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「単なる値上げではなく環境の変化に対応するため」~楽天市場料金体系変更の真相 | ネットショップ担当者フォーラム ダイジェスト | Web担当者Forum

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楽天は今年11月から2015年4月にかけて、料金体系の大幅な変更を実施する(既報記事はこちらから)。今回の料金体系の変更で、一部出店者は楽天に支払う手数料が安くなるが、大多数の出店者では出店手数料の値上げとなる。料金体系の変更を行う狙いや、この変更を出店者はどう捉えればいいのか。楽天市場事業編成部長兼楽天市場品質向上委員会委員長の河野奈保執行役員に聞いた。

 

安心安全を担保するシステム作りにため店舗にも負担を

河野奈保執行役員

――なぜこのタイミングで料金体系の変更を行うことになったのか。

今回の料金体系の変更は主に4つの側面から行うことになった。

まずは、出店している店舗のオペレーションがかなり複雑になっており、これを効率化する必要があった。そのため、出店者からニーズの高い機能を従来の有料から無料に変更することで、作業の効率性を高めようと考えた。

2つ目は消費税への対応だ。従来は出店者の設定に任せていた部分が大きかったが、今回それを統一することにした。

また、ECを取り巻く環境が変化し、特にモバイルとメールに対する状況が変わってきたため、これに対応できるようなプラン変更を行った。

加えて、楽天市場では「便利でお得にお買い物が楽しめる」というコンセプトで事業が始まっているが、現在はより安心して買っていただける安全な環境作りを強化することで、より多くの消費者を集め、各店舗の売上増加につなげようと考えている。こうした安心安全を担保するためのシステム作りには楽天も投資を続けているが、店舗にも一部をシステム利用料として負担してもらうことにした。

――今回の料金体系で具体的にどの程度の出店者が値上げとなるか。

今回の料金体系の変更は多岐にわたっているため、一概に説明することができない。これまでよりも料金が上がる店舗もあれば、料金が下がったり、これまで通りの水準となる店舗も出てくるだろう。

料金体系改定の概要

セグメントを区切ったメルマガ配信で消費者の満足度向上に

――モバイルのシステム利用料率を、PCよりも一律で0.5%高くしている。その根拠は。

モバイルの料金設定はモバイルECが始まった2000年に設計した。それから14年が経ち、モバイル環境も急速に変化している。2000年当時はガラケーが中心で、ほとんどモバイル経由の売り上げがなかったため、全出店プランで一定料率(3.0~5.0%)で問題はなかった。しかし、最近ではスマホECが活発になり、既に流通総額の40%がモバイル経由になっている。そのため、出店プランに合わせた料率に変更する必要が出てきた。

モバイルがPCに比べ一律で0.5%高いのは、モバイルはデバイスの機種ごとに最適なシステム投資が必要であり、ページの最適化も必要になる。そのため、システム利用料を高く設定した。楽天市場ではモバイル経由の流通は伸び続けており、今後もモバイル対応はECにおける肝になると考えている。

――メールマガジンは従来設定していた無料配信枠を撤廃し、一律で1通0.75円の費用がかかる(2015年4月1日から)。メールの配信総数を少なくしたいという狙いもあるのか。

配信総数を少なくしたいというよりも、質の高いメールを配信してほしいと考えている。楽天が発行するメールマガジンでもここ数年、質の向上に向けてセグメントを細かく切って配信するなど対策を行ってきた結果、効果が高いだけでなく消費者の満足度も上がるということが立証できた。そのため、出店者にはセグメントを区切り、消費者の属性などに合ったメルマガを配信してもらいたい

従来、セグメントを区切ってメルマガを配信するには基本月額料金として1万円以上が必要だったが、基本利用料は無料になる。従来はセグメントを区切ろうとしても、月額利用料がかかるため実施しなかったという店舗も多いだろう。今回は基本利用料が無料なので、セグメントを区切って配信するとどのような反応が出るか試していただきたい。

――メール配信を完全有料化すると、メールマガジンを送らなくなる店舗が出てくるのではないか。消費者と出店者の接点を大事にしてきた楽天ではそのようになってもいいのか。

今はメールだけでなくSNSなどで顧客と接点を持つ方法が多い。そのため、接点が減るとは思っていない。また、とにかく一斉にメルマガを送るケースも多かったと思うが、消費者とのコミュニケーションが多様化する昨今、従来の方法をそのまま踏襲するだけではリーチしづらくなっているのではないか。ワンツーワンのメールを配信するようになることで、顧客との距離を縮めることができるのではないかと思う。

――無料で配信できた頃と比べると、メルマガの内容なども変わってくるだろう。新たな仕組みに応じたメルマガの出し方なども、今後楽天大学で教えていくことになるのか。

そう考えている。メルマガはとりあえず無料だから一斉に配信するという考えから、費用対効果を考えた販促ツールになっていくだろう。例えばリスティング広告であれば、細かくキーワードを設定して、出稿しながら効果の高いものを選んでいく。メルマガでも同じように、セグメントを細かく区切って、効果の高いセグメントだけを残していくようになってくるのではないか。

メール配信プランの新旧比較

無料になった4つの機能を徹底的に使うことで売り上げ拡大につなげてほしい

――安全・安心の仕組みを強化するため2014年11月から、売り上げの0.1%分を追加で課金する。これは商品ジャンルやデバイスを問わず実施するのか。

一律で0.1%の課金追加は実施する。追加で課金した分は、環境整備として「ユーザー補償サービスの強化」「配送・納期情報登録に関するガイドラインの制定」「決済システムの強化」などに投資する。これ以外にもモニタリングや消費者への対応など安心安全を強化するための取り組みを強化するために充当する。こうしたことを通じ、今以上に消費者の満足度の高いサイトにしていきたい。そのための費用と考えてもらいたい。

――結果的に値上げとなると、不満を持つ店舗も出てくると思うが、事業への影響は。

今回の施策は、消費者にとって、安心・安全で楽しく便利なお買い物の場「バザール」を店舗と供に作りあげていく我々の方針だ。ECは社会的にも新たな消費スタイルの中核にまで成長した。より売れる場を作るためには、安心・安全な環境を提供しなければならない。

今回の料金改定で、結果的に値上げとなる店舗のなかには、無料化する4つの機能がこれまでコストがかかるため使用してこなかった店舗も多いと思う。今回無料になる4つの機能を徹底的に利用し、売り上げを増やすようにシフトしてもらいたい。そう考える店舗が増えれば、今回の料金改定は逆に1つ1つの店舗の流通額増大にもつながる施策だと思う。

オリジナル記事はこちら:「単なる値上げではなく環境の変化に対応するため」~楽天市場料金体系変更の真相(2014/09/10)

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オリジナル記事:「単なる値上げではなく環境の変化に対応するため」~楽天市場料金体系変更の真相 | ネットショップ担当者フォーラム ダイジェスト | Web担当者Forum
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この記事の筆者

中川 昌俊(ネット担当者フォーラム)

大学在学中に起こったアメリカ同時多発テロに触発されて、紛争地などの取材を開始。

ただし、実力もコネもないフリーライターがうまくいくような世界ではなく、たまたま記者を募集していた通販・訪販の専門紙新聞社に入社。

EC業界を取材する記者として8年間勤めたのち、ネットショップ担当者フォーラムに記者として参加。


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