アクセスログをグラフ化してレポートにすれば仕事をしたことになると思っているWeb担当者に喝!
アクセスログを一生懸命グラフ化しても、それは単なるアクセスログ整理。
アクセスログ整理とアクセス解析は別物だと理解すべし。
「アクセス解析お願いします」とWeb担当者は言うけれど
どんなWebサイトを運用していても、アクセスログは気になるものだ。当然のように、この件に関する問い合わせは、昔から数多くいただく。
しかし、その内容が昔から一向に変わらないままなので、困っている。同じアクセスログでも「役に立つアクセスログと役に立たないアクセスログがある」という基本的なことが理解されていないのだ。
何の考えもなく構築されたWebサイトのアクセスログは、商品やサービスの人気投票にしかならない。
「アクセス解析」のスタートラインは、Webサイト構築のスタートラインと同じ場所にあるのだ。
アクセス解析をしているのですが、見方がよくわからなくて……。Web担当者A
アクセス解析はしているのですが、それをどう活かせばいいかわからないんですよねぇ。Web担当者B
とりあえずアクセスログはあるので、解析してWebサイトのどこを改善すべきか教えてください!Web担当者C
見方がわからなければ解析できないし、活かせないなら解析の意味がない。アクセスログがあれば何なんとかなるという勘違いも多い。そもそも、制作会社やアクセス解析を生業としている会社にも問題がある。
簡単にアクセス解析できます! おまかせください!制作会社
このツールを入れたら、たちまちアクセス解析して可視化できちゃいますよ!アクセス解析業者
それは、本当にアクセス解析なのか?
単なる「アクセスログの整理とレポート」をしているだけではないのか?
そんなものを「解析」と呼んでいるから、クライアント企業が誤解して、安易な気持ちで「アクセス解析お願いします!」と依頼したくなるのだ。
せめて本コラムの読者だけでも、アクセスログの整理とアクセス解析は別物であることを理解してもらいたい。
「アクセス解析とは何か」を根本から考え直すべし
アクセス解析とは、お客さまのニーズや導線※を想定して、仮説に基づいて制作したWebサイトの構造やレイアウトが、お客さまの使い方や動線※にマッチしているかを検証する作業だ。
※ここでは「導線=予測したルート」「動線=実際の動き」という意味で使い分けている。
だから、お客さまのサイト内外での動線を理解していないと始まらない。
順番としては、Webサイトを制作してからアクセス解析を考えるのではなく、サイトを制作する前に「こんな風に使ってもらえれば、お客さまに満足してもらえるはずだ。一番ハッピーになれるはずだ」と想像して仮説を立ててから、それに基づいたWebサイトを構築すること。
最初にその工程がなければ、本当の意味でのアクセス解析など存在しないも同然なのだ。
キノトロープでは、この仮説を立てる作業を「ユーザー体験シナリオの作成」と呼んでいる。ほかにも「ペルソナ」や「カスタマージャーニーマップ」など、さまざまな呼び方があるが、とにかくこれが必要だと理解してほしい。
つまり、アクセス解析とは、検証作業なのだ。
自身の立てた仮説が、お客さまにマッチしているかどうか検証する。マッチしていなければ、再度仮説を立てて修正を行い、再検証する。
この繰り返しがあるから、すべてのWebサイトは成長する可能性がある。また、お客さまのさまざまなニーズに対応していけるわけだ。
時間のかかり方に違いはあるにせよ、Webサイトが他のメディアよりも優れているのは、それ自体がマーケティングツールとして機能できるところだ。Webサイトでは、成果だけでなく、その何パーセントまで達成できていたのか、途中過程も明確に定量化できる。
このすばらしさを活用できなければ、Webサイトを運営しているとは言えない。Webサイトは成長するメディアであり、Web担当者はそれに引っ張られるように成長していけるはずなのだ。
Web担当者のあなたが成長していないとしたら、このことを理解できていないからかもしれない。
だからアクセスログだけ持って来られても何もできません!
現状のアクセスログがあれば、サイト再構築の際のヒントとしては使えるだろう。ユーザーのサイト内でのニーズが、そのログに“ある程度は”表現されているはずだからだ。
しかし何度も言うが、Webサイトそのものの構造やページのレイアウト修正の参考には、まったくならない!
アクセスログをグラフ化したものを持ってきて、「アクセス解析資料」と言われても困る!
それは“単なるアクセスログの整理”でしかない。解析とは仮説検証のデータであり、改修の裏付けとなるロジックが示されている資料のことだ。
繰り返しになるが、アクセスログだけを持ってきて「サイト改善お願いします」はやめてくれ!
私には無理! 絶対無理!!
ただし、「リニューアルするので、参考までにアクセスログを持ってきました」なら、とてもありがたい。このアクセスログによって、現状のサイトに訪問しているユーザーのニーズが明確になり、サイトリニューアルのゴール設定やコンテンツ設計の参考になるからだ。
最後に、膨大な量のアクセスログと日々格闘しているWeb担当者へ。
すべてのアクセスログをどんなに詳細に眺めたところで、そこに答えはない。しかし、最初に仮説を立てていたなら、その差分がアクセスログの中に明確に表れているはずだ。もちろん正解も確認できる。
すべての仮説を立てることは難しくても、次回制作するキャンペーンページなど、小さな案件があれば、そこから仮説検証にアクセスログを活かす方法を取り入れてみてほしい。そうすれば、仕事の時間と質が劇的に変わるはずだ。
本日のまとめ
まずWebサイトの効果を決めて仮説を立てる。次にユーザーの動線を検証し、問題があれば、すばやく修正する。
これがWebサイトのPDCAだ。
PDCAに必要な仮説と検証の指針がアクセス解析であり、仮説があるから検証が可能になる。
アクセス解析は、ユーザーニーズ解析!
サイト設計の基盤になる仮説の検証そのもの。もちろんその検証は「お客さまのため」でなければ、Webサイトで成果を出すことはできない。
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