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ニーズに"応える”ではなくニーズを“生みだす”ECへ進化する/LINE [ネットショップ担当者フォーラム セミナーレポート] | Web担当者Forum

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今夏に発表された、LINEが「LINE MALL」でECに本格的に参入するというニュースは大きな反響を呼んだ。
LINEは、全世界で3億人を突破したユーザーベースを背景に、“ニーズに応える”ではなく、“ニーズを生みだす”というイノベーションをECにもたらそうとしている。B2CとC2Cの両輪でECに取り組むLINEのチャレンジとは。

詳細不明なまま反響を呼んだLINEのEC参入

LINE株式会社 執行役員/CPO 島村武志氏
LINE株式会社
執行役員/CPO
島村武志氏

2013年夏、LINEの事業説明会「Hello, Friends in Tokyo 2013」で発表された新しいアプリ「LINE MALL」が、IT業界の内外を巻き込んで大きな話題となった。ユーザーが世界で3億人を突破し、スマホ時代のコミュニケーションツールの代名詞ともなったLINEがショッピングモールに参入するというのだ。

発表時点では詳細がまったく不明で「LINE MALL」というサービス名称のみが明らかな状態だった。それがかえってさまざまな憶測を呼んだ。その後、B2CだけでなくC2Cも対象となるなど徐々に内容が明らかになり、11月上旬には先行出品ユーザーの募集も開始された。

盛り上がるLINE MALLへの期待に対して、LINE執行役員/CPOの島村武志氏は「今日はLINE MALLの具体的な内容には触れない。LINE MALLのリリースに向けて、LINEはどんな風にECを見て、どんな風にチャレンジしようと考えているか。そのプロセスを伝えたい」と前置きして、LINEが取り組むECの姿について語った。

同社はECへの取り組みについて、実は社名を変更する前のNAVER時代から繰り返し検討してきたという。同社が、ユーザーがどういう時に検索を行うのかを調査したところ「ショッピング」が64.4%で最多だったのだ。そこで、検索によるECへのアプローチを検討したが、商品を検索することで満たされるニーズは、価格や商品特徴、使用感や不具合など多様にわたり、それらの情報を蓄積するためには複雑で大規模なデータベースが必要となる。最終的には取りやめとなった。

だが、LINEが成功したことで、再びECへの取り組みが社内で議題として登った。大規模なユーザーベースを持つLINEであれば、大きなチャンスと成り得るかもしれないが、過去に多数のユーザーを獲得したサービスがECに取り組んで成功した事例がないということがあり、島村氏はECへの取り組みには反対し続けていたという。

上手くいく気がしないし、利益率も低そうだから止めようと毎日言っていた。でも、LINEは前例がないことにチャレンジする会社。どうやったら上手くいくか必死に考えてきて、今も考え続けている(島村氏)

「欲しい」というニーズをLINEが作り出す

LINEとしてECに取り組むことが決まってから、島村氏は「人がインターネットでものを買う」ということはどういうことなのかを徹底的に考えた。

ECサイトでは「AIDMA」「AISAS」「AISCEAS」などの認知モデルに基づいてマーケティング施策や事業設計を行うことが多いが、それらの法則において、検索(Search)が果たす役割は大きい。現在、ほとんどのECサイトは、商品を検索されるところからアプローチが始まっている。ポイント付与や即日配送、送料無料などによる事業者間の競争は、すべてユーザーが検索してからのものだ。

ほとんどのECサイトは「検索」の後から競争をしている
ほとんどのECサイトは「検索」の後から競争をしている

つまり、今のインターネットは「買う」という気持ちが生まれてからしか関わることができていない。すでに存在するニーズに対して応えることだけしかできていないのだ。島村氏は、その仕組みを変えることこそがイノベーションだと喝破し、検索される前の段階にチャンスがないかと考えた。

Yahoo! JAPANがモールの出品費用を0円としましたが、それ以外が今までの仕組みのままなら、それは果たして革命と言えるのでしょうか。そもそも検索するということは、すでに関心を得られているということ。ではその気持ちはどこから生まれたのか。それは、CMや友達との会話、生活の中での必要に応じて生まれることが多いのです。その気持ちを生みだすことに対して、インターネットは何ができているのでしょうか(島村氏)

LINEは「注意」「関心」の部分からニーズを生みだす
LINEは「注意」「関心」の部分からニーズを生みだす

そこに合致するのがLINEのコンセプトだという。島村氏は、同社の執行役員・舛田氏が以前、LINEとSkypeの違いについて「Skypeは話したいというニーズに応える。LINEは話すきっかけを作る。つまりLINEはニーズを生み出している」と解説したことを紹介し、価格が安い、配送が速いといったユーザーのECニーズに応える要素だけでなく、「欲しい」というニーズを新たに生み出すことで新しい市場を作りだすことができると力説する。

ユーザーの本当のインタレストは“何を売るか”でわかる

このような考えに辿り着くまでに、島村氏は試行錯誤を繰り返したという。実際にLINE MALLの検討に当たっては、チャレンジ的にLINE上でシークレットセールを行う公式アカウントも運用した。いくつかの企業と協力して、オリジナル商品を企画、LINE上だけで販売するという試みを1年ほど続けた。

このシークレットセールは島村氏の予想以上に上手くいったが、同時にこれはLINEがやるべきことなのかという疑念は逆に強まった。というのも、商品が売れるか売れないかは、“その商品がお買い得かどうか”という一点で決まり、LINEという場が購買の決断に影響を与えないという結果が明らかになったためだ。

「LINEだから買った」というニーズを生み出さなければ、LINEがECをやる意味がない(島村氏)

そこで島村氏が辿り着いたのが、C2CとB2Cの両方に対応するマーケットプレイスだ。基本的に、ユーズド(中古品)は一点ものであり、同時に売り場にたくさんの商品を並べるためには、多くのユーザーが必要だ。LINEなら、すでに多くのユーザーベースを持っており、そこをクリアすることができる。

そして、C2Cのマーケットプレイスには、単なる市場として以上の意味があると島村氏は語る。

C2Cにはコミュニティ性がある。ただ高く売りたいというだけでなく、興味がある人に買って欲しいという気持ちがある。つまり売り手と買い手の双方が、興味・関心・つながりを持てるコミュニティだ(島村氏)

一方、そこに参加する事業者にとっては、コミュニティ性が大きなメリットとなる。企業から見ると、自分たちの商品を欲している人を探しやすい。購買履歴だけを追いかけても、その人の限定的な行動しかわからないが、何を売っているかでその人のインタレストがわかるのだ。出品という行為から、より個人の興味関心を深く知ることができ、そこに対して企業側からアプローチすることで、全体の取り引きボリュームが大きくなり、「売買する場」として盛り上がる。これをもって島村氏は「両輪」と表現している。

もともとLINEは、実際の人間関係によってつながるリアルグラフによるコミュニケーションツールだ。つまり興味関心でつながる、インタレストグラフではない。しかし、EC事業としては興味関心でつながることが重要となる。そこでLINE MALLは、C2Cによって興味関心でつながってもらい、リアルグラフとインタレストグラフの両方をLINEの中に作りだすことで、可能性が広がるということだ。

島村氏は最後に「インターネットとECは便利なものだが、便利なだけではなく、人の生活を豊かにするものにしたい」と自身の思いを熱く語り、「インターネットでの買い物がわくわくするものにしたい」と、LINE MALLへの決意を強く表明した。

セミナー風景
問い合わせ先

LINE株式会社
http://linecorp.com/

この記事の筆者

執筆:青山祐輔

撮影:石川恵愛(Lab Inc.)

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