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ちょっと待った! 「新gTLD」に潜む “飛びつくリスク”、認識していますか? [アズモード宮脇の「現場視点のドメイン選択」] | Web担当者Forum

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この記事を読むのにかかる時間: 約 3.5

新サービスには必ず「飛びつくリスク」が存在します。
企業のドメイン名において大切なのは新奇性ではなく「安心感・信頼感」です。

「.cash」や「.tax」など新たなドメインが利用できるようになることから、業界の関心を集めている「新gTLD」。しかし、目新しいドメインに飛びつくのは果たして正しいWeb担当者のあり方なのか、一度立ち止まって考えてみよう。Web担の人気連載「企業ホームページ運営の心得」の著者、アズモード宮脇氏が、ドメインのあり方について考える。

次々に生まれ、ひっそり退場する新サービス

新gTLDってどんなものがあるの?
  • .xyz
  • .email
  • .link
  • .company
  • .bike
  • .cash
  • .tax
  • など

2014年上半期、もっともWeb業界で関心を集めているのが「新gTLD」

「TDL(東京ディズニーランド)」ではなく、「分野別トップレベルドメイン(generic TLD)」のことを指します。「.cash」や「.tax」などのドメインが利用できるようになることから、選択肢の拡がりを歓迎する声もあります。今回は、現場の視点から、ドメインのあり方について全3回の連載で考えてみます。

業界自体が若く技術革新が進むWebの特性から、新しいルールやサービスは次々と生まれてきます。

「グーグルのリスティング広告が、既存のビジネスを破壊する」と脅した伝道師がいたように、新しいサービスを実力以上に喧伝するWeb業界の風潮がそれらを煽ります。つき合わされる現場のWeb担当者はたまったものではありません。新サービスとほぼ同数が、ひっそりと退場している一方で、既存のビジネスは破壊などされず、法隆寺を創建した創業1400年を超える「金剛組」はいまだ存在します。現場レベルでWebに接するものとして、「新gTLD」にはいささか懐疑的です

仮想空間「セカンドライフ」が日本に上陸した際、猫も杓子もアカウントを作り、仮想空間の土地を買い占め、ユーザーの分身であるアバターが量産されました。また、「グルーポン」に代表される「フラッシュマーケティング」が、ネット広告界の業界地図を塗り替えると喧伝されていました。最近では「Facebook」の過剰礼賛。しかし、実際には「LINE」が国内SNSのトップに躍り出たように、Web業界において新しく登場したサービスには「飛びつくリスク」があるのです。

繰り返しになりますが「新gTLD」とはドメインです。ドメインとはなにか?と考えれば「飛びつくリスク」が顕在化します。

ドメインとは企業の「信用」であり「資産」

ドメイン名に目新しさは必要ですか?
一度取得したドメインを、企業が継続する限り、保有し続けることができますか?

ドメインとはウェブ上の「住所」ですが、企業にとっては「看板」の性格を持ちます。ビジネスで見れば「信用」のシンボルでもあり、ドメインそのものが商標のように流通すれば、すなわちそれは「資産」です。一時の話題性で飛びついた先に、何が待っているのでしょうか。

近年、徐々に表面化しているのが「放棄ドメイン」による「ブランド毀損問題」です。企業が、イベントやキャンペーンごとに取得したドメインを、更新せずに権利を放棄した場合、その権利放棄されたドメインを別の人間が取得し、アダルトサイトなどに転用するのです。イベント期間が過ぎても、口コミや雑誌のバックナンバーに掲載された広告を見てURLを入力するケースはありますし、SEOに力を入れていれば、残された効力が、アダルトサイトへの誘蛾灯になります。その結果、ブランドイメージの毀損が起こるのです。安易に「新gTLD」でドメインを作り、特設サイトを開いた末路のデジャヴを見る思いです。

一般論で考えれば、手放したドメインがどんな商売に使われようと、差し止めることは困難です。信用毀損という損失を含めれば、一度取得したドメインは、企業が継続する限り保有すべきです。これについての対応策は第2回で掘り下げる予定です。

「定番」は「信頼」につながる
信頼度の高いジャパンブランド

現場のWeb担当者、特に法人のサイトを管理するWeb担当者にとって、訪問者に「安心感」を与えるのは重要なミッションです。ユーザーの側に立って考えれば分かることです。ウィルス、フィッシングなど、サイトへの不安は数限りないからです。その視点からも「新gTLD」の積極的利用を奨めはしません。なぜなら「新」との対比で「旧」にあたる「.jp」へ寄せられる信頼は高く、JPRSの調査によると、「.jp」の法人登録者の4人に1人(24.9%)が

“安心感・信頼感”

を決定要因に掲げているのです。主要なTLDである「.com」の17.5%より、4割高い評価に属しています。

安心感・信頼感から選ばれる「.jp」 (※2013年JPRS調べ)
一般ユーザーにも人気 (※2013年JPRS調べ)

さらに、一般ユーザーに登録したいTLDを訊ねると、53.0%が「.jp」を選び、21.7%の「.com」の約2.5倍の支持率を誇ります。「.jp」を提供するJPRSは、フィッシング詐欺などへの悪用報告に対応しており、積み重ねた信頼が、一般ユーザーの支持につながっているのではないでしょうか。また、セキュリティ対策のリーディングカンパニー「マカフィー」は「.jp」を、世界一安全な国別ドメイン名と評価しています(出典:「危険なWebサイトの世界分布2010」)。

対する「新gTLD」の最大のアドバンテージは新奇性です。しかし、それは「旧」のデメリットにはなりません。新旧、善悪といった二抗対立により単純化する思考回路はWeb業界の悪弊です。「旧」が新奇性に欠けるのは、すでに「定番」となっているから。「定番」という評価が信頼を意味することは言うまでもありません。

そもそも新奇性で勝負すべきなのは「コンテンツ」です。珍しいドメインを競う姿は、キラキラネームのサイト版。現場のWeb担当者にとっての正しいベクトルではありません。

先のアンケートではくみ取れない「感覚的な安心感」も「.jp」にはあると睨んでいます。それは「国産野菜」や「国産米」などへの信頼と同じです。国産と有機農法は同義ではなく、国産に安全とルビが振られるわけでもありません。しかし、国産という文字には、それだけで安心感を覚えてしまうのが日本人です。「.jp」への高い信頼感にも通底するのではないでしょうか。そして調べたところ「仮説」が「確信」に変わります。「.jp」の指定事業者は国内に限定され、データも同じく国内で管理されていたからです。

現場のWeb担当者なら、この「安心感・信頼感」を利用しない手はありません。次回よりドメインの実戦的活用法について踏み込んでいきます。

協力:JPRS

第2回の掲載は7月中旬を予定しています。

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この記事の筆者
ユーザー 宮脇睦(有限会社アズモード) の写真

宮脇 睦(みやわき あつし)

プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。

制作、営業の双方の現場を知ることからウェブとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供し、一業種一社、制作案件は足立区内のみという営業施策をとっている。本業の傍らメールマガジン「マスコミでは言えないこと」を発行。好評を博す。著書に『完全! ネット選挙マニュアル』(Kindle版)、『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)、冷静な視点からのIT業界分析に「週刊ポスト」など、様々な媒体から情報発信を続ける。

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