはなんでしょうか。
高田僕らは既存のお客様から、ソーシャルのプラットフォームはないのかと言われます。一方でTwitterからすると、コールセンターを作って大規模で支えなくてはいけない。それを作るには時間がかかりますから、共有したほうがいい。つまり、僕らからするとメディアがなくて、Twitterにはオペレーションがない。
王子田同じだけのサポート体制を作るにはどれだけ大変な投資が必要なのか、想像しただけで頭がくらくらしてしまう。もう1つ、これは統計的な何かがあるわけではないですが、日本のお客様はカスタマーサポートに対する期待値が高く、国別に「do it yourself」度があるとすれば、日本は米国と比べて低いと思います。そういうマーケットの特性を考えたときに、きちんとしたプラットフォームがあることはとても大切だと思う。そこを考えたときに、ヤフーは信頼できるパートナーだということです。
高田プラットフォームの思想として、マーケティグを良くしたい、より多くの方に届けたいというのが先行している。この変えたいという共通認識をお互いに持っていないと、夢を追うことはできません。
プラットフォームの思想として、マーケティグを良くしたい、より多くの方に届けたいという思いが先行している。
アカウント立ち上げから運用アドバイスまでサポート
――現在のサポート体制はどうなっていますか。
高田今は百名規模ぐらいのセンターがあります。それこそ、使い方から支払い方法、セットアップまでサポートさせていただいている。日本では、100名のデジタルマーケティングがわかる人を集めるのはほぼ不可能です。ヤフーはそれを持っていますし、どうやったら集客できるのか、売れるのかという話を聞いてアドバイスできます。
――セミナーやイベントなど、プッシュ型のサポート活動はなにかされているのでしょうか。
高田セミナーは地道にやっています。Yahoo!ショッピングやインターネット広告も含めてやるんですが、直接お話ししないとわからないこともあるので、いつでもどこかでセミナーが開かれていることが大事です。すでに商工会議所などで活動をしています。
拡散することでROIは爆発的に良くなる
――SMBの方にプロモ商品の良さを伝えるとしたら、どんなメッセージになりますか。
高田極端な話、広告がうまくいけば、もしかしたら、お金を使わなくてもよくなるでしょうと(笑)。実は、フォロワーを増やせば増やすほど、自分たちのCRM的なマーケティングができるようになってくるので、オーガニックなツイートでもお客様に届くようになります。かつ、おもしろいネタが作れるのであれば、安定的にオーガニックで人を呼べる。アイデアが出せれば、日本全国に少ない予算で公開できるということなんです。商品・サービスに自信があれば、ROIは爆発的に良くなる。
検索連動型広告は、どちらかというとニーズに対して売る1対1の広告なので、爆発という点ではある程度の限界があります。でも、プロモ商品は1個の投資が100倍になるかもしれない。そういうチャンスがあるものだと思っています。
――Twitterは顕在化していないニーズをつかまえるのに強い。
王子田購買ステップのなかで、顕在化する前の潜在的な状態のところに、売り込みを押しつけるのではなく「もしかしたら」というように、ふっと浮かびあがるようなコミュニケーションをしていく。それによって、態度変容の流れを暖めることもできる。そういう可能性を見ていただきたいと思っています。
検索だと、やはりメジャーなブランドを検索しがちですが、小さなプレイヤーはブランドネームの検索数では大企業と戦えない。でも、そのもっと手前のところであれば、十分にやれる要素があるし、気づいてもらえると思うので、そこをうまく活用いただきたい。それが「クスっと楽しい」ものであれば拡散していくので、その拡散をテコとして使えば、検索でできなかったことを実現できる。
獲得したフォロワーの価値を活かす――良いことでも悪いことでも
――とはいえ、ある程度フォロワーの母数がないと、うまくいかないのではないでしょうか。
王子田コアとなるフォロワーの数は、ビジネスのサイズによって違う。大きなブランドでも、5万人ぐらいフォロワーがいる場合もあるし、もっと少ないブランドも多くあります。では、スモールビジネスにとって、どれくらいフォロワーがいればいいのか、ベンチマークとして適当な数字はいえないのですが、それを作ることが基礎としてあると思います。
フォロワーを増やすことは、広告でもオーガニックでもできます。それと、みなさん、意外とフォロワーの価値を使おうとされない。
たとえば、あるアカウントでは、プレゼントキャンペーンでフォロワーを9000人ぐらい増やしました。その後、新商品の商品名を考えあぐねたのですが、集まったフォロワーにアンケートを投げたんです。すると、あっという間に200~300のレスポンスが帰ってきて、日本のTwitterでの調査をベースに、グローバルで決まりかかっていたネーミングが変更されたという例があります。
これを今までと同じようにやろうとすると、リサーチに1週間~2週間をかけて、予算は100万円といった話になる。ところが、ユーザーベースを獲得したことで、リサーチのベースが1日~2日のうちにできてしまった。ベースの数は企業によって違いますから、もっと小さくてもいい。こういった価値を取りながら、次はプロモアカウントやプロモツイートを使ってユーザー数を増やしてみようと、始めていただくといいと思う。
――先ほども話されていたようにCRM的な使い方もある。
王子田リアルのお店でも、オンラインでもそうですが、お客さんと会話が成立するということは、すごく大きなバリューだと思います。フォロワーはすごく良いアイデアをくれる潜在層なわけですから。
反対に自分のツイートに対して、あまりにも痛いところを突くので聞きたくないから耳をふさぐ、というのは間違ったリアクションだと思うんです。「feedback is gift(顧客の声は、顧客からの贈り物)」という言葉がありますけど、真摯にとらえ、企業がマーケットに対しての姿勢を改めて見直すという意味で、すごくいい情報収集ツールだと思う。
それを製品やサービスの開発に活かしても、カスタマーサービスに活かしてもいい。2つの商品を考えているときに、アンケートを取って多かった方をリリースするという使い方は、簡単にできることなんです。
――広告よりも、会話だととらえることが大事だということでしょうか。
王子田両方だと思います。両方の性格を持っているので、両方の性格をちゃんと使ってくださいということですね。
高田本当に気軽に使えるものだと思うんです。なぜ検索連動型広告がはやったのか、その人自身(広告主)が検索を使っているからなんですね。ハードルが高いと感じるのは、Twitterを使っていないからかもしれない。
まず、自身でTwitterを楽しんでもらえれば、どうしてユーザーがTwitterを使うのか気持ちがわかると思います。自分がどういうメッセージを受け取ったら楽しいのかを理解すれば、それをただやればいいだけなんです。逆に、Twitterを使わずに広告媒体としてとらえてしまうと、一方的なチラシのばらまきになってしまい、あまりうまくいかないと思う。
Twitterを使わずに広告媒体としてとらえてしまうと、一方的なチラシのばらまきになってしまう。
ターゲティングのヒントは検索とツイートの中にある
――プロモ商品のターゲティングについて、たとえばキーワード選び※1などのコツなどはありますか。
※1 「プロモ商品」では、キーワード、興味関心などでターゲティングが可能。キーワードターゲティングでは、ある語句を含むツイートやそのツイートに反応したユーザーに広告を配信できる。
高田検索キーワードをヒントにするのが一番いいと思います。今まで、検索連動型広告をやられていた方であれば、何が響くキーワードなのかがわかると思うので、それを軸にするのが1つのアイデアです。もう1つは、Twitterアカウントをお持ちなら、フォロワーになってくれている人を見ることです。お客様になりそうな人を探すわけですから、自分のお客様を見て、どんなツイートをしているのか、どんなアカントをフォローしているのか、何に興味があるのかというところから探していくのがいいと思います。
王子田わかりやすい例が、オンラインの占いです。オンラインの占いって電話をかけてするんですが、実は人生相談なんですね。お客さんのほとんどは女性で、悩みの種は恋愛。そういう人たちは、Twitterでどういう人をフォローしているのか、ぱっと思いつくのはスピリチュアル系ですが、美輪明宏さんはアカウントを持っていない。ただ、ボットがあって、半端じゃないフォロワーがいます。
こうやって考えてみると、その人がTwitterでだれをフォローしているか、あの人やこの人だろうと発想が広がっていく。テニスに興味がある人であれば、テニスの有名選手をフォローしている人になってきますよね。
高田その他にも、ライフイベントやシーズナリティ(季節変化)をつかみやすいという特徴があります。ライフイベントとしては、プロポーズがうまくいったというようなツイートをしたりすると、「成功したんだ。それならこの後、一緒に住む家が必要になるよね」という発想ができます。
王子田僕らは、その瞬間をとらえるという意味で「モーメントをとらえる」という言い方をします。Twitterが「今がそこにある(live)」と言っているのは、まさにその意味なんです。その人それぞれの、今そこにある瞬間をうまくとらえて、それにあった商品を持っているのであれば、ツイートの言葉に対して寄り添うようなことができる。それは、マーケッターとしてお客さんにどれだけ敏感でいるかということ。
先日の台風であったことですが、学生が休校になったとツイートしたんです。ところが午後から晴れてきた。このとき、もし僕がディズニーランドのマーケッターだったら、「午後からの入場は割引です」というようなツイートをしますね。それは広告ではなく、オーガニックでもよくて、「これからディズニーランドにいく?」となれば、すぐに拡散して一緒に行こうという話になる。
高田リアルの商売をしている方は、そういう天候の変化で最初に動いている。雨の日割引をするように、普段やられている行動をそのまま持ってきていただくのが一番正しいですよね。
1つ賢い使い方だと思ったのが、話題のハッシュタグに乗っかることです。たとえば、オリンピック選手を応援する声がハッシュタグに集まり盛り上がりましたが、キーワードターゲティングで、ハッシュタグに乗って宣伝するといったことができるのは、すごくおもしろいと思う。ただ、Twitterを使い倒していないと、ハッシュタグをターゲティングのキーワードに指定するという発想にはなかなかならない。
――その他にどんな活用例がありますか。
高田夏休みの自由研究キットを扱うグッドフェローズの事例があります。夏休みの自由研究ですから、短期集中かつ、小学生の子供に届けないといけないので、検索されるのを待っているだけではなく、こちらから投げかけていかないといけない。それがTwitterだとうまく取れる。
こういった気づきを与える広告をディスプレイ広告でやろうとすると、ものすごいお金がかかる。今までSMBの方には難しかった広告ができるようになったことは、すごく画期的だし、正直に言うと、コンテンツがおもしろければ広告でなくても拡散される。
王子田ツイートにちょっと手をかけるだけで、拡散のしかたは段違いに変わり、プロモ商品を使えば加速できる。たとえば、あるモバイルバッテリーのメーカーでは、デジタルガジェット系の人が商品をツイートしたことで、突然売上が上がりましたが、これは偶然ですよね。そこをプランしてやるといったときに、プロモ商品のような広告を使って自分から仕掛けていく。それによって、四半期に一度だったことを3回起こしたり、規模を1から10にしたりできる。そういうことができたらうれしいと思います。
高田あとはリアルと同じように、人の顔を見てコミュニケーションするつもりでやらないといけない。なぜ炎上するのか、それは何かしら誠実でないからだと思うんです。だまそうとかいう気持ちはばれてしまうので、誠実であること。また、広告というと、どうしても売ることが全面にでてしまい難しいのですが、そこはぐっと押さえていただく。
――Twitterのプロモーションで成功しやすい業種はありますか。
王子田バラエティに富んでいます。消費財メーカーもあれば、それこそBtoBの世界でも使われています。「うちの会社ではこういうものを開発した」ということを、より広く伝えるためにプロモ商品を使う方が、実際にいらっしゃる。こうしたブランディングの使い方もあれば、ダイレクトレスポンスの使い方もあります。
高田BtoBの成功事例も出てきています。たとえば、ものすごくニッチな学術論文系の仕事をされている会社があるのですが、検索ではぴったりと刺さるけれど、つかまえられる数が少ない。だけど、有名な学者さんはTwitterのアカウントをもっていたりするので、それをうまくターゲティングの要素として使うと、必要としている人にメッセージを届けられる。BtoBの事例で僕らも発見しました。
よく紹介するのが、メッキ工場の事例ですが、メッキって知らないとだれに頼めばいいのかよくわからない。わかっている人は検索しますが、思いもつかない人に届けるには、こちらからさっとださないといけない。それがフォロワー軸であれば、「こんな技術が存在すること知っていました?」と、問いかけるようなことができる。
Twitterと検索それぞれの指標を計測する
――広告の指標については、どういったものを見ていけばよいでしょうか。
王子田ビジネスによって、そのときの目標があると思います。新しいファッションブランドの立ち上げであれば、まず知ってもらうために、3か月から半年はフォロワーのベースを増やす。また、新しいアプリを作ったので、カスタマーベースを増やそうというのであれば、インストール数を増やすことにフォーカスする。
そのときのビジネス目的、ステージに合わせてKPIをセットする。それに合わせて広告を使い分け、もしTwitterが合わないのであれば、使わないという判断をしていただくべきです。
――ヤフーの管理画面では、具体的にどのような指標が見られますか。
高田エンゲージメント数など、Twitterの管理画面で見られるものと同じ指標です。Twitterと検索ではメディアとしての考え方が違いますから、それなりの違う指標が存在します。それを無理矢理、検索と同じように統一してしまうと失敗するかもしれない。
わかりやすい例では、Twitterのフォロワーが増えていくということは、メール配信できる顧客リストがたまってくるのと似た考え方ができます。これは検索にはない考え方だと思っている。
王子田フォロワーが増えたというだけでなく、どういうビジネスメリットがあったのかを考えていただく。たとえば、増やしたフォロワーを使って、次はこういうバリューを取りに行くというようにプランしてもらいたい。日本の企業は、集めたフォロワーをどう活用するかということには、まだ積極的ではないと思います。
マーケティングに必要なあらゆるサービスをそろえる
――今後の展開について聞かせてください。
高田今は、まず使っていただくことをヤフーは全力でやっていきます。地道な活動を続け、セミナーなど定期的に開催していきます。あとは、わからないことがあれば聞いてもらうのが一番早いので、サポートに電話をかけてください。
特に、これは既存の検索のお客様向けのメッセージになりますが、ようやく出てきたので、今がチャンスです。まだ導入されている方は少ないですから、先行してPDCAを回していただく。ディスプレイ広告が活用しにくい業種の方もいらっしゃったと思いますが、Twitterは結構万能なものだと思います。
王子田まずは、できるだけ多くの企業の方々にご利用いただくことが目標です。そのためには、ローカルビジネスの方々にとって使いやすい、使っていただけるものを中長期的に出していきたい。オンラインのマーケティングは、常に新しいプロダクトやフィーチャーがでてくる。Twitterとしては、それをヤフーと一緒になって、タイムリーに提供できるように努力をしていきたい。
――マーケティングプラットフォームとして、あらゆるサービルを提供していく。この先足りないものとしては、何が考えられますか。
高田たとえば、CRMは足りないものの1つだと思います。顧客管理が十分でない企業は多いと思います。エクセルベースで管理されているけど、集めた名刺はどう管理しているのか、という話になりますから、こういうものはきちんとやらなければいけない。
あとは、大企業で当たり前に投資しているけど、中小企業では使っていないものは結構あります。これらをいかに使いやすい状態で提供するのかというのが基本的な考え方です。
王子田僕たちはすべてをそろえるのは無理なので、Twitterというプラットフォームに絞ってそれをいろんな形でエンドユーザーが使っていただけるように努力する。それはオーガニックであろうと、広告商品であろうと変わらない、そう思っています。
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