コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の350
ラストスパートへ向けて
4月からの消費税増税まで1か月を切りました。「駆け込み需要」の本番はこれからです。
イオンは2月20日から、トイレットペーパーなどの特定品目について、電子マネー「WAON」を利用すると最大28%のポイントを付与するセールを開始しました。オフィス用品通販のカウネットも、コピー用紙など約3,000品目を3月31日までの期間限定で値引きし、スーパーの西友は1月の三連休からすでにセールを開始しております。
一部の報道では盛り上がりに欠けるという声も耳にしますが、2010年の「タバコ増税」では、増税直前になってコンビニからタバコが消えました。多くの消費者はギリギリになってから「駆け込む」ものです。
駆け込みとは「買いだめ」であり、それを意図的に提供するのが「まとめ売り」です。そして「まとめ売り」にはセールの「本質」があります。
そこで今回のテーマは「まとめ売り」についての話ですが、「アプローチ」を提示するものであり、推奨するものではないと言い訳をしておくのは、踏み越えれば「グレーゾーン」となる「ブラック・セール術」だからです。
まとめ売りの本質とは
洗剤など生活用品を販売する「花王」は、ホームセンターの「島忠(島忠ホームズ含む)」とタイアップし、同社の製品を同一店舗で同じ日に5,000円以上購入すると、1,000円キャッシュバック(JCBギフトカード)するという「まとめ売り」を実施しました。キャッシュバック率は20%。大盤振る舞いの理由は、わが家が購入した商品を眺めれば一目瞭然です。
- ニュービーズ(洗濯洗剤 900g)×3ケース(1ケース8個入り)
- ハミングフレア(柔軟剤 620ml)×4個
夫婦と犬一匹のわが家においては、この洗剤の量はおおよそ1年2か月分に相当します。この期間のわが家は「花王製品」に支配されるということ。つまり、「まとめ売り」が目指すセールの本質とは「他社の排除」です。
細かなものでもできる方法がある
セールによって、わが家が洗剤を14か月ほど買わなくなることは、花王にとっては収益機会の喪失を意味しますが、競合他社にその利益が流れることはありません。「まとめ売り」とはパイの奪い合い、イス取りゲームにおける椅子の買い占めです。「セール」には、他社の顧客を奪うという側面があるのです。
20%のキャッシュバックは、花王のような大企業だからこそ実現できたものですが、本質はみな同じです。「歯ブラシを3本買うと1本サービス」は、4本目の歯ブラシの排除であり、「10本まとめ買いで10%オフ」とは「10本分の占有」を目指すものです。
本数アップか値引きかといった、「まとめ売り」の最適解の求めた方については、次回の「ポイント編」にて紹介します。
雑誌に見つけるヒント
駆け込み需要で活況を呈しているのが「雑誌業界」です。販売部数を調査するABC協会の発表を見る限り、決して好調な業界ではありませんが、ビジネス誌を中心に「定期購読」の申し込みが増えているのです。
消費税は発生主義に基づき、取引が完了した時点で課税されます。仮に毎月1日発行の月刊誌なら、それぞれの購入日による税率で課税されます。ところが「定期購読」は、「1年分のまとめ買い」という商品(取引)となり、その約定日(売買が成立した日)の税率が適用されるのです。
たとえば、『週刊ダイヤモンド』の3年契約は3月中であれば税込み5万7,000円ですが、税率が変わる4月以降の購入は5万8,600円となります。ちなみに私は『会社四季報』の年間購読を申し込みました。
「定期購読方式」は雑誌以外の商品でも利用されています。「季節のワイン(仮)」として毎月数本のワインが宅配される通販や、同様に料理や海産物が定期的に届く商品などがそうです。
それでは季節性がなく、商品価値も変化しない「建築資材」などを同じ方法で販売することはできるでしょうか。あくまで一般論ですが、増税逃れの脱法的行為と、税務当局に指摘される恐れは否定できません。納品を取引完了と解釈されれば、その時点の税率が適用されるからです。
軍手で季節感をだす方法
さて、ここからが「ブラック・セール術」です。この定期購読という「まとめ売り」を一般のビジネスに役立てる方法を考えるのですが、すでに予防線を張ったように、解釈によっては「アウト」になります。ここで行うのは、あくまで「思考実験」。くれぐれも実践は自己責任でお願いします。
建築現場の商品で、雑誌やワインのような「季節性」を盛り込むことにチャレンジしてみます。
- クリスマス特製足場パイプ
- 新入学お祝いボルト
- 夏対応スパナ
笑いはとれても、注文は取れないでしょう。商品単体で限界があるときは、組み合わせにより付加価値を作りだします。たとえば「軍手」に「塩キャンディー」をセットにすることで「熱中症対策セット」とするのです。冬なら「使い捨てカイロ」をつけて「防寒セット」とします。
なかば消耗品である「軍手」を季節ごとにまとめて納品し、それぞれの季節で役立つグッズやサプリメントとセットにすることで「季節性」をだすのです。
ラインナップとしての魅力
無理矢理と呆れるでしょうか。しかし「熱中症対策セット」の狙いは
軍手を他の店で買わせない
ことにあるのです。本質は、わが家が花王製品に占拠されたセールと同じです。ただし、熱中症セットが税務署の「解釈」により、違法性が指摘される可能性もあるので、仮に実現しようとするのであれば、各方面と事前にコンセンサスを取ることが必要となるでしょう。
消費増税は10%までは法律に明記されている既定路線で、今後さらに税率を18%まで上げなければならないという有識者の指摘もあります。するとその度に駆け込み需要が発生します。つまり、増税に合わせた「まとめ売り」は、数年おきにやってくるビッグイベント。だからその備えは不可欠。
次回は「ポイント」からセールを考えてみます。
今回のポイント
セールの本質は他社排除
まとめ売りというラインナップ
- 『完全! ネット選挙マニュアル』
現場の心得コラムの宮脇氏が執筆した電子書籍がキンドルで2013年6月12日発売! - 『食べログ化する政治』ネット選挙が盛り上がらなかった理由はここにある(2013年8月1日発売)
- 内容カテゴリ:Web担当者/仕事
- コーナー:企業ホームページ運営の心得
※このコンテンツはWebサイト「Web担当者Forum - 企業ホームページとネットマーケティングの実践情報サイト - SEO/SEM アクセス解析 CMS ユーザビリティなど」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:まとめ買いに見つけるセールの本質。消費税アップ前の駆け込み需要対策 [企業ホームページ運営の心得] | Web担当者Forum
Copyright (C) IMPRESS BUSINESS MEDIA CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.