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アマゾンや楽天やヤフー頼みにならないための“本店”の意義/Eストアー [ネットショップ担当者フォーラム セミナーレポート] | Web担当者Forum

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楽天というECにおける圧倒的なブランドを誇るモールに加えて、ネットの巨人であるヤフーまでもが「無料化」をひっさげてショッピングモールビジネスに参入してきた。しかし、それでも自前で構築するECサイト、いわば“本店”の価値は損なわれることはない。「独自のブランディング」、「顧客との良質な関係性」、「施策・分析が行いやすい」など本店のメリットは多岐にわたる。

モール店と本店の特性をきちんと理解しよう

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株式会社Eストアー ソリューション事業部 取締役 高崎青史氏
株式会社Eストアー
ソリューション事業部
取締役 高崎青史氏

Eストアーは、1999年に創業したネットショップ専門のコンサルティング会社だ。「日本中をウェブショップだらけにしたい」という理念のもと、14年間で15万社のECサイトを支援してきた。

本セッションでは「ヤフーショッピング無料化でも本店の存在意義は変わらない!」と題して、“本店”すなわちモールではなく自社ドメインに自社で構築したECサイトだからこそ実現可能なマーケティングと、モールと支店を併存させるメリットについて、株式会社Eストアー ソリューション事業部取締役の高崎青史氏が語った。

ECサイトを実現する上で、モール店と本店、どちらにもメリットとデメリットがある。楽天やヤフーやアマゾンは、すでにブランドと知名度が確立しており、圧倒的な集客力に加え、消費者への信頼感も大きい。一方で本店は、独自のブランディングが行いやすい、顧客と良質な関係性が築きやすい、サイトや顧客の分析および各種施策が行いやすいという特長がある。

消費者がECサイトを選ぶ導線は多様化している。それぞれの特徴を理解して、本店とモール店で見せ方を変えるなどの工夫をすることが大切である(高崎氏)

たとえば、普段から楽天やヤフーやアマゾンなどのモール店を利用しているユーザーは、グーグル等の検索サイトで商品を検索して訪れるという行動よりも、それぞれのサイトのトップページから検索またはカテゴリーをたどって商品を購入するケースが多く、また同時に、価格を比較しながら商品を選ぶ傾向も強い。

本店の場合、一般的に、新規ユーザーが訪れる経路は、検索サイトの検索結果からの流入が多く、この場合、消費者は、価格よりもECサイトの価値観やデザイン性やメッセージの質を重視することが多い。

また、ソーシャル上で流入してきた利用者は、その共有元となったユーザーの意見に共感しているため、他のサイトや商品と比較することなく購買に至るケースが多いという。このように、流入導線によってユーザーの行動は異なるため、それにあわせたブランディングやサイト構築が必要になってくる

モール店の顧客を本店に誘導することが成功のカギ

だが、本店とモール店、両社をそれぞれの利用者に最適化して、バラバラに運営すれば良いわけではないと高崎氏は言う。「モール店と本店を上手く併用して、本店に上手く誘導する」ことで、自社のブランディングを高めることできるのだという。

誤解を恐れずに言うと、モール店の利用者はポイントや価格を重視する傾向がある」と高崎氏は言う。そこで、自社の商品を知ってもらうために、モール店ではセール品やアウトレット品を多めにし、新商品はモール店にはあまり置かず、本店に多めに置くなどのチューニングをすることで、モール店から本店へ誘導するという棲み分けを実現している店が増えているのだ。

モール店の方で買って、自社商品のファンになっていただければ、商品の棲み分けなどをすることにより、本店への流れをつくることができる。そのためにも、モール店で広告をしっかり打って、リピート対策も行い、モール店のファン作りをすることも大切である(高崎氏)

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本店の存在意義(ブランディング)/モール店/セール品/ポイント/安い/本店/セール品+新商品/掲載商品を適宜チューニングし、本店へ誘導
モール店から本店への誘導が重要

このような運用を効果的に行うためには、モール店での購入者に「どのお店で買ったのか」を明確に認識してもらうことが必要になってくる。そのためには、本店とモール店において、共通のロゴやデザイン、タグライン(キャッチフレーズ)などを定めておきたい。ECサイト上やメールに加えて、商品の発送にあたっての梱包材や送付状などでも、一貫性を持って何度も「どのお店で買ったのか」を伝えることで、ユーザーは「●●ショップで買った」「●●というブランドが好き」という思考に変わっていくのだ。

もちろん、その際によい対応をしてファンになってもらうことも大切だ。さらに、メールだけのコミュニケーションだけでなく、手紙やハガキを活用したり、紙のカタログを季節ごとに郵送したりすることも効果的だという。

メールには少しうんざりしているという消費者も増えてきた。多くのECサイトからたくさんのメールが送られてくる中で、手紙やハガキやカタログは実際に手に取ることができ、温度感を感じてもらえる(高崎氏)

また高崎氏は、本店ならではの特長のひとつとして、客層の良さを上げた。「月商1000万円を越えているECサイト30店舗にインタビューしたところ、キャンセル率がモールは3%、本店が1.5%程度だった。商材によっても異なるが、返品率もモールの方が高い」と具体的な数値を見せ、その理由として、「モール店は衝動買いが多いのではないか」という仮説を紹介した。また、「靴の通販サイトのロコンドで実施しているような、“返品交換は無料”などの施策も本店の方が適しているかもしれない」と語った。

他にも本店のメリットは多い。ひとつには、リアル店舗を持つ小売店における、EC化率の向上があるという。日本の小売り業全体におけるEC化率は3%、アメリカで8%とされている中で、アパレル販売のユナイテッドアローズは10%を達成している。これほど高い数字は、単にECに注力してネットのユーザーを取り込むだけでは実現が難しい。リアル店舗を利用していた消費者の購買手段がECへシフト、あるいはECを併用するようになったことによる貢献度も大きいという。

この事実だけを捉えると、リアル店舗とECとでお客を取り合いしているように見える。しかし、ネットはリアル店舗よりも行動分析がしやすく、またメールなどを通じての関係作りもしやすいというメリットがある。何より、オムニチャネル時代においては、消費者にとって、リアルやネットの垣根を超えたチャネル提供やサービス提供が大切である。

また、モールでは、消費者の購買履歴を軸に広告やレコメンドなどでいろいろなお店が紹介されていくが、アパレルのようなブランドロイヤリティが高い傾向のある商材において、消費者は他社や他ブランドのレコメンドを望まない。したがって、アパレルでEC化率をアップさせるためには、本店が欠かせないというわけだ。

本店とモール店の違いを理解して相乗効果を生む

さらに、お客との関係性の構築、すなわちリピート率の向上においても本店ならではのメリットがあると高崎氏は語る。

関係性の構築のために必須なのは顧客情報だが、モールによっては顧客情報を開示していないところもあるのだ。そうした場合、お客にアプローチしようにも個別に行えず、一辺倒の対応しかできないことがある。その点、本店では柔軟な対応ができる。メールでのアプローチだけでなく、初めてのお客にはハガキで割引コードを送ることで、2回目、3回目の注文につなげているECサイトもある。

このようなあらゆる意味での柔軟さこそが、本店のメリットだと高崎氏は再度強調した。そして、それがもっとも大きく現れるのが、アクセス解析だ。

モールでも、多くの場合流入経路などは知ることができる。だが、本店ならアクセス解析ツールを自由に使えるため、経路だけでなく、ページごとの詳細な分析も可能になる。仮にモール店よりも本店の売り上げが低い場合でも、アクセス解析から流入や導線、回遊状況を分析することで、本店の売り上げをモール店並みに伸ばせる見込みが高いのだという。

高崎氏は、実際に本店で行った施策の成功事例をいくつか紹介した。

ひとつは、本店がモール店に比べて検索結果が下になってしまっていた家具のECサイトだ。そのECサイトでは、モール店に掲載した画像を本店でも流用し、モール店のサーバーから画像を呼び出していた。Googleでは、同じようなコンテンツ(商品ページ)がモールや本店に複数掲載されていた場合、片方しか検索には表示させない、あるいはしっかりと優劣をつけて調整されるようになっている。このケースでは、本店の評価がモール店よりも低い評価をされていた。

そこで、本店用の画像を新たに準備した。単に本店のサーバーに画像ファイルをアップし直すだけでなく、たとえばダイニングセットならテーブルとイスで画像を分けたり、製品のキャッチフレーズを画像から抜き出しテキストとして入れ込んだりすることによって、モール店と同じ素材を使いながら、違うコンテンツに見えるような工夫を行った。その結果、3か月後には、本店がモール店よりも検索結果で上に表示されるようになった。

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成功施策/今後のGoogle対策を見据え、独自画像を用意/モール店/商品画像1/商品画像2/転用/本店/商品画像1*/商品画像2*/オリジナルテキスト/検索順位改善!/本店独自のオリジナル画像やテキストを掲載しSEO強化
本店独自のオリジナル画像やテキストでSEOを強化

また、優良顧客の離脱について高崎氏は「ロイヤルカスタマーが離れるということは真剣に考えるべき事態」だといい、それを取り戻すことの重要さを訴えかけた。モール店の場合、一度離脱した顧客へのアプローチは難しいが、本店ならば顧客情報を利用して、離脱した顧客へのアプローチが可能になる。たとえば、離脱した顧客に対して、買わない理由を尋ねるアンケートを送り、回答者に対しては自社商品のプレゼントを行うという手段がある。とある店舗では、この手法を利用することで離脱者の半分から回答が得られたという。

最後に高崎氏は「モノがあふれている時代のため、モノからコトに人々の興味が移ってしまった。モノではなく、便利なサービスがヒットする時代。その次は、信頼できる、安心できる、共感できる、心と心がつながる時代になると思っている」と展望を語り、だからこそ「自社の世界観や信頼を醸成していけば、たとえ時代が変わっても、この人から買いたい、この人が勧めているならやってみたい、と思ってもらえるようになる」と、この先も商売の基本は変わらないことを改めて強調して講演を終えた。

問い合わせ先

株式会社Eストアー
http://estore.co.jp/

この記事の筆者

執筆:青山祐輔

撮影:鹿野宏(Lab Inc.)

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