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オウンドメディア戦略15年、企業のメディア化戦略の仕掛人インフォバーン 小林氏が明かす戦術 [【レポート】Web担当者Forum ミーティング2013 Spring] | Web担当者Forum

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【レポート】Web担当者Forum ミーティング2013 Spring

セミナーイベント「Web担当者Forumミーティング 2013 Spring」(2013年4月24日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。

自社サイトをメディア化し、企業が顧客と直接コミュニケーションすることでファンを醸成していく、オウンドメディア活用に注目が集まっている。いま、企業はオウンドメディア・コンテンツマーケティングにどのように取り組むべきか、15年以上にわたりオウンドメディア戦略を支援してきたインフォバーンの小林弘人氏が詳細を語った、Web担当者Forumミーティングの基調講演をレポートする。

なぜいま、オウンドメディアが必要とされているのか

小林 弘人氏
株式会社インフォバーン
代表取締役CEO
小林 弘人氏

小林氏は、「多数の企業メディアの構築・運用を支援した経験から導き出した話と、基本的なコンテンツマーケティングの考え方を話していきたい」と挨拶し、オウンドメディアの話ではあるが、アーンドメディアやペイドメディアも含めたトリプルメディアを有機的に組み合わせることが重要だと説明する。

では、なぜいまオウンドメディアが注目されるのだろうか。小林氏は、企業が常態化させた自社メディアを持つことによって、長期的には新たなワードの自然検索で流入してくるユーザーも増えてくるし、留まったユーザーを会員化することも考えられると話す。キャンペーンごとの投資を無駄にしないために、滞留させる場所が必要というのだ。

マスメディアなどのペイドメディアを使って集客されたユーザーは、その場に留まることなく次の興味へと移っていく。ペイドメディアへの投資をより効率的にし、集客したユーザーを留まらせるためには、どのような人が集まって行動しているのかを把握し、顧客リストをアップデートする必要がある。そのためには、インバウンドマーケティングを行う自社メディアが重要になるのだ。

エンゲージメントを永続させようとする努力は、メディア的である。
エンゲージメントを永続させようとする努力は、メディア的である。
  1. B地点に残った人をスティッキー(粘着的)にする。

  2. B地点に残った人のデータを自ら取得できるし、さらにそのなかの何人かは優良顧客に。行動ターゲティングほか、新商品・サービスを購入してもらうための導線づくりが可能になる。でも、いちばんの目的は、とにかく会社のファンになってもらう

B地点のメディアに残った人たちをスティッキー(粘着的)にし、データを取ることで行動を把握して次の戦略を考えることができる。行動ターゲティングやペルソナの掌握、クロスセルやアップセルに結びつけるなどが可能となるが、一番の目的は自社ブランドを愛してもらい、ファンになってもらうこと

オウンドメディアを行う理由
  • メディア立ち上げのコストが安価になってきた。
  • ユーザーの行動履歴を直接取得でき、ユーザーとのエンゲージメントを高めて、LTV(Life Time Value)を延ばしたい。
  • 検索やソーシャルによる口コミなど、インバウンドによる流入が増大している。
  • LPO(Landing Page Optimization)を行ってもランディングからの導線が弱い、キャンペーンを行っても短命で終わる。
  • ソーシャルメディアでは、顧客と関連性が高く興味を引く話題に注力した方がよい。
  • 流入先のメディアを特定して分析することで、求める情報を提供したい。インフルエンサーなどにもパートナーとして情報を提供したい。

コミュニティで顧客を支援するオウンドメディア

メディアは形やパッケージではない。メディアの最大の資産はコミュニティ。メディアを作るということは、コミュニティを作ることと同義となるため、単に情報を発信するだけでは難しい」と説明する小林氏は、トヨタの「GAZOO.com」、味の素の「AJINOMOTO PARK」、無印良品の「くらしの良品研究所」、伊勢丹の「FASHION HEADLINE」、不動産のセレクトショップ「東京R不動産」などのオウンドメディアを有効に活用した事例を紹介していく。

これらのオウンドメディアに共通しているのは、顧客を支援しているということ」だと説明する小林氏は、マサチューセッツ工科大学のグレン・アーバン教授が提唱する「アドボカシー・マーケティング」を紹介する。アドボカシー・マーケティングとは、顧客のために他社製品をおすすめするなど、情報を提供することで一時的に自社に不利となったとしても、そこで得られる信頼を利用できるという考え方であり、自社メディア化もその1つであることを示す。

自社メディアは主観であるため、アドボカシーマーケティングが重要となり、メリットのある情報を継続して発信することで読者を育てて支えてもらうことを目指す。「宣伝」とは一線を画す。

最も成功した事例として、小林氏が紹介したのは「前田建設ファンタジー営業部」だ。一般にはなじみが薄い建設事業を知ってもらおうと、SFや漫画、アニメの基地など架空の案件を受注した場合の工程や見積を物語的におもしろく読ませるもので、気が付くと前田建設のファンになり、土木技術の知識が付くようになっている。書籍化や舞台化もされており、大きく注目されたサイトだ。

このプロジェクトは、社内の各部署や社外の協力を得ながら展開しているが、十数年前の立ち上げ時には、すぐに社内の理解を得られなかったという。しかし、担当者が「建設の技術や裏側は大変なのに、なぜゼネコンは語らないのか」という思いから低予算で始め、一般の人が楽しめる現在の形になっていった。その結果、ROIは社内トップクラスで、ペイドよりも効果があるメディアとなり、リクルーティングやIRの一環としての効果も出ているという。

コンテンツは販売サイクルと購買サイクルから考える

小林氏は、「コンテンツマーケティングには7つのユニットがあり、これらは密接に関係している。また、立ち上げてから人が来るようになるまで時間がかかるので、広告出稿やインフルエンサーマーケティングなどによる加速(Acceleration)という8つ目の要素も入ってくる」とコンテンツマーケティングの説明を始める。

コンテンツマーケティング 7つのユニット。The CMI content marketingより
コンテンツマーケティング 7つのユニット。The CMI content marketingより

すべては紹介しきれないが、小林氏は、「計画」(Plan)の段階では、何を目指すか、競合との差別化ポイントは何か、解決する課題、予算、リスクなどを明確にし、コンテンツ発信のキーマンを誰にするのかもハッキリさせる必要がある、と説明する。

また、ユーザー視点で始めるために、「聴衆」(Audience)に対してペルソナを設定し、自社製品やサービスをユーザーがどのようなプロセスで認知し、利用しているのかを知るためにカスタマージャーニーマップを作成して分析・記述することが重要であると示した。

続いて、小林氏は販売サイクルをセールスファネルに重ねて説明する。これは、自然検索などから訪問してコンタクトした見込み客がファネル(漏斗)のように絞り込まれて最終的に顧客となることを表すものだ。

オウンドメディアのコンテンツを考えるポイントは、自社の販売サイクルをセールスファネルに重ねること。
オウンドメディアのコンテンツを考えるポイントは、自社の販売サイクルをセールスファネルに重ねること。

コンテンツマーケティングでは、このセールスファネルの経路にコンテンツを配置して、上記の絞込みの態度変容を促すことがポイントになる。一般的に企業が仮説を立てて考える場合、自社の扱う商品がほしい見込み客が検索してコンタクトしてくるために「ホームページ」を立ち上げ、性能や他社製品と比較させるために「スペック表」などを置き、実際に自分の環境で使えるかどうかを確認させるためにメーカー対応表などの「PDF」を置いて、購入してくれた顧客に対して「メルマガ」を発行するといったことが考えられる。

しかし、販売サイクルではなく、購買サイクルで考えると、ユーザーは企業が立てた仮説のようにまっすぐ直線的にコンタクトからカスタマーに降りてくるわけではない。ユーザーは、商品を探して検索してレビューを読み、悩んで再度検索して別のレビューを読んだり、Q&Aサイトで質問したり、使用感のわかる動画を探したりする。

ユーザーの行動は直線的ではなく、戻ったり、順番を入れ替えたりするため、非線形であると小林氏は説明する。また、これらの行動はショッピングサイトや比較サイトなどの他メディアで行われており、自社メディアのコンテンツにはまったく触れずに購買されることも多いことも問題だ。

どのようなコンテンツを作るべきなのか、まず販売サイクルで仮説を立て、販売サイクルと購買サイクルを重ね合わせたエンゲージメントサイクルというものの上で考えなければならない」と小林氏は話す。一方、理想となるコンテンツ作りはケースバイケースであるため、例として、次のようなコンテンツを作ることも考えていく必要があるとした。

  • 商品が必要な人をTwitterなどで探して自社サイトのURLを知らせる。
  • 商品を検索してくる人の傾向を考えた情報を提供するブログを開設。SEOにつなげる。
  • 商品の特設サイトや既存ユーザーのファンサイトを開設する。
  • 自社商品と競合製品の比較動画を作って動画共有サイトに載せる(バイラル期待)。
  • 商品の感想やつぶやきをまとめサイトでキュレートする。
  • 購入者に謝恩のスマホアプリをプレゼントする(リテンション機会をつくる)。
  • 商品に関る情報やTipsも盛り込んだメルマガを発行する。

これらは、単体でやっても意味がなく、レビューで動画サイトのURLをユーザーが貼ってくれるなど連携が起こることでうまく活かされていく」と説明する小林氏は、それぞれのコンテンツでKPIを計測し、データを取ってコンバージョンまでの導線とユーザー行動を把握する必要があることを示す。

小林 弘人氏

電話回線を増設したから電話営業の成果が二倍に増えるわけではないように、コンテンツマーケティングをやったからといって売上が急速に上がるわけではない。小さなKPIを1つずつクリアしていくことが重要。それぞれの顧客やサービス、商品においてファネルとエンゲージメントサイクルがどのようになるかを考えてほしい。

コンテンツ中心主義で考えれば、他社がどこにコンタクトポイントを持ち、どのようにコンテンツを配置しているかなどを分析でき、先制できる。それによって、自社のコンテンツを改善でき、今後の戦略も立てることが可能となる。

最後に小林氏は、コンテンツマーケティングを以下のようにまとめた。

  • 商品やサービスに合わせてペルソナを設定し、カスタマージャーニーマップを作り、オーディエンスを設定する。
  • 販売サイクルを割り出して購買サイクルを重ね合わせ、エンゲージメントサイクルを作る。
  • どこにコンテンツを置くかを部門横断で考え、コンテンツ配置を行う。
  • 配置したコンテンツに応じて、チャネルを決めていく。
  • ファネル通過時のそれぞれのコンテンツでKPIを設定し、PDCAサイクルで回して改善していく。

これからの企業は、商品のスペックだけでなく、ユーザーに経験を提供することが大切だ。その経験をデザインすることがコンテンツマーケティングの真髄だと思っている。さまざまなモノがコモディティ化して差別化がなくなっている中で、商品だけでなく経験を与えるためには、チラシのような押し売りでなく“物語る”ことが重要になる。

小林氏は、現在のマーケティングではユーザーにとって“それで何ができるか?”ということではなく、“それをなぜ買うのか?”という問いに答えることが重要となっていることを示し、“なぜ”を提供できるようにならないと難しいと説明する。「時代がWHATからWHYになっているなかで、WHYを提供できるマーケティングはコンテンツマーケティングだけだと思う」と最後に小林氏は話し、Web担当者Forum ミーティング2013 Springの最後となる基調講演を終えた。

小林 弘人氏
この記事の筆者

野本幹彦

IT系ローカライズ会社、IT関連雑誌記者を経て、フリーライターとなる。コンシューマから企業システム、ソーシャルアプリ、デジタルマーケティングまでの幅広い分野で記事を執筆。事例取材やインタビューを中心に、書籍、広報誌記事、Web記事などを手がけている。

【撮影】
株式会社Lab
石川恵愛

http://www.hellolab.com/

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オリジナル記事:オウンドメディア戦略15年、企業のメディア化戦略の仕掛人インフォバーン 小林氏が明かす戦術 [【レポート】Web担当者Forum ミーティング2013 Spring] | Web担当者Forum
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