ソーシャルメディアでは、本来の目的とは異なる余興のような話題が盛り上がることもあります。話題を目にしたら間髪を入れずに突っ込み、たまに羽目を外すことも大事だと思いますね。
Twitterはユーザーと同じ目線から発信して関係を深めたいという思いで、親しみやすさを意識して発信しています。
日本一古い生活協同組合として、1921年から兵庫県を中心に営業してきた「コープこうべ」は、「コープさん」の愛称で古くから地域の中で親しまれてきた。生協は、組合員が出資した資金をもとに商品を調達、供給する仕組み。店舗事業と宅配事業を主軸に事業を展開している他、介護や保険サービス、環境保護活動など幅広く取り組んでいる。
コープこうべが運用するソーシャルメディアアカウントは、公式のTwitterが1つと、広報と販促目的のFacebookページが2つ。今回は年間売上197億円のEC事業「コープこうべネット」を統括し、Twitterなどソーシャルメディアの運用も管轄する浜地研一氏に話をうかがった。
コープこうべネット
お買物とコミュニティのサイト「コープこうべネット」の公式アカウントです!つたない部分には目をそむけつつおつきあいくださいませ。。担当は現在1名っ!確実な回答が必要なお問合せはサイトからお願いします。★「めーむアプリ」とiPhoneカレンダーアプリ「Happy Diary」公開中♪
運用目的
変わりゆく生協の姿、若い世代とのつながりを作る
――生活協同組合、コープこうべのあり方はどのように変わっているのでしょうか。
コープこうべは昔から「コープさん」と呼ばれて、組合員の方と非常に近い関係で営業してきています。もともと午前中に御用聞きでお宅にうかがい、午後に商品を届けるというようなビジネスモデルで発祥したということが関係しています。
1970年代から90年代は、地域のコミュニティからまとめて注文を受けて商品を配達し、それをご近所で分けるという協同購入のスタイルが主流でした。それが90年代以降、時間の制約などから同じ時間に集まれない方も増え、個別に注文して商品を届けるという個人宅配の利用者が増えてきています。
現在は店舗と宅配事業をしていますが、コープこうべの課題としては、利用者の高齢化が進んでいるので、若い世代にどう利用いただくかがあります。また、加入してもらった後、どうすれば長く使い続けてもらえるかを考えていかないといけません。
――Twitterを始めた目的はどこにありましたか。
Twitterは、コープこうべをあまり知らない若い世代にアプローチするために2011年7月に始めました。今のところ、フォロワーはコープこうべの組合員さんがほとんどですが、若い方だけでなく年配の方も多くいらっしゃいますね。
Twitterは、始めるのにお金がかからないので、まず実際にやってみて、新しいコミュニケーション手段としての可能性やポテンシャルを評価していこうということで、アカウントを開設しました。
コープこうべは、2000年からEC事業やネットコミュニティを始めるなど、インターネットに関して先進的にチャレンジする組織だと思います。とはいえ、Twitterの認知度が2011年当時は今ほどなかったので、デモを実施するなど、内部調整の時間は必要となりました。ソーシャルメディアポリシーも作成しています。
親しみを感じられる距離感を意識
――Twitterはゆるすぎず硬すぎず、ちょうどよいバランスで運用している印象です。どういうことを意識していますか。
ユーザーと同じ目線で発信して関係を深めたいという思いがあるので、メルマガよりも親しみやすさを意識して発信をしていますが、食品の安全性などセンシティブな話題は、真摯に発信するようにしています。
でも以前、コープに対する不満ツイートを発見して、お困りごとを解決しようとリプライしたのですが、ダイレクトメッセージで「電話してきなさい」と言われたことがありました。実際に電話してお詫びしましたが(笑)、叱っていただけるほど距離が近いと言えるかもしれませんね。その方ともその後、良い関係になりました。
もちろん、喜ばれることも多いです。以前、トマトを余分に注文してしまったという利用者のツイートを見つけたことがありました。そこで、コープこうべで紹介しているトマトのレシピをツイートで教えてあげたら、感謝してくださいました。
また、加入を迷っている人にも後押しのツイートをすることもあります。某著名DJの方がコープこうべに入るか迷っているというツイートをしているのを見て、加入をおすすめしたところ「コープ半端ねえ」と、実際に申し込みいただいたこともあります。
「コープさん」と呼ばれるのは、生協のなかでもコープこうべのことが多いので、ツイートのキーワードを「コープさん」でチェックしていると、親しみを持ってツイートしてくれる方が多くいらっしゃるのがうれしいですね。
ユーザーの話題にすばやく乗っかり、さらに話題を広げる
――先日、雑誌に載った羽生結弦選手のチョコレートの広告が話題になっていましたね。
あれはすごく反響がありました。コープこうべでエリア限定の「ステーション」という雑誌を販売していて、地元では影響力のある雑誌なんです。通常(全国紙)の広告にはない感じのクリエイティブのものが結構あるんですが、このときのチョコレートの広告の羽生選手のアップも、他の雑誌には出ていないものでした。
ステーション担当者から問い合わせが結構入っているということを聞きつけてTwitterでお知らせしたところ非常に拡散し、注文の電話が全国から殺到したので、急きょWebでも申し込めるようにしたほどです。
Twitter+NAVER まとめからテレビ取材まで拡大
――その他にはどんなツイートが人気なのでしょうか。
メロンパンの呼び方について聞いたツイートなどが人気です。コープこうべで売っているメロンパンは、丸い形ではなくてラグビーボール型なんです。一方、丸いメロンパンは「サンライズ」という名前で販売していて、これはテレビ番組のケンミンショーで取り上げられたこともある、ご当地あるあるみたいになっている話題です。
Twitterで「メロンパン」「神戸」のキーワードで検索してみると、「メロンパンは縦長」「サンライズとはいわへん」などと、話題にしている方も多いのです。
そこでTwitterのアカウントを使って、NAVER まとめに「メロンパン論争」としてまとめました。このとき、ちょうどプロモツイート(Twitterの広告商品)を試していて3つほどツイートを宣伝したのですが、その1つにメロンパンのまとめを混ぜてみたところ拡散しました。さらにIT系ニュースサイトで取り上げられたことなどで広がり、最終的には地元テレビ局が2~3社取材にきて放送されました。
Twitterを起点に話題をつくり、NAVER まとめを作ってTwitterで拡散し、さらにプロモツイートで爆発しました。普段はほそぼそと運用していますけど、たまにこういう爆発的なヒットがあるので、Twitterは貴重なメディアだと思いますし、やめられないですね。
今は第2弾として、Twitter上でこれもよく話題になる生協のイケメン宅配担当の写真を掲載したまとめをリリースしたところです。こちらも拡散しだしています。
また、コープこうべの新しい公式キャラクターも誕生したところで、キャラクター画像をTwitterで投稿いただくキャンペーンも実施しています。
宅配時の「おすすめ」をネットで実現して売上げアップ
――Twitter経由で売上げにつながることはどれぐらいありますか。
毎週水曜日の12時から数量限定のセールをWebで行うので、開始のお知らせや実況ツイートなどをすると、反応がありますね。メルマガ経由の購入と比べると、Twitterのコンバージョン率が高いです。メルマガの方が配信数は多いのですが、コンバージョンで見ればTwitterはかなり効率の良いメディアということになります。
たとえば以前、ネットで1箱500円、5箱で2,500円の超高級ティッシュペーパーを販売したのですが、1つも売れませんでした。そこで、Twitterで「こんな高いの売れるわけないですよね」とツイートしたら、それを見た方が「なら私が買う!」と言ってくださって本当に購入していただき、しかも届いた後に画像をツイートしてくれるということがありました。
生協では、宅配で商品をお届けするときに、担当者がその場で商品をおすすめしてコミュニケーションを取る文化があります。しかし、最近は配達時にご不在のお宅も多いので、それの代わりにネットでおすすめしているという感じですね。
地域の生協という仕組みなので、Twitterのフォロワー数は少ないです。兵庫県と大阪北部、京都の一部でしか活動していませんから、全国の人に発信してもあまり効果がないです。ただ、コミュニケーションの密度は濃い気がしています。
Facebookページは、広報室が運用しているブランディング系のページ「生活協同組合コープこうべ」と、インターネット事業部が運用する販売促進を目的とした「コープこうべネット」がありますが、Facebookでは販売につなげるような投稿は「いいね!」されないので、あまり向いていないと感じています。販売につながるようなやりとりは、Twitterが向いていると感じます。
――Twitterのユーザー投稿から生まれた企画などはありますか。
店舗のお客さまで、コープこうべで売っているライ麦ブレッドをアレンジした写真を投稿している方がいて、ものすごくおいしそうなんですね。そこでその人にお願いして、46万世帯に配布しているコープこうべのカタログにレシピを掲載しました。Twitterのやりとりで材料を決め、最終的にいただいたレシピをカタログに掲載できたので、Twitterでユーザーと一緒になった紙面作りができました。
効果測定
数よりもコミュニケーションの密度にこだわり、ヒットを狙う
――Twitterの効果測定では、どんなことを見ていますか。
運用ツールの「つぶやきデスク」で、最終的にツイートがどのくらいの人に到達したか、ツイートの反応数やコンバージョン数などを計測しています。
運用当初は売上や会員登録、フォロワー数などの数字を意識していたこともありましたが、今は数字にはこだわらず、フォロワーさんとの関係の強化を意識しながら、たまにヒットを狙うように運用しています。
フォロワー数は、最初は「何万人」を目指した方がいいのかと考えたこともありましたが、営業範囲が地域限定なので、今くらいの規模感で御用聞きを続けていけたらと思っています。
――Twitterの運用ツールを導入したきっかけはなんでしょうか。
運用開始当初は別のツールを使っていました。つぶやきデスクを知ったのは、当時Twitterに加えてmixiページを始めたときです。当初使っていたツールがmixiページに対応していなかったので、別のツールを探していたときに見つけました。つぶやきデスクを使い始めたのは2012年です。
他にもツール候補はあったのですが、つぶやきデスクの方が対応のレスポンスが早くて信頼できると思いました。「ここが使いにくい」と伝えたら、「すぐに直します」といって本当に改善してくれました。そういうフットワークの軽いところ、利用者のフォローの厚さからつぶやきデスクに決めています。また、つぶやきデスクは分析項目が多く、過去のデータも分析できるところが気に入っています。
――ツールではどんな機能が役立っていますか。
指定したキーワードのツイートを表示してくれる「検索フォルダ」です。先ほどもお話したように、「コープさん」「メロンパン 神戸」などのキーワードを登録して、ネタ探しをしています。
また、日々のツイートもすべてつぶやきデスクを使って運用しています。スマーフォン対応版も試したいと思います。
Twitterでは毎日、はじまりのあいさつとして、店舗で流れるテーマソングをもじった「風のようにあなたのTLへ。こんにちは!コープこうべです♪」と最初にツイートして、業務終了時には終了のあいさつをするように決めています。これをつぶやきデスクの予約投稿にセットすることも可能ですが、やはりリアルタイム感が重要だと思いますので、毎回手作業で投稿する運用にしています。
ソーシャルメディアの波に乗る感覚を磨く
――Twitter運用の悩みはありますか。
Twitter運用の標準化ですね。複数人で運用するという案もありますが、1対1の関係性は薄めたくないというのもあります。久しぶりの方に「お久しぶりです!」と声をかけられなくなりますし。でも、ジョブローテーションもありますから気をつけないといけないこと、口調などをまとめた運用マニュアルは準備の必要があると考えています。
現在、Twitterの投稿は1日に4~5つ、かけている時間は1日10分くらいなのですが、やはり手間を掛けるほど反応も良くなり、良い状況になります。なるべくツイートしてネット界隈のながれや感覚をつかむことが重要だと思います。
――これまでの運用経験から、担当者にアドバイスをお願いします。
メロンパンやイケメン担当の話題は、本来のTwitterの運用目的とは異なる余興のようなツイートなんですが、そういう話題がソーシャルメディア上で盛り上がることもあります。盛り上がりそうな話題に目をつけたら間髪を入れずに突っ込み、たまに羽目をはずすということも大事だと思います。
今後は、ユーザーとのやりとりを通して商品開発やサービス改善などにも活かしていきたいですね。
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オリジナル記事:Twitterは現代版御用聞き! 親しみのある会話で売上にも貢献/コープこうべ | 企業担当者に聞くFacebook&Twitter運用の現場 | Web担当者Forum
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