中華圏と日本の常識はどのように違うのか? 上海で「教育系商材」を検討する母親を対象としたユーザー行動観察調査からわかった、日本の常識は通用しない3つのポイントを紹介する。日系企業が中国ビジネスにおけるウェブ活用を考えるうえで、ぜひ役立てていただきたい。
「教育系商材」を検討する母親を対象としたユーザー行動観察調査からわかった3つのこと
中華圏と日本の常識はどう違うのか?「教育系商材」を取り扱うある企業が中華圏でビジネス展開するために、顧客となる母親を対象にウェブのユーザー行動観察調査を実施した。その行動観察調査からわかった日本の常識は通用しない3つのポイントを紹介する。
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調査結果①リアルチャネルとウェブチャネルの競合相手は一致しない
ウェブサイト上で自社商品をどう訴求するかを検討する際、競合との違いを意識するのは一般的だろう。ウェブ上でユーザーと効果的にコミュニケーションを行うためには、ユーザーの購入検討プロセスにおいて、何が競合になるのかを把握し、競合に負けないための説得を行っていく必要がある。
ここで、中華圏ウェブサイトを検討する際に注意したいのは、リアル世界の競争環境が必ずしもウェブ上での競争環境と一致していないことである。
我々のクライアントは、現地でも知名度があり、数万人規模の顧客プールを持っていた。当然ながら、競合となる企業は同規模の企業や、やや小さな規模の現地企業だと想定していた。
ところが、実際にウェブ上での上海ユーザーの行動を観察してみると、それまであまり意識していなかった現地企業X社の商品としばしば競合していることがわかった。しかもこのX社、リアルでの販売規模はまだ小さいにも関わらず、ウェブ上ではあたかも沢山のユーザーがいる有名ブランドのように見えているのである。
なぜ、このようなことが起きているのか?
前回のコラムでも紹介したとおり、中国では一人っ子政策が取られているため、母親は皆、子育てがはじめての新米ママ。しかも上海などの都市部では経済成長が急速に進み、生活環境やライフスタイルが大きく変わった結果、祖父母世代の子育て経験はあまり参考にならなくなっているため、中国のママたちにとって、ウェブ上の口コミサイトはリアルな情報が得られる場として、極めて重要な役割を果たしている。
調査でも、ほとんどユーザーが、複数の口コミサイトに訪問し人気のある商品を探す行動を取ったのだが、その一つがX社が運営する口コミサイト「baby tree」だったのである。
このサイトの見た目は、ご覧の通り特定の企業色はほとんど感じられない。口コミエリアは「子どもの年齢別」「病気」「教育」といった関心事別に分けられており、自分の見たい情報にスムーズにたどり着けるよう導線が整備されている。
また、口コミ以外にも、子どもの教育や病気に関して専門家のコラムを集めたエリアや子ども向け商品のサンプル配布を行うエリアがあるなど、母親のニーズに応えるコンテンツに事欠かないなど、かなり力を入れて運用されている。
そのため、ここは母親ユーザーが育児教育に関する情報収集を行うための人気の口コミサイトの一つになっていた。
そして、X社はこの口コミサイト内に「X社の商品を使ってみた感想」といった特集を意図的に置くことによって、このサイトに集まる多数の見込み顧客に対し、自社商品の認知獲得や販促活動を行っていたのである。
このサイトは、グローバルにサービスを提供する有名ウェブサービス会社から独立した社員が立ち上げた企業だ。アメリカや日本などのウェブ上で起こっているユーザー行動を理解し、それをいち早く中国ウェブに持ち込むことで、巨大な潜在顧客プールとの接点を作り出していた。日本でたとえれば、カカクコムやアットコスメなどの大規模口コミサイトを、商品の販売も行う一企業が自らの手で作り上げてしまったようなものである。
ウェブサイトは物理的制約を受けないその性質ゆえに、リアル世界の販売チャネルで大きく劣る企業であっても大手企業と互角に戦いやすい環境である。前回のコラムでも取り上げたように、中国では今、ウェブチャネルが急速に力を持ち始めている。動きの速い中国の現地企業のなかには、ウェブ活用にいち早く取り組み、日本企業以上に使いこなしているケースもある。
海外での販売活動において、リアルでの競合はベンチマークしているが、ウェブ上の競合は考えたことがなかった……というケースも多いのではないだろうか。
現地のユーザーがウェブ上でどのような商品やサイトに触れ、どうのように自社商品と比較するのか、そのリアルな行動を把握することは、成果を上げるウェブサイト作りだけでなく、中国ビジネス全体の成功に関わる可能性あることを心にとどめておいていただきたい。
調査結果②子供向け「通信教材」が手元にどのように届くのか説明しないと伝わらない
中華圏向けのサイトを展開する場合、まずは日本向けサイトに存在しているコンテンツを翻訳するなどして、商品紹介ページからそろえていくケースは多い。しかし商品の魅力をいかに語っても、その努力が実は空回りしているケースがある。
前述したようにママたちは、まずネット上の口コミサイトで情報収集を行う。その後、おすすめされている商品について、各社のサイトへ訪問し、商品の詳細を確認していく。
それらの商品の中には、日本の進研ゼミやZ会のような「通信教材」を扱っているサイトも含まれているのだが、その商品ページを読んだママの頭は
- 届けられる教材は毎月自分で組み合わせるのか?
- 12か月分、まとめて届くのか?
と疑問だらけ。
企業側としては教材の中身を丁寧に説明している。だがママにとっては、教材の中身の前に、どのように手元に届くのかがわからないため、「結局なんだかよくわからない商品」として検討候補から外れてしまっていたのである。
日本人にとってみれば子供向けの通信教材の場合「決められた教材セットが定期的に自宅まで届く」という仕組みは、あえて説明する必要もない「常識」の一部だろう。
しかし、その常識が異なるのが中華圏。商品・サービスの魅力訴求の空回りを避けるためには、「当然知っているはず」と思っていることが本当にそうなのか、前提知識の違いを疑ってみる必要がある。
調査結果③会社紹介ページは信頼を勝ち取る場
日本ではあまり重要視されず脇役になりがちな会社紹介ページ。中華圏向けのサイトでも、とりあえず、会社名と所在地を載せているだけ、という対応になっていないだろうか。
そのような対応は、大きな機会損失を招いているかもしれないのだ。
企業サイトを訪問する中華圏ユーザーの行動を観察していると、商品やサービスの内容をひと通り確認した後に、会社紹介ページへのリンクを能動的に探し、訪問する行動が頻繁に見られる。また、アクセスログでも、中華圏向けのサイトでは企業紹介ページがページビューを集めている。
ご存知の方も多いと思うが、中国は海賊版が横行する信頼度が低い社会である。その企業の信頼できるかどうかを判断するための情報が、会社紹介ページの設立年数や従業員数、販売数や売上なのである。
もちろんこのページに掲載されている情報をすべて信じてもらえるわけではないが、マイナスから始まる信頼をゼロ、あるいはプラスにするチャンスであることには変わりない。日本での販売実績を示す、製造工程を開示する、専門家からの評価を掲載するなど、信頼を勝ち取る場として、ぜひとも有効活用すべきである。
中華圏ビジネスの成功にはウェブチャネルの活用がキー
現地ユーザーのニーズ・行動を理解し、最適なコミュニケーションを作り上げていく。ごく当たり前のことだが、言葉も文化も商習慣も異なる中華圏ユーザーとの適切なコミュニケーションを練り上げるのは容易ではなく、しかも中華圏展開の現場ではウェブサイトにさけるリソースは限られている、というのが実情であろう。
しかし、中華圏で日系・現地双方の企業のウェブ活用を支援してきた経験から、今後ウェブは中華圏ビジネスでの成否を分ける重要チャネルとなってくると感じている。その理由は大きく3つある。
中国の広い国土ではインターネットで一気にリーチを広げられる
今後発展が見込まれる内陸部でも、インターネットは着々と浸透している。この新市場にいち早く食い込んでいくためにウェブをどう活用するかはキーになってくるだろう。高騰する人件費
これまで中国ビジネスでは、安い人件費を土台に、人海戦術の電話セールスなどが展開されていた。しかし、経済発展とともに人件費が年々上昇していく中、ウェブを活用した営業の効率化は、利益を確保する手段の一つとなるはずである。ユーザーの間におけるウェブの急速な普及
中国ユーザーは新しいサービスを受容する際に抵抗感が少ない。ネット通販を筆頭に、便利だと思ったサービスはためらうことなく利用する。また、企業への信頼が乏しい中国では。口コミはユーザーの消費行動に大きな影響を及ぼす。そして、今、口コミの入手元はウェブ上の口コミサイトである。
このように、中国ユーザーの生活においてウェブの重要性は増していき、それは企業にとってもウェブチャネルの重要性が増していくことを意味するだろう。中国でのウェブは大きなビジネスチャンスを持っているのだ。
日系企業は、日本でのウェブ活用の経験に、現地ユーザーへの理解を組み合わせることで、このチャンスを逃すことなく、最大限活用していってもらいたい。
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オリジナル記事:中華圏では口コミサイトが日本以上に重要?! ユーザー行動観察でわかった3つの違い | 日本の常識は通用しない! 中華圏ウェブユーザーの行動観察レポート | Web担当者Forum
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