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経営の目線からまとめた「サイバーセキュリティ経営実践ガイダンス」をウェブで公開

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コンサルティングサービスのKPMGコンサルティングと、システム開発のラックは、セキュリティ対策の実践的なポイントを経営目線でまとめた文書「サイバーセキュリティ経営実践ガイダンス」を発行し、ウェブサイトで公開した、と6月13日発表した。サイバーセキュリティ経営を考えるとともに実効的なセキュリティへの取り組みを考察し、具体的な対応を解説した。

企業や組織でセキュリティ対策の重要性が認識されるようになっている一方、自社対策の状況を正確に把握して事業形態に合った管理・運用や適切な投資を行っている企業が少ないことから、サイバーセキュリティ経営実践ガイダンスをまとめた。サーバー攻撃が経営に大きな影響を与えることも多く、企業にとってサイバーセキュリティ対策は重要な経営課題だという。


パイプドビッツの情報管理「スパイラル」とのれんのパッケージ型CMS「NOREN」が連携

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情報資産プラットフォームソリューションのパイプドビッツと、ウェブサイト関連ソフトののれんは、パイプドビッツの情報資産管理プラットフォーム「スパイラル」と、のれんのパッケージ型CMS(コンテンツ管理システム)「NOREN Content Server」を連携させたソリューションの提供を6月13日に始めた、と同日発表した。ログイン認証に必要な会員情報はスパイラル、各種のウェブコンテンツはNORENで管理し、CMSの利便性を生かしながら安全な会員サイトの運用を実現する。

CMSで構築したウェブサイトのぜい弱性を狙った攻撃によるサイト改ざんや情報漏えいを防止する。会員情報はスパイラルで安定性を保ちながら安全に管理し、特定のページの閲覧をログイン済みのユーザーだけに制限したり、ログイン認証後も会員別に許可したページのみを表示させたりできる。会員サイト内でのキャンペーンやイベントの申し込み時に登録済みの会員情報を表示し、再入力の手間を省く。会員ごとの申し込み回数取得でアクティブ会員の判別にも利用可能になる。

アイレップがモバイル端末でウェブページを高速表示する「AMP」化の支援サービス

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デジタルマーケティングのアイレップは、モバイル端末でウェブページを高速表示するプロジェクト「AMP(Accelerated Mobile Pages)」化の支援と、広告との連携で広告品質を高めるサービスを始めた、と6月13日発表した。企業は自社のモバイルサイトを適切にAMP化することで、これまで以上にユーザーの使い勝手や広告品質の向上が期待できるという。

AMPはモバイルページの表示を高速化するためのオープンソースのプロジェクトで、規格に沿った設定で速度が改善できる。しかしマーケティングツールに影響を与える可能性があり、適切に予測・分析・理解することが導入の課題となる。アイレップはAMP化の影響を踏まえ、モバイルページのAMP対応状況診断、AMP化支援、広告品質の向上を包括的に行う。

Webサイトの「オーソリティ」のために、あらためて考える「リンク」と「関係性構築」 | 時代は「SEO」から「SXO」へ ~海外最新サーチ事情・市場予測

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このコーナーでは、「Search Experience Optimization(SXO)」という考え方、そのフレームワークである3つの構成要素「U・R・A」を解説しています。

1つ目の要素「U(ユーザビリティ)」ではユーザーと検索エンジンの双方にとって優れたユーザビリティを、Webサイトの土台にすることの重要性を解説しました。

2つ目の要素「R(レリバンス)」ではユーザーの意図を捉えたコンテンツを展開することの重要性を解説しました。

今回は、SXOを構成する最後の要素「A」、すなわち「オーソリティ(Authority)」について説明します。

「オーソリティ」とは一般的には「権威性・信頼性」といった意味ですが、検索エンジンマーケティングにおいては、次のように考えるとわかりやすいでしょう。

検索エンジンマーケティングにおける「オーソリティ」とは、「ページの持つ『信頼性』」のこと。

SXOでは、Webサイトの「権威性・信頼性=オーソリティ」を高めることが重要なのです。

では、どうすればオーソリティを高められるのでしょうか。ポイントは、「Webの世界において、より多くの良質なWebサイトと関係を構築すること」です。

この記事では、そのポイントを以下の3つの流れで解説します。

  • オーソリティを構成する重要要素の1つが「リンク」
  • 「リンク獲得」(Link Building)から「関係性構築」(Relationship Building)へ
  • 企業のビジネス活動にもSXO観点を取り込んでいく

Googleが示した「オーソリティ」への考え

Googleは4月に、フェイクニュースなどへの対応を含めた評価アルゴリズムの改善計画「プロジェクト・アウル(Project Owl)」を発表しました。

その発表文では「authoritative(オーソリティ性がある)」という表現が何度か出現していますが、その発表文を日本語に訳したGoogle公式ブログの記事「Google 検索における最新の品質向上について」では、(直接的ではないものの)「信頼性」というニュアンスで表現されています。

Googleは、Webサイトの「オーソリティ=権威性・信頼性」を重要な要素だと認識していると考えられます。

では、Googleは「オーソリティ」を測る直接的な数値指標をすでに持っているのでしょうか? どうやら、そうではないようです。Google検索に携わるシニアエンジニアのPaul Haahr氏は次のように発言しています。

我々は「これがオーソリティだ」と言うべき1つのシグナルを持っているわけではありません。オーソリティを高めるのに役立つような、非常に多くの要素があるのです。

つまり「オーソリティ」は、(PageRankのような)単体の指標(シグナル)で測られるものでなく、複数の要素をもとに総合的に評価されるものだと考えておくべきでしょう。

では、どういった要素がオーソリティに関係してくるのでしょうか。

オーソリティを構成する重要要素の1つが「リンク」

オーソリティの判断に影響するシグナルの1つとして想像されるのが、「リンク」です。

学術論文の世界では、各論文の重要度を測る指標として「被引用数」が使われます。1998年に誕生したGoogleのPageRankアルゴリズムは、これにならった「多くのWebページからリンクされてるページは、重要なWebページであると思われる」という考えに立脚しています。

SEOの世界では、昔は「リンクこそがSEOの要」という時代がありました。昔のSEOを知っている人ならば「コンテンツがどうであれ、被リンクをうまく作り出せばGoogleの評価が上がる」という時代があったことをご存じでしょう。

しかし昨今のSEOでは、「コンテンツの重要性」「ユーザーの検索意図への適合」「ユーザー行動」などが重視される傾向が強く、それにともなって、リンクについて語られることは少なくなっています。

また、不自然なリンクに対するこれまでのGoogleの対応を思い出し、SEOの文脈において「リンク」を語ることに、あまり良いイメージを持たない方も多いかもしれません。

とはいうものの、実際のところは、どうなのでしょうか。

確かに、検索エンジンにとって「リンク」は、時代の変化やアルゴリズムの進化によって以前ほど決定的な要因ではなくなっています。しかし、それでもGoogleの検索アルゴリズムにおいてリンクは今でも重要な要因の1つだと考えられています。

実際に、Googleのサーチクオリティ シニアストラテジストAndrey Lipattsev氏は、次のように発言し、SEO関係者の注目を浴びました。

Google検索のランキング要素のトップ3は「リンク」「コンテンツ」「RankBrain」だ。

別の角度からも同様のことが見えてきます。Googleは、「不自然なリンクを得ているWebサイトに対して警告を送る」「ペンギンアルゴリズムをコアアルゴリズムに組み込む」など、スパム行為への対応を強化し続けています。また、公式ブログにて「大規模な記事キャンペーンのリンクに関する注意点」も公開しています。これもリンクを重視しているからだと考えられるでしょう。

Googleは、まだ「情報の正確さ」を直接的には判断できません。ですので、情報の「信頼性」を判断する手段の1つとしてリンクを使っているだろうと考えることは、大きくは間違っていないでしょう。

「リンク獲得」から「関係性構築」へ

では、「自社のページにリンクを多く張ってもらい、「リンクグラフ」(リンクによってつながるWebサイトの相関関係)をしっかりと構築していけば、Googleから“信頼性のあるページ”だという評価を得られる」のでしょうか。

この方向性自体は間違っていないと思われますが、注意すべき重要な点があります。それは、「リンク獲得」(Link Building)ということの捉え方です。

前述のように、現在のGoogleは大幅に進化しており、作為的なリンクを判別する能力が非常に高くなっています。そのため、「被リンクを増やす」ための不自然な努力は、ほぼ意味がなくなっています。

では、どのようにしてリンクを増やせばいいのでしょうか。そこで大切なのが、「信頼性を高めるためにリンクを増やすのではなく、信頼性のあるコンテンツがユーザーから評価されることを通じて、自然にリンクが増えるようにする」という考え方です。

優れたコンテンツを作ることは大前提ですが、そのうえで、“そのトピックに関連する、さまざまな人たちとの良質な関係性を構築する”という「Relationship Building」(関係性構築)の考えにシフトしていくべきなのです。

「良質な関係性」を構築していけば、その結果として「自然なリンク」が生まれ、その積み重ねにより権威性・信頼性=オーソリティが実現されるのです。

Googleが排除したいのは「人工的」なリンクであって、そもそも「リンク」自体は悪いものではありません。そして、私たちは「リンクを張る」というユーザー行動自体に、あらためて目を向けるべきなのです。

良いコンテンツを作れば評価されるのでは?

「今のSEOで大切なのは良質なコンテンツだと言われている」「良いコンテンツを作るほうが大切ではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん、良質なコンテンツを作ることは、SEOの本質であり大前提です。

しかし、「良質なコンテンツを作ればリンクが集まるとは限らない」のも事実なのです。

良質なコンテンツを作るには、時間と費用が必要です。ならば、そのパフォーマンスを最大化するには、そのコンテンツにふさわしいリンクが集まるようにして、自社のWebサイトのリンクグラフを構築するための行動も、並行して視野に入れるべきなのです。

実際に、「SMX」や「Pubcon」といった海外のサーチ系カンファレンスでは、今なお「リンク獲得(Link Building)」を解説するセッションは人気です。また「Page One Power」のように、リンク獲得に特化したコンサルティング企業も米国には存在します。

そうしたセッションで語られているのは、昔のような「いかにGoogleをだますリンクを増やすか」ではなく、「いかにコンテンツを知ってもらい、(何もしなければ発生しなかったかもしれない)自然なリンクが増えるようにするか」なのです。

企業のビジネス活動にもSXO観点を取り込んでいく

では、自然なリンクが増えるようにするには、どうすればいいのでしょうか。それが、先に述べた「関係性の構築」です。

「関係性の構築」とは、具体的には、

  • 自分のことを知ってもらう
  • 会社や製品のことを知ってもらう
  • コンテンツの存在に気づいてもらう
  • 良いコンテンツに対して自然にリンクを張ってもらう

ためにコミュニケーションを進めるということです。そのための行動は、オンラインで行うものだとは限らず、オフラインでの活動も含まれます(そのための働きかけは「アウトリーチ」と呼ばれることもあります)。

また、そのベースとなる活動として、業界団体やコミュニティでの活動を通じてつながりを強くすることなども含まれます(その動きのほとんどは、コンテンツとは直接関係がないものでしょう)。

こうした活動は、一朝一夕にできるものではありません。実際の友人や取引先との関係をイメージしてわかるように、まだ出会わぬ人たちと新たな関係を築き上げるのは、時間も労力も要することです。

相互に信頼関係が生まれ、関係性が構築され、リンクとなって現れるまで、長い時間がかかるものなのです。

しかしあらためて周りを見回すと「すでに関係ができている人たち」「関係ができているWebサイト」があることにも気づくでしょう。たとえば、次のような人たちです。

  • すでにリンクを張ってくれているユーザー
  • ビジネスパートナー(販売代理店・スポンサーイベント企業など)
  • リリースを掲載してくれる外部メディアやそのジャーナリスト

すでにリンクを張ってくれているユーザー(Webサイト)については、Googleサーチコンソールなどから抽出することも可能でしょう。こうしたユーザーは、何らかのリンクを張ってくれていることからも、あなたのコンテンツに対して好意的だと思われます。新たなコンテンツを公開したらこまめに通知するなどすれば、関係構築の一助となるかもしれません。

自社にとってのビジネスパートナーや外部メディア、ジャーナリストなどは、社内の広報担当者経由で、リアルな関係を作ることも可能でしょう。

ただし、こうした関係構築は、SXOのためだけに行うものではありません。また、担当者にWebサイトに関する知識がまったくなければ、実際の関係構築ができたとしても、Webの世界におけるリンクグラフ上での関係性には反映されません。

実際の関係性と同様に、リンクグラフ上での外部サイトとの関係構築を目指して、SEO・SXO担当者だけでなく、あらゆる部門担当者の理解を得て、企業のビジネス活動にSXO視点も取り込んでいくことが、あなたのサイトの「オーソリティ」を高めるために、ますます重要になってくるでしょう。

この記事の筆者

松野 亘(まつのわたる)
クロスフィニティ株式会社
グローバルビジネスデベロップメントオフィス
エバンジェリスト

株式会社オプトに2008年入社、2010年クロスフィニティ株式会社に参画し大阪や福岡営業所の立上げを行う。

現在まで一貫してSEOに携わり、中小から大規模サイトまでコンサルティングを実施、その数は300を超える。

近年は、これまでのコンサルタント経験を活かしつつ、海外パートナーとの折衝・アライアンスなどを行いながら、エバンジェリストとして活動中。

何が足りないのかを見極める――LIFULL HOME’Sのマーケティング戦略部長が語ったデータで事業を加速させるポイント | 【レポート】アナリティクス サミット2017

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事業領域ごとにサイト開発、集客、ツール、運用が分かれていては、マーケティングを最適化することはできない。物件数No.1の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME’S」を運営するLIFULLでは、マーケティングを統合するためにどのような課題があり、どのように解決していったのだろうか。

久松 洋祐 氏
株式会社LIFULL
取締役執行役員
LIFULL HOME’S事業本部 マーケティング戦略部長
久松 洋祐 氏

「アナリティクス サミット2017」の基調講演は、LIFULLの久松氏が「アナリティクスとデータで事業を加速させる」と題し、不動産ポータルサイト「LIFULL HOME’S」の課題とその解決方法について解説した。

一貫性のあるコミュニケーション施策を目指す

LIFULLでは、全国の住まい探しができる不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」を運営している。同サイトでは、統合した顧客体験を目指しているが、賃貸、不動産媒介、新築分譲、注文住宅、リフォームなどの事業に分かれているなかで、統合したコミュニケーションのために一貫してデータを分析する環境を構築することが求められていた。

不動産関連のさまざまな事業で60以上のドメイン名があったLIFULLでは、2007年に全サイトに共通の解析ツールを導入を目指し、賃貸、中古、新築戸建、分譲マンションに絞って導入を行った。しかし当初は解析ツールに不慣れでサイト内構造をどのように決めていくかもわからず、導入に1年半以上かかってしまい、社内の理解も得にくかったという。

「社内での勉強会や啓蒙活動を行っていった」という久松氏は、次のように振り返る。

ツールを使って社内で共通のコミュニケーションが取れるようになったのは、導入完了後1年くらい経ってからだ

続けて、久松氏は次のように話す。

解析ツールの導入によって、事業間で顧客が重複していることが明確になり、定量調査でサイトを認知しているユーザー数と実際に利用しているユーザー数に大きな隔たりがあることが判明した

この原因として、サービスごとの使い勝手がバラバラで、使いにくいサイト構造となっているのではないかと仮説を立てたLIFULLは、2009年に顧客体験を統合するための新たなサイトとして「HOME’S」を構築して運用や使い勝手を改善。

どのようなサービスを提供するべきかを考えてコミュニケーション戦略の枠組みを作っていき、クリエイティブの方向性を明確にして、カスタマージャーニーマップを作成し、一貫性のあるコミュニケーション施策を行うためのデザイン原則や基準を構築していった。

久松氏は次のように説明する。

カスタマージャーニーは、ZMET(Zaltman Metaphor Elicitation Technique)を活用し、潜在ニーズを明らかにしながら作成していった

さまざまな部署から集まったメンバーで調査からアウトプットまで半年かけたプロジェクトでは、ユーザーが住まいに対して描いているイメージを集めてインタビューを行い、インタビューから導き出されたキーワードを分析して仮説を作り、シナリオを設計していったという。

アウトプットは、住み替えに対して満たされていない欲求や苦悩、決断などのユーザーが変移するシグナルやインサイトを文字で示す形で1枚のシートにしていった。

カスタマージャーニーマップの活用

2011年から2012年にかけて、オフラインまで含めた広告のアトリビューション評価を行った

という久松氏は、2011年に導入したMMM(Marketing Mix Modeling)について説明する。

スマートフォンが普及しだした当時は、PC、フィーチャーフォン、スマートフォンなどの流入経路別にどのように広告を投入していくかが課題だった。しかしその評価はというと、従来から広告のKPIがCPAをベースに考えられていたため、広告に対してのコンバージョン数や売り上げが評価の対象となっていた。

MMMを導入することによって、短期獲得(フロー)コンバージョンと中長期獲得(ストック)のコンバージョンの2つの概念が社内で共通言語化され、費用と投資の棲み分けができるようになった

「MMMは、すでに予算化されているものに対する未来予測の側面が強く、マス広告に適していたが、広告費全体や年間広告量の最適化までは導くことができなかった」という久松氏は、「2012年に顧客接点ごとの相関モデルを構築していった」といい、顧客接点を構造化して、各顧客接点の相関を可視化し、投資配分を最適化することを目指した。

各顧客接点からコンバージョンに至るまでをモデル化し、それぞれの広告が他の広告に与える影響を考えて、投下配分を変えることで得られるリターンの変化を図式化して最適な配分を導き出していった

LIFULLでは、年に1回この相関モデルによる分析を行って年間予算の方針を決めているが、現在は年に1回ではなく、毎月行うことも検討している。

顧客設定毎の相関モデル構築

2013年からLIFULLは、すべてのユーザーに同じコンテンツを見せるのではなく、ユーザーの好みに合わせてコンテンツを出し分けるワントゥーワンマーケティングの実現を目指している。

2009年に作られたカスタマージャーニーマップは、既存サイトに手を加える数字的な根拠を示すことができていなかった。それに加えて2012年までは「HOME’S」のリニューアルプロジェクトや既存サイトの運用に開発リソースが取られていたため、カスタマージャーニーマップは活用されていなかった。

しかし2013年からは、カスタマージャーニーマップを活用しながら住み替えのステージに合わせたコンテンツを作成するようになり、共通言語として活用されるようになった。

とはいうものの久松氏は次のように振り返る。

データ分析によるコンテンツ評価については明確なアウトプットが出せなかった

当時はルールベースで行っていたアプローチを、現在は機械学習などを活用しながらシグナルを把握するようにして、より良い顧客体験を提供できるようにすすめていることを明かす。

カスタマージャーニーマップが共通言語に

「データ分析によるコンテンツ評価や行動トラッキングの成果は出せなかったものの、カスタマージャーニーマップによって、さまざまな顧客接点の開発が行えた」という久松氏は、「CMのクリエイティブ開発やオウンドメディア開発などを行え、アプリでタッチポイントを増やす仕組みなどを作ることができた」と話す。

何を追加すれば事業が加速するかを考える

2016年以降、LIFULLでは、オンライン広告のインハウス化、アトリビューションモデルによるポートフォリオ見直し、オムニチャネルへの展開などの施策を進めている。

久松氏は次のように話す。

クラウドを活用して各システムを統合し、BIからリアルタイムに情報を更新できるようにし、CRMや各種データを機械学習で自動的に処理できるようにプロセスや決定サイクルを見直して、迅速な新規サービスの提供やユーザーのシグナルのビジネスでの活用を目指した

これによって、従来は非効率だと思われていた市場に参入でき、満たされない需要を発掘することができるため、カスタマージャーニーを実現させるテクノロジーを活用するために、社内の体制や意識を変える必要がある

広告運用に関しても「これまでは、パートナーとともに課題を共有し、膨大なデータを整理しながら課題をあぶり出してレポートを出し、ミーティングを重ねていた」し、その課題については「高い成果を出せた一方で、データを把握してから手を打つのに10日かかるという課題があり、事業が立ち上がるたびに運用広告担当を割り当てるのが難しかった」と説明する。

しかし現在では「大半のシステムがクラウドに移行し、リアルタイムにどこでもBIで情報を取得できるようになっている」とし、「広告運用を自動化することで、最終的には『物件がほしい人』『ほしいと思っているけど自覚していない人』に向けてピンポイントでタイミングよく広告やコンテンツ、サービスを提供することを目指している」という。

また、久松氏が顧客体験として大切にしているのはオンラインサービスだけではない。「コールセンターを強化して、関東を中心に新たに5店舗の対面カウンターを展開している」と説明する久松氏は、次のように話す。

コールセンターや対面カウンターから得られる顧客の反応やニーズは、物件探しに慣れていない方からの問い合わせなどが多く、サイトでは得られないものが多い

「コールセンターや対面カウンターの情報とサイトでの情報を統合させながら理想の住まいを見つけるサポートを行って続けたい」というのが、オンラインとオフラインを通じて顧客体験を改善していくHOME’Sの考え方だ。

また、2016年は、社名をNEXTからLIFULLに変更し、マスターブランド戦略を実行して経営資源を統合している。さらに、全社DMPの構築と運用も行い、ターゲットユーザーのセグメント化とステージ別管理を行い、データ活用のルール決めと整備を行っていった。

最後に、久松氏はアナリティクスとデータで事業を加速させるポイントを次のように説明する。

現状だけを見て考えるのではなく、足りないものが何かを考えることが重要

「現状に何が足りないかを考え、進む方向や方針、目標、未来を見据えて足りないものをあぶり出し、ゴールを理解して、何を追加すれば事業が加速するのかを考えることが重要」なのだという。

我々は、設立20周年の節目を迎え、より多くのみなさまの暮らしを安心と喜びで満たす住生活情報サービス企業へと進化するため、すべての資産をLIFULLに集約しました。これによって、ブランド価値を最大化し、よりよいサービス提供に注力していきます

と久松氏は話した。

この記事の筆者

【執筆】

野本幹彦

IT系ローカライズ会社、IT関連雑誌記者を経て、フリーライターとなる。コンシューマから企業システム、ソーシャルアプリ、デジタルマーケティングまでの幅広い分野で記事を執筆。事例取材やインタビューを中心に、書籍、広報誌記事、Web記事などを手がけている。

【撮影】

鹿野宏

アルバイトは専用機である。1人オーナーための雇用心得 | 企業ホームページ運営の心得

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心得其の507

経営者の考え方

DAJ/Thinkstock

厚生労働省が5月30日に発表した2017年4月の有効求人倍率は1.48倍、バブル時代のピークを超え、ほぼ完全雇用を実現した空前の有効求人倍率が雄弁に語るのは「景気回復」です。ナウなヤングには人生初のことかもしれませんが、こう思っているのではないでしょうか。

好景気とかいわれても、まったく実感ねーし

気持ちはわかります。なぜなら、現代史の教科書で習った「バブル経済」のときも、当時のヤングマンだった私の給料が上がったのは、しばらく時間が経ってのことだったからです。経済学では「賃金の遅効性」と呼ばれ、会社が儲かってしばらくしてからしか、給料は増えないということ。そして、今のような景気回復期、「仕事量」だけは増加します。

仕事量が増えても、多くの経営者はすぐに正社員を増やすのではなく「パート」や「アルバイト」でしのごうとするものです。あるいは他部署からの応援部隊、一時的なヘルプなど。そして、その教育は現場へと押しつけられます。夏冬、イベント時の短期的な繁忙期も同じくです。今回はこうした諸事情から、パートを雇うことになったときの心得です。

パートとは何か

私はプログラマをドロップアウトした後、「フリーター」として職を転々としました。紆余曲折を経た再就職先では、中小企業の経営者から、パートやアルバイトの採用について相談を受けます。そして起業してからは雇う立場にもなり、これらの経験から得たパートやアルバイトを雇うときの心得は「仕事の細分化」です

たとえば、「文字打ち(文字起こし)」だけ、画像の切り抜きだけ。資料集めなら、1つのジャンルだけ探すといった、いわば「単純作業」にあたらせます。

かつて「ネット選挙」を取材したときは、各地の議員や立候補予定者のTwitterアカウントをフォローするためだけにパートさんを雇ったことがあります。語弊を怖れずに言うなら、パートやアルバイトは、そのジャンルにおける「専用機」と位置づけるということです。

これには3つのメリットがあり、人を動かす上で重要な心得へとつながります。

単純作業を推す3つのメリット

まず、人的リソースの効率化が図れます。既存のスタッフでなければできない作業と、誰でもすぐにできる作業に分け、後者をお願いすることで、前者の能力の最大化が期待できるということです。

たとえば、「八百屋(あるいはスーパーマーケット)」の場合、店頭の欠品を補充する「品だし」には、ある種の需要予測と陳列のコツ、お客に声をかけられたときの対応など、技術が求められます。一方、ダンボールの中のジャガイモをバックヤードでビニール袋に小分けする「袋詰め」なら、ほぼ誰でもすぐ作業に掛かれます。

2つめのメリットは教える手間が省けることです。仕事を教えるために「仕事ができる人」の作業を止めるのは本末転倒です。専用機に期待するのは特定の作業であり、ジャガイモの袋詰めだけなら説明の時間はわずかです。

繁忙期はアレもコレも手伝ってほしいと思うものですが、高望みが自分の首を絞めることもあります。まず、すぐに、誰にでもできることからはじめさせるということです。

3つめは能力を精査しやすいということ。作業を細分化して任せることで、成果を数字で確認しやすくなります。これがパートやアルバイトを使うときの重要な心得です。

アルバイト側の視点

パートやアルバイトを「専用機」としたことに憤りを感じる読者もいることでしょうが、フリーター時代にこんなことがありました。あるサービス業でアルバイトをしていたときのこと、トップの号令一下、高級ホテル並の接客を現場のアルバイトにまで求められたのです。

経営トップの志は理解しましたが、こちらは時間を切り売りするアルバイト。仮に高級ホテル並の接客が認められて昇給しても、10円単位の時給アップ、100時間働いてもわずか1,000円の増収にしかなりません。

大卒社員と同じモチベーションで仕事をしろというほうが無理な話です。アルバイトにとっては「専用機」の方が楽なことは少なくありません。そしてこのアルバイト側からの視点が、心得へとつながります。

栴檀を探せ

栴檀(せんだん)は双葉より芳し(かんばし)

こんなことわざがあります。実際には香木の白檀(びゃくだん)を指すのですが、芽生えたころからすでに良い香りを放つという意味があります。つまり、若くても優れた「人材」であれば、どこにいても光るということ。単純作業や「専用機」的な配置なら、その労働成果を客観的な数字として把握し、能力を比較検証することができます。

時間給の場合、勤務時間の浪費を目的とするような労働姿勢のスタッフが一定の割合で現れます。一方で「栴檀」のようなスタッフもいます。それぞれの能力、特性を見極めるためにも「専用機」的な業務は役立つのです。

専用機とは反対に、最初から「すべて」を任せて学ばせる方法もあります。

教育費の配分

知人の会社では入社直後から、ベテラン並に作業を「丸投げ」します。短期間に多くの経験も積めますが、ミスはもちろん、納期に間に合わないリスクも抱えています。そこで、ミスやトラブルが発生したときは、既存の全社員の総力を結集してフォローするというマッチョな「社風」がこの仕組みを支えています。このときの人件費の無駄も「教育費」と割り切ってのことです。

最初から多くを求めるときは、それ以上の負担を覚悟しなければならないということです。

実は私のプログラマ時代も「丸投げ型」でした。何度も失敗し、師匠のフォローを受けながら育ててもらいました。一方、翌年配属された専門学校卒の新人は、同じ丸投げ方式でも、何から手をつけていいかわからないとノイローゼになり出社拒否。彼の両親と、会社の上層部が話し合った結果、師匠の「サポート専用機」として職場復帰し、いきいきと「コピー」をとっていました。

1人ひとりの個性もあり、中長期的視野に立った人材育成なら「丸投げ」も1つのアプローチですが、ネコの手も借りたい繁忙期には不向きな方法で、専用機的な役割分担に軍配があがります。

今回のポイント

作業を細分化しリソースの有効活用

数的な把握は幾重にも重要

この記事の筆者

宮脇 睦(みやわき あつし)

プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。

制作、営業の双方の現場を知ることからウェブとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供し、一業種一社、制作案件は足立区内のみという営業施策をとっている。本業の傍らメールマガジン「マスコミでは言えないこと」を発行。好評を博す。著書に『完全! ネット選挙マニュアル』(Kindle版)、『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)、冷静な視点からのIT業界分析に「月刊正論」など、様々な媒体から情報発信を続ける。

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セールスフォース・ドットコムが「Salesforce DMP提供開始」最適なメッセージを、最適なタイミングで広告配信する

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セールスフォース・ドットコムは、Salesforce Marketing Cloudの機能を拡張した、データ管理プラットフォーム(DMP)「Salesforce DMP」の6月13日に提供を開始した。

Salesforce DMPを利用すると、同社が保有する既存の顧客データに加え、Salesforceのさまざまなソリューションからデータを取得でき、ターゲットユーザーに対して、最適なメッセージを、最適なタイミングで、あらゆるチャネルから広告配信できるという。

具体的には次の2つだ。

  • クロスチャネル型の広告配信管理
    コンバージョンにつながる広告をテスト配信して、それを測定することで、その企業の適切な広告頻度が算出できる。これにより、広告費やROIの最適化が可能となり、ユーザーにとって適切で嫌われない広告配信ができる。

  • Salesforceのあらゆるデータを活用したデジタル広告配信
    たとえば、インターネットプロバイダーは、カスタマーサービスに問い合わせをしている顧客に対して、広告配信を停止できる。また、すでに把握しているロイヤリティの高い顧客層や直接関係を築くことができていない見込み客を、的確にターゲティングできる。

また、Marketing Cloudに組み込まれたEinsteinのAI(人工知能)技術を活用すれば、数十億のプロファイルと数兆のカスタマーエンゲージメントイベントから新しい有望なセグメントが特定できるという。

Salesforce Marketing Cloudとは、同社が提供するデジタルにおいて、1人ひとりにあったコミュニケーションを実現するサービスです。対象となる顧客に対して、すべてEinsteinが最適なコンテンツ、チャネル、配信のタイミングを自動的に予測し、最善の提案をしてくれる。

この記事の筆者

四谷志穂(Web担当者Forum 編集部)

物流企業で営業兼Web担当者を経て、Web担当者Forumの編集者となる。企業Web担当者時代の経験を活かして、読者目線の記事をお届けしていきたい。一日の至福のときは、仕事終わりのビールと枝豆。

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テクロコの運用型広告管理「ATOM」がSupershipの「ScaleOut DSP」とデータ連携

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中小・ベンチャー企業のデジタルマーケティング支援を展開するテクロコは、自社の運用型広告統合管理プラットフォーム「ATOM(アトム)」が、広告事業のSupershipが提供するDSP(デマンド サイドプラットフォーム)「ScaleOut DSP」とのデータ連携を始めた、と6月14日発表した。これによってScaleOut DSPの広告実績データを自動的に収集し、ATOMで一元管理可能になる。

ATOMはリスティング広告、ディスプレイ広告、ソーシャルメディア広告、DSPなど運用型広告の運用で必要な各種機能を搭載する。取り込んだデータはATOMのレポート、進ちょく、アラートの各機能で活用できる。今後も運用型広告とのデータ連携を拡大する。「Google AdWords」「Yahoo!プロモーション広告」「Facebook広告」「Twitter広告」「Criteo」などと連携している。

フリークアウトが小売業の課題解決を目指すユニット「ASE」で位置情報関連サービス

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マーケティング技術のフリークアウトは、流通・小売業が持つさまざまな課題の解決を目指すユニット「ASE(エース)」を立ち上げた、と6月13日発表した。位置情報関連のサービスを始める。位置情報ターゲティング広告配信「ASE Ad」とオフライン行動分析「ASE Analytics」となる。フリークアウトは2015年から位置情報の活用に取り組み、提携先が取得する位置情報をDMP(データマネジメントプラットフォーム)に蓄積。これらを流通・小売事業者の集客・顧客分析の効果、利便性向上に生かす。

ASE Adは取得した生活者の位置情報に基づき、店舗への来店者やエリアの居住者を識別・セグメント化して広告配信する。フリークアウトが展開するスマートフォンの広告効果を最大にするマーケティングプラットフォーム「Red」やLINEの運用型広告「LINE Ads Platform」などで配信する。広告閲覧ユーザーの実店舗来店を計測する機能もある。ASE Analyticsは、自店舗や競合店舗来店者の居住地域分析や、他店舗との併用利用率分析ができる。ASEはこの2つを皮切りにサービス開発を進める。


[ユーザー投稿] 【2017年7月5日】キノトロープ主催「第5回 CMSカンファレンス」に、24-7代表の田村が登壇します

ラックがネットワーク経由のウイルス侵入余地の自己診断無料サービス「自診くん」開始

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システム開発のラックは、ネットワークを経由したウイルスの侵入余地が自己診断できる無料サービス「自診(じしん)くん」を始めた、と6月14日発表した。企業は、自社で利用しているネットワークがウイルスの感染活動を検知した際、遮断するなどの対策が施されているかが判定できる。ネットワークを介して自ら感染を広げるウイルス被害が国内で増えていることを受けた。

自診くんは、特定のサイバー攻撃の通信がインターネットからコンピュータに到達する可能性があるか、自ら確認が可能。パソコンを使用不能にして元に戻す代金を要求するランサムウェア「WannaCry」が攻撃に使用する通信の接続や、接続を許可してはいけない機能への接続が分かる。自己診断でそのコンピュータに通信がつながった場合、対策が施されていないことになる。

効果があるのはリタゲ広告だけって、それホント? 「嫌われるより好かれる」ディスプレイ広告活用術 | リスティング広告運用でビジネススキルも磨く

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広告がウザいって言うけど、効果はでているのにどうしたらいいの……

ウェブ担当者:こないだ社内の会議でボスに、「あのウザい広告、何とかならないの?」って言われました……。効果は出てるし、除外とかもいろいろやってるんですけど……。自分がウザいって言われてるみたいで凹みます。

寳:まあまあ、元気出してくださいな。ところで、ディスプレイ広告の種類って、リターゲティング広告だけだと思っていませんか?

ウェブ担当者:前に他の広告もやったことありますけど、結局パフォーマンスが良いのってリターゲティング広告になりますし……。

寳:そうですね。じゃあ今日は、ユーザー心理や区分を踏まえつつ、リターゲティング広告も含めたディスプレイ広告全般について、考えてみましょう。

記事の最後では、ディスプレイ広告の運用に役立つ「プランニングシート」も紹介しますね。

リターゲティング広告は目の前の成果を増やすのに効果的

「リスティング広告でディスプレイ広告を使う」と言ったとき、多くの方はまず、リターゲティング広告を思い浮かべるのではないでしょうか。リターゲティング広告は、文字どおり「一度サイトを訪問したユーザーに再訪問を促すために使われる広告」です。

簡単に説明すると、前に見たことのある(アクセスしたことのある)サイトの製品・サービスに関する広告を表示する仕組みです。ある製品を調べた後にニュースサイトを見ていたら、「さっき見ていた製品の広告が表示されていた」という経験はないでしょうか。

リターゲティング広告は、2010年の開始以降、広く普及しました。最近は、「ディスプレイ広告はリターゲティングしか使ったことがない」という広告主の話を聞く機会もあります。それほどまでに、日本では現在、リターゲティング広告偏重になっています。表示される広告を見て、ユーザーとして「またこの広告か、正直ウザいな……」と感じた経験をお持ちの方もいるかもしれません。

では、なぜこんなにリターゲティング広告が使われるのでしょうか? それは端的に言って、効率よくコンバージョンを増やしやすいからだと考えられます。多くの企業のマーケティングの現場では、「目の前の成果=コンバージョン」が最優先されています。限られた予算で目の前の成果を最優先するとき、「コンバージョンにつながる見込みが高いユーザーに、広告を見せられる」という意味では、リターゲティング広告が強力な打ち手であることに疑いはありません。

リターゲティング広告は、耐え難いノイズにもなる諸刃の剣

しかし、実はディスプレイ広告をリターゲティングでしか使わないことは、危険をはらんでいます。冒頭に記した「ウザいな……」という感覚を思い出してください。もう必要ない製品の広告が、スマホと自宅のPCで何度も表示されると、ウザいと感じることがあるのではないでしょうか。

たとえば、コンバージョン率3%のリターゲティング広告があるとしましょう。効率としては優れていると仮定します。この広告のコンバージョン率は3%ですから、広告をクリックした100人中の3人が製品を買ったり、会員登録をしたりしますが、同時に想像してみてください。

コンバージョンしなかった97人は広告を見てどう感じたのか?

広告を見たけどクリックしなかった人のうち、何人が「ウザいな」と感じたのか?

この視点で考えると、非常に強力に見えるリターゲティング広告は「諸刃の剣」であることがわかるはずです。つまり、リターゲティング広告は、あるユーザーにとっては非常に有益な情報となる一方で、他のユーザーにとっては耐え難いノイズになりえるのです。目の前の成果を最優先するあまり、最悪な場合、自社ブランドの毀損につながることさえ考えられます。

リターゲティング広告の成果が上がりやすいのは事実ですが、リターゲティング広告に依存し過ぎない使い方を考える必要があるでしょう。

ディスプレイ広告はどんな「顧客接点=扉」になりえるか

では、リターゲティング以外にどんなディスプレイ広告をどのように使えばいいのでしょうか。

ディスプレイ広告は、リターゲティング広告以外でも有望な顧客接点として活用できます。図1は、顧客が製品・サービスを初めて知ってから、末永く愛用するようになるまでの旅のプロセスをシンプルにモデル化したものです。購入以前を「ユーザー」、購入以後を「顧客」としています。

図1 ディスプレイ広告を活用した顧客接点の例

図の中にいくつか見える「扉」が、「顧客との接点」です。ディスプレイ広告は大きく分けて、次の3つの「顧客接点=扉」の役割になると考えられます。

知る前/考える前の扉
1. 新規の「ユーザー」に向けたディスプレイ広告

新しいユーザーを顧客にすることは、どんなビジネスであっても常に重要です。ここでのターゲットは、「将来顧客になるかもしれないが、まだ製品・サービスを知らない」あるいは「知っていてもまともには検討していない段階」のユーザーです。

年齢や性別、興味関心など、将来の顧客として「有望」だと考えられるユーザーに対して、まず知ってもらい、検討してもらうためのディスプレイ広告を見せることができます。図1に記している「年齢/性別」「興味関心」などのターゲティングは、広告媒体によって呼称や定義が異なりますが、GoogleとYahoo!の両ディスプレイ広告から、DSP、ソーシャルネットワーク広告まで、おおむね同様のターゲティング広告メニューが存在しています。

ユーザーに製品・サービスを知ってもらう、また検討してもらうという意味では、次のような指標が重要視されることがあります。

ユーザーに知ってもらう
  • 掛けた予算で得られた新規ユーザーの訪問数
  • コンバージョン以前に広告がどれだけ見られていたか
ユーザーに検討してもらう
  • 見てほしい特定ページへの到達度
  • 動画の再生数
  • ボタンのクリック数

決める前の扉
2. リターゲティングのディスプレイ広告

いわゆるリターゲティング広告の役割です。ターゲットはサイトに訪問して製品・サービスを検討している段階のユーザーで、購入してもらうためのディスプレイ広告を見せることができます。

ページの階層に基づいた検討の深度、閲覧した個別の製品、「○ページ以上見た」などの特定のシグナルのほか、コンバージョンしそうなユーザーを機械学習で自動的にターゲットする手法などが出てきています。ここではほとんどの場合、「掛けた予算に対して得られた購入=コンバージョン」が重要指標になります。

愛用する前の扉
3. 既存の「顧客」に向けたディスプレイ広告

ここでのターゲットは既存顧客です。CRMデータを活用しながら、より好きになってもらい、繰り返し利用してもらうためにディスプレイ広告を見せます。この広告を行うには、CRMデータを広告に活用可能にするための開発が必要です。

たとえば、一定期間内の「○回以上の購入」「○円以上の購入」など、ユーザーの「愛用」に値する行動を定義したうえで、一歩手前のユーザーを引き上げることが考えられます。ここでは、掛けた予算で得られた「愛用」の数が重要指標になります。

顧客接点ごとの役割が違えば、広告の評価方法も変わる

こうして見ていくと、あらためてディスプレイ広告がリターゲティング偏重になりやすい背景が浮かび上がってきます。それは「接点ごとにユーザーの状況が異なるのに、『かけた予算で得られたコンバージョン』という、同じ指標でしか広告を評価・判断していないから」ではないでしょうか。

「なんだかんだ言ってリターゲティング広告は効率が良いから使う」のではなく「接点にはそれぞれ役割がある」と考えるほうが、コミュニケーションの考え方としては自然です。「すでに検討を進めているユーザーをコンバージョンに導く扉」と「これから検討してくれるユーザーを増やすための扉」のどちらも必要なのです。

「リターゲティングでの指標と、新規ユーザー向け・既存顧客向けディスプレイ広告の指標は分けること」を、強く心に留めておいてください。そうすれば、上司、代理店、コンサルタントなどと広告の予算や目標、指標の話をするとき、有効な議論を進められるはずです。

シートを活用して広告のプランニングをしよう

実際にディスプレイ広告の出稿を考える段階では、さまざま要素の検討が必要です。筆者のおすすめは「プランニングのためのシート」を関係者全員で作り、一目でわかるようにすることです。図2を参考に、まず白紙状態のプランニングシートを作ってください。

図2 プランニングシートの例(記入用)

このシートは5W1H(Why、When、Where、Who、What、How)をベースにしながら、ディスプレイ広告の運用プランを立てるとき、さらに考えるべき要素を付け加えたものです。

まずシートの上部に、どんなビジネスの現場でも必ず考慮されるだろう、「タイトル」「施策目的とKPI」「予算」を記入します。

次に、「誰に」「何を提供するか」を記入します。この2つは、マーケティングを考えるうえで重要なポイントを、最大限シンプルに表す項目だと言えるでしょう。真ん中のブロック「ターゲティングと文脈」が「誰に」にあたります。

現代のマーケティングでは、「誰に」というターゲットの部分に「文脈を読む」要素が加わると考えられます。同じ人間でも、その製品・サービスを知る前なのか、買う直前なのかによって気持ちは大きく異なります。同様に、平日の忙しい朝の情報収集なのか、日曜の夜にじっくり閲覧できるタイミングなのか、どのようなメディアを閲覧・利用しているかによっても違うと考えられます。

「文脈を読む」とは、このように「ターゲットとなるユーザーのTPO(時・場所・場合)に応じた気持ちを推し量る」ことです。これらを記入することで、一番下のブロックに記入する内容が定まってきます。

一番下のブロックの「メッセージ」が「何を提供するか」にあたります。真ん中のブロックで書き出したターゲットの文脈に合わせて、何をどのように伝えるかを記入します。企業にとって広告出稿の最終的なゴールは収益を上げることですが、ユーザーにとってのゴールは製品・サービスを通して課題を解決することです。製品・サービスを提供することで、ターゲットユーザーにどうなってほしいかを考えると、何をどのように伝えるかというメッセージがより明確になります。

最後もう1つ、右下に「計測」があります。ディスプレイ広告を代表とするデジタルマーケティング施策は計測可能ですが、計測するためには準備が必要です。施策の効果を評価して次につなげるために、何のツールを使ってどの指標を評価するか、プランニングの段階で決めておきましょう。しっかり考え、あらかじめ関係者全員で共有しておくと、評価の際に無駄な労力を使わなくて済むのでおすすめです。

実際に「男性向けの冷えとり靴下を使ってもらう」という架空の例で、プランニングシートを埋めてみました。ぜひ参考にしてください。

図3 プランニングシートの例(記入後)

プランニングシートを作成・共有することで、関係者の行き違い、抜け漏れを防げますし、成果につながってくるはずです。自社の製品・サービスのプランニングに活かしてみてください。

ユーザーを身近に感じるための「小さな努力」を続けよう

今回の記事では、

  • ウザいと思われがちなリターゲティングは、諸刃の剣である
  • ディスプレイ広告は、リターゲティング広告以外にも有望な顧客接点になる
  • 実際の広告プランニングには、プランニングシートを使うのが有効

という話をしてきました。ディスプレイ広告に限らず、マーケティングにより成果を上げるためには、「ユーザーの気持ちを文脈まで含めて理解し、ふさわしいメッセージを届ける必要がある」ということです。

では、どうやって「ユーザーの気持ち」を理解すればいいのでしょうか。担当している製品・サービスのターゲットユーザーが自分自身に近ければ、その気持ちになってみる、というのは比較的容易でしょう。でもターゲットユーザーが自分自身と大きくかけ離れていたり、自分の好みと合わなかったりすると、買う人の気持ちがわからないこともありえます。

そんなときは、身近にユーザーを感じられるように「小さな努力」をしてみてください。小さな努力というのは、根を詰めて何時間も勉強するような特別なことではない、という意味です。

具体的には、「ターゲットユーザーから直接話を聞く」「SNS上の発言を読む」「本や雑誌、テレビドラマ、ファッション、遊びなどに触れるようにする」といったことです。ターゲットユーザーそのものでなくとも、「周囲にいるユーザーに近い人間と、食事やカフェに行って、おしゃべりする」のもとても効果的です。何もしていないよりもずっと、ユーザーの気持ちを想像できるようになります。

「小さな努力」を一度切りでなく継続的に、自分自身のなかにユーザーを育てるつもりで実践していくと、ユーザーの気持ちがグッと身近になり、的確な施策を打てる確率が上がっていくはずです。

この記事の筆者

寳 洋平(たから ようへい)

アユダンテ株式会社SEMコンサルタント。WEB/紙媒体コンテンツの企画・編集・ライターからSEMの世界へ。Googleアナリティクスを活用して、リスティング広告の設計・運用、コンサルティングを行う。趣味は料理。最近のテーマは「聴くこと」。

著書に『新版 SEM:リスティング広告 Googleアドワーズ&Yahoo!リスティング広告対応 Web担当者が身につけておくべき新・100の法則。』『いちばんやさしいリスティング広告の教本』(インプレス)がある。

自分の気持ちを文章化するツール4種で楽に文章作成(第3回) | 次々に読まれる文章とは?

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文章作成の作業を1枚のチャート上で、分解しながら行うことで、共感が結果につながる文章を楽に作るツール(方法)を紹介します。このツールを使えば、文章作成にかかる作業を効率化できます。

アイ・エンパシー(iEmpathy)

※アイ・エンパシー(iEmpathy)は筆者が開発・提供するツール

文章作成を楽にするiEmpathy(アイ・エンパシー)を紹介します。これは、私が10年間文章を書いてきた実践と経験で開発したツール「エンパシーチャート®」をWeb上で使えるようにしたソフトウェアです。もちろん、アイ・エンパシーを使わなくても、紙とペン、そして付せんさえあれば、同様のメソッドは手描きでも実践できます。

アイ・エンパシーでは、「埋める」→「貼る」→「つなぐ」という3ステップで文章作成をしていきますが、1回目で紹介した「次々に読まれる文章を書く3ステップ」に当てはめると次のようになります。

  • 「埋める」→ ステップ1「内容(メッセージ)」をとにかく出す
  • 「貼る」→ ステップ2「文章構成」だけを考える
  • 「つなぐ」→ ステップ3「文章表現」を整えて完成させる

つまり、「次々に読まれる文章を書く3ステップ」をまったく意識しなくても実践できるように1枚のシートに埋め込まれているのです。また、読み手の未来に寄り添い、そこから逆算して内容(メッセージ)を浮かび上がらせる設計になっており、ポジティブ面でだけではなく、ネガティブな部分にも思いを寄せることで、共感され応援され、敵を作らない文章が書けます。

では、早速説明していきましょう。

ステップ1【埋める】:「内容(メッセージ)」をとにかく出す

エンパシーチャートの最初のステップ【埋める】では、「ゴール設定」「タイトル」に加えて、読者から共感され、敵を作らないための文章作成に必要な「ポジティブステップ」「ネガティブステップ」といった10個の空欄があります。これらを、埋めることで「内容(メッセージ)出し」が簡単にできます。

ステップを細かく分解しているので最初は、大変に感じるかもしれませんが、慣れれば10分もかからずに書けます。

具体例として、4回目のテーマ「次が読みたくなるタイトル・書き出し方法」をもとにエンパシーチャートを説明していきます(完成した文章は次回の連載中で確認してください)。

ポジティブ側のステップ

ポジティブステップがなぜ必要なのか? それは、読み捨てられる文章ではなく、あなたの文章が意味を持つためには、読み手の感情や行動を変化させ、今よりも少しでも良くなり、ポジティブ(ハッピー)にさせることが大切だからです。

あなたの文章を読んだ人が、ハッピーになるにはどんなメッセージがあればいいかを考え、文章化する必要があります。つまり、満たされたポジティブな未来から逆算(バックキャスティング)してメッセージを抽出していきます。

あなたの文章を読む人を想像すると、ポジティブで共感されやすいメッセージを抽出しやすいです。そのため、このフェーズではターゲットを想像しながら書き進めます。

エンパシーチャートを「埋める」
ポジティブ側のステップ

①ゴール設定をする

まず、ゴールを決めます。「相手に伝わって、その人の感情や行動がどのように変化したらいいか?」という文章を書く目的・役割・狙いは何ですか?

②ポジティブなセリフを考える

次に、ターゲットを決めてから、ポジティブなセリフを考えます。あなたの文章を読む(商品を買う)理想的で具体的な1人(対象)は誰ですか?

※決め方については、1回目で説明していますので、ご覧ください。

実在するその人がハッピーになっているところをイメージしながら、「ポジティブなセリフ」を具体的に考えます。あなたの文章を読んでワクワクしている、その人は何と言っていますか? その人が言いそうな、リアルなセリフで書きます。

紙とペンで行う場合は、図と同じようにスマイルマークに吹き出しを書いてから、セリフを書き加えましょう。

③ポジティブな感情を想像する

②でポジティブなセリフを言っているその人はどんな「ポジティブな感情(気持ち・心理・状態)」ですか?

④あなたが相手に求める行動を考える

その人がポジティブな状態「②ポジティブなセリフ」を言っている、もしくは「③ポジティブな感情」になった結果、あなたが相手に取ってほしい行動(あなたが相手に求める行動)は何ですか?

⑤ポジティブへの言葉がけ

「ポジティブな状態」になったのは、あなたがどんな言葉がけやメッセージを送ったからですか? 思いつくメッセージを短くキーワード化して付せんに書きましょう。紙とペンで行う場合もこの内容は、付せんに書いてください。

ネガティブ側のステップ

なぜ、ネガティブ側にも想いを寄せることが大切なのでしょうか? たとえば、同じ情報を受け取っても、ポジティブに喜ぶ人もいれば、ネガティブに悲しむ人もいます。誰もが情報を発信できる現在では、ネガティブに感じた人が、いつでもその感情を発信できます

つまり、企業のキャンペーンや有名人のブログが炎上するような、負のスパイラルが誰にでも起こりうるのです。そのため相手のネガティブ面にも共感し、受け入れ、癒し、そして、ポジティブなイメージで共感を得て、相手の心を動かすことが極めて大切なのです。

参照:『6分間文章術――想いを伝える教科書』自著(ダイヤモンド社)

エンパシーチャートを「埋める」
ネガティブ側のステップ

⑥ネガティブな感情を想像する

「③ポジティブな感情」と逆の感情は何ですか? 「③ポジティブな感情」を機械的に反転させると埋めやすいです。

⑦ネガティブなセリフを考える

「⑥ネガティブな感情」の“架空の人”があなたの文章を読んだら、何と言いそうですか? その人が言いそうで、あなたが言われたくない「具体的なセリフ」で書きます。

紙とペンで行う場合は、図と同じように悲しい顔マークに吹き出しを書いてから、セリフを書き加えましょう。

⑧ネガティブの背景・本音・理由を考える

ネガティブな状態にある“架空の人”が、「⑦ネガティブなセリフ」を言っているのはなぜか? その背景にある本音や理由、現実認識を考えていきます。

⑨ネガティブへの言葉がけ

「ネガティブな状態」にある人に安心してもらう(受け入れる、ねぎらう・癒す、リードする)ために、どんな言葉がけやメッセージを送りますか? 思いつくメッセージを短くキーワード化して付せんに書きましょう。

⑩テーマ・タイトルをひと言で考える

このエンパシーチャートのテーマをひと言でいうと何ですか? テーマを考えるときは、チャートが1つの映画だとしたら、どんなタイトルをつけますか? もしくは、本のタイトルだとしたら? と考えます。

ステップ2【貼る】:「文章構成」だけを考える

ステップ1で、6マスの中央にある2つのボックスには共感を生む“あなたらしい”メッセージ(付せん)が浮かび上がっています。ステップ2では、これらの付せんを並び替えて、どういう順番で伝えるかという「文章構成(文章の骨格)」を考えていきます。

私はこの作業が一番好きです。同じメッセージなのに、ちょっと順番(文章構成)を変えるだけで、文章の魅力をグッと引き立たせることができることができるからです。

⑪曲線を描く

「⑤ポジティブへの言葉がけ」と「⑨ネガティブへの言葉がけ」で付せんに書いた内容をいったん6マスから外したのち、下図のように、6マスの左下の角から右上の角に向かって、フリーハンドで波打つような曲線を描きます。この曲線が文章構成のたたき台を作るためのヒントになります。

アイ・エンパシーのツール内では、付せんを貼ったり外したりする機能や曲線を自動で描く機能があります。

ステップ2「貼る」
⑪曲線を描く

⑫ストーリーを描く

曲線の変化に合わせて先ほど外した付せんを並べます。付せんなので、何度でも自由に並べ替えができます。つまり、1枚のチャートの上で、文章構成を気軽に検証できます。

6マスの横軸は読み進めていく“時間の変化”を表し、縦軸は“感情の変化(ワクワク⇔冷静)”を表しています。

曲線の山と谷にハッキリした変化があるほどおもしろく、よりあなたらしい文章が生まれます。しっくりくるストーリー(文章構成)になるように付せんを並び替えてみてください。そのとき「あなたが伝えたい順」ではなく、「相手が知りたい順」を意識することが重要です。

ステップ2「貼る」
⑫ストーリーを描く

ステップ3【つなぐ】:「文章表現」を整えて完成させる

エンパシーチャート「つなぐ」

付せんの順番が決まり、文章構成のたたき台ができたあと、付せんに書ける範囲で圧縮していたキーワードを解凍するように文章化しながらそれらをつなげ、馴染ませ、文章を仕上げていきます

実際に文章化する前に声に出して読んでみると文章を整理しやすくなります。文章化しにくければ、付せんの順番を変えたり、不要な付せんを外したり、新しい付せんを加え文章を整えていきます。

共感を結果につなげる文章作成ツールがアイ・エンパシー

共感を結果につなげる文章作成ツール「エンパシーチャート®」は、読者に共感しながらあなたの中からメッセージを浮かび上がらせる仕組みが設計されていますので、「自分が書いたとは思えないような文章」が書けるようになるのも大きな特徴です。

私が10年書き続けてきた独自メソッドを1枚のチャートにして、ツールとして開発したのがこのアイ・エンパシーです。もちろん、この文章作成法は、ツールを使わなくても試せます。実際にツールを使い始める前に、紙とペン、付せんで文章が楽に作れることを実感してください。ツールとして使う場合は有料です。ツールの機能に一部制限があるべーシックプランは680円/月、全ての機能が使えるは、980円/月です。

その他のツール

マインドマップ

iMindMap

マインドマップを使って、文章を作成していく方法もあります。中心(セントラルアイデア)から思いつくことを放射状に拡げていくことで、次々にアイデアが生まれていきます。ひとりブレインストーミングをするように、マインドマップのブランチ(枝)を思いつくまま伸ばしていきます。

この記事のマインドマップを描いてみましたのでご参考ください。iMindMapというツールを使っていますが手描きでも描けます。

描き終わったあとに、俯かんしながら、伝えるべき内容(メッセージ)を取捨選択しながら抽出してテンプレートに当てはめていきます。最後に、文章全体のつなぎや文章表現を整えれば、文章の完成です。

1回目で紹介した「次々に読まれる文章を書く3ステップ」に当てはめるといったコンビネーションで文章を作成します。

少し理屈っぽくなりますが、マインドマップは発散するツールなので、それらを文章というひとつの形に収束させていくためにテンプレートを活用しているとも説明できます。

アウトラインプロセッサ

文章をツリー状に管理できるソフトです。アイ・エンパシーが1つの文章作成に向いているとすれば、アウトラインプロセッサは論文や小説など、大きな構造を持つ文章(長文)の作成・構築に適しています。全体の構造を決め、見出しや小見出しを入れ、そのブロックごとに記述や編集ができ、ブロックごとの組み替えができます。

無料から有料のものまでいろいろありますが、私のオススメは、Windows及びMacで使える高性能なアウトラインプロセッサ・ツール「Scrivener(スクリブナー)」です。

このツールを使う場合は、『考えながら書く人のためのScrivener入門 小説・論文・レポート、長文を書きたい人へ』著:向井領治(ビー・エヌ・エヌ新社)が、スクリブナーの使い方をわかりやすく解説しているので、参考にしてください。

Word(テキストエディタ)

Wordやテキストエディタ、Evernoteなど自分が使い慣れているツールがある場合は、2回目で紹介したテンプレートを活用すれば、とたんにスムーズに文章作成できます。

お好きなテンプレートを選んだら文章はどこから書いてもいいということを思い出していただき、順番を気にせず「思いついたところ」「書きたいこところ」から自由に書いてみてください。

テンプレート(型)という文章構成が決まっていると、文章の道筋が見えている状態で書きはじめることができる安心感から、内容(メッセージ)に集中して、文章作成ができます。

まとめ

今回は、実際に文章化するときアイ・エンパシー(iEmpathy)というツールを中心に説明しました。以下、ツールの特徴をまとめます。

  • アイ・エンパシー(iEmpathy)
    共感を生むメッセージを浮かび上がらせ、構成と文章化までが1枚のチャートでできるツール
  • マインドマップ(iMindMap)
    内容(メッセージ)を拡げるのに便利なツール。文章化にはテンプレートを活用する
  • アウトラインプロセッサ
    文章をツリー状に管理できるソフト
  • Word(テキストエディタ)
    テンプレートと組み合わせて使う

最終回の次回は、完成した文章の読まれる確率をさらに引き上げるための、テクニック法タイトル・書き出し方法を紹介します。

この記事の筆者

中野 巧(なかのこう)

情報爆発の現代、ビジネスのさまざまなシーンにおいて「共感力」こそが、“相手に読まれる文章”が書けるかどうかのキーワード。ビジネスパーソンやウェブ担当者をはじめ、多くの人に「共感力」を磨く方法を提供したいと考え、10年書き続けてきた独自の文章メソッドを1枚のチャートに結晶化し、エンパシーライティング®・メソッドを開発。 エンパシーライティング® は、ビジネスシーンや企業研修、地方自治体、教育機関などで幅広く活用されている。

著書に『6分間文章術)』(ダイヤモンド社)『売れる文章術』(フォレスト出版)がある。

サイト内検索からユーザーの行動と心理を探り改善点を見つけだす2つの方法[第46回] | 衣袋教授の新・Googleアナリティクス入門講座

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今回は、サイト内検索分析の後編として、サイト訪問者が「何を検索したか」「どこで検索したか」という2つの視点からサイトの改善策を考える方法を紹介する。前回紹介したサイト内検索の全体を見る方法と関連各指標の意味と活用方法とは少し別の視点からレポートを活用する方法だ。

  • 再検索キーワードから改善策を考える方法(何を検索したか?)
  • サイト内検索を利用したページから改善策を考える方法(どこで検索したか?)
この記事で学べること:
  • 「何を検索したか?」の4つの行動パターンから対策を考える
  • 「どこで検索したか?」からナビゲーションやリンクを見直す

方法1再検索したキーワードの内容からサイトの改善策を考える

前回の指標の見方で解説したとおり、「再検索数の割合」が高い検索キーワードは、「検索結果表示ページで提示されたリンクのリストを見てすぐにあきらめた」か、「何件かリンクを確かめたうえで別の検索キーワードを入力した」割合が高いと考えられるため、問題がありそうなキーワードだ。実際にこのキーワードでサイト内検索を行って、検索結果表示ページの内容を確認すべきだともお伝えした。

Googleアナリティクスでは、「再検索したときの次の入力キーワード」を教えてくれるレポートがあるので、この情報を有効活用しよう。まず[行動]>[サイト内検索]>[サイト内検索キーワード]レポート(図1)を表示しよう。

図1:[行動]>[サイト内検索]>[サイト内検索キーワード]レポート

図1:[行動]>[サイト内検索]>[サイト内検索キーワード]レポート

「再検索数の割合」の指標の列を眺め(図1赤枠部分)、割合の高いキーワードを見つける(図1青枠部分)。図の「クロスドメイン」というサイト内検索キーワードは10%未満なので高いとはいえないが、このキーワードを例に進めていこう。

再検索キーワードで行動パターンを確認する

図1の例で「クロスドメイン」(図1緑枠部分)という検索キーワードをクリックしてドリルダウンしたのが図2だ。左端の列の「リンク先ページ」ディメンション(図2赤枠部分)は、検索結果表示ページを表している。この例では、検索結果表示ページの2ページ目や3ページ目のURLも表示されている(図2茶枠部分)。

図2:[サイト内検索キーワード]レポートで、検索キーワード「クロスドメイン」をクリックした

図2:[サイト内検索キーワード]レポートで、検索キーワード「クロスドメイン」をクリックした

ここで「再検索数の割合」の指標がゼロでない(図2緑枠部分)リンク先ページをいったん確認しておく。図2の「/?s=クロスドメイン」(図2青枠部分)は検索結果表示ページの1ページ目であることを表すので、「2ページ目や3ページ目に移動せずに1ページ目を見ただけで次の検索キーワードを試した」ということがわかる。

図2で示されている例を細かく説明すると、「/?s=クロスドメイン」は、サイト内検索キーワード「クロスドメイン」で検索した結果表示ページの1ページ目であることを表す(2ページ目は「/page/2?s=クロスドメイン」となる)。このページに行きつ戻りつしたページビュー数は「検索回数の合計(5回)」×「結果のページビュー数/検索(1.60ページビュー)」(図2青枠部分)で合計8ページビューあり、その12.50%(図2緑枠部分)にあたる1回(8ページビュー×12.5%)が再検索された、ということを意味している。

複雑に感じるかもしれないが、この例で重要なのは「『再検索数の割合』が高いキーワードが実際に再検索されたのは検索結果の1ページ目なのか、2ページ目まで進んでから行われたのか」を確認しておくことだ。今回のケースでは「検索結果の1ページ目だけで再検索が行われた」ということを記憶にとどめたうえで、次の再検索キーワードを確認する作業に進めばよい。

プライマリディメンションの「再検索キーワード」(図2黒枠部分)をクリックしてプライマリディメンションを切り替えたのが図3だ。「クロスドメイン」というキーワードでよい検索結果の候補が見つからなかったからか、次に検索したのは「サブメイン」だったということがわかる(図3赤枠部分)。

図3:プライマリディメンションを「再検索キーワード」に変更した

図3:プライマリディメンションを「再検索キーワード」に変更した

本当は「サブドメイン」と入力したかったのだと思うが、同じセッションで「サブドメイン」とさらに再検索はしていなかった。それは「サイト内検索キーワード」レポートでキーワード「サブメイン」の再検索数の割合がゼロであったことで確認できた。つまりこれら複数のレポートを総合的に確認してわかったことは、次のような検索行動の全貌だ。

  • 「クロスドメイン」で検索して1ページ目で目的のページが見つからなかった
  • 「サブ(ド)メイン」と言い換えて検索し直した
  • それ以上の検索は行わなかった

ユーザーの検索行動の全体を理解するのには、このように少々ややこしい作業が必要になる。しかし逆にいえば、ここまで詳しく検索行動を把握できるということでもある。

「再検索キーワード」ディメンションにおける「再検索数の割合」は誤解しないように注意

ちなみに図3の指標「再検索数の割合」を見ると100%になっている(図3青枠部分)ので、「『サブメイン』と検索した後に100%再検索している」と解釈してしまいがちだ。しかし、これは「再検索したときのキーワード『クロスドメイン』(図1でクリックした検索キーワード)と検索した後に、6ページサイト内を閲覧して(図3緑枠部分)、『サブメイン』(図3赤枠部分)を再検索した」と読む必要があるのだ。

つまり「再検索キーワード」ディメンションで表示される「再検索数の割合」は、再検索したときのキーワード(図3では「サブメイン」)の指標ではない。混乱しないためにはむしろ見ない方がよいくらいだ。

再検索キーワードから想像できる4つの行動パターンと対策

上で示したのは「言い換えてみた」という1つの行動パターンだ。想像される4つのパターンに整理したうえで、それぞれに対してどのように改善策を考えたらよいかを示そう。

最初に検索した「検索キーワード」と次に検索した「再検索キーワード」の関係は、下記の4つの行動パターンに整理できるだろう。簡単にいえば「より細かくした」「より大ざっぱにした」「言い換えてみた」「あきらめた」の4パターンになる。

行動パターン詳細な行動
①より細かくした最初の検索キーワードが大ざっぱ過ぎて検索結果表示ページのリンク先リストが膨大だった。そのため、もう少し絞り込むために、もっと細かい検索キーワードで再検索した。
②より大ざっぱにした最初の検索キーワードが細か過ぎて、検索結果表示ページのリンク先リストが0件(あるいは非常に少なく、探しているページがなさそう)だった。そのため、もう少し候補数を増やすために、もっと大ざっぱな検索キーワードで再検索した。
③言い換えてみた最初の検索キーワードが細か過ぎて、検索結果表示ページのリンク先リストが0件(あるいは非常に少なく、探しているページがなさそう)だった。そのため、もう少し候補数を増やすために、同義語の別の検索キーワードで再検索した。
④あきらめた最初の検索キーワードが細か過ぎて、検索結果表示ページのリンク先リストが0件(あるいは非常に少なく、探しているページがなさそう)だった。そのため、あきらめての別の探し物のために、まったく別の検索キーワードで再検索した。

の「あきらめた」場合はそれ以上の情報を得ることができないが、それ以外のの場合は次のような対策を考えてみよう。

最初に考えるべきなのは、当たり前だが、ユーザーが求めているのに足りてない情報があり、そのサイトが提供すべき範囲内であれば、その不足しているコンテンツを強化することだ。

サイト内検索のシステム自体に手を加えることはできない場合が多いだろうが、大幅リニューアルなどのタイミングはサイト内検索結果ページでのコンテンツの分類表示や内容に手を加えるチャンスだ。分類の細かさをチューニングしたり(上記の活用)、利用する言葉をユーザーが最初に検索キーワードとして使った言葉に変更したりできないか(上記の活用)を検討してみよう。

大規模なeコマースサイトのような場合であれば、上記ののパターンへの対策として、別の検索キーワードの候補を推薦表示する機能があるツールに差し替えてみることを検討してもよいのではないだろうか。筆者はサイト内検索系のシステムには詳しくないが、そのサイトで実際に検索されるキーワードを機械学習することで賢くなっていくようなツールもあることだろう。

巨大なサイトでは、コンテンツ分類を大幅に改修するのは大変だ。ツール側の学習機能で対処していくという方法は、今後は大いにあり得るだろう。

方法2「どのページでサイト内検索をしたのか」から改善策を考える

これまで見てきたレポートのほとんどは、サイト内検索で「何を検索したか」を調べるためのものだった。次は少し視点を変えて、「どこで検索をしたか」、つまりどのページで困ってサイト内検索を利用したのかを知るためのレポートを活用しよう。それには[行動]>[サイト内検索]>[検索ページ]レポート(図4)を見ればよい。

図4:[行動]>[サイト内検索]>[検索ページ]レポート

図4:[行動]>[サイト内検索]>[検索ページ]レポート

プライマリディメンションは、デフォルトで「開始ページ」が選択されている(図4赤枠部分)。サイト内検索が行われたページが「開始ページ」に該当する。これらは、単純に「検索結果表示ページの前にいたページ」という関係性でひも付けていると考えられる。

図4の例では、「開始ページ」のほとんどが「(entrance)」や「 / 」(トップページ)だということがわかる(図4青枠部分)。「(entrance)」とは、セッションの最初のページ閲覧がいきなりサイト内検索結果ページになる場合だ。たとえばサイト内検索結果ページが検索エンジンにインデックスされていてサイト内検索結果ページに直接入ってきた場合や、ブックマークなどから利用される場合などが該当する。

このレポートでは「各ページでどういうキーワードをサイト内検索したのか」を見ることができる。たとえば「開始ページ」の上から2つ目にある「 / 」(トップページ)(図4緑枠部分)をクリックしてみよう。すると、図5のようにトップページにいたときに検索したキーワードが一覧表示される。

図5:トップページをクリックしてドリルダウンした画面

図5:トップページをクリックしてドリルダウンした画面

このサイトではグローバルナビゲーションで大小2つのレベルでコンテンツの分類を提示しているのだが、レポートに表示された検索キーワードを見ると(図5赤枠部分)、確かにニーズが高そうなキーワードが含まれており、これらのキーワードに対する分類軸が用意できていないということに気付ける。

分析のポイントとしては、行き先に迷ったページがサイト内検索の「開始ページ」だと考え、「その前後のページ閲覧を直接つないであげる手助けができないだろうか?」という視点で考察してほしい。

まずは該当ページに検索キーワードに関連するリンクがないかを確認しよう。それぞれ具体的には、次のような考察ポイントがあるだろう。

  • リンクが存在する場合:ユーザーは気が付かなかったということなので、「なぜユーザーがそれを利用しなかったのか」を考察してページの改修ができないか検討する(表示エリアになかったのか、表示されているのに目立っていないのか、など)
  • リンクが存在しない場合:該当ページに、検索されたキーワードを想起できる分類や分類の階層構造に改修する可能性を検討する

3回にわたり、サイト内検索からサイトの改善点を見つける方法を解説してきた。次はいよいよコンバージョン系のレポートの活用方法に入っていく予定だ。

この記事の筆者

衣袋 宏美(いぶくろ ひろみ)

1960年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。大手電気メーカー勤務後、日経BP社へ。調査部、インターネット視聴率センター長などを経て、2000年ネットレイティングスへ。視聴率サービスやアクセス解析サービスの立ち上げに尽力。2006年株式会社クロス・フュージョンを設立し代表取締役に。現在アユダンテ株式会社の社外フェロー、アクセス解析イニシアチブ副代表も兼任。

著書など:
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