コンサルタントという商売上、多くの会社や人から、Google アナリティクスのアカウントの設定内容を見せてもらう機会があるのだが、やり方が間違っていたり、最低限備わっている簡単な機能すら使っていなかったりすることが多いのが実態だ。何事も「はじめが肝心」と言われることが多いが、Web解析ツールでもやはり最初が肝心なのだ。
どうしてもWeb解析のデータなどは、「数字を早く見たい」「改善に生かしたい」ということで気がはやってしまう傾向があるが、いい加減な準備しかしないで収集しはじめたデータは、正確性も低いし使いにくいことが多い。結局ツールの特性をきちんと理解し、その能力を最大限に生かす準備をしてから取り組むのがよい。急がば回れなのだ。
各種設定に関しては本連載の最初の方で順を追って解説してきたが、今回は私が実際行っている最重要項目を3つをご紹介しよう(さらに必須ではないが重要な2つの項目も紹介する。
必須1設定にまったく手を付けない「ビュー」を1つ残しておくこと
最初に確認するのは、設定にまったく手を付けない「ビュー」を作成してあるかどうかという点だ。
ほとんどの人が書いていない最大の盲点なのではないかと思っている。知っていても、すぐ何かの役に立つものでもない予防策でしかないのがその理由だろう。でもあえてこれを最初に持ってきた。
Google アナリティクスにログインした際に、まず該当のアカウント(図1赤枠部分)、プロパティ(図1青枠部分)、ビュー(図1緑枠部分)の構造を見る。もっともシンプルな形は図1のようになっている。
1つのGoogle アナリティクスのアカウントに1つのプロパティがあり、その下にビューが1つ作成されているデフォルトの状態がこれだ。それぞれの階層構造別にインデント表示(階層別に字下げされて表示)されているので、すぐにわかる。
どうなっているべきか
もし、まだGoogleアナリティクスを導入したばかりで、何の設定もしていない段階でこの状態なのであれば、デフォルトで生成されているこのビューには手を付けずに、新しいビューを1つ作成して、そこで諸設定を行ってくださいとお願いすることにしている。
つまり図2のようにビューをもう1つ作成(図2赤枠部分)してそこで諸設定を行い、デフォルトで作成されるビュー(図2青枠部分)には手を付けないということだ。
なお1つしかないデフォルトのビューに対して、すでに各種設定を施しているなら、その継続性をわざわざ壊す必要はないので、新しいビューを作成して、そのビューに対しては何も諸設定を施さないまま放置しておけばよい。
なぜ必要なのか?
では、なぜまっさらなビューを残しておく必要があるのだろうか。Googleアナリティクスでは、プロパティはデータ収集の単位で、ビューは集計単位を意味する。わかりやすく言えば、デフォルトで作成されたビューは収集したデータそのものをレポートしているが、設定を加えたビューはその収集した元データからさまざまな処理を加えたデータをもとにして作成されたレポートということになる。
つまり図1の状態で、各種フィルタなどをデフォルトのビューに設定すると、大元の収集データがどういう状態だったのかを確認しようがないので、何かトラブルがあったときに、大元の収集データ自体を確認することができない。だから大元の収集データをそのまま残しておくために、何も手をつけないビューを1つ残しておくことが重要なのだ。
Google アナリティクスは無償の高度なWeb解析ツールだが、無料なので公式的なサポートはない。何かあった場合は自己解決が原則だ。その何かがあったときに比較すべき大元の収集データがなければ、何がどうなっているのかの事実確認が難しくなる。面倒だが、必ずトラブルや不思議なことが起こるという前提で最初にもう1つビューを用意して、そこで諸設定を行ってほしいのだ。
アカウント、プロパティ、ビューの3階層構造のしくみについて詳しく知りたい方は、以前の記事を参照してほしい。
新規ビューの作成方法
新しいビューの作成方法については、下記を参照してほしい。当時のGoogleアナリティクスでは、ビューのことを「プロファイル」と称していたが、現在は「ビュー」という言葉が使われているので、そこだけ読み替えてほしい。
- 2.目標設定を行うこと
- 3.集客施策に対する準備を行うこと
必須2目標設定を行うこと
Eコマースサイトの「購入」のように明確な目標がないサイトでも、目標設定を行っておこう。
設定していないことによるデメリット
目標設定をしないとどれだけもったいないかをまず説明しよう。図3はレポートの左側に表示されている主要なレポート群のメニューだ。
目標設定をしていないと、主要なレポートである「ユーザー」「集客」「行動」「コンバージョン」の4つ(図3赤枠部分)のグループの一翼を担う「コンバージョン」セクション(図3青枠部分)が有効にならない。
さらに、他の多くのレポート群でも表示される「目標セット1」といった指標グループ(図4青枠部分)が有効にならない。指標グループとは複数の指標群をまとめてレポート下部の一覧表示部で見ることができる機能で、目標設定されていればこの指標グループが出現し、選択・表示できる。
たとえば、図4の[集客]>[すべてのトラフィック]レポートで、「目標セット1」指標グループを選択した場合の表示例は図5のとおりとなり、サイトの成果であるコンバージョン率をトラフィック別に見ることができる。
しかし、目標設定していなければ、成果をトラフィック別に見ることができないので、集客チャネルの評価が難しくなる。
目標はビューの設定項目の1つで、元データを特別に加工するわけでもなく、追加で重要なデータ集計をしてくれるので、手を付けていないビューを新規に作っていなくても無害だ。かつ、トラッキングコードのカスタマイズとかも必要なく、管理画面で簡単な設定を行えば、それ以降の集計から反映してくれる。
ただし、過去にさかのぼって集計し直してくれることはないので、もしまだ目標設定を行っていないのであれば、それこそ今すぐに実行してほしい作業だ。
なぜ必要なのか?
そもそもWeb解析を行う目的は、Webサイトの利用状況を把握してそれを改善活動に生かすということに尽きる。目標や目的のないサイトがもしあるなら、Webサイトの利用状況を把握しても「ページビューが多いからよかった」とかいうだけの自己満足で終わってしまう。フィードバックを改善に生かせない計測は時間の無駄だ。
どんなサイトでも何らかの目的があるはずで、それを計数評価できるようにしておくのが原則だ。目標設定は数値で表すことのできる何らかの評価軸(KPI)をあらかじめ決めておくということ。そしてその評価軸に対して具体的な目標数値を定めて管理するのが一般的だ。
Eコマースサイトであれば、売上目標がこれこれで、だから投資はこれこれという具合に事業を行うはずだ。Eコマースサイトのように明確な目標が指定しにくいサイトでも、この作業をしておけば、関係者間で評価軸がぶれて不毛な議論になるようなこともないだろう。
もちろんサイトの成長に応じて、評価軸が変化していくことがあるだろう。それはそのときで、新しい評価軸を追加していけばよいし、そもそも目標は複数あっても良いのだ。また特定のページを閲覧したときしか目標に設定できないわけでもない。
目標設定の方法
目標設定の方法に関しては、こちらの記事を参照してほしい(こちらでも、当時のGoogleアナリティクスでは、ビューのことを「プロファイル」と称していたが、現在は「ビュー」という言葉が使われているので、そこだけ読み替えてほしい)。
- 3.集客施策に対する準備を行うこと
必須3集客施策に対する準備を行うこと
3つ目の項目は、AdWordsやカスタムキャンペーンを実施しているサイト限定の内容だ。
まず、AdWordsを実施しているなら、Google アナリティクスとの連携を行いAdwordsのデータを取り込もう。
また、他に集客のためのマーケティング活動を行っているのであれば、計測対象サイトに誘導するリンクにカスタムキャンペーン用のパラメータを付与するようにしよう。
こちらは前項の目標設定より若干ハードルが高い。それについては後述するが、それでもその労力を遥かに超えるメリットがあるので、サイトへの集客のための各種マーケティング活動を積極的に行っているなら、ぜひ取り組んでほしい。
設定することによるメリット
まずAdWordsのデータを取り込むことだが、AdWordsはGoogleが提供している広告サービスのシステムで、単独でもその広告効果についてのデータを見ることができるのだが、Google アナリティクスに取り込むことで、さらに、他のマーケティング施策との関係や、成果に直接結びついていないキーワードで集客した人の質がわかるようになる。
Adwordsのデータを取り込めば、[集客]>[AdWords]レポート群(図6赤枠部分)や「キャンペーン」「キーワード」レポート(図6青枠部分)の一部が有効になる。
それから、その他のレポートの「キャンペーン」「キーワード」「一致した検索クエリ」などのディメンション(図7赤枠部分)で、AdWords広告の明細データを各種指標グループと組み合わせて見られるようになる。
また、カスタムキャンペーン用のパラメータをランディングページのURLに付与することで、集客のためのマーケティング活動に対して、「参照元」「メディア」「キャンペーン」「キーワード」「広告のコンテンツ」の5つのディメンション軸(図7赤枠部分がその一部)で成果を評価できるようになる。
このカスタムキャンペーン用のパラメータを正しく付与すれば、Google AdWordsとYahoo! プロモーション広告を同じレベルで並列に比較することもできるようになるので、カスタムキャンペーン用のパラメータも適切な運用を行って、レポート画面に反映させてほしい。
AdWordsデータの取り込み方法
AdWordsデータの取り込みは、該当のGoogle アナリティクスのアカウントとAdWordsアカウント間でデータ連携をさせる設定を行う必要がある。実際は双方のアカウントの管理者である必要がある。サイトによっては、AdWordsのアカウントは広告代理店だけが保有し、Google アナリティクスのアカウントは事業会社側だけが保有しているような場合もあり、この作業は少々ハードルが高い場合もあるが、下記を参考にしてほしい。
カスタムキャンペーンのパラメータの付与方法
カスタムキャンペーンのパラメータを付与するには、「参照元」「メディア」「キャンペーン」「キーワード」「広告のコンテンツ」の5つのディメンションで集客を分析するため、最大5種類のパラメータをランディングページのURLに付与する必要がある。関係者が集まってどのようなルールでこのパラメータを付与するのかを決めたた上で、運用を開始するのがよいだろう。具体的に下記を参照にしてほしい。
- 必須度は低いが、できれば確認してもらいたい2つの重要項目
必須度は低いが、できれば確認しておきたい2つの重要項目
ここまで最重要項目として3つを紹介したが、その他にも2つ紹介しておこう。次の2点だ。
- ビュー設定の「ウェブサイトのURL」(図8赤枠部分)
- ビュー設定の「デフォルトのページ」(図8青枠部分)
これらは前述の3つに比べれば必須度は低いが、確認や新規設定は簡単なのでぜひチェックしてみて、設定してほしい。どちらもビュー設定(図8)の項目だ。
4.ビュー設定の「ウェブサイトのURL」
管理画面のビュー設定の中に「ウェブサイトのURL」の指定(図8赤枠部分)がある。ここでの入力情報が実はレポートの中で利用されているため、適当に入力しておくと一部の機能が動かなくなるので注意が必要なのだ。
具体的にはレポート中の各所にある「実際のページへのリンク」ボタン(図9赤枠部分)や[行動]>[ページ解析]レポートの画面キャプチャーの取り込み機能で利用されている。「ウェブサイトのURL」で指定してあるURLにページ名(/abc/eample.htmlなど)をつなげて利用しているので、適当に記述しているとうまく表示されないはずだ。
計測対象範囲 | 「ウェブサイトのURL」の記述 | 注 |
---|---|---|
http://example.com/配下のページすべて | http://example.com | wwwなしサイト |
http://www.example.com/配下のページすべて | http://www.example.com | wwwありサイト |
http://xyz.example.com/配下のページすべて | http://xyz.example.com | 特定サブドメインのみ |
http://example.com/abc/配下のページすべて | http://example.com | 特定ディレクトリのみ |
https://www.example.com/配下のページすべて | https://www.example.com | セキュアサイトのみ |
もちろん複数サイトを混合して計測するような場合にうまく指定する方法はないので、それは仕方ないと諦めよう。なお最後の「 / 」は付けても付けなくても、自動的に削除して処理してくれるようなので、「http://example.com/」のように指定しても問題ないようだ。
5.ビュー設定の「デフォルトのページ」
管理画面のビュー設定の中に「デフォルトのページ」を指定(図8青枠部分)する箇所がある。こちらに関しては詳しくは下記解説記事を参照してほしい。
もちろんeコマースサイトだったり、大規模サイトだったり、アカウントの構造が複雑だったり、実施しているマーケティング施策が複雑だったりする場合は、これだけではとてもカバーできないが、まずはここからチェックしていただきたい。
なお、今回の記事全体を通して、各種過去記事へリンクを張ってあるが、記事執筆時点と現在とでは、すでに管理画面や設定画面などが異なっている箇所もあるので、そこはご承知おきいただきたい。
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オリジナル記事:Googleアナリティクスのコンサルティングで、必ず最初に確認する3つの設定項目(第84回) [衣袋教授のGoogleアナリティクス入門講座] | Web担当者Forum
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