- 著作権侵害のおそれのあるサイトの制作、引き継いで大丈夫!?
- 著作権侵害のあるサイトを制作すると、どういう責任を負うのか?
著作権侵害のおそれのあるサイトの制作、引き継いで大丈夫!?
今回、我が社に対し、他の会社が途中まで制作したWebサイトを引き継いで完成させてほしいという依頼が来ています。ところが、サイト内のコンテンツが第三者の著作権を侵害しているおそれがあります。このサイト制作を引き継ぐにあたって、どういうところに注意すべきですか?
そうね、今回は、2つの問題に分けて、説明するわ。
- 著作権侵害のあるサイトを制作すると、どういう責任を負うのか?
- サイト制作や保守を請け負う契約において、瑕疵(かし)に関する責任をどう定めるか?
よろしくお願いします!
著作権侵害のあるサイトを制作すると、どういう責任を負うのか?
制作したWebサイトの中で著作権侵害をしてしまった場合、制作会社はどういう責任を負うのですか?
おおざっぱにいうと、こんなかんじね。
- クライアント(発注者)から「瑕疵担保(かしたんぽ)責任」を追及されうる
- 著作権者から、著作権侵害の民事責任(損害賠償請求など)を追及されうる
- 著作権侵害の刑事責任(懲役や罰金)を問われうる
怖すぎますっ!!
とはいえ、今回は、著作権者や警察からの追及というよりも、クライアント(発注者)からの責任追及の方が気になるわ。
著作権者からの追及は気にしなくていいってことですか?
もちろん、わざと権利侵害するのは言語道断、しちゃだめよ! ただ、ウッカリ権利侵害してしまったとすると、今回のWebサイト、多額の利用料を取れるコンテンツを丸ごと流用しているとかではないし、サイトの一部で人物写真や文章をウッカリ流用しちゃった程度なら、それらの著作権者が受ける損害は、経済的意味ではそこまで大きなものになりにくいでしょうね。だから、今回は、万が一、著作権者からクレームが入ったとしても、サイト運営主体であるクライアントと協力して迅速に修正すれば、著作権者との関係では、法的には、致命的な事態にはなりにくいと思う。ま、必ずそうなるとは保証できないけど、だいたいの見通しとして。
なるほど~。あと、刑事責任っていうのも怖いんですけど!?
まあ、刑事責任が生じるのは、故意で著作権侵害をしている場合だから、故意かどうか断定しがたいケースでは、警察が動くことはレアかしらね。
わかりましたー。では、今回は、クライアントから追及されるかもしれない、「瑕疵担保責任」について教えてください!
- 「瑕疵」って何?
- 「瑕疵担保責任」とは何か?
- サイト制作や保守を請け負う契約において、瑕疵に関する責任をどう定めるか?
「瑕疵」って何?
そもそも「瑕疵」って、どういう意味ですか?
法律用語での「瑕疵」とは「通常、そのものが一般的に備えているべき品質・性能を備えていない」みたいな意味よ。ひらたくいうと「欠陥」ね。
「欠陥」ですか~。
そうよ。たとえば、人にあげる時点で腐ってたシュークリームは、食品として「通常備えているべき安全性を欠く」から瑕疵があるといえるわね…!
そっか、私のシュークリーム、瑕疵があったんだ…。
…菓子だけにね。
(スルー)有栖川さん、根に持ってますね~。
うっ!? そ、それはさておきっ、著作権や肖像権、特許権など、第三者の権利・利益を侵害していることも「瑕疵」に含まれるわ。
なるほど。著作権侵害も「瑕疵」にあたるのですね!
そうよ。まとめると、Webサイトにありがちな瑕疵は、こんなかんじね。
- 基本的な動作をしない不具合がある
- 決められた仕様を満たしていない
- 「第三者の権利(著作権・特許権等)」侵害。ライセンスに違反して著作物を使ってしまった場合など
「瑕疵担保責任」とは何か?
では、「瑕疵担保責任」って、どういう意味ですか?
「瑕疵担保責任」とは、契約の目的物に瑕疵があった場合に、目的物の提供者が負う、民法で定められた責任よ。モノを作って納品する契約(Webサイト制作や保守など)は、民法上の「請負契約」と同じように扱われるものが多いの。で、このような場合は、契約で「責任を負わない」と定めたり、責任の内容を変更したりしない限り、民法の定めがそのまま適用されるの。
なるほど…。民法で定められた責任ですか。
そう。民法の定めでは、発注者が、受注者に対して、目的物の引き渡しから1年間に限り、次の3つのパターンの責任追及ができるとされているの。
- 修補の請求
- 損害の賠償請求
- 契約の解除(ただし、瑕疵のせいで契約の目的が達成できないとき)
サイト制作や保守を請け負う契約において、瑕疵に関する責任をどう定めるか?
契約で、瑕疵担保責任について、民法とは別の定めを置くこともできるのですね。
そうよ。サイト制作や保守の契約をする場合において、瑕疵担保責任について定めるときは、次の3つの点に注意すべきね。
- 「何をもって瑕疵とするか」(瑕疵の定義)
- 「瑕疵がないことを保証するかどうか」(保証条項)
- 「瑕疵があった場合の責任の具体的内容」
- 何をもって「瑕疵」とするか具体的に定める! (瑕疵の定義)
- 「瑕疵がないことを保証する」条項(保証条項)の落とし穴
- 瑕疵があった場合に負う責任の具体的内容をどう定める?
何をもって「瑕疵」とするか具体的に定める! (瑕疵の定義)
さっき言った「瑕疵」の意味(通常、そのモノが一般的に備えているべき品質・性能を備えていない)だけでは、判断基準としては曖昧だわ。発注者と受注者との間で瑕疵にあたるかどうか争いになることもあるの。
そうでしょうね…。
だから、あらかじめ、「瑕疵の定義」において「何を瑕疵と扱うか」や「何を瑕疵と扱わないか」について、具体的に定めておくとトラブル予防になるわ。
なるほど! 今回は、前の制作会社が制作したWebサイトに、すでに瑕疵があるかもしれません。だから、契約書で「制作を引き継ぐ前からサイトに存在した不具合や権利侵害は瑕疵にあたらない」と定めたいですね。
そのとおりね。あと、契約書で、「クライアントの提供した資料や指示によって瑕疵が生じた場合、受注側は責任を負わない」と定めておくのもいいわね。じつは民法に同様の規定があるから、理論上、契約書で定めなくても適用されるの。けどまあ、契約書で定めておくとわかりやすいでしょ。…クライアントが法的にグレーな指示をしてくる場合もあるし…。
なるほど…(ジト目)。
山ノ内さん、なんでこっちを見るんですか~!?
「瑕疵がないことを保証する」条項(保証条項)の落とし穴
有栖川さん、さっき、この契約書を結ぶのは「火中の栗を拾う」ようなものだって言ってましたよね。どういう意味ですか?
八瀬さんが持ってきた契約書には「成果物に瑕疵がないことを保証する」っていう条項があったの。保証条項とも呼ばれるのだけど。
普段使ってる制作委託契約書を持ってきたんですが、問題ありますか?
ふつうに制作を受託する場合ならともかく。今回は、別の会社の制作にかかる部分もあるのに、我が社(受注者)がサイト全体について保証するようにも読める条項を入れるのは嫌だわ。うちのせいじゃない部分まで責任を負わされるおそれがあるから。
なるほどね。今回わざわざ入れたくない条項ですね。
でも、発注者側からすると、保証条項をまったくなくしちゃうのは、不安です。
じゃあ、「我が社が制作した部分に、我が社の責めに起因する瑕疵がないこと」という保証条項なら入れてもいいわ。
わかりました。その内容で、こちらも検討してみます。
瑕疵があった場合に負う責任の具体的内容をどう定める?
民法によると、瑕疵があった場合、クライアント(発注者)は、目的物の引き渡しから1年間、修補の請求、損害の賠償請求、契約の解除(契約の目的を達成できない場合のみ)が、できるんですね。
そうよ。まあ、契約解除については、民法の定めどおりでいいかしらね。
わかりました。修補請求や、損害の賠償請求について、契約で別に定めておいた方がよいですか?
そうね。うちとしては、具体的には、
- 1. 瑕疵の修補請求について
- 受注者の責めに帰すべき瑕疵があった場合のみ、納品から1年間、無償で修補する
- 2. 瑕疵によって生じた損害の賠償請求
- 損害賠償額は、保守費用の1年分の金額を上限とする
としたいわ。民法より少しだけ軽いけど。八瀬さん、これでどうかしら?
民法より責任を軽くすることについて、合理的な理由はあるんですか? 特に、損害賠償の額を限定することについて。
そうね。Web制作の場合、案件が小さくても、大きな損害が発生する場合もあるじゃない? こういう特殊性があるのに、請負契約一般について定めた民法の規定どおりの責任をWeb制作の受注者が負うとすると、費用以上に労力を割いて対策をしなくてはいけない場合があるかも。受注者と発注者とで負担を公平に分担するにはそういう限定も有用かなと思うわけ。私の意見だけど。
わかりました。私の一存では決められないので、社に戻って相談してみます。
八瀬さん、どうかよろしくお願いします!
うふ、山ノ内さんがそうおっしゃるなら、前向きに検討します!
むむ~……。
第8話は2014年3月中旬ごろに公開予定……予定
※このコンテンツはWebサイト「Web担当者Forum - 企業ホームページとネットマーケティングの実践情報サイト - SEO/SEM アクセス解析 CMS ユーザビリティなど」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:著作権的に問題のあるWebサイト、制作を引き継いだ会社が責任をとらなくてはいけないの?/第7話 [僕と彼女と著作権] | Web担当者Forum
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