リスティング広告運用担当者の「繁雑で多忙で大変すぎる」状態を楽にするための、統合デジタルマーケティングソリューション「Acquisio(アクイジオ)」を提供する日本法人「アクイジオジャパン(仮称)」を設立することを、アイレップが12月4日に発表した。
アイレップにおけるこのツールの位置づけや代理店業としてのアイレップとの関係について、日本法人の代表に就く井上氏と、アイレップの執行役員でありグループ戦略統括室長の北爪氏に聞いた。
代理店のアイレップではなく「アイレップグループ」としての日本法人設立
■アクイジオは、どんな人向けのどんなサービスなのでしょうか。
●井上氏 アクイジオは、リスティング広告や運用型ディスプレイ広告の運用を楽にするための自動入札を中心としたサービスで、主に運用型広告に携わる代理店の現場の方向けのものです。
ですが、ツールに関して説明する前に、アクイジオとアイレップの関係について説明させてください。
●北爪氏 今回、カナダのアクイジオ社と合弁会社を日本に設立することにしたのですが、それは「株式会社アイレップ」としてではなく、「アイレップグループ」としてなのです。
つまり、アクイジオは株式会社アイレップとは独立した組織であり、「株式会社アイレップの事業」ではありません。
株式会社アイレップはこれまでも、これからも、デジタルマーケティングの代理店業を進めていきます。この点では何も変わりません。
ですから、株式会社アイレップは、マリンソフトウェア、アドビ システムズ、ケンショーといった(アクイジオに類するサービスを提供する)パートナーさまとも、引き続きこれまでと同様に取り組んで参ります。
いっぽうアイレップグループとしては、デジタルマーケティングの領域での代理店事業以外のこと、またはデジタルマーケティング以外の領域も含めて、長期で可能性を模索しています。今回のアクイジオ日本法人設立は、このグループとしての動きの第一弾なのです。
ですから、アクイジオジャパンとしては、株式会社アイレップ以外の代理店さまにもサービスを提供していきます。
●井上氏 株式会社アイレップという代理店はツール中立の立場であり、アクイジオというツールは代理店中立なのです。
アクイジオは「アイレップグループ」の事業であり、エージェンシー中立。アイレップはこれまでと変わらずツール中立で変わりません。
■と言っても、これでアイレップさんにお客さんを持って行かれるのではないかと心配する代理店さんもいるのでは?
●北爪氏 とんでもない(笑)
そもそも我々の中期経営計画のなかに「自分たちの運用の効率化や定型作業にかかるリソースを削減していく」ことがありました。
アクイジオはそのためのツールの1つなのです。
代理店としてのアイレップでも、今まで使ってきたマリンソフトウェアを筆頭とするさまざまなプラットフォームの1つとして、うまく使っていこうという考えです。
アイレップの現場が疲弊せずに済むようなツールなら、同様に「真面目に広告主さまのために努力している」代理店さんには役に立つツールのはずです。
そういった方たちの助けになることは、マーケットのリーダーとしての責任の1つだと思っています。
高度化・複雑化で疲弊するトレーディングデスクを楽にする
■なるほど、では、改めてアクイジオについて教えてください。
●井上氏 先ほども申しましたように、アクイジオは運用の現場を楽にするためのサービスです。
アイレップでは検索連動型広告や運用型ディスプレイ広告の運用をお手伝いしていますが、我々の業務を取り巻く環境は、アドテクの進化にともないどんどん複雑化・高度化してきました。
自動入札、DSPやRTB、さまざまなターゲティング、高度なウェブ解析などどんどん複雑化していくなか、広告主さまはより「成果」を求めるようになってきました。
その結果、運用の現場は、悪い言葉を使うと「どんどん疲弊」してきたのです。広告主さまの成果を伸ばそうとすると、多すぎるほどの「できること」があり、最適化とレポーティングをやってもやっても「完成形」が見えない状態なのですから。
そうした現場を工数削減したり効率化したりして、「運用の現場であるトレーディングデスクの人が、疲弊しなくても広告主さまの成果を伸ばす」ためのサービスが、アクイジオなのです。
●北爪氏 そもそもアクイジオ社はもともとカナダでSEMの代理店業を行っていた企業です。SEM代理店として運用を行いながら、自分たちの運用課題を解決するためにツールを作り、ツールベンダーになっていった企業です。
ですから、アクイジオのもともとの思想が「運用する現場の人が使いやすく、より効率化できるように」ということなのです。
運用の現場であるトレーディングデスクの人が、疲弊しなくても広告主の成果を伸ばす」ためのサービス
●井上氏 デジタルマーケティング全体の位置づけでいうと、CPAの最適化にフォーカスしているツールです。つまり、マーケティングファネル全体のなかでは、ニーズがある程度顕在化した状態の見込み客に自分のメディアを訪問してもらう部分がメインです。
ただし、アトリビューション分析の機能も含んでいますので、認知を獲得してニーズを顕在化していってもらう過程の部分も最適化できます。
予算の自動最適化とロジックやレポートのチーム共有が特徴
■デジタルマーケティングの統合ツールはさまざまありますが、アクイジオの特徴は?
●井上氏 今のところ大きな特徴としては、
- 予算の自動最適化の機能をもつこと
- ロジックやレポーティングのコンポーネントを共有できること
の2つがあります。
予算の自動最適化は、システム側で広告予算全体をチェックして、月間の予算消化をKPIにあわせて最適化して、プログラムで全体を自動コントロールする機能です。
コンポーネントの共有は、自動入札のロジックやレポーティングのデザインをコンポーネント化して、他のアカウントのスタッフと共有できる機能です。
同様の作業を行うスタッフ同士で知見を共有できるため、運用ノウハウの底上げができ、チームの成果を平準化していくのに役立ちます。
代理店ではさまざまな広告主の運用を行っていることがほとんどだと思います。各業界での知見をシステム的に共有できることで、高度なスキルをもっていないスタッフでも、熟練スタッフの経験を成果に反映しやすくなります。
つまり、その道のプロフェッショナル専用の高度なツールではなく、慣れていない人も含めたチーム全体の運用を助ける方向性ですね。
■DMP的な各種データの連携は?
●井上氏 アクイジオ自体はDMPのような機能をもっているわけではないのですが、「コネクタ」を使うことで、たとえばGoogleアナリティクスやAdobe Analyticsのような他のサービスと連携して、データを引っ張ってきてターゲティングや最適化に利用することも可能です。
運用チームやトレーディングデスクのある組織に
■どんな組織でアクイジオは効果を発揮しますか?
検索連動型広告だけでなく、DSPなどを含めた運用型ディスプレイ広告なども総合的に扱う運用チーム。
●北爪氏 最適なのはアイレップのような運用型のエージェンシーで、運用型広告のチームやエージェンシートレーディングデスクがあるようなところならば、規模を問わず効率向上に役立つはずです。
Googleアドワーズ広告、Yahoo!プロモーション広告、Googleディスプレイネットワーク(GDN)、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)、DSPなどを使って、広告主の成果を伸ばす運用をしているところですね。
または、大型のEコマースサイトなどで膨大なキーワード数を扱っているところならば、インハウスでも便利になるはずです。
あとは、現時点ではPDCAをまわす余裕がないところですね。アクイジオによって自動化できるため、想定していたよりも少ない工数でPDCAをまわせるようになっていくはずです。
●井上氏 逆に言うと、枠の買い付け・コンサル・制作・クリエイティブに特化していて運用をしていない代理店や制作会社では効果を発揮できないということになります。
また、キーワード数が少なくて指名キーワードやブランド買いが中心のところや、短期のブランドキャンペーンを中心にしている代理店などでも、導入の効果を感じるのは難しいでしょう。
時代の変化に応じた組織の変革に、
そして、運用チームが疲弊しないために
■アクイジオの日本法人として、広告主や代理店の方にメッセージを
●井上氏氏 広告主の方には、「レポートがバラバラで、まとめて分析も判断もできない」という問題を解決することお勧めしたいです。
リスティング広告はデータ量が多くなりすぎていますし、さらに、さまざまなターゲティング手法やチャネルが出現しています。
それらをうまく活用できていなかったり、利用していても各チャネルのレポートがバラバラに代理店から届くため適切な分析も判断もアクションもしづらいという状況にあるのではないでしょうか。
そういう状況を脱して、あらゆるチャネルの情報がまとまったレポートを見るだけで適切に判断できるような方向にいくには、やはり統合型のマーケティングツールが不可欠です。
また、組織のスタイルを変えるためにも、今までとは違うやり方が必要になってきます。
これまでは特定の個人の経験やスキルに依存した判断や細かい運用をしてきた組織が、今後は個人に依存せずに組織としての判断や運用に切り替えていく傾向があります。
そうした動きのなかで、現場の濃い経験や知識がない人が携わることになったり、細かい運用ではなく予算アロケーションの判断をするような立場が必要になったりします。そうした立場の人にも、統合型のデジタルマーケティングツールが役に立つはずです。
●井上氏 代理店の方には、「工数の肥大化でパンクしないようにしましょう」と強く伝えたいですね。
サービスの多様化、タグの多様化、各種データの連携など、さまざまなことがテクノロジードリブンで可能になってきていますが、それに比例して運用の現場はどんどん疲弊していっています。
運用型の代理店は、運用業務を効率化していかなければ工数の肥大化でパンクしてしまいますし、そもそもうまく効率化しなければ、広告主もテクノロジーの進化の恩恵を受けられません。
そうした代理店の現場にとって大変な状況を乗り越えていくには、同様の苦しみを知る人たちが携わっているプラットフォームであることは心強いはずです。
●井上氏 アクイジオはCPAのための運用の効率化にフォーカスしていますが、今後は、そうしたツールは統合型デジタルマーケティングプラットフォーム(サーチ、ディスプレイ、ウェブ解析)として、さまざまなチャネルの情報や最適化を統合し、広告主のデジタルマーケティング活動全体の予算も管理できるようになっていくべきです。
アクイジオは、今後はそのような「統合型デジタルマーケティングプラットフォーム」として、あくまでも株式会社アイレップという代理店からは独立したエージェンシー中立のツールとして成長させていく予定です。
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オリジナル記事:工数増でパンクしそうな広告運用の現場を助ける効率化ソリューション“アクイジオ”が日本法人設立、アイレップとの関係は? [注目企業のネットビジネス戦略] | Web担当者Forum
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