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請求書から次の仕事をゲットする師匠の教え。経理のおばちゃんを籠絡する [企業ホームページ運営の心得] | Web担当者Forum

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Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の340

一年ぶりにガッツリ

ウェブをメイン商材に据えてからもしばらくは、「SPツール」と題したチラシ制作を請け負うコンテンツを、サイト上に用意していました。サイト上から消えたいまも、チラシを作ることは多々あります。

多くはウェブからの派生企画ですが、2013年の最初でたぶん最後となる、写真点数100を越える印刷のみのチラシ制作をこの年末に依頼された理由が、今回のテーマ。

毎年恒例と勝手に企画している、ウェブ屋さん(同業者)向けのクリスマスプレゼントです。それは「請求書」。高度に組織化された大企業では役立ちませんが、中小企業なら使えるノウハウです。

ちなみに先の件で、印刷屋に声を掛けると11月の段階で、印刷機を確保するのに苦労しました。消費増税前の駆け込み需要を目当てに、各企業がチラシを大量に刷っているようです。「ショールーミング」が叫ばれる昨今ですが、まだまだリアルに開拓の余地はあります。

割引券同封という名のセールス

当社の隠れたヒット商品は「名刺」です。全取引先の約4割の名刺制作を請け負っております。名刺制作の仕事が多い理由は、「請求書」です。というのも、差し出す請求書に名刺印刷の割引券を同封しているのです。

名刺はウハウハ儲かる仕事ではありませんが、お客との結びつきが強くなる効果があります。こまめに重ねる取引が信頼を醸成するのです。また、名刺はA社、ウェブはB社、封筒はC社と発注するよりも、すべてを1つの会社に発注するほうがお客の負担が軽くなるというメリットもあるのです。

割引券は名刺だけではありません。封筒やチラシ印刷、ときには「看板作成」など、お客の需要を先読みした内容の割引券を個別に同封することもあります。

もう、お気づきでしょうか。そう「割引券」という名のダイレクトメールです。請求書で「営業」しているのです。

経理との雑談

集金に伺ったときに、次の仕事を得るのが営業マンの腕の見せ所。いまは亡き営業の師匠の教えで身につけた営業テクニックの応用が、請求書の活用です。営業の本質はツールが変わっても同じです。

さらに、この師匠からの教えを忠実に実践しているのが、請求書に添えている「コラム」です。当社の請求書の下段には、当月の「記念日」についての小さなコラムを掲載しているのです。

取引の代金は過不足なく支払われるものというのは「現場」を知らない甘い発想です。集金時に値引きを強要されることは珍しくなく、資金繰りの関係から支払いが後回しにされることも、多々あります。

師匠は言いました。

経理のおばちゃんを押さえろ

……性別と年齢に師匠の思い込みが見えますが、中小企業では社長の奥様が経理担当であることも多く、支払い順は経理担当者のさじ加減によることがあります。

師匠曰く「経理担当者はいつも社内におり、話題に飢えている」。つまり、経理担当者に積極的に話しかけて機嫌を取り、良好な関係を築けば、なにかと便宜を図ってもらえる。

当社の請求書に添えている「コラム」は、リアルにおいての雑談の代替です。このお陰でという訳でもないでしょうが、毎月、過不足なくお振り込みをいただいております。

ダイエットを報告

さらに請求書には別刷りの「ニュース」を添えています。ニュースといいますが、経理担当者はもちろん、先方のウェブ担や社長まで読むという前提で書き下ろしている「近況報告」です。

すべてのお客と毎月のようにフランクな会話をすることは現実的ではありません。しかし、人間味のあるコミュニケーションの有無は、取引継続率の重要な係数です。そこで、請求書に日々の雑感や、ネタになるようなコラムを添えて送っているのです。

この「ニュース」は疑似的な接触を目指すもので、ダイエットの進捗を報告してみたり、テレビ取材の裏側を暴露したりしています。

また同様に「販促会議」というコーナーを設け「チラシ」の必要性を提案して当社で作成できると宣伝することも忘れません。雑談のなかで「売り込み」をする営業テクニックの応用です。

コラボの誘発を仕掛ける

ビジネスライクな付き合いだけでは、単価や納期といった「数字」に軸足を置いた競争に晒されます。圧倒的な実力で取引を継続する……という理想論はともかく、すでに取引があるという優位性を最大限活かすのも、大切な営業戦術です。「請求書」を送付できる優位性を活用するということです。そしてお客のためでもあります。先の名刺の発注に通じますが、「新しい業者に依頼する」のはお客の負担なのです。

ウェブ屋にとって、お客の成功と自身の成功はリンクします。時には加速装置となり、あるいは微力に過ぎなくとも、お客のビジネスを手助けする仕事だといって過言ではありません。だから「ニュース」でもお客のビジネスに加勢します。お客のサイトの更新情報や新製品情報をニュースに掲載することで、「他のお客」への告知を実現するのです。

実際に紹介した企業について問い合わせもあり、当社の場合は「足立区内」のお客が多く、リアルにおいての広告効果も期待できます。

リアルネットワークの活用

これは足立区内のお客に限定してのことですが、お客のチラシなどの広告を同封することもあります。これにひとこと添えれば「レコメンド」としての効果が期待でき、取引関係を明示しておけばステマではありません。自社で作ったチラシなら、それも記すのは当然です。

仮に請求書を送付するお客が10社だとしても、残りの9社に存在を知らせることができます。さらに50社、100社と請求先があるならば、それを「ネットワーク」と呼んでも過言ではありません。

請求書の大半は封書で送付されます。80円切手なら25gまで同封できるので、A4のコピー用紙なら3~4枚は余裕です。100枚程度になれば通販系印刷も検討に値しますが、「お客ごとに内容を変える」ならば民生用プリンターで十分。なにより肝心なのは中身……なのですが、請求書にひと手間加えている業者は、まれです。

最後に師匠の教えをもう1つ。「集金完了までが取引」。請求書はその一歩手前。ならば気を抜いている場合ではありません。

今回のポイント

請求書もネットワークになる

ツールを変えても使える営業テクニックは多い

この記事の筆者
ユーザー 宮脇睦(有限会社アズモード) の写真

宮脇 睦(みやわき あつし)

プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。

制作、営業の双方の現場を知ることからウェブとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供し、一業種一社、制作案件は足立区内のみという営業施策をとっている。本業の傍らメールマガジン「マスコミでは言えないこと」を発行。好評を博す。著書に『完全! ネット選挙マニュアル』(Kindle版)、『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)、冷静な視点からのIT業界分析に「週刊ポスト」など、様々な媒体から情報発信を続ける。

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