無料ユーザーを有料ユーザーへと引き上げる(移行させる)ための有効な施策を、アクセス解析データを活用して考えたい
B2Bサービス提供サイトでは、フリーミアム戦略を採用しているサイトが多い。フリーミアム戦略とは、まずは認知してもらうためにサービスを無料で提供し、無料の範囲で使用するのが厳しくなったユーザーを有料プランへ移行させていくといったモデルのことだ。有料プランもサービスによっては、スタンダードとプレミアムなど複数のプラン(種類)を提供するような場合もあるだろう。
このようなモデルには、2つのハードルがある。1つ目は無料サービスを使ってもらうまで、2つ目はそこから有料サービスへ移行してもらうまで、である。
そこで今回は、
- 無料プラン利用ユーザー
- 有料プラン利用ユーザー
という2つのセグメントを使って、2つ目(有料サービスへの移行)のハードルを越えてもらうために役立つ分析はできないだろうかというのをテーマとしてみよう。
今回は、「カスタム変数」や「カスタム ディメンション」といったGoogleアナリティクスの機能を使う方法だ。
事前準備:サービス利用者を捕捉するために、トラッキングコードをカスタマイズ
今回目的とする分析を行うにはさまざまな方法があるが、ここでは、どのプランの利用ユーザーなのかを示す値を、該当サービスの利用登録を行ったときに「カスタム変数」や「カスタム ディメンション」として記録し、それらのユーザーに絞り込んだセグメントを利用する方法を紹介しよう。
どちらの方法を使うのかは、あなたのサイトでどのトラッキングコードを使っているのかによって異なる。
- 今使っているトラッキングコードが古い「ga.js」の場合 ――「カスタム変数」を使う
- 今使っているトラッキングコードが新しいユニバーサルアナリティクスの場合 ―― 「カスタム ディメンション」を使う
カスタム変数を使う場合の設定方法(標準のGoogleアナリティクス)
まずカスタム変数を使って、サービス利用者とそのプラン(種類)を判別できるようにしておこう。
具体的なカスタム変数の使い方は、下記記事を参考にしてほしい。
- ユーザーにラベルを貼るカスタム変数で、会員と非会員に分けてアクセス状況を調べるには?[Googleアナリティクス入門講座]
ここでは、その詳しい方法については繰り返さないが、今回は「無料プラン登録ユーザー」と「有料プラン登録ユーザー」に別のラベルを貼っておきたいので、たとえば各プランの登録完了ページに該当のトラッキングコードのカスタマイズを施す準備をしよう。
カスタム変数の1つ目のキーを「plan」とし、サービス利用者にこのカスタム変数を付与することにする。
そして無料プランの場合はそのカスタム変数の値に「free」、有料プランの場合の値は「stnd」(標準プランのスタンダードの意味)などとしよう。プレミアムなど他のプランもあれば、「prem」など別の値を代入しよう。
追記するトラッキングコードは下記のとおりだ(通常のトラッキングコードの下に追加すればいい)。
_gaq.push(['_setCustomVar', 1, 'plan', 'free', 1]);
_gaq.push(['_setCustomVar', 1, 'plan', 'stnd', 1]);
カスタム ディメンションを作る場合の設定方法(ユニバーサル アナリティクス)
ユニバーサル アナリティクスを利用している場合は、まずアナリティクス設定のプロパティの項目「カスタム ディメンション」(図1赤枠部分)を選択して表示される画面で「+新しいカスタム ディメンション」をクリックする。
- 画面上部グローバルナビゲーションの[アナリティクス設定]をクリックする
- 画面中央の[プロパティ]配下の[カスタム定義]をクリックする
- メニューが開くので、[カスタム ディメンション]をクリックする(図1赤枠部分)
- 右側に表示される画面で「+新しいカスタム ディメンション」をクリックする
すると図1のような画面が表示される。
この画面では、
- カスタム ディメンションの「名前」を「会員種別」(図1青枠部分)
- 「範囲」はプルダウンから「ユーザー」を選択(図1緑枠部分)
したうえで、「作成」ボタン(図1黒枠部分)をクリックする。
これでカスタム ディメンションの1つ目に「会員種別」という名前のカスタム ディメンションが作成されたことになる。
続いて図2のようにこのカスタム ディメンションに対応したトラッキングコードが表示されるので、普通のWebサイトの計測であれば、一番上の「JavaScript(ユニバーサル アナリティクスのプロパティでのみ有効)」の欄に表示されているスクリプト(図2赤枠部分)を利用する。
実際のトラッキングコードのカスタマイズは、標準のアナリティクス(ga.js)の場合と同様に、各プランの登録完了ページにトラッキングコードを1行追記してあげればよい。トラッキングコードの最後の2行の間に1行挟んで追記(ソース1赤字部分)するのだ。
無料プラン登録完了ページには、下記のように1つ目のカスタム ディメンション(dimension1)の値に「free」と付与すればよい。これで無料プラン登録者には一律「free」という値がその後ずっと付けられることになる。
ga('create', 'UA-xxxxxxx-1', 'auto');
ga('send', 'pageview');
↓
ga('create', 'UA-xxxxxxx-1', 'auto');ga('set', 'dimension1', 'free');
ga('send', 'pageview');
有料プラン登録者には、「free」の代わりに「stnd」とする。
ga('create', 'UA-xxxxxxx-1', 'auto');
ga('send', 'pageview');
↓
ga('create', 'UA-xxxxxxx-1', 'auto');ga('set', 'dimension1', 'stnd');
ga('send', 'pageview');
トラッキングコードの準備はこれで完了だ。
無料/有料プランユーザーを分析できるようにする方法
標準に用意されているセグメントには今回紹介するセグメントは存在しないので、新しいセグメントを作成していく必要がある。
まずレポート画面の上部にある「+セグメント」(図3赤枠部分)のエリアをクリックしよう。ブラウザ表示の横幅が狭い場合は、すべてのセッション(図3青枠部分)の下に並んで表示される。
「+セグメント」(図3赤枠部分)のエリアをクリックすると、図4のようなセグメントの機能が表示されるので、左上にある「+新しいセグメント」(図4赤枠部分)をクリックして新規セグメントを作成していこう。
新しいセグメントを作成する初期画面では「ユーザー属性」(図5赤枠部分)が選択されているが、今回作成するセグメントでは「条件」(図5青枠部分)を選択しよう。
図5はその「条件」を選択した画面だ。今回のセグメントの条件設定は、図5緑枠部分で行う。
今回設定するセグメントは「無料プラン利用ユーザー」と「有料プラン利用ユーザー」だ。
カスタム変数利用時のセグメント設定
まず、カスタム変数を利用する場合の「無料プラン利用ユーザー」セグメントは、図6のような設定内容になる。
フィルタは「ユーザー」「含める」と指定(図6赤枠部分)しよう。
その下の項目は、「カスタム変数(値01)」「完全一致」「free」(図6青枠部分)のように設定する。カスタム変数の1つ目に付与した値が「free」に一致するユーザーに絞り込むということだ。このような設定をして、「保存」(図5黒枠部分)しよう。
「有料プラン利用ユーザー」を指定するセグメントは、同様の手順で、
- フィルタは「ユーザー」「含める」と指定
- その下の項目は、「カスタム変数(値01)」「完全一致」「stnd」
と指定し、「保存」(図5黒枠部分)しよう。
カスタム ディメンション利用時のセグメント設定
カスタム ディメンションを利用する場合の「無料プラン利用ユーザー」セグメントは、図7のような設定内容になる。
フィルタは「ユーザー」「含める」と指定(図7赤枠部分)しよう。
その下の項目は、「会員種別」「完全一致」「free」(図7青枠部分)のように設定する。意味としては「会員種別」(図1青枠部分)という名前の「カスタム ディメンション」の値が「free」のユーザーに絞り込むということになる。このような設定をして、「保存」(図5黒枠部分)しよう。
「有料プラン利用ユーザー」を指定するセグメントは、同様の手順で、
- フィルタは「ユーザー」「含める」と指定
- その下の項目は、「会員種別」「完全一致」「stnd」
と指定し、「保存」(図5黒枠部分)しよう。
無料ユーザーと有料ユーザーの閲覧ページに違いがないかを分析するには?
ここからは、各レポートにセグメントを掛けてデータを見ていく。まず[行動]>[サイト コンテンツ]>[すべてのページ]レポートにこの2つのセグメントを掛ける(図8赤枠部分)。
- 画面上部グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面左側にあるメニューで、[行動]をクリックする
- メニューが開くので、[サイト コンテンツ][すべてのページ]をクリックする
- 「無料プラン利用ユーザー」「有料プラン利用ユーザー」セグメント(図8赤枠部分)を「適用」する
無料プラン利用ユーザーと有料プラン利用ユーザーの違いはどこにあるだろう。特に有料プラン利用ユーザーがよく使っている機能やページはないだろうか。ページビュー数あるいはページ別訪問数(図8青枠部分)で見られ方のギャップがないかを探してみよう。
またじっくり使っている機能やページに違いがないだろうか。それは「平均ページ滞在時間」の指標(図8緑枠部分)での差の大きいページがないか探してみよう。
そういうページが見つかったら、そのサービスのサポートメルマガなどで、「お薦めの機能」などとして詳しく紹介することで、無料ユーザーがなるほどと思って有料ユーザーにアップグレードしてくれるかもしれない。
無料ユーザーと有料ユーザーの行動に違いがないかを分析するには?
次は[ユーザー]>[サマリー]レポートに該当の2つのセグメントを掛けてみる。
- 画面上部グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面左側にあるメニューで、[ユーザー]をクリックする
- メニューが開くので、[サマリー]をクリックする
- 「無料プラン利用ユーザー」「有料プラン利用ユーザー」セグメントを「適用」する
有料プラン利用ユーザーの方が「ページ/セッション」は多く、「平均セッション時間」は長くなっているのが普通だろう(図8赤枠部分を見るとそのとおりになっておらず、あまり差はないが)。
重要なのは「セッション」数÷「ユーザー」数、つまり1人当たりの平均訪問頻度だ。これは自分で計算しなければならない。図9のケースは月間データなので、月間の訪問頻度ということだ。
図9の場合にそれぞれのセグメント別に計算すると、
- 無料プラン利用ユーザーが18,575÷6,134(図9青枠部分)で3.0
- 有料プラン利用ユーザーでは5,414÷743(図9緑枠部分)で7.3
となっている。有料なので、平均訪問頻度が高いのは自然だ。
ここで考えられるのは、無料プラン利用ユーザーから利用頻度が高いユーザーをさらに抽出できれば、そのユーザーは有料プランをお薦めする候補にできるのではないかということだ。
図9の例では、有料プラン利用ユーザーの平均が月7回ということなので、たとえば無料プランユーザーで月6回以上使っていたら、有料プラン候補と考えても良いだろう。
この条件を満たすユーザーを何らかの方法で抽出して、そこに直接アプローチすることができれば、分析から実際のアップセル施策に繋げることになる。
いくつか方法はあるが、せっかくセグメントの話をしているので、このセグメント条件をAdWordsの広告出稿対象のユーザーリストに登録することができる機能(リマーケティングのユーザーリスト)があるので、次回はその方法をくわしく説明したい。
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オリジナル記事:無料ユーザーを有料ユーザーへ引き上げるヒントをGoogleアナリティクスから得るには?(第37回) | Googleアナリティクス セグメント100選 | Web担当者Forum
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